論文
第72巻第3号 2025年3月 自治体提供のウォーキングアプリの
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目的 本研究は,自治体が健康推進事業として提供するウォーキングアプリの「ミッション」機能が利用者の歩数傾向を変えうるのかを検証することを目的とした。「ミッション」は一定の歩数達成を目標としたアプリ内で行われるイベントであり,本研究では,2022年11月に実施された「1カ月で5万歩」ミッション(以下,ミッション1)および12月に実施された「7日間で5万歩歩こう」ミッション(以下,ミッション2)を中心に,参加者と非参加者の歩数を比較した。
方法 2022年のアプリ利用者のうち,歩数記録と年齢・性別が得られた7,425名を対象とした。ミッション1およびミッション2では,それぞれのミッションを実施する前月にミッションに参加していない対象者を抽出し,ミッションへの「参加群」と「非参加群」に分けてミッション実施月とその前月の平均歩数の差分を共分散分析で検証した。
結果 全対象者の2022年の平均歩数は男性6,267.6歩,女性4,528.3歩であり,男性の方が女性より約1700歩多かった。ミッション参加状況では,参加群が非参加群に比べてミッション実施月もその前月も平均歩数が多い傾向が認められた。男性において,ミッション2は非参加群では実施月の平均歩数が前月に比べて減ったものの,参加群は実施月で歩数が増加しており,ミッションへの目標設定が参加者の歩行行動を促進させた可能性が示唆された。一方,女性では,ミッション参加群と非参加群間に有意な差はみられなかった。
結論 ウォーキングアプリ内のミッションは,男性において歩行行動を促進する可能性が示唆された。一方,女性においては同様の応答がみられなかったため,性別やライフスタイルに応じたミッション条件を設定する工夫が必要である。
キーワード モバイルアプリケーション,スマートフォン,モバイルヘルス,ウォーキング,歩数,身体活動