論文
第62巻第2号 2015年2月 児童養護施設における支援類型の作成-子どもと保護者のニーズに着目して-大原 天青(オオハラ タカハル) |
目的 本研究の目的は,児童養護施設に入所する子どもの情緒と行動のニーズと入所の背景となる保護者の状態像という2つの軸から,ニーズ類型を作成することである。それによって必要とされるサービス・モデルの設定を試みた。
方法 関東圏内の児童養護施設を対象に,本研究の趣旨・目的・方法・倫理的配慮等を記載した調査票への記入を依頼した。各施設の直接支援職員を対象として,担当する小中学生の中から名前順で1名を選択してもらい,その子どもについて回答を求めた。調査票には,虐待の有無および種類,Child Behavior Checklist(以下,CBCL),入所の背景となる保護者の状態像,子どもの生活の安定度に関する項目を設けた。
結果 対象となった子ども815名(男子439名,女子376名)の平均年齢は10.5歳(標準偏差=2.6),平均入所期間は4.7年(標準偏差=3.1)であった。被虐待体験のある子どもの割合は517名(64.1%)であった。入所理由となる保護者の状態像は,Ward法によるクラスター分析によって,「家庭内の不和と未熟群(CL1)」152名(18.7%),「経済的困窮群(CL2)」138名(16.9%),「依存・知的障がい群(CL3)」270名(33.1%),「精神疾患群(CL4)」138名(16.9%),「虐待行為群(CL5)」117名(14.4%)の5類型となった。子どもの情緒と行動のニーズは,CBCLの内向尺度と外向尺度のカットオフ値から,「内向・外向正常域」209名(25.7%),「内向臨床域」123名(15.1%),「外向臨床域」158名(19.5%),「内向・外向臨床域」322名(39.7%)の4類型に分類した。以上の結果から,保護者の状態像の5分類と子どものニーズの4分類によって20類型を作成した。
結論 本研究の結果,児童養護施設に入所する子ども,およびその保護者の状態像の類型から,必要なサービス内容を策定できる可能性が示された。今後は児童養護施設におけるサービス内容を標準化するためのニーズ調査やそれに対応するサービス内容とそれを提供するための制度が担保される必要がある。
キーワード 児童養護施設,子どもと保護者の状態像,類型化,サービス内容