論文
第72巻第3号 2025年3月 施設長からみた相談員に期待する役割に関する実態調査-特養・地域密着型特養・老健へのアンケート調査から-口村 淳(クチムラ アツシ) |
目的 介護保険施設・事業所の施設長からみた相談員に期待する役割や課題について検討することを目的とする。
方法 A県内にある介護老人福祉施設(全157カ所),地域密着型介護老人福祉施設(全82カ所),介護老人保健施設(全85カ所)の施設長を対象に郵送調査を実施した。調査時期は,2023年7~8月,回収率は42.0%である。相談員に期待する役割(20項目)について6件法で尋ね,一元配置分散分析によって各施設間の平均値の比較を行った。自由記述については質的分析を行い,コード化を経てカテゴリーを生成した。さらに,施設種別ごとにコードの度数を集計した。
結果 「利用者の家庭復帰に向けた調整をすることができる」と「現場スタッフと管理者(上司)の意向を調整することができる」の項目において,3施設間の平均値に有意な差がみられた(p<0.01)。選択肢「とても期待する」の多寡では,3施設に共通して「空きベッドをスムーズに埋めるための調整ができる」が最上位であった。自由記述の分析の結果,27個のコードからなる7個のカテゴリー(利用者関連,家族関連,地域関連,経営関連,チーム関連,専門性関連,セルフマネジメント関連)が生成された。3施設とも専門性関連に含まれるコード数が最も多かった。
結論 施設長は相談員に対し,稼働率の維持・向上に資する期待が大きいのと同時に,利用者・家族のニーズや要望への適切な対応ができることを期待している傾向が明らかになった。相談員には,相談援助と施設経営の両方の視点が求められていた。また各施設の利用目的や使命,施設長のキャリアとの関係によって,期待する役割において施設種別により異なる項目のあることが明らかになった。3施設に共通する傾向として,相談員には,広範囲に対応できる専門性を備えた職種であることが期待されていると考えられる。
キーワード 介護老人福祉施設,地域密着型介護老人福祉施設,介護老人保健施設,施設長,生活相談員,支援相談員