論文
第62巻第2号 2015年2月 全国医科電子レセプトを用いた薬局サーベイランスの
中村 裕樹(ナカムラ ユウキ) 川野原 弘和(カワノハラ ヒロカズ) 亀井 美和子(カメイ ミワコ) |
目的 都道府県ごとのインフルエンザ患者数の推定は,感染症発生動向調査では行われておらず,薬局サーベイランスによってのみ行われているため,外的な評価を行うことができなかった。本稿では全国の医科電子レセプトの情報(NDB)を用いて薬局サーベイランスによる推定患者数の評価を行い,その推定の調整を検討した。
方法 期間は2010年9月から3シーズン分のデータを都道府県ごとに集計して用いた。NDBでの患者数と薬局サーベイランスの推定患者数から乖離率を計算した。また,両者の期間全体を通しての比較から薬局サーベイランスの推定患者数の調整を行った。さらに,薬局サーベイランスの推定患者数を用いて,薬局サーベイランスの内的妥当性の検定を行った。
結果 NDBでの患者数と薬局サーベイランスの推定患者数とのシーズンごと・都道府県ごとの乖離率の平均値および中央値はそれぞれ24.92%,18.68%であった。調整によってこの乖離率の平均値および中央値はそれぞれ9.73%,10.19%となり,大幅に改善した。また,調整後の薬局サーベイランスの推定患者数は,内的妥当性を満たしていないという仮説は確認されなかった。
結論 NDBでの患者数に対する薬局サーベイランスの都道府県ごとの患者数の過大推定および過小推定は,調整によって多くの都道府県で改善された。しかし,3シーズンの間で他のシーズンに比べて大きな過大推定もしくは過小推定が起きていたり,過大推定および過小推定の両方が起きていた場合は,この調整法では調整しきれないことが示唆された。今後は,NDBの公表時期に合わせて,1シーズンごとに取得したNDBのデータから調整率を求め,次のシーズンの推定患者数の調整を行うべきであると考えられる。
キーワード 薬局サーベイランス,レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB),インフルエンザ,都道府県分析,乖離率