論文
第62巻第12号 2015年10月 大都市圏の高齢単身世帯における
中島 民恵子(ナカシマ タエコ)中西 三春(ナカニシ ミハル) |
目的 本研究は,65歳以上の単身世帯(以下,高齢単身世帯)のうち,調査時点で在宅生活を継続している要介護高齢者と施設等へ移行した要介護高齢者の比較を通して,高齢者が在宅生活から施設等に移行する要因を明らかにすることを目的とした。
方法 大都市圏の6つの自治体の居宅介護支援専門員を対象に,担当している事例に関する質問紙調査を実施した。分析に使用する変数すべてに回答があった在宅継続224事例,施設等移行82事例を対象に,在宅継続か否かの種別を従属変数とするロジスティック回帰分析を行った。
結果 在宅継続の事例(以下,継続事例)の男性の割合は27.7%と施設等移行の事例(以下,移行事例)の35.4%に比べると低く,要介護高齢者本人のADLの自立度,認知症自立度については継続事例の方が良い状態であった。サービス利用に関しては,支給限度額割合は継続事例が74.1%と移行事例の66.8%と比べると高い一方,家族による身体介護の月間実施数は移行事例が6.7回と継続事例の3.8回に比べて高い状況であった。在宅継続意思は,本人の意思および家族の意思に関しては「あり」は継続事例が89.7%,51.8%と移行事例(65.9%,30.5%)よりも高かった。ロジスティック回帰分析の結果,要介護高齢者本人が男性であり,ADLの自立度が低く,認知症自立度が低く,本人および家族の在宅継続意思が低い方が施設等移行に該当しやすく,介護保険利用の支給限度額に対するサービス費用の比率が高い方が在宅継続に該当する傾向がみられた。
結論 本研究では,高齢単身世帯の要介護高齢者の施設等の移行の要因について,本人,家族,サービス(環境)の側面から明らかにした。さらに都市部において増加が見込まれる高齢単身世帯の自宅での生活支援のあり方に関する検討に貢献するものである。今後はパネル調査等を通して,在宅の継続のプロセスや規定要因等も詳しく検討していくことが望まれる。
キーワード 高齢単身世帯,要介護高齢者,在宅継続,施設・病院移行