論文
第62巻第3号 2015年3月 疾病や障害をもつ被災地住民の震災後の症状と
横山 由香里(ヨコヤマ ユカリ) 坂田 清美(サカタ キヨミ) 鈴木 るり子(スズキ ルリコ) |
目的 東日本大震災で被災した地域住民のうち,難病,アレルギー,がん,身体障害者手帳,療育手帳を有する者を対象に,震災後の症状や障害の変化と医療資源の利用実態を把握する。
方法 被害が甚大であった岩手県山田町,大槌町,陸前高田市,釜石市下平田地区の住民を対象とした。2011年に18歳以上の全住民に対し,健康診査の案内に調査への協力依頼文書を添えて郵送配布した。
結果 健診を受診した11,123人中10,469人が調査に同意した(同意率94.1%)。同意者のうち,疾病や障害のある者には追加調査を実施した。難病患者56人中8人が震災後に症状が悪化したと回答した。難病患者とアレルギー患者において,震災1カ月以内に受診に影響が出た主な要因は,かかりつけ医の被災であった。本研究に参加したがん患者301人中,治療計画の変更が生じたのは18人であった。震災前より障害が悪化したと回答した身体障害者手帳所持者は182人中27人(14.8%)であった。療育手帳所持者では,大きな変化は報告されなかったが,パニックの回数や状態が増悪したとの回答が約1割を占めた。
結論 地域で生活している難病患者,アレルギー患者,がん患者,身体障害者手帳所持者,療育手帳所持者の一部で,東日本大震災後に症状や障害が悪化したことが示された。難病患者,アレルギー患者の受診に最も影響を与えていたのは,かかりつけ医の被災であった。
キーワード 東日本大震災,患者,障害者,症状や障害の変化,受診中断,かかりつけ医の被災