メニュー

論文記事:医師の大幅な増員を仮定した場合の将来の医師数 201508-03 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

m header btn

一般財団法人 厚生労働統計協会

サイトポリシープライバシーポリシー

pmark     お問い合わせ

論文

論文

第62巻第8号 2015年8月

医師の大幅な増員を仮定した場合の将来の医師数

-女医の増加とその就業率に着目して-
園田 智子(ソノダ トモコ) 森 満(モリ ミツル)

目的 近年,医師不足が問題化してきたが,医師数が現状維持でも,長期的にみると医師不足は解消されるという報告がなされてきた。医学部新設などによって,今後恒常的に医師が増員された場合に,医師は供給過剰に陥ってしまうのか。そのかぎを握るのは女性医師の増加であると考えられる。そこで,男性医師と女性医師の年齢別死亡率と就業状況の違い,将来の人口の減少を考慮して,医師が大幅に増員された場合の将来の医師数を予測した。

方法 1980年から2060年までの10年ごとの男女別・年代別の医師数を求めた。国家試験合格者が,現状とほぼ同じく毎年9,070人の場合と,医学部新設または定員増により2030年以降,毎年最大10,000人の場合について,それぞれについて将来の医師数を予測した。国家試験合格者に占める女性の割合を35%と40%に設定した。さらに,年齢・性別の就業率の違いで修正した医師数も算出した。

結果 医師の増員がなければ,2060年の人口10万人当たり医師数は454.1~454.8人,全医師数に占める女性の割合は38.5~43.6%となる。2010年と比較して,男性医師数は変化なし,またはやや減少し,女性医師数は2.7~3.1倍となる。医師を増員して2030年以降に毎年10,000人の医師が誕生すると仮定すると,2060年の人口10万人当たり医師数は489.0~491.6人,全医師数に占める女性の割合は約38.0~43.4%となる。男性医師数は1.1倍に微増,または変化なし,女性医師数は2.9~3.3倍となる。医師の増員の有無に関わらず,60歳以上の女性医師は8~9倍に増加する。男女別・年代別の就業率の違いで医師数を修正すると,毎年10,000人の医師が誕生した場合でも2060年の医師数は2010年の1.4倍である。

結論 医師の増員の有無にかかわらず,①60歳以上の女性医師の増加が著しい,②男性医師数は横ばい,またはやや減少する,③人口10万人当たり医師数は日本の人口の減少によって2050年以降に増加率が増すが,受療率の高い高齢者の増加によって患者数は増えるため,患者当たりの医師数が増加するとは限らない。毎年10,000人の医師が誕生すると,④医師数はかなり増加するが,その主な増加分は女性である,⑤女性と高齢医師の就業率の低さのため,実際に就業する医師の増加は緩やかである。

キーワード 医師増員,医師数予測,女医,就業率

論文