論文
第62巻第2号 2015年2月 運動中心の介護予防教室を修了した
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目的 二次予防事業は,要支援・要介護に陥るリスクの高い高齢者を早期に発見し,早期に身体活動・運動を実施させるなどの対応により状態を改善し,要支援状態となるのを遅らせることを目的としている。この事業が修了した後も,運動継続を支援することは重要である。しかし,どのような要因が継続に重要であるかについては,事業者である自治体の視点からは十分に検討されていない。本研究では,運動継続を支援している自治体の取り組み事業(以下,受け皿事業)の形態や内容を把握することとした。
方法 受け皿事業を「二次予防事業の修了後も身体活動・運動を継続していけるような場の設定やボランティアの育成など,修了生の受け皿となる環境整備事業」と定義した。全国から500自治体を抽出し,受け皿事業の実施の有無および形態・内容を尋ねる質問紙を郵送した。実施している場合は,目的と目標,概要,成果と課題を尋ねた。
結果 全体の42.2%に相当する211自治体より回答を得た。受け皿事業の実施自治体は121(211自治体の57.3%),非実施自治体は86(同40.8%),中断自治体は4(同1.9%)であった。受け皿事業の主な形態と内容は次のとおりである。①自治体は運動機会確保を目的にしつつ,交流・外出の増加や,介護・疾病の予防を目標に掲げている。②年間予算額は50万円未満か200万円以上に分散していた。③指導者や自治体職員が修了生対象の教室(直接支援型事業)への参加を呼びかけている。④教室は月1回以上の頻度で,公共施設で開かれる。⑤健康運動指導士や医療従事者が運動を30~90分間,指導する。⑥運動内容は筋力トレーニングや,ストレッチ,軽体操である。⑦参加者の主な移動手段は車やバイク,徒歩である。⑧参加者に対して様々に配慮している。このような受け皿事業を実施することで,交流・外出に効果が得られていた。多くの自治体では参加延べ人数が500人未満と限られていたが,5年以上も受け皿事業を継続できていた。一方,参加者の移動手段の確保や,スタッフ数の確保が課題に挙げられた。
結論 これら受け皿事業の形態や内容は多様であるが,自治体が高齢者の運動継続を支援する施策を講じる際の参考になると思われる。
キーワード 二次予防事業,身体活動,質問紙調査