論文
第59巻第1号 2012年1月 子どものすこやかな発達と子育て支援への
安梅 勅江(アンメ トキエ) 冨崎 悦子(トミサキ エツコ) 望月 由妃子(モチヅキ ユキコ) |
目的 「木育(もくいく)」とは,すべての人が木とふれあい,木に学び,木と生きる取り組みであり,人と木や森とのかかわりを主体的に考える豊かな心を育むことを目標としている。本研究は「木育の効果」の評価を目的とし,子どものすこやかな発達と子育て支援への一助とすることを意図した。
方法 M市の保育園児とその養育者168名に対し,約2時間の木育プログラムを実施した。木育の前後で子どもの社会性と主体性,養育者のかかわりの変化を,「かかわり指標(Interaction Rating Scale, IRS)」および「描画」を用いて評価した。分析は,「かかわり指標」については全体得点と領域得点を算出し,木育前後での子どもと養育者の得点の変化を検討した。また「描画」については,色の数,描画の大きさ,アイテム数について数値で評価した。
結果 「かかわり指標」を用いた分析では,子どもの微笑みや養育者へのアイコンタクト,発話が増え,子どもの主体性,共感性,運動制御得点が有意に高くなるなど,木育を通じて子どもから養育者へのかかわりが活発になる傾向がみられた。養育者の子どもへの対応は,木育の前後で子どもに向ける視線や声かけが増えるとともに,子どもの主体性発達への配慮,応答性への配慮が有意に高くなるなど,養育者の子どもへの配慮が高まる傾向がみられた。描画について,木育前は単純な木の絵を描く傾向が多くみられたが,木育後はプログラムに関連した「遊ぶ様子」や「さまざまな想像力」にあふれた絵が多くみられた。色数が多彩になり,大きさが拡大し,力強く描く者が増加した。
結論 「木育」を通じて子どもからのかかわり,養育者からのかかわりがともに増え,子どもと養育者が調和のとれた関係性を築いている様子がうかがわれた。子どもと養育者ともに,木育の前後で描画が大きく変化した。木育後は「勢い」「開放性」「躍動感」のある描画が多くみられた。ともに木育を十分に楽しむ様子が観察された。「木育」の積極的な活用が,子どものすこやかな発達,養育者の子育て支援への一助となる可能性がある。
キーワード 木育,評価,かかわり,描画,社会性発達,子育て支援