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論文記事: 東日本大震災における避難場所の違いによる生活習慣の実態と電話支援の取り組みについて 201503-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第62巻第3号 2015年3月

東日本大震災における避難場所の違いによる
生活習慣の実態と電話支援の取り組みについて

-福島県「県民健康管理調査」-
堀越 直子(ホリコシ ナオコ) 大平 哲也(オオヒラ テツヤ) 結城 美智子(ユウキ ミチコ)
矢部 博興(ヤベ ヒロオキ) 安村 誠司(ヤスムラ セイジ)
県民健康管理調査 平成23年度「こころの健康度・生活習慣に関する調査」グループ

目的 福島県立医科大学では,県からの委託を受け,東日本大震災後の原子力発電所事故に伴う放射線の健康影響を踏まえ,将来にわたる県民の健康管理を目的として平成23年度から「県民健康管理調査」を実施している。そのうち,同年の「こころの健康度・生活習慣に関する調査」回答者で,生活習慣関連の支援の必要があると判断された者に,状況確認,助言および医療機関につなぐことを目的に,保健師・看護師等による電話支援を行った。

方法 国が指定した避難区域等の13市町村の住民(区分:一般)180,604人を対象とした。電話支援の選定基準は,睡眠障害,高血圧,または糖尿病の診断を受けたが通院していない者,自覚症状が災害後悪化した者,多量飲酒が認められる者とした。

結果 有効回答数73,433人(女性56.0%,県外避難者19.1%)のうち,生活習慣支援候補者は68,785人であった。そのうち,電話支援対象者は2,882人(4.2%)で,女性は54.0%であった。また,県外避難者は,県内避難者に比べ,電話支援の選定基準に該当する項目数が有意に多く(オッズ比(OR)=1.36,p<0.001),また,「睡眠障害」(OR=1.75,p<0.001)および「自覚症状」(OR=1.44,p<0.001)のある者が有意に多かった。電話支援対象者のうち,電話番号の未記載や留守等910人(31.6%)を除く,1,972人(68.4%)に電話支援を実施した。支援の結果,受診勧奨または,健康相談等をした者の割合は,県外避難者が41.3%で,県内避難者31.5%に比べて有意に多かった(p<0.001)。

結論 県外避難者は,県内避難者と比べ電話支援対象者に該当する割合が多く,避難生活が生活習慣に影響している可能性が考えられる。また,県外避難者は,「睡眠障害」に該当する者の割合が多く,震災後早期より睡眠状況を把握し,良好な睡眠を確保できるよう助言をし,適切な支援につなげることの意義は大きい。アクセスしやすい電話支援は,避難場所を問わずに状況確認や健康相談を実施することができ,広域にまたがる避難の場合,有用な支援方法の一つと考えられた。ただし,本調査で実施した電話支援は,調査票の回答があった者のみに限定している。そのため,今後,健康づくり等に資する活動を推進していくうえで,市町村との連携を強化していくことが必要であると考える。

キーワード 東日本大震災,避難,生活習慣,支援,睡眠,危険因子

 

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