論文
第63巻第2号 2016年2月 市町村における外部委託事業のマネジメントの実態-特定保健指導を例に-鳩野 洋子(ハトノ ヨウコ) 森 晃爾(モリ コウジ) 曽根 智史(ソネ トモフミ) 永田 昌子(ナガタ マサコ)前野 有佳里(マエノ ユカリ) 柴田 善幸(シバタ ヨシユキ) 小橋 正樹(コハシ マサキ) |
目的 保健事業を外部委託する際のマネジメント項目を明らかにしたうえで,特定保健指導の外部委託を例に,外部委託事業のマネジメントの実態を把握することを目的とした。
方法 第一段階として6自治体の保健専門職にインタビューを行い,抽出した項目について,インタビュー対象者に妥当性を尋ね,意見に基づき修正してマネジメント項目を作成した。第二段階として,平成25年4月1日現在の全市町村1,738(災害避難対策区域の自治体を除く)の統括的立場の保健師あてに質問紙を送付し,担当者に配布してもらうよう依頼した。質問内容は,マネジメント項目の実施状況(5件法),外部委託の実施方法・種別,自治体の属性である。
結果 マネジメント項目は38項目に整理された。質問紙調査は,954件の回答が得られ,このうち特定保健指導の外部委託を実施していると回答した対象のうち,外部委託の実施方法および外部委託の種別の回答に欠損がない404件を分析対象とした。外部委託の実施方法は,「部分委託」が75.2%で,種別は「公募型以外の随意契約」が78.0%だった。マネジメントの実施状況では,外部委託の検討段階や外部委託を準備する段階においてはマネジメントを実施している割合が高いが,委託事業者により事業が提供されている段階,評価の段階と進むにつれて実施割合が低くなっていた。
結論 特定保健指導の外部委託事業のPDCAサイクルが十分に回っていない実態が明らかになった。マネジメント項目のさらなる洗練とともに,保健師の外部委託事業のマネジメントに対する意識の啓発と,評価のスキルの向上,委託先の資源が少ない地域でのマネジメントのあり方が課題である。
キーワード 保健事業, 外部委託,マネジメント,特定保健指導,保健師