論文
第72巻第1号 2025年1月 保護要因としての部活動への参加,
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目的 過去10年間,小学校・中学校ともに不登校児童生徒数およびその割合は増加し続けているが不登校に至るメカニズムや有効な介入は未だ明らかではない。変えることが難しい母親の教育水準等ではなく,学校における変え得る保護要因を明らかにできれば,学校での介入により不登校を減じる可能性を高められる。しかし,保護要因について調べた研究はわずかである。本研究では,不登校経験と保護要因としての部活動,教師・友人との間の関係を調べることを目的とする。
方法 「子どもへの不適切な養育(マルトリートメント)の社会的コストの算出調査」2,067人を対象に不登校経験の有無を目的変数として保護要因としての部活動,教師・友人との間の関連をロジスティック回帰モデルで調べた。その際,交絡変数として本人の属性,子ども時代の家族の特徴および経済状況,保護者との関係性,保護者の精神疾患等,不登校のリスク要因を調整した。
結果 「部活からの良い影響」を「なし」と回答した人に比べて「あり」と回答した人は,不登校経験を約40%,小児期の逆境経験なし群に限定すると約50%,有意に減じていた。属性や虐待経験,保護者の精神疾患等を含めたモデルでは「部活からの良い影響」「友人からの良い影響」をそれぞれ投入した際は有意ではなかったが不登校を減じる傾向であった。一方で,「先生との関係が良かった時期がある」は不登校経験を高める傾向であった。ただし,すべての保護要因を投入したモデルでは「先生との関係が良かった時期がある」ことと不登校経験との間に有意な関連はみられなかった。
結論 本研究では,不登校経験と保護要因としての部活動,教師・友人との間の関係を調べた。部活動の種類や参加程度などによる関連の違いや前向き研究での検証等が必要ではあるが,教室での居場所だけではなく,部活等の課外活動に児童・生徒の居場所がもてるようにすることで不登校を減じられる可能性がある。
キーワード 学校,不登校,保護要因,部活動,教師,友人