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論文記事:高齢者における歯科健診受診と咀嚼困難感 202503-05 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第72巻第3号 2025年3月

高齢者における歯科健診受診と咀嚼困難感

-1自治体における米寿の訪問歯科健診事業の結果から-

古本 美栄(コモト ミエ) 豊川 智之(トヨカワ サトシ) 藤内 圭一(トウナイ ケイイチ)
染谷 吉彦(ソメヤ ヨシヒコ) 服部 幸應(ハットリ ユキオ)
古畑 公(フルハタ タダシ) 柳澤 幸江(ヤナギサワ ユキエ)

目的 オーラルフレイルの予防として高齢者歯科健診の拡充が議論の1つとなっている。本研究では,過去1年間における歯科健診受診と咀嚼困難感との関連について検討することを目的とした。

方法 1自治体による米寿(88歳)を迎えた高齢者の訪問歯科健診を受診した2019年度から2021年度までの587名を分析対象とした。咀嚼困難感の指標として,歯科健康診査票における「なんでもよく噛んで食べることができますか」という質問に対するはい・いいえの回答を用い,いいえと答えた者を咀嚼困難感ありとした。歯科健診受診(過去1年間にあり・なし)を含めた。分析は咀嚼困難感を従属変数とするロジスティック回帰モデルを用いた。

結果 分析対象のうち,女性が332名(56.6%)で,施設に居住する者が557名(94.9%),喫煙習慣を有する者が158名(26.9%)であった。また,脳梗塞・心筋梗塞・狭心症の罹患歴がある者は106名(18.1%),糖尿病の罹患歴がある者は64名(10.9%),過去1年での歯科健診受診あり357名(60.8%),残存歯数0本55名(9.4%),残存歯数1本以上20本未満248名(42.2%),残存歯数20本以上284名(48.4%)であった。そして,咀嚼困難感ありの者は88名(15.0%)であった。多変量解析による調整オッズ比で,施設居住0.25(95%CI(信頼区間):0.10-0.51),残存歯数20本以上0.39(95%CI:0.15-0.80),過去1年間で歯科健診受診あり0.64(95%CI:0.37-0.99)が咀嚼困難感ありと有意な関連がみられた。

結論 88歳の高齢者を対象とした訪問歯科健診事業の調査を基に,嚙みにくさ(咀嚼困難感)と歯科健診受診行動との関連について検討し,歯科健診受診ありの者に咀嚼困難感が少ないという予防的な関連がみられた。継続的な歯科健診が高齢者の口腔健康を維持するために有効である可能性を示唆しており,口腔機能の低下を防ぐための歯科健診を支持するものとなった。

キーワード 高齢者,歯科健診,口腔衛生,オーラルフレイル,咀嚼困難感

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