第57巻第8号 2010年8月 岩手県花巻市における特定健診未受診者の未受診理由と健康意識久保田 和子(クボタ カズコ) 大久保 孝義(オオクボ タカヨシ) 佐藤 陽子(サトウ ヨウコ)廣瀬 卓男(ヒロセ タクオ) 今井 潤(イマイ ユタカ) |
目的 基本健康診査の地域における受診率は40%程度に過ぎなかった。特定健診受診率の最終目標は市町村国保で65%とされており,今までよりかなり高い数値を求められている。本研究では市町村国保加入者における特定健診未受診者を対象に,未受診理由と健康意識についての調査を行った。
方法 岩手県花巻市における平成20年度の特定健診対象国保加入者20,519人のうち,10,043人が特定健診を受診した(受診率49%)。末受診者のうち施設入所者・人間ドック受診者等397名を除いた10,079人を対象に,平成21年1月に郵送で未受診理由・健康意識等に関するアンケート調査を実施した。
結果 特定健診未受診者10,079人のうち,4,840人より回答が得られた(回収率48%)。健診未受診の理由としては,他機関での受診や医療機関での受療などを除くと,「自分は健康だから」「時間の都合がつかない」と回答した者が多かった。また健診所要時間に対する許容範囲は非常に短く,「待ち時間を含めて1時間未満」と答えた者が7割に達していた。メタボリックシンドロームについての認知度はかなり高く,名前だけ知っている人まで勘案するとほぼ90%が「知っている」と回答していた。しかし「内容も知っている」と答えた人は3分の2程度であった。回答者の5割強程度が保健指導への参加を希望していた。しかし希望者においても費用負担をする概念はほとんどなく,5割は「無料」を希望し,「有料でも参加」と回答した場合であっても,その希望単価の平均は男性で1,700円,女性では1,200円程度であった。
考察 特定健診未受診理由としては「自分は健康だから」および「時間の都合がつかない」と回答した者が多かった。それぞれ地域啓発と柔軟性の高い受診機会の提供が主な対策となる。未受診者の健診所要時間への要望は現実とはかけ離れており,健診の効率化など行政側の工夫と住民の意識啓発が重要であると考えられた。
キーワード 特定健診受診率,健診未受診理由,医療機関受療,健康意識,メタボリックシンドローム認知度