論文
第63巻第3号 2016年3月 精神科救急病棟における服薬支援の現状と課題-病棟看護管理者へのアンケート調査から-野中 浩幸(ノナカ ヒロユキ) 清水 純(シミズ ジュン) 酒井 千知(サカイ カズノリ)伊藤 栄見子(イトウ エミコ) 吉川 武彦(キッカワ タケヒコ) 三上 章允(ミカミ アキチカ) |
目的 わが国の精神科救急医療は,1996年に精神科急性期治療病棟入院料が診療報酬上で認められ,2002年には精神科救急入院料の急性型包括病棟群が登場した。当該病棟の治療で,患者への服薬支援は最も重要なものと考えられる。そこで,本論文は服薬支援の考え方やあり方,看護師が行う意義をアンケートで把握し,今後の課題を明らかにすることを目的とした。「服薬支援」の用語は,「主に統合失調症患者に,抗精神病薬の効果や副作用などの説明を通し,服薬を勧めて促し,拒薬等がある場合はその理由を聞くなど一緒に考え,自己管理を目標に服薬を習慣づけられるように支援する行為」と定義した。「服薬支援マニュアル」は,「服薬支援」の方法が記載されているものとした。
方法 研究対象者は,精神科救急病棟を持つ全国104病院(2012年10月1日時点)で,1病院ごとに1病棟を選択してもらい,病棟看護管理者1名(総数104名)に無記名・自記式の質問票を郵送した。調査項目は,性別,年齢(年代別),精神科看護師経験年数,看護師経験年数を基本属性とし,主に関わっている職種,拒薬時の対応職種,服薬支援マニュアル配備の有無と使用状況,服薬支援の開始時期,看護師への教育・研修等の35項目で,有効回答者60名(57.7%)であった。分析は,単純集計とχ2検定を用いた。
結果 服薬支援を実施している職種は,看護師が41名(70.7%),拒薬時の対応でも看護師が51名(87.9%)を占め,他職種よりも多かった。また,服薬支援マニュアルありは35名(58.3%),そのうち使用しているのは22名(62.9%)であった。看護師へ何らかのサポートあり40名(66.7%),具体的な教育の実施は,38名(63.3%)が「行われていない」と回答した。このような状況の中で服薬支援が行われている実態が明らかとなった。
結論 今回の調査では,服薬支援マニュアルの配備は約半数,服薬支援で与薬は看護師が業務として行っていた。サポートと教育は十分ではなく,教育機会の提供と活用できる服薬支援マニュアル作成の必要性が示された。今後,こうした調査を継続することにより,精神科救急病棟の看護師が実践している服薬支援の実態を継続的に把握し,看護師支援の施策立案の基礎データとして活用することが望まれる。
キーワード 精神科救急病棟,服薬支援,病棟看護管理者,アンケート,服薬支援マニュアル