論文
第62巻第3号 2015年3月 災害後に高齢者が社会活動を再開する時期と
松田 美祥(マツタ ミサキ) 呉 珠響(オウ チュヒャン) 斉藤 恵美子(サイトウ エミコ) |
目的 本研究は,災害発生前から高齢者が参加していた社会活動について,災害発生後に再開して継続できる要因を再開時期別に検討することを目的とした。
方法 東北地方のA県B市内在住の高齢者を対象としたサークル参加者140名を対象に,自記式質問紙による調査を実施した。調査項目は,基本属性に関する10項目,震災後のサークル活動の参加再開に関する6項目,日頃のサークル活動に関する11項目,外出状況に関する3項目,日頃の社会活動に関する6項目を設定した。分析では,参加再開時期で2群に区分し,2群間で各変数の関連を検討するため,名義尺度についてはχ2検定,Fisherの正確確率検定を,順序尺度についてはMann-Whitney検定を行った。
結果 2012年9月時点の会員140名のうち,49名(回収率35.0%)から回答が得られ,有効回答は45名(有効回答率91.8%)であった。年齢は70歳代(40.0%)が最も多く,次いで60歳代(35.6%),80歳代(6.7%)であった。家族構成については,配偶者と二人暮らし(37.8%)が最も多く,同居者ありが独居を大幅に上回った。主観的健康については,健康と思っている人の割合(62.2%)が,健康と思っていない人の割合(13.3%)を大幅に上回った。参加再開時期について回答があった41名を分析対象とし,災害後に活動を初回より参加を再開していた人(以下,初回再開群)と,それ以降に順次参加を再開した人(以下,順次再開群)の2群に区分し,再開時の状況について比較した。その結果,初回再開群は順次再開群と比較し,再開した理由として会への責任があると回答した人,来会手段が自転車,自動車を自分で運転,徒歩と回答した人の割合が統計的に有意に高かった。また,順次再開群は初回再開群と比較し,友人に誘われたと回答した人の割合が有意に高かった。
結論 初回再開群では,会への責任感などによる主体的な参加や会場までの移動手段が再開に関連していることが示唆された。本研究の結果より,災害後早期に社会活動を再開することが困難な人に対しては,周囲からの勧誘や移動への支援があることが,活動参加の再開に有効であると考えられた。
キーワード 社会活動,参加再開,災害,高齢者