論文
第62巻第4号 2015年4月 要介護認定における主治医意見書の医療機関別の分布森山 葉子(モリヤマ ヨウコ) 田宮 菜奈子(タミヤ ナナコ) 宮下 裕美子(ミヤシタ ユミコ)中野 寛也(ナカノ ヒロヤ) 松田 智行(マツダ トモユキ) |
目的 要介護認定における主治医意見書の医療機関区分別の実態およびその特徴を明らかにすることを目的とした。
方法 東京都文京区で2012年3月の介護認定審査会において審査された,申請者が65歳以上であり,主治医意見書が医療機関所属の医師により記載されており,かつ現在の状況が居宅である598件の主治医意見書および介護認定審査会資料を対象とした。これらの個人情報(氏名,住所等)がマスクされた資料をもとに,主治医意見書が記載された医療機関区分別の分布および申請者の属性,さらに医療機関区分別主治医意見書の記載の有無やチェック項目の数等の特徴を分析した。
結果 医療機関区分別の分布は,診療所が53.7%,特定機能病院が13.7%,200床以上の一般病院が13.4%,200床未満の一般病院は10.7%,療養病床のある病院は6.4%であった。記載内容では,診療所および療養病床のある病院に比べ,200床未満の一般病院では自由記述の欄における未記載が多かった。また,特定機能病院および一般病院では,投薬の有無,身長・体重,特記事項等の自由記述の記載のみならず,チェックをする項目数も,少ない傾向にあった。
結論 本研究より,当該対象地域において主治医意見書の記載が最も多かった医師の所属は診療所であったが,2番目に多いのは特定機能病院であり,高度な医療を求められる特定機能病院や大規模な一般病院においても一定割合で主治医意見書が記載されていることが明らかとなった。診療所および療養病床のある病院の医師により記載された主治医意見書は,他医療機関の医師に比べ記載が充実していた。また,これらの医療機関では,作成回数が1回目より2回目以降が多く,継続した診療を通じて申請者の日常の生活状態を把握した上で主治医意見書に記入をしていることがうかがえた。200床未満の一般病院は地域医療の中心的役割を果たす病院も存在すると考えられるが,自由記述欄の未記載が多かった。特定機能病院と200床以上の一般病院では未記載項目が多く,その理由の1つとして,高齢者の日常生活を含めた状態の把握ができていない可能性が示唆された。介護保険における主治医の役割分担および住民の大病院志向に対して,医療機関選択に関する教育の検討が必要であると考える。
キーワード 主治医意見書,要介護認定,介護保険,医療と介護の連携,主治医