論文
第62巻第11号 2015年9月 ホームヘルパーの楽観的態度に関連する要因の検討-構造方程式モデリングを用いて-広瀬 美千代(ヒロセ ミチヨ) |
目的 在宅介護においてホームヘルパーへのニーズは年々高まる一方であるが,その業務は個別性が高く,より複雑で柔軟な対応が求められる。本研究においては,このようなことをかんがみ,業務を楽観的に捉え,ストレスフルな状況をプラスに変えていけるような態度や価値観にはどのような要因が関連しているのかに関して検討することを目的とした。
方法 A県内の訪問介護事業所から無作為抽出した600人を対象とする自記式郵送調査を行った。有効回収数は149通,有効回収率は24.8%となった。質問項目はホームヘルパーの「介護業務において感じる困難性を肯定的,楽観的に解釈する態度,および人生における価値や学びを見いだす姿勢」を測定する尺度である「ヘルパー業務楽観的態度」15項目,性別,年齢,最終学歴,研修への自主的な参加の有無,ヘルパー業務継続に対する意識であった。統計分析においては「ヘルパー業務楽観的態度」について,「困難の楽観的解釈」「人生における利得感」「自己成長感」を潜在変数とする3因子2次因子モデルを設定し,確証的因子分析を行った。また,構造方程式モデルを用いて適合度と各変数間の関連性を確認した。
結果 欠損値のない131人のデータを用いて,「ヘルパー業務楽観的態度」に対して確証的因子分析を実施した結果,統計学的な水準を満たし,構成概念妥当性が支持された。また尺度のCronbachのα係数はすべての因子において0.855以上を示した。さらに「ヘルパー業務楽観的態度」と「最終学歴」「研修への自主的な参加の有無」「ヘルパー業務継続に対する意識」の間には,有意な関連が確認された。
結論 本尺度はホームヘルパーの利用者に対する支援や業務で起こりうる出来事に対して取り組む際の肯定的な見方や楽観的態度を測定する尺度として十分な妥当性と信頼性を有しているといえる。また,自発的に学ぶ姿勢があると研修参加によって獲得することが多く,そのような視点で業務を遂行することで困難状況にあっても楽観的なあるいは柔軟的な解釈や態度が身につくと予測される。さらに業務継続に対する強い意志があるとこのような楽観的態度が養われていくのではないかと考える。今後の課題としては因果関係の明瞭さを高めるため,質問項目を吟味し,調査を拡大して実施することが求められる。
キーワード ホームヘルパー,楽観的態度,肯定的側面,自己成長,研修参加,仕事継続意識