論文
第72巻第2号 2025年2月 愛知県豊川市国保加入者における特定健診受診者の
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目的 本研究の目的は,豊川市国民健康保険加入者のHbA1c値の改善および悪化に関連する食行動の要因を明らかにすることである。
方法 対象者は2010年と2016年の特定健康診査を両方受診した者で,健診データに欠損がない糖尿病非治療者3,252人である。質問項目は,基本属性,食行動質問票等とし,豊川市の担当課から無記名自記式質問紙を郵送し,郵送法で回収した。調査期間は,2018年3~4月であった。分析は,対象者の各年のHbA1c(NGSP)5.6%未満を低リスク群,5.6~6.0%未満を高リスク群,6.0~6.5%未満を境界群,6.5%以上を糖尿病群の4群に分類し,2010年と2016年のHbA1c値の比較において,より良い群に変化した者を「改善群」,同じ群であった者を「不変群」,より悪い群に変化した者を「悪化群」に分類した。HbA1c値の改善要因を検討するために「改善群」と「不変群」の2群に,また悪化要因を検討するために「悪化群」と「不変群」の2群に群分けし,Mann-WhitneyのU検定を行った。また,性別と年齢を調整して多重ロジスティック回帰分析を行った。
結果 2015年の豊川市,愛知県,全国の有所見率を比較した結果,豊川市のBMIおよび腹囲の有所見率はそれらと比較して低いが,HbA1cの有所見率は高かった。調査対象者3,252人のうち,回収数は1,969人(回収率:60.5%)であった。そのうち,すべての回答に欠損のない1,592人(男628人,女964人)を分析対象とした(有効回答率:80.9%)。男女別に改善群と不変群の2群に分けて食行動の特徴を検討した結果,改善群の男性は「揚げ物や油を控えている」と回答した者が多かった。他方,女性は有意な関連要因がなかった。HbA1c値の改善,悪化と食行動との関連を分析した結果,悪化要因は「太るのは甘いものが好きだからだと思う」「夕食の品数が少ないと不満である」,改善要因は「揚げ物や油を控えている」であった。
結論 豊川市国民健康保険加入者のHbA1c値の改善に関連する食行動として,揚げ物や油を控えることが関連しており,調理法の工夫や総菜の選び方等の提案を行う必要があると考えられる。体重が正常範囲であっても,体脂肪率が高いことが2型糖尿病の発症リスクと関連があるため,体重やBMIの肥満指標ではわからない,筋肉減少によるサルコペニア肥満者を把握するために健診に身体組成測定を加え,筋肉量増加の介入を行う必要があると考える。
キーワード 特定健康診査,HbA1c,国民健康保険加入者,食行動,豊川市