論文
第63巻第2号 2016年2月 特定健診結果とレセプトデータを利用した腹囲と平均年間医療費の関係について
船山 和志(フナヤマ カズシ) 飛田 ゆう子(トビタ ユウコ) 東 健一(ヒガシ ケンイチ) |
目的 生活習慣病予防対策事業の経済効果を簡易に推測することを目的に,特別な検査器具を必要としない腹囲測定値を用い,医療費との関係について検討したので報告する。
方法 全国健康保険協会神奈川支部から提供された横浜市内に在住する被保険者本人のうち,平成24年度の特定健診を受診した88,556人の健診結果と医科レセプトデータをもとに分析を行った。低体重と高度肥満者に該当しないものを分析対象とし,年齢を調整した腹囲ごとの平均年間医療費を推計し,男女別に単回帰分析を行った。
結果 男性では,回帰式はy=2688.8x-79078(R2=0.960),女性では,回帰式はy=2453.3x-52037(R2=0.876)となり,どちらも回帰式と回帰係数は統計的に有意(p<0.01)であった。
結論 本研究の分析対象者においては,腹囲と年齢調整した平均年間医療費推計値は正の相関があり,腹囲1㎝減少につき,男性で2,700円,女性で約2,500円の平均年間医療費が減少していた。ただ,今回の結果は単年度の限られた集団から得られたものであり,対象者の社会状況,経済状況や治療状況等,医療費に大きく影響を与えていると考えられる様々な要因については検討していないため,解釈にはそれらのことを考慮する必要がある。ただ,特別な検査器具を用いずに測定できる,腹囲を用いた経済効果の推測は,市町村の健康づくり教室などの現場で有用と考えられた。
キーワード 特定健診,全国健康保険協会,レセプトデータ,腹囲,医療費