論文
第63巻第1号 2016年1月 健常者と認知症者における手指機能と認知機能の性・年齢別変化坪井 章雄(ツボイ アキオ) 林 隆司(ハヤシ タカシ)大橋 幸子(オオハシ サチコ) 目黒 篤(メグロ アツシ) |
目的 健常者の手指機能は,加齢に伴い低下することが知られている。健常者と認知症者の手指機能と認知機能に関する研究は少なく,手指機能と認知能力の関連は報告されているものの,年齢別の検討は不十分である。本研究では,健常者と認知症者の認知機能と手指機能の変化について性別,年齢群ごとに比較検討した。
方法 45歳以上の健常者と認知症者に対して,認知機能の指標として改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)を,手指機能の指標としてIPU巧緻動作検査(Ibaraki Prefectural University Finger Dexterity Test:IPUT)を用いた。
結果 45~94歳の健常者670名(男性242名,女性428名),および45~102歳の認知症者917名(男性206名,女性711名)について,HDS-RとIPUTを測定した。HDS-RおよびIPUTの年齢群別平均値は健常者・認知症者ともに50歳代より徐々に低下する傾向が示された。認知機能および手指機能ともに加齢によって低下していたが,認知症者においては年齢との関連が小さくなっていた。
結論 健常者および認知症者ともに,全体としては認知機能の指標としたHDS-Rと手指機能の指標としたIPUTで有意な負の相関が示された。しかし,認知症者では健常者に比べ弱い傾向が示された。このことは,認知症者では疾病の重症化によりHDS-Rの個人差が大きくなるため,HDS-RとIPUTの関連が小さくなったと考えられる。
キーワード 健常者,認知症者,認知機能,ペグボード,手指機能