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論文記事:産後のメンタルヘルスの不調を早期に探知するための方策検討 202501-03 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第72巻第1号 2025年1月

産後のメンタルヘルスの不調を
早期に探知するための方策検討

-妊娠届出時アンケートを通じた縦断的分析-

岩田 眞美(イワタ マミ) 杉原 麻理恵(スギハラ マリエ) 戸矢崎 悦子(トヤザキ エツコ)
長澤 昇平(ナガサワ ショウヘイ) 中村 周平(ナカムラ シュウヘイ)
沖 美紗子(オキ ミサコ) 三堀 健太(ミツホリ ケンタ)

目的 産後のメンタルヘルスの不調は,虐待など養育上の課題の1つといわれているが,妊娠期に行政側がその兆候を探知し,必要な支援へとつなげていく方策は,カンファレンスを通じた経験則が中心となって行われている。本稿では,産後のメンタルヘルスに影響する要因を妊娠届出時のアンケートから統計的手法により浮き彫りにし,妊娠期からの切れ目のない支援に生かしていくことを目的とする。

方法 妊娠期から産後までの一連のデータを縦断的に扱い,多変量解析による重回帰分析を実施する。被説明変数には,産婦健康診査(2週間,1カ月)によるエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)の値を用いた。説明変数には,アンケート項目の中から,先行研究に倣って不妊治療の有無など産科的要因,社会的要因,心理的要因に関連するものを用いることとした。

結果 分析には妊娠届出時のアンケートに回答(一部回答を含む)したもののうち,2017年6月から2023年3月末までに産婦健康診査を受診した24,584件の妊産婦データを用いた。分析にあたりサンプルを産後2週間(12,308件)と1カ月(12,276件)に分けて検証した。結果,産後2週間または1カ月のEPDSの危険因子として,「健康不安あり」「喫煙あり」「転居予定あり」「気持ちの落ち込みあり」「心配事あり」において有意な結果が得られた。他方,「里帰り予定あり」「同居人数」「相談者あり」は保護要因となることが明らかとなった。

結論 妊娠時のアンケートを通じて,産後のメンタルヘルスの不調を予測し得る可能性を示した。産後うつなど,メンタルヘルスの不調に対するハイリスクアプローチのための客観的な判断指標の1つとして,妊娠時のアンケート項目の一部を活用することの可能性を示唆した。

キーワード 産後のメンタルヘルス,妊娠届出時アンケート,産婦健康診査,エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)

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