論文
第62巻第6号 2015年6月 孤独感による自殺死亡と同居人の有無の関連平光 良充(ヒラミツ ヨシミチ) |
目的 孤独感を原因・動機とする自殺死亡と同居人の有無の関連について,性・年齢別に明らかにすることを目的とした。
方法 自殺統計原票データを内閣府において特別集計した結果を分析に使用した。分析対象は,2009~2011年における自殺死亡者とし,自殺の原因・動機として「孤独感」が選択された者を孤独感による自殺死亡と定義した。自殺死亡率は,2009~2011年における自殺死亡数を2010年国勢調査人口の3倍で除して算出した。自殺死亡率比は,同居人の状況が「なし」の者(以下,独居群)の自殺死亡率を,「あり」の者(以下,同居群)の自殺死亡率で除した比として算出した。
結果 2009~2011年における自殺死亡数は男性65,879人,女性28,310人であり,そのうち孤独感による自殺死亡数は男性1,186人,女性627人であった。独居群では,男女とも,年齢が高くなるにつれて孤独感による自殺死亡率が上昇していた。一方,同居群では,孤独感による自殺死亡率は80歳未満では年齢による明らかな変化はみられなかったが,80歳以上では上昇していた。独居群,同居群ともすべての年齢において,男性の方が女性より孤独感による自殺死亡率が高かった。孤独感による自殺死亡率比は,男性では70~79歳,女性では60~69歳で最大であり,70歳以上では男性の方が女性より大きかった。
結論 独居は,性・年齢に関わらず孤独感による自殺死亡の危険因子であり,その影響は70歳以上では男性の方が女性より大きい可能性が示唆された。また,独居群,同居群ともに高齢者では孤独感による自殺死亡率が上昇していることから,同居人の有無に関わらず高齢者の孤独感の解消を行うことが自殺対策として必要になると考えられた。
キーワード 自殺死亡,孤独感,同居人,自殺統計原票