論文
第62巻第15号 2015年12月 高齢者介護施設の介護職員の感染予防方法の実施状況と呼吸器感染症および感染性胃腸炎への罹患との関連佐々木 晶世(ササキ アキヨ) 佐久間 夕美子(サクマ ユミコ) 大竹 まり子(オオタケ マリコ)加藤 綾子(カトウ アヤコ) 叶谷 由佳(カノヤ ユカ) 佐藤 千史(サトウ チフミ) |
目的 高齢者介護施設での感染予防対策は重要であるが,介護職員の実際の感染予防方法の実施状況と介護職員自身の感染症罹患との関連についての報告はない。そこで,本研究は高齢者介護施設職員の感染予防方法(マスク・手洗い・うがい・エプロン)の実施状況と介護職員の呼吸器感染症および感染性胃腸炎への罹患との関連について調査することを目的とした。
方法 特別養護老人ホーム10施設に勤務する介護職員269名を対象とし,自記式質問紙調査を2012年6~7月に郵送法で実施した。調査項目は年齢,性別,経験年数,勤務しているフロア,インフルエンザワクチンの接種の有無と接種時期,通勤方法,定期的に立ち寄る場所,本人または家族のインフルエンザ罹患の有無と罹患した場合の対処方法,インフルエンザ以外に罹患した感染症(感染性胃腸炎や感冒等)の有無,手洗い・うがい・マスク着用を行う状況と方法,エプロンの使用頻度と洗濯回数とした。感染症罹患の有無と業務中の感染予防方法の実施状況との関連について,χ2検定および多重ロジスティック回帰分析で検討した。
結果 調査対象者269名中,217名から返送を得た(回収率80.7%)。感染症有の者の方が「下膳後」に手洗いをしていない者が多かった(p<0.05)。一方,うがいに関して,感染症有の者の方が「業務開始時」「フロア移動前」にうがいをしている者が多かった(p<0.05)。感染の有無でエプロン洗濯回数に有意差がみられ,感染症有の者はエプロンの洗濯回数が少なかった。感染症の罹患に関連する要因について,多重ロジスティック回帰分析を行った結果,「業務開始時のうがい」(OR[オッズ比]:4.13,95%CI〔95%信頼区間〕:1.07-15.95),「配膳時のマスク」(OR:12.11,95%CI:1.80-81.29)に有意差が認められた。
結論 高齢者介護施設の介護職員の感染症罹患に関連する要因として,業務開始時のうがいと配膳時のマスク着用が挙げられた。感染症罹患者の方が業務開始時のうがいと配膳時のマスク着用を行っていたことから,感染症罹患の経験により,業務開始時のうがいおよび配膳時のマスク着用といった感染予防方法につながった可能性が示唆された。
キーワード 高齢者介護施設,介護職員,感染,手洗い,うがい,マスク