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第51巻第1号 2004年1月

精神病院での長期在院に関連する要因

-患者調査および病院報告に基づく検討-
藤田 利治(フジタ トシハル) 佐藤 俊哉(サトウ トシヤ)

目的 長期在院が問題視されている精神障害者の社会復帰・ノーマライゼイションを推進するため,在院患者における退院の発生率(incidence rate)である退院率を指標として,精神病院における長期在院にかかわる患者特性および病院特性を解明する。
方法 対象者は,「精神及び行動の障害」(ICD10:F00-F99)とてんかん(G40-G41)に分類された精神病院の15歳以上の在院患者および退院患者である。1999年の厚生労働省患者調査および病院報告を用いて,治癒・軽快による退院率と患者特性および病院特性との関連を,重み付きポアソン回帰モデルを用いて単変量解析および多変量解析により検討した。
結果 精神病院からの治癒・軽快による退院率は,精神疾患全体で56.4(/100人年。以下,単位省略),統合失調症等で41.5と推計された。精神病院からの治癒・軽快による退院の可能性が低いものの特性として,長期間の継続在院期間が最も強く関連していた。統合失調症等においては,治癒・軽快での退院の25%は継続在院期間が1か月未満のものであり,退院率は331.1と高いものであった。しかし,5年以上10年未満での退院率は3.6,10年以上では1.2であり,長期継続
在院している統合失調症等のものでは治癒・軽快による退院が極めて稀なことが示された。その他の要因で非退院リスクが高いものの特性として,男,高年齢,血管性等の痴呆,精神遅滞および統合失調症等,医師および看護師・准看護師1人当たりの在院患者数が多い,および病院開設者が個人ないし医療法人であることが明らかになった。
結論 治癒・軽快での退院可能性の低下に対して,入院以来の継続在院期間が長期間であることが強く関与している状況であり,治癒・軽快による退院が稀な長期継続在院患者に対する特段の対策を講じる必要性が定量的にも明らかになった。その他の退院可能性低下と関連する患者特性には,性別,年齢および診断があげられた。また,これまで退院との定量的な関係の検討がほとんどなされてこなかった病院特性についても,患者特性と比べて関連は弱いものの,医師および看護師・准看護師の不足が退院可能性低下と関連することを明らかにした。第四次医療法改正での職員配置基準が遵守されて退院可能性が高まることが期待されるとともに,医療の質を担保する取り組みが一層推進される必要性が示唆された。
キーワード 精神疾患,長期在院,退院率,精神病院,リスク要因,保健統計

 

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