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論文記事:喀痰吸引に関わる訪問介護員と訪問看護師の協働の実際 201512-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第62巻第15号 2015年12月

喀痰吸引に関わる訪問介護員と訪問看護師の協働の実際

橘 達枝(タチバナ ミチエ) 吉田 浩子(ヨシダ ヒロコ)

目目的 社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正により,2012年4月から「介護職員等による喀痰吸引等実施のための制度」が施行され,地域包括ケアシステムに関わる介護職の医行為の実施には,訪問介護員と訪問看護師の連携の強化が必要とされるが,その実態は今だ不明である。そこで本研究は,介護職と看護職のより良い協働の在り方を検討するための新たな実証的知見を得ることを目的として,医行為を手がかりに都市部の在宅療養者の介護・看護を担う訪問介護員と訪問看護師の協働の実態を調査し,その結果からより効果的な協働の手法を検討した。

方法 2013年10月から12月に,首都圏A県の訪問介護員と訪問看護師各1,000人のうち,同意が得られた対象者に,無記名自記式質問紙調査を行った。対象の背景,改正法前後の喀痰吸引の状況,訪問介護員の喀痰吸引に対する意向,協働の経験・内容について,職種の関連を検討するため,χ2検定を用いて分析した。

結果 訪問介護員454人,訪問看護師361人(回収率:45.4%,36.1%)の回答から,誤記や無回答を除外し,訪問介護員194人,訪問看護師213人(有効回答率:19.4%,21.3%)の回答を分析対象とした。訪問介護員(n=194)において,喀痰吸引経験者の割合が同制度施行後に減少しており(同制度施行前9.3%,施行後は8.2%),訪問看護師(n=213)においても,訪問介護員の喀痰吸引を支援した経験がある者の割合が同制度施行後に減少した(施行前18.3%,施行後14.1%)。また,訪問介護員の喀痰吸引実施について肯定的な考え(やむを得ない・必要である)を表明した割合は,訪問介護員(56.2%)が訪問看護師(94.4%)に比べ有意に少なく,制度施行後の訪問介護員の喀痰吸引に対する姿勢は消極的であった。一方,両職種ともに約3割は,自分の家族の喀痰吸引の依頼先として,経験豊富あるいは認定を受けた訪問介護員を選択し,技術の習得により訪問介護員の医行為に対する抵抗感が緩和される可能性が示唆された。また,利用者宅で利用職種が偶然居合わせた場合は積極的に情報交換が行われていることがわかった。

結論 本調査結果から,訪問看護師が計画的に訪問介護員と利用者宅を同行訪問し,指導・支援することで訪問介護員の医行為の習得が可能になり,訪問介護員の医行為の実施促進につながる可能性が示唆された。実践の場で訪問看護師が訪問介護員の行う喀痰吸引等への教育・支援ができる協働の仕組み作りが現状の改善に有効である。

キーワード 訪問介護員,訪問看護師,医行為,協働,地域包括ケアシステム,都市部高齢化

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