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論文記事:超高齢団地の居住者が抱える生活上の不安・困難と支援課題 201512-05 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第62巻第15号 2015年12月

超高齢団地の居住者が抱える生活上の不安・困難と支援課題

-全戸調査の自由記述回答分析-
佐藤 惟(サトウ ユイ) 児玉 桂子(コダマ ケイコ)
菱沼 幹男(ヒシヌマ ミキオ) 大島 千帆(オオシマ チホ)

目的 全国平均を大幅に上回るスピードで高齢者世帯と単身世帯の増加する大規模団地において,居住者自身が感じている様々な生活ニーズを明らかにすることで,年齢・居住年数・経済階層など多様なバックグラウンドを持つ人々が,共に支え合い暮らしていくために必要な地域生活支援の手掛かりを得ることを目的とした。

方法 2013年12月1日から20日にかけて,団地の全居住者を対象に実施したアンケート調査の自由記述回答を分析した。はじめにKH Coderを用いた計量テキスト分析から頻度分析を行い,データの大まかな全体像を明らかにした上で,出現頻度の高い言葉を中心に,回答内容を精査した。さらに,性別,住居形態,居住年数,年齢などの外部変数に着目し,各属性別に言及率の高い言葉についても抽出を行った上で,自由記述回答の原文を参照しながら考察を行った。

結果 3,100世帯に調査票を配布し,白紙等を除き1,002件(32.3%)の回答を得た。分析の結果,「高齢」「一人」「不安」「エレベーター」「階段」等の言葉が,上位に抽出されていた。このほか,「団地内」「自治会」「活動」「参加」といった身近な地域のことに関する言葉は,居住年数が10年未満の比較的新しく入居してきた層や40代以下の若年世代,60代の定年を迎える世代で言及率が高く,「家賃」「年金」といった経済的内容は賃貸部分の居住者による記述が多い傾向にあった。階段昇降の負担やエレベーターの設置を訴える声では,買い物や荷物の運搬が困難であることへの言及が多かった。将来的な地域活動への参加意向や,地域レベルでの協力体制,近隣とのより密な交流を望む声が多数聞かれる一方,世代や居住年数による感覚の違いなどから,近所付き合いに難しさを感じる者も多い様子がうかがえた。

結論 一人暮らしの者が増え緊急時等への不安が増している一方,住民による支援意識も高まっている。特に比較的最近になって入居した者や,仕事を退職した者への呼びかけを強化することが,居住者の地域参加を促す上で有効な支援策となる可能性がある。また,分譲に比べ賃貸居住者では経済的な不安を述べている者が多く,地域住民との関係をとり結び,助け合い活動を喚起するためには,様々な所得階層の者が集う「ミクストコミュニティ」を目指す必要性が示唆された。

キーワード 団地,生活ニーズ,地域生活支援,自由記述,計量テキスト分析

 

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