第56巻第10号 2009年9月 グループ回想法の介入効果-特別養護老人ホーム入所者の生きがい感-津田 理恵子(ツダ リエコ) |
目的 先行研究において,回想法介入による効果の確認を,生きがい感スケールを用い,長期的にその効果を検証している研究は見当たらなかった。そこで,特別養護老人ホームでクローズド・グループによる回想法の介入を試み,生きがい感スケールを用いて,多層ベースラインで調査を実施し回想法の介入効果を確認することを目的とした。
方法 特別養護老人ホームに入所している高齢者13名を,A組・B組・C組の3グループに分け,1グループにつき5週間ずつ,介入時期を2カ月間ずらしてグループ回想法を実践し,生きがい感スケールを用いて2カ月ごとに5回(10カ月間)測定した(多層ベースライン)。
結果 生きがい感スケールの得点と生きがい感スケールの下位項目の得点について,3(グループ;A組,B組,C組)×5(時期;1回目,2回目,3回目,4回目,5回目)の分散分析を行った。その結果,交互作用に有意な傾向が認められた(p<0.06)。多重比較を行った結果,A組では1回目と2回目の間(p<0.03),B組は2回目と3回目の間(p<0.03),C組では3回目と4回目の間(p<0.04)に有意な改善が確認できた。有意な差がみられた時点は,それぞれ回想法の介入直後であった。さらに,生きがい感スケールの下位項目では,「私には施設内・外で役割がある」「世の中がどうなっていくのかもっと見ていきたいと思う」「私は家族や他人から期待され頼りにされている」の3項目に有意な改善が示された。
結論 回想法の介入によって,特別養護老人ホーム入所者の生きがい感の向上に効果があることが確認できた。日々の生活における余暇時間における活動として,回想法は,個人の懐かしい記憶に働きかける個別性が尊重された支援であると示した。
キーワード グループ回想法,特別養護老人ホーム,生きがい感,多層ベースライン