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第54巻第10号 2007年9月

肥満および体重変化が10年後の終末期を除く医療費に及ぼす影響

-体重減少は健康に有益か?-
日高 秀樹(ヒダカ ヒデキ) 広田 昌利(ヒロタ マサトシ)

目的 肥満は生活習慣病の原因として重要であり,生命予後を含めた健康の悪化要因とされる。この肥満および体重変化が10年後の健康に及ぼす影響を,職域の定期健診結果と5年間の終末期を除く医療費を指標として検討した。
方法 対象は1992年度に定期健康診断を受けた40~59歳の男性で,2004年度末にも健在で健保に加入していた6,867名と,この間に死亡を理由に健保を脱退した182名である。医療費は終末期の高額医療費を除くために1999~2003年度の5年間の診療報酬明細書から医科と調剤を用いて算出した。
結果 1992~1994年度の3年間の平均体重で求めたBMIを5分位で検討すると,医療費はBMIが大きいほど高額であった。年齢調整累積死亡率が最も低かったのはBMI20.9~22.3の群であった。2001~2003年度までの10年間の体重変化を5分位で検討すると,体重減少が最も大きい群で医療費は高額であった。観察開始時のBMIで3群に分けて体重変化と医療費の関係をみても,体重の大きな減少は高額医療費と関連していた。最も医療費が少ないのは,観察開始時BMIが小さい群では約3㎏増加,大きい群では約1㎏低下する群であった。糖尿病では,観察開始時の肥満度に関係なく体重増加は高額医療費と関連した。高額医療費を示す主な保険主傷病名は,虚血性心疾患,脳血管疾患,悪性新生物,高血圧などであり,糖尿病では体重増加にしたがってこれらの疾患頻度は増加傾向にあった。喫煙に関しては,10年間の観察期間中の新たな禁煙群が最も医療費は大きかったが,この群で多くみられる体重増加は医療費に関係しなかった。
結論 肥満は10年後の終末期を除く医療費を高額とした。死亡率が低かったのはBMI21~22の群であった。10年間の体重の減少は医療費を高額とした。体重低下と高額の医療費は重大な疾患に罹患したための二次的なものと考えるのが妥当である。禁煙による体重増加は医療費を増加させなかった。これらから男性では,「中年までの肥満の予防が重要であること」「BMI22~23を目標とした体重管理が好ましいこと」「糖尿病では体重の増加は高額の医療費をもたらすこと」「意図した体重の管理が重要であること」などが示唆される。今後,意図した体重減少が長期的な健康に好ましいことを証明する研究が必要である。
キーワード 肥満,体重変化,定期健診,診療報酬明細書(レセプト),医療費,喫煙

 

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