論文
第62巻第7号 2015年7月 介護サービス情報公表システムを用いた
小島 愛(コジマ メグミ) 大久保 豪(オオクボ スグル) |
目的 本研究の目的は介護サービス情報公表システムの運営状況チェック項目のうち,実施割合の低いものを明らかにすること,そして他者視点での評価(利用者アンケートや第三者評価)の実施状況を明らかにした上で,実施割合の低い項目との関連を明らかにすることとした。
方法 2014年4月から5月にかけて,介護サービス情報公表システムから岐阜県の高齢者入所施設の情報を収集した。調査対象の施設は介護老人福祉施設(以下,特養)114施設,介護老人保健施設(以下,老健)67施設の計181施設とした。調査対象の項目は,事業所の詳細および運営状況に掲載されているチェック項目とした。運営状況チェック項目について項目ごとの実施割合を計算し,50%未満であった項目を抽出した。ここで抽出した項目について,入所者アンケート実施の有無および第三者評価実施の有無とのクロス集計を行い,Fisherの直接確率検定を行った。
結果 入所者アンケートを行っていたのは84.5%,第三者評価を行っていたのは12.2%であった。運営状況チェック項目149項目のうち,102項目は実施割合が80%以上であった。実施割合が50%未満の項目は「成年後見制度又は日常生活自立支援事業を活用した記録がある」(入所者アンケートの有無による違いp=0.098;第三者評価の有無による違いp=0.005),「食事の開始時間を選択できることが確認できる」(0.665;0.096),「食事の場所を選択できることが確認できる文書がある」(1.000;0.008),「地域の研修会に対する講師派遣の記録がある」(0.071;0.133),「介護相談員又はオンブズマンとの相談,苦情等対応の記録がある」(0.013;0.171),「第三者委員との会議記録がある」(0.628;0.002),「地域の消防団,自治体等との防災協定書がある」(0.837;0.256),「自ら提供するサービスの質について,自己評価を行った記録がある」(0.536;0.037),「介護及び看護の記録について,利用者又はその家族等に対する報告又は開示を行った記録がある」(0.319;0.298),「精神的ケアに関する従業者研修の実施記録がある」(0.047;0.075),「在宅で療養している要介護者が緊急時に入所することについて記載があるマニュアル等がある」(0.259;0.356),「在宅で療養している要介護者が緊急時にショートステイを利用することを定めている文書がある」(0.281;0.318)であった。
結論 運営状況チェック項目のうち,実施割合が50%未満のものは12項目あり,一部の項目では入所者アンケートや第三者評価といった他者視点での評価を行っている施設で実施割合が高くなっていることも示唆された。
キーワード 介護の質,高齢者入所施設,質の向上,介護保険