論文
第62巻第1号 2015年1月 医療の地域差基礎データを用いた都道府県別平均余命の検討中島 尚登(ナカジマ ヒサト) 矢野 耕也(ヤノ コウヤ) 長澤 薫子(ナガサワ カオコ)小林 英史(コバヤシ エイジ) 横田 邦信(ヨコタ クニノブ) |
目的 医療の地域差基礎データと都道府県別平均余命を用い,平均余命に都道府県の医療状況がどの程度影響しているかを検討した。
方法 平成22年都道府県別生命表を用い,男女別平均余命の相関を検討した。平成22年度市町村国民健康保険(国保)および後期高齢者医療制度(後期高齢者)の地域差基礎データより,都道府県別の1人当たり医療費,受診率,1件当たり日数,1日当たり医療費を抽出し,都道府県別男女別平均余命との相関を検討した。Mahalanobis-Taguchi(MT)法を用い,男女別平均余命上位10府県の医療制度別1人当たり医療費,受診率,1件当たり日数,1日当たり医療費のデータで4種類の単位空間を作成し,それぞれに対し残り37都道府県のMahalabinosの距離(D2)を求め単位空間からの乖離を検討した。単位空間と距離が乖離する都道府県間データの有意差を検討した。MT法の項目選択で寄与する項目を検討した。
結果 男女別平均余命はr=0.682と有意な正の相関を示した。都道府県別女性平均余命と国保の1人当たり医療費と1日当たり医療費,および後期高齢者の1人当たり医療費は有意な正の相関を示した。男性単位空間の国保で12都道県,後期高齢者で7道県,女性単位空間の国保で9都道県,後期高齢者で5都道県が乖離した。男性単位空間の後期高齢者では1人当たり医療費が有意に高く,女性単位空間の国保では1人当たり医療費が有意に低く,後期高齢者では受診率が有意に高かった。項目選択では1人当たり医療費および1日当たり医療費が最も有効であった。
結論 平均余命が長くなる要因として1人当たり医療費と1日当たり医療費が高額であることが明らかになった。D2が単位空間と変わらない都道府県は平均余命に今回の項目以外の要因が関与していると思われるが,D2が乖離している都道府県では平均余命上位10都道府県に比べ1人当たり医療費が過剰か不足,受診率が過剰である医療状況が見いだせた。項目選択でも1人当たり医療費および1日当たり医療費が最も寄与する項目であり,長寿には後期高齢者の医療費の関与が大きいと思われた。
キーワード 医療の地域差,平均余命,Mahalanobis-Taguchi(MT)法,Mahalabinosの距離(D2)