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論文記事:特定保健指導実施腹囲基準の男女差が保健サービス利用機会の格差に与える影響 202503-04 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第72巻第3号 2025年3月

特定保健指導実施腹囲基準の男女差が
保健サービス利用機会の格差に与える影響

 

野坂 友子(ノサカ トモコ) 森 雄一郎(モリ ユウイチロウ) 福間 真悟(フクマ シンゴ)

目的 特定健康診査・特定保健指導は,重要な公衆衛生課題である心血管病予防を目的として2008年から実施されている。特定保健指導対象判定に強く影響する健診項目に腹囲基準値(男性85㎝,女性90㎝)があるが,女性の腹囲基準該当者割合が男性に比べ少ないことが指摘されている。この腹囲基準によって,同程度の心血管病リスクを持つ男女間であっても,特定保健指導利用機会に差が生じている可能性を検討する。

方法 全国土木建築国民健康保険組合加入者のうち,2017年度の特定健診を受診した40~74歳の男女を対象とした。2013年に米国心臓病学会/米国心臓協会が発表したリスク予測モデルを用い,対象者の10年心血管病発症リスクを計算し,予測値が10%以上の者を心血管病高リスク者と定義した。特定保健指導対象外である,降圧薬,糖尿病薬,脂質異常症治療薬のいずれかを健診時点で内服済みの者,リスクモデル使用が不適切とされる検査値逸脱者(中性脂肪500㎎/dL以上),リスク予測に必要な健診項目が欠損している者は除外した。心血管病高リスク者の男女別に,現在特定保健指導で用いられている腹囲基準での特定保健指導対象者割合と,腹囲基準を75~100㎝,5㎝間隔で変化させた際の対象者割合について検討した。

結果 男性76,263名,女性33,388名の特定保健指導判定対象者が特定された。男性の平均年齢は51.3±7.7歳,平均腹囲は85.1±8.7㎝であり女性の平均年齢は51.4±7.6歳,平均腹囲は77.4±9.1㎝であった。うち,心血管病高リスク者は男性15,463名(平均腹囲87.2±8.7㎝),女性650名(平均腹囲82.7±9.6㎝)であった。心血管病高リスク者における特定保健指導対象者の割合は,現行の腹囲基準(男性85㎝,女性90㎝)では,男性58.5%に対し女性は20.2%であった。また,女性の腹囲基準を80㎝にした場合,対象者割合が63.8%となり現行の男性対象者における割合と近い値となった。

結論 現行の特定保健指導対象判定における腹囲基準を用いると,心血管病高リスクにおける特定保健指導対象者の割合は,男性が女性の2倍以上となり,保健サービスの利用機会に格差が生じていることが明らかになった。

キーワード 特定健診,特定保健指導,心血管病リスク,腹囲

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