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論文記事:人口の少ない地域における訪問看護ニーズの実態 201601-02 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第63巻第1号 2016年1月

人口の少ない地域における訪問看護ニーズの実態

-訪問看護を利用できない地域に居住する要介護者の実態に焦点を当てて-
田口 敦子(タグチ アツコ) 吉澤 彩(ヨシザワ アヤ) 岩﨑 昭子(イワサキ アキコ)
鈴木 順一郎(スズキ ジュンイチロウ) 永田 智子(ナガタ サトコ)

目的 本研究では,訪問看護の提供のない地域を含む人口の少ない高知県安芸保健医療圏を対象地域とし,在宅において,「訪問看護が必要であるが訪問看護を利用していない要介護者(以下,潜在ニーズ)」がどの程度いるか,訪問看護事業所のない地域に住む要介護者の特徴,および訪問看護の必要がある要介護者がどのような状況において訪問看護を必要としているのかを明らかにすることを目的とした。

方法 本研究は,質問紙調査(定量調査)とヒアリング調査(定性調査)とを組み合わせて行う定性・定量相互融合法を採用した。定量調査では,安芸保健医療圏の住民が利用する全居宅介護支援事業所32カ所の介護支援専門員を対象に,郵送自記式質問紙調査を実施した。調査項目は,訪問看護の利用および必要性,居住する市町村,性別,年齢,要介護度,介護保険によるサービス利用等であった。定性調査では,訪問看護事業所のない地域にある居宅介護支援事業所17カ所のうち,経験年数10年以上のベテラン介護支援専門員がいる2カ所(3人)を対象に,ヒアリング調査を実施した。介護支援専門員が担当する「訪問看護が必要であるが,事業所がないために利用していない要支援・要介護者」7人について,「訪問看護の必要性がある要介護者がどのような状況において訪問看護を必要としているのか」を尋ねた。調査期間は2013年1~3月であった。

結果 定量調査では,1,621人(有効回答率:76.5%)を分析対象とした。そのうち,訪問看護の利用者は28人(1.7%)であった。また,潜在ニーズは,187人(11.5%)であった。訪問看護事業所がある地域2市村とない地域7市町村を比較したところ,潜在ニーズ187人のうち,訪問看護事業所のない地域に住む者は128人であり,訪問看護事業所のある地域に住む者は59人であった。訪問看護が必要な者における潜在ニーズの割合は,訪問看護事業所のない地域(96.2%)の方が,訪問看護事業所のある地域(73.8%)より有意に高かった(p<0.001)。また,定性調査によると,訪問看護事業所のない地域では,「病状の悪化を防ぐための生活習慣を継続することが難しい」「受診ができず必要な医療処置を受けられない」「本人・介護者の医療処置の習得や病状への判断が難しい」「24時間,医療ニーズに対応する介護者の負担が大きい」「継続性の見込めないボランタリーな支援に支えられている」「介護支援専門員が医療面の調整を担うのに負担が大きい」ことについて,訪問看護を必要とする療養状況があることが明らかになった。

結論 訪問看護事業所のない地域にも訪問看護ニーズが存在し,それらの療養状況は,医療処置や介護力不足の状況において訪問看護を必要としていることが明らかになった。これらのニーズに継続的に対応できる訪問看護サービス提供の仕組みを構築していくことが必要であると考える。

キーワード 訪問看護事業所,人口過疎,潜在ニーズ,提供体制,訪問看護,二次保健医療圏

 

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