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論文記事:一人暮らし高齢者における他者への信頼と互酬性に関する個人の認識と健康との関連 201504-02 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第62巻第4号 2015年4月

一人暮らし高齢者における
他者への信頼と互酬性に関する個人の認識と健康との関連

-世間一般と居住地域に対する認識のかい離に着目して-
長谷部 雅美(ハセベ マサミ) 小池 高史(コイケ タカシ) 深谷 太郎(フカヤ タロウ)
野中 久美子(ノナカ クミコ) 小林 江里香(コバヤシ エリカ) 西 真理子(ニシ マリコ)
村山 陽(ムラヤマ ヨウ) 鈴木 宏幸(スズキ ヒロユキ) 藤原 佳典(フジワラ ヨシノリ)

目的 他者への信頼や互酬性に関する個人の認識を高め,地域の認知的ソーシャルキャピタルを醸成するには,個人の認識の特徴を詳細に把握することが重要である。そこで本研究では,一人暮らし高齢者を対象に「一般他者への信頼と互酬性」および「居住地域への信頼と互酬性」に関する認識の度合いにおいてかい離があるのか,かい離がある群(ない群)は諸特性や健康との関連においてどのような特徴があるのかを明らかにした。

方法 2011年9月に,東京都大田区A地区の一人暮らし高齢者2,569名を対象に,郵送による質問紙調査を実施した。分析対象者は,実質独居で信頼と互酬性の設問にすべて回答した980名(38.1%)とした。分析では,一般他者と居住地域への信頼(互酬性)が両方高いA群,一般他者の方が高いB群,居住地域の方が高いC群,両方が低いD群を設定した。分析手順は,4群の構成比率を算出し,各群と諸特性との関連をχ2検定(性別,暮らし向き,教育歴,居住形態,孤立状況),多重比較(年齢,居住年数),Kruskal-Wallis検定(老研式活動能力指標)を用いて検討した。個人の認識と健康指標との関連は,4群を独立変数,主観的健康感と日本語版WHO-5を従属変数とするロジスティック回帰分析を行った。

結果 個人の認識にかい離があった人は,信頼で16.7%,互酬性で16.6%であった。A群は,D群に比べて高次生活機能が自立,社会経済的地位が高く,孤立の割合が低いという特徴が示された。B群はD群に比べて高次生活機能が自立,C群は他の3群に比べて居住年数が長く,高次生活機能がA群・B群よりも低下していた。D群を基準カテゴリとしたロジスティック回帰分析(すべての諸特性を調整)の結果,主観的健康感の良好さに対する各群のオッズ比はすべて統計的に有意ではなかった。一方,WHO-5の良好さに対しては,A群のオッズ比が信頼で2.03(95%信頼区間1.33-3.10,p=0.001),互酬性で1.79(95%信頼区間1.18-2.72,p=0.007)であった。

結論 個人の認識にかいり離があった人の割合が少ないという結果は,加齢と共に生活圏が縮小するため,一般他者と居住地域への認識が一致する傾向にあることを示唆する。また,一般他者と居住地域への信頼と互酬性が両方高いことが生活状況や精神的健康の良好さと関連する一方で,居住地域への互酬性の高さが主観的健康感の良好さと関連する可能性も示唆された。そこで,一人暮らし高齢者においては,健康維持や孤立予防のために,社会参加等を通じた地域互酬性の醸成が求められる。

キーワード 認知的ソーシャル・キャピタル,信頼,互酬性,一人暮らし高齢者,主観的健康感,日本語版WHO-5

 

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