論文
第62巻第15号 2015年12月 医薬品と特定保険医療材料(医療機器)の
野田 龍也(ノダ タツヤ) 田倉 智之(タクラ トモユキ) 中村 哲也(ナカムラ テツヤ) |
目的 医薬品と特定保険医療材料(医療機器)の価格決定に関する定量的な手法を検討した。
方法 医療用医薬品の保険償還価格(薬価)における原価計算方式の「営業利益率」の補正率,および特定保険医療材料の支給に要する保険償還価格(基準材料価格)における類似機能区分比較方式の「画期性・有用性加算」と「改良加算」の加算率について,チェックリスト形式の定量化基準を作成した。作成にあたっては,過去の算定事例との整合性に留意しつつ,専門家による妥当性の検討を加えた。
結果 薬価の原価計算方式については,原価計算方式により薬価が算定された42品目について加算的または減算的補正の定量化基準を構築し,補正率は-50~100%の範囲となった。この補正率算出のルールに従って算出した補正率と,実際に適用された補正率の差はおおむね±10%の範囲内に収まった。基準材料価格の類似機能区分比較方式については,画期性加算および有用性加算,改良加算について加算要件の定量化基準を構築した。特定保険医療材料74件につき,本研究の方式による加算率と過去の実際の加算率を比較したところ,加算率の分布状況は5割以上が一致する傾向にあった。特定保険医療材料においては,製品の多様性や術者による効果の違い,長期的な耐久性など,医薬品にはない特性があり,これらの特性を定量化基準に盛り込むこととなった。
結論 本研究では,薬価および基準材料価格の算定ルールに基づき,個別の新製品が一定の加算または減算の対象に該当すると判断された場合に,その細分化した要件項目への該当/非該当をチェックシート形式により確認することで補正率(%)が一意に定まる定量化基準を提案した。これらの定量化基準を利用することで,薬価および基準材料価格について,予見性や透明性の高い補正ルールの運用が可能となると考えられる。
キーワード 薬価,基準材料価格,定量化基準,原価計算方式,類似機能区分比較方式