論文
第62巻第13号 2015年11月 中高年男性における禁煙後の体重変化が
道下 竜馬(ミチシタ リョウマ) 松田 拓朗(マツダ タクロウ) 清永 明(キヨナガ アキラ) |
目的 本研究では,中高年男性における禁煙後の体重変化がメタボリックシンドロームの危険因子に及ぼす影響について検討した。
方法 2008年に特定健康診査を受診し,喫煙習慣があり5年間追跡可能であった男性66名を対象とした。本研究では,2009年の特定健康診査において禁煙が達成でき,2013年まで禁煙を継続できた者のうち,2009年の体重が2008年の体重よりも増加した者を体重増加群(n=10,平均年齢55.9歳,体重66.5㎏),体重が維持・低下していた者を体重維持・低下群(n=12,平均年齢53.1歳,体重66.3㎏)とし,2008年から2013年まで喫煙を継続した者を喫煙継続群(n=44,平均年齢53.3歳,体重65.1㎏)とした。LDL-コレステロール,HDL-コレステロール,中性脂肪,空腹時血糖,ヘモグロビンA1c(HbA1c),身長,体重,腹囲,安静時血圧を測定し,3群間におけるベースライン時と1年後,5年後の各危険因子の変化について検討した。
結果 追跡1年後,いずれの群においても各危険因子の有意な変化は認められなかったが,体重増加群は体重維持・低下群,喫煙継続群に比べて体重,腹囲の変化量が有意に大きかった(p<0.05)。追跡5年後の結果,体重増加群,体重維持・低下群ともにベースライン時に比べて各危険因子の有意な差は認められなかったものの,喫煙継続群では収縮期血圧,HbA1cが有意に増加し(p<0.05),HDL-コレステロールが有意に低下した(p<0.05)。また,喫煙継続群は体重増加群,体重維持・低下群に比べて収縮期血圧,HbA1c,HDL-コレステロールの変化量が有意に大きかった(p<0.05)。各群における体重の変化量と各危険因子の変化量との関係について検討したところ,腹囲を除く危険因子との間には有意な相関関係は認められなかった。
結論 本研究の結果より,禁煙に伴い一時的に体重が増加することがあるが,長期的には禁煙することによってメタボリックシンドロームのリスクを軽減させることが可能であるため,禁煙が達成できるよう支援する必要があると考えられる。
キーワード 禁煙,体重変化,メタボリックシンドローム危険因子,特定健康診査