論文
第62巻第12号 2015年10月 小児科標ぼう医不在町村における
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目的 小児科標ぼう医不在町村における小児保健事業の実施方法については,十分な知見がない。これまで,筆者は北海道内の小児科標ぼう医不在53町村について調査を行った結果,多くの町村が乳幼児健診は集団健診,予防接種は個別接種として実施していることが明らかになった。今回の研究では,調査対象を全国の小児科標ぼう医不在町村に拡大し,乳幼児健診や予防接種の実施方法を明らかにする。さらに,これらの町村における乳幼児健診受診割合,健診における異常判定割合および予防接種割合を小児科標ぼう医がいる市町村と比較する。
方法 各市町村における小児科標ぼう医の有無は,平成22年医師・歯科医師・薬剤師調査によった。小児科標ぼう医がいない町村における乳幼児健診および予防接種の実施方法,担当する医師の標ぼう診療科および医師の派遣元について,各町村の母子保健部局にアンケート調査を行った。また,乳幼児健診および予防接種の対象者数,受診・接種者数,ならびに乳幼児健診における異常判定割合は,平成23年度地域保健・健康増進事業報告から引用した。
結果 乳幼児健診は,ほとんどすべての町村が集団健診を実施しており,約7割の町村が外部の医療機関から小児科医(主たる小児科標ぼう医)の派遣を受けていた。一方,三種混合,ポリオおよび麻しん・風しんワクチンは,約8割の町村が個別接種を行っていた。しかし,担当する医師の診療科を小児科標ぼう医に限定する町村は集団接種・個別接種ともに約3割であった。各市町村の1歳6カ月児健診や3歳児健診の受診割合は,小児科標ぼう医の有無で大きな差異を認めなかったが,1歳6カ月児健診における異常判定割合は小児科標ぼう医不在町村でわずかに低かった。また,小児科標ぼう医不在町村の平成23年度における接種割合は,標ぼう医のいる市町村と比べて,三種混合ワクチン1期追加やポリオワクチン2回目では低く,麻しん・風しん2期ではわずかに高い傾向がみられた。
結論 小児科標ぼう医のいない町村の多くは,乳幼児健診については集団健診を実施し,小児科標ぼう医の派遣を他の市町村から受けていた。一方,予防接種では各医療機関に個別接種を委託し,担当医を小児科標ぼう医に限定している町村は少なかった。乳幼児健診の受診割合は標ぼう医がいる市町村と比べて大差がないが,予防接種割合については三種混合,ポリオワクチンでは低く,麻しん・風しんワクチンではわずかに高い傾向が認められた。
キーワード 小児科標ぼう医,乳幼児健診,予防接種,医師不足,小児保健事業