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論文記事:肺炎球菌ワクチン接種率の地域差と背景要因 201601-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第63巻第1号 2016年1月

肺炎球菌ワクチン接種率の地域差と背景要因

田代 敦志(タシロ アツシ)  菖蒲川 由郷(ショウブガワ ユウゴウ)
齋藤 玲子(サイトウ レイコ)  近藤 克則(コンドウ カツノリ)

目的 高齢者における中学校区別の肺炎球菌ワクチン接種率に関する調査を行い,接種率の背景要因について個人要因と環境要因の双方から実態を明らかにし,定期接種化された後に接種率の向上に必要な取り組みについて検討した。

方法 N市在住の65歳以上の住民を対象として,要支援・要介護認定を受けていない8,000名の高齢者に郵送法で無記名自記式アンケート調査を実施した。57中学校区別に接種率を求め,住民構成を調整した後の地域差を分析した。接種の有無に関連する個人要因についてロジスティック回帰分析に加え,中学校区別の相関分析,個人と校区別集団の2つのレベルでマルチレベル相関分析を実施し,さらに,クラスタ標準誤差を使ったロジスティック回帰分析を行い,集団レベルの環境要因の影響も加味して接種率の地域差を評価した。

結果 肺炎球菌ワクチンの接種率は13.5%(男性14.5%,女性12.5%)で,男性の方が若干高い値であった。年代別では,男女とも前期高齢者では10%以下であり,80~84歳では20%を超えていた。中学校区別の接種率では,5%以下の地域が4カ所ある一方で20%を超える地域も2カ所存在し,性別と年齢を調整した後においても有意(P<0.01)な接種状況の地域差が認められた。ロジスティック回帰分析の結果,ワクチン接種を促進する要因として,高い年齢(P<0.01),低い主観的健康感(P<0.05),呼吸器疾患あり(P<0.01)が認められた。相関分析で中学校区別の接種率と関連する要因は認めず,マルチレベル相関分析において個人レベルでのみ,高い年齢,低い主観的健康感,呼吸器疾患あり,短い教育年数が接種ありと有意に相関した(P<0.01)。また,地域レベルの変数を説明変数に加えクラスタ標準誤差を使ったロジスティック回帰分析において,環境要因として中学校区別の教育年数や所得格差は有意ではなく,個人レベルの年齢,主観的健康感や呼吸器疾患の有無とは異なり,ワクチン接種に与える影響は認められなかった。

結論 高齢で主観的健康感が優れず呼吸器疾患を持った住民が多い地域において,肺炎球菌ワクチンの接種率が高く,調査した範囲で接種の有無に環境要因の影響は認められなかった。また,健康リテラシーが高いと推定される教育年数が長い集団ほど接種率は低い傾向が認められたことから,ワクチンの有用性について広く啓発活動を実施し,現在の健康状態に過信することなくワクチン接種を推奨する取り組みが求められている。

キーワード 肺炎球菌ワクチン,接種率,個人要因,環境要因,クラスタ標準誤差

 

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