論文
第72巻第1号 2025年1月 育児中の母親の健診受診に関連する要因縞谷 絵理(シマタニ エリ) 斉藤 恵美子(サイトウ エミコ) |
目的 育児中の母親の健康診査(以下,健診)受診に関連する要因を明らかにすることを目的とした。
方法 関東圏内の保育所と幼稚園の計10施設に子どもを通所・通園させている母親1,309人を対象として,無記名自己記入式質問紙調査を行った。調査項目は,基本属性,現病歴,過去1年間の健診受診,健診受診した場所,家族の看病・介護,家事・育児ストレス,夫の育児・家事の参加状況,生活習慣等とした。多変量ロジスティック回帰分析により,年代,就業状況等を調整変数として,健診受診に関連する要因を検討した。
結果 496人(有効回答率37.9%)を分析対象とした。対象者は,30歳代が62.7%であり,正社員,契約社員等の有職者が58.3%(289人)であった。過去1年間の健診受診ありは315人(63.5%)であった。就業状況別の受診割合は,契約・派遣社員93.3%(14人/15人),正社員85.1%(149人/175人),自営業58.3%(14人/24人),パート・アルバイト53.3%(40人/75人),専業主婦47.3%(98人/207人)の順に多かった。多変量ロジスティック回帰分析の結果,健診受診には,現病歴があること(OR(オッズ比,以下同じ)=1.90,95%CI(95%信頼区間,以下同じ)=1.13-3.21),家族の看病・介護がないこと(OR=2.26,95%CI=1.02-4.99),育児ストレスがないこと(OR=1.65,95%CI=1.00-2.72),夫の育児参加があること(OR=1.86,95%CI=1.09-3.19),との有意な関連がみられた。
結論 育児中の母親の健診受診を支援するために,育児や看病・介護がある場合でも健診を受けやすい体制を整備することの必要性が示された。
キーワード 育児,母親,健診受診,被扶養者,育児支援