論文
第62巻第13号 2015年11月 日本人高齢者の孤食と食行動およびBody Mass Indexとの関連:
谷 有香子(タニ ユカコ) 近藤 克則(コンドウ カツノリ) 近藤 尚己(コンドウ ナオキ) |
目的 日本人高齢者の孤食と食行動およびBody Mass Indexとの関連を世帯状況ごとに検討することを目的とした。
方法 JAGES(日本老年学的評価研究)のデータのうち,食事状況の質問項目が含まれ,かつ除外基準に該当しない65歳以上の男性38,690人および女性43,674人を対象とした。食事状況,世帯状況,身長・体重等を自記式質問票で調査した。世帯状況は同居または独居,食事状況はひとりで食事をしている(孤食)または他者と食事をしている(共食)の2区分とした。ポアソン回帰分析を用い,食行動(欠食,野菜・果物の低摂取頻度)とBody Mass Index(BMI:肥満,過体重,低体重)について年齢,教育歴,等価所得,疾病の有無,残存歯数を調整したAdjusted-Prevalence Ratio(APR)および95%信頼区間を算出した。
結果 同居群では男性5.1%,女性7.9%が孤食であったのに対し,独居群では男性87.9%,女性81.7%が孤食であった。世帯状況で層化して解析した結果,孤食が食行動に与える影響は独居群よりも同居群において大きい傾向が認められた。世帯と食事状況で4群に分けて解析した結果,同居かつ共食群と比較すると,男性では独居かつ孤食群でのみ肥満(BMI>30.0㎏/(m)2以上)が有意に多いのに対し,女性では同居かつ孤食群で有意に多かった。一方,同居かつ共食群と比べると,男性のみ世帯に関わらず孤食と低体重(BMI<18.5㎏/(m)2)との有意な関連が認められた。
結論 男性では独居で孤食であること,女性では同居で孤食であることが不適切な食行動(欠食,野菜・果物の低摂取頻度),肥満,低体重のリスクが高い可能性が示唆された。高齢化に伴う世帯状況の変化に介入することは困難であるが,家族や友人,近隣の人をまきこんで共食を進めることが高齢者の食行動や体重管理に効果的かもしれない。
キーワード 孤食,欠食,野菜・果物摂取,肥満,低体重