第103回看護師国家試験 午後一般問題
平成26年2月16日(日)に実施された第103回看護師国家試験について、午後問題のうち一般問題の正答と解説を示します。
「国民衛生の動向2024/2025」で内容を解説している問題に関しては、その参照章・ページを示しているので、同書を併用しながらの利用をおすすめします。
▼第103回看護師国家試験
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厚生の指標増刊
国民衛生の動向 2024/2025
発売日:2024.8.27
定価:2,970円(税込)
412頁・B5判
雑誌コード:03854-08
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▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
午後 一般問題
▶午後26
食道について正しいのはどれか。
- 厚く強い外膜で覆われる。
- 粘膜は重層扁平上皮である。
- 胸部では心臓の腹側を通る。
- 成人では全長約50cmである。
② 粘膜は重層扁平上皮である。
食道粘膜は重層扁平上皮に当たる。なお、これが胃食道逆流により胃の粘膜と同じ円柱上皮(バレット上皮)に置換されることを円柱上皮化生という。
×① 厚く強い外膜で覆われる。
食道の壁は、内側から粘膜層、粘膜下層、固有筋層、外膜の4層構造で、壁は薄いため穿孔が生じやすい。
×③ 胸部では心臓の腹側を通る。
食道は心臓の背側を通る。
×④ 成人では全長約50cmである。
咽頭から噴門(胃の入り口)に至る食道の長さは、個人差もあるが約25cmである。なお、鼻孔から噴門では45〜55cmとなっている。
▶午後27
遺伝子について正しいのはどれか。
- DNAは体細胞分裂の前に複製される。
- DNAは1本のポリヌクレオチド鎖である。
- DNAの遺伝子情報からmRNAが作られることを翻訳という。
- RNAの塩基配列に基づきアミノ酸がつながることを転写という。
① DNAは体細胞分裂の前に複製される。
生物の細胞内にある遺伝子はDNAによって構成される。細胞が分裂して増殖する前にDNAは複製され、分裂後の新しい細胞にそれぞれ格納される。
×② DNAは1本のポリヌクレオチド鎖である。
DNAの基本構造はポリヌクレオチド鎖が2本集まった二重螺旋構造である。
×③ DNAの遺伝子情報からmRNAが作られることを翻訳という。
×④ RNAの塩基配列に基づきアミノ酸がつながることを転写という。
DNAの遺伝子から塩基配列をmRNAにコピーし(転写)、それに基づいてアミノ酸がつながり蛋白質が合成される(翻訳)。
▶午後28
活動電位について正しいのはどれか。
- 脱分極が閾値以上に達すると発生する。
- 細胞内が一過性に負〈マイナス〉の逆転電位となる。
- 脱分極期には細胞膜のカリウム透過性が高くなる。
- 有髄神経ではPurkinje〈プルキンエ〉細胞間隙を跳躍伝導する。
① 脱分極が閾値以上に達すると発生する。
細胞膜の内外には電位差=膜電位があり、静止膜電位では負〈マイナス〉の状態であるが、神経細胞が刺激を受けてイオン透過性が変化することでNa+(ナトリウム)が細胞内に流入し、膜電位が正〈プラス〉の方向に変化することを脱分極という。この脱分極が閾値以上に達すると活動電位が発生し、心筋の収縮を引き起こす。
▶午後29
脳神経とその機能の組合せで正しいのはどれか。
- 顔面神経――顔の感覚
- 舌下神経――舌の運動
- 動眼神経――眼球の外転
- 三叉神経――額のしわ寄せ
② 舌下神経――舌の運動
舌下神経は舌筋に分布する運動神経である。①は三叉神経、③は外転神経、④は顔面神経が司る。
▶午後30
白血球について正しいのはどれか。
- 酸素を運搬する。
- 貪食作用がある。
- 骨髄で破壊される。
- 血液1μL中に10万~20万個含まれる。
② 貪食作用がある。
白血球(単球、好中球)は体内に侵入した細菌などの異物を捕食し(貪食作用)、消化・殺菌する。
×① 酸素を運搬する。
酸素の運搬は赤血球の働きで、赤血球内のヘモグロビンが肺で酸素を取り込み、全身に輸送している。
×③ 骨髄で破壊される。
骨髄の造血機能により白血球や赤血球が生成され、脾臓で破壊される。
×④ 血液1μL中に10万~20万個含まれる。
白血球数の通常の範囲(目安)は、血液1μL中に4000~8000個程度である。
▶午後31
降圧利尿薬により血中濃度が低下するのはどれか。
- ナトリウム
- 中性脂肪
- 尿酸
- 血糖
① ナトリウム
降圧利尿薬によりナトリウムやカリウムなどの電解質の排泄量が増加し、低カリウム血症や低ナトリウム血症などの電解質異常を引き起こす。
▶午後32
肺癌について正しいのはどれか。
- 腺癌は小細胞癌より多い。
- 女性の肺癌は扁平上皮癌が多い。
- 腺癌は肺門部の太い気管支に好発する。
- 扁平上皮癌の腫瘍マーカーとしてCEAが用いられる。
① 腺癌は小細胞癌より多い。
肺癌は大きく非小細胞癌(腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌)と、小細胞癌に分かれる。最も多い組織型は非小細胞癌のうち腺癌で約半分を占めている。
×② 女性の肺癌は扁平上皮癌が多い。
女性でも腺癌が最も多い。なお、喫煙との関係が深い扁平上皮癌や小細胞癌は、喫煙率の高い男性で比較的多い。
×③ 腺癌は肺門部の太い気管支に好発する。
腺癌は肺末梢側に好発する。
×④ 扁平上皮癌の腫瘍マーカーとしてCEAが用いられる。
扁平上皮癌の腫瘍マーカーとしてSCCが用いられる。
▶午後33
急性左心不全の症状はどれか。
- 肝腫大
- 呼吸困難
- 下腿浮腫
- 頸静脈怒張
② 呼吸困難
左心室は大動脈を通じて全身に血液を送るが、急性左心不全によりポンプ機能が低下することで、肺静脈系のうっ血が生じ、呼吸困難や咳嗽(せき)などの症状が現れる。そのため、呼吸困難を軽減する起坐呼吸が左心不全患者に多くみられる。
▶午後34
関節リウマチで起こる主な炎症はどれか。
- 滑膜炎
- 骨髄炎
- 骨軟骨炎
- 関節周囲炎
① 滑膜炎
関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。症状の悪化に伴い、日常生活動作〈ADL〉の障害や生活の質〈QOL〉の低下を引き起こす。
*第3編4章 4.リウマチ・アレルギー疾患対策 p161~162
▶午後35
重症筋無力症について正しいのはどれか。
- 筋肉の障害に起因する。
- 手術療法は甲状腺摘出である。
- 特徴的な症状は眼瞼下垂である。
- クリーゼが発症した時は抗コリンエステラーゼ薬を投与する。
③ 特徴的な症状は眼瞼下垂である。
重症筋無力症の症状として、全身の筋力低下、特に眼瞼下垂や複視など眼筋型の症状が特徴的である。
×① 筋肉の障害に起因する。
重症筋無力症は、免疫系が正常に機能せずに自己組織を破壊する自己免疫疾患である。
×② 手術療法は甲状腺摘出である。
合併症として胸腺腫や胸腺過形成などの胸腺異常が挙げられ、胸腺腫合併例では原則として胸腺摘除術が行われる。
×④ クリーゼが発症した時は抗コリンエステラーゼ薬を投与する。
対症療法として用いられる抗コリンエステラーゼ薬の多量摂取により、クリーゼ(危機的な呼吸困難)を発症することがあり、投与を中止する。
▶午後36
障害者基本法で正しいのはどれか。
- 目的は障害者の保護である。
- 障害者の日が規定されている。
- 身体障害と知的障害の2つが対象である。
- 公共的施設のバリアフリー化の計画的推進を図ることとされている。
④ 公共的施設のバリアフリー化の計画的推進を図ることとされている。
障害者基本法は、障害者等が障害を持たない者と同等に生活・活動する社会を目指すノーマライゼーションの理念の下に、公共的施設のバリアフリー化などを規定している。
×① 目的は障害者の保護である。
障害者基本法の目的は、障害者の自立や社会参加の支援のための施策を総合的・計画的に推進することである。
×② 障害者の日が規定されている。
障害者週間(12月3日~9日)が設定されている。
×③ 身体障害と知的障害の2つが対象である。
身体障害、知的障害、精神障害(発達障害含む)その他の心身の機能の障害がある者を対象とする。
*第5編2章 4.障害者福祉等 p239~241
▶午後37
外来で患者の血液が付着したガーゼを処理する取り扱いで正しいのはどれか。
- 産業廃棄物
- 一般廃棄物
- 感染性産業廃棄物
- 感染性一般廃棄物
④ 感染性一般廃棄物
感染性廃棄物とは、医療機関等から生じた廃棄物のうち、感染性の病原体が含有・付着した(またはそのおそれのある)廃棄物であり、感染性一般廃棄物(紙くず、包帯、脱脂綿等)と感染性産業廃棄物(血液、注射針、メス、レントゲン定着液等)を指す。
*第9編4章 4.特別管理廃棄物 p339
▶午後38
社会福祉に関係する職種とその業務についての組合せで正しいのはどれか。
- 精神保健福祉士――精神障害者保健福祉手帳の発行
- 介護支援専門員――居宅サービス計画の作成
- 介護福祉士――生活保護の認定
- 社会福祉士――要介護度の認定
② 介護支援専門員――居宅サービス計画の作成
介護支援専門員は、要介護者等を支援する上で解決すべき課題を把握(アセスメント)し、課題を解決するための居宅・施設の介護サービス計画を作成する。なお、介護サービス計画は利用者自ら作成することも可能である。
×① 精神保健福祉士――精神障害者保健福祉手帳の発行
精神障害者保健福祉手帳の交付は、市町村を経由して都道府県知事が行う。
×③ 介護福祉士――生活保護の認定
生活保護の決定と実施に関する権限は、都道府県知事と市長、福祉事務所を設置する町村の長が有し、多くの場合、その設置する福祉事務所の長に権限が委任されている。
×④ 社会福祉士――要介護度の認定
市町村に設置された介護認定審査会が、要介護状態の区分認定を行う。
*第5編1章 8.3〕介護支援専門員〈ケアマネジャー〉 p228
▶午後39
がんの告知を受けた患者の態度と防衛機制の組合せで正しいのはどれか。
- がんのことは考えないようにする――投射
- がんになったのは家族のせいだと言う――抑圧
- 親ががんで亡くなったので自分も同じだと話す――代償
- 通院日に来院せず、家でゲームをしていたと話す――逃避
④ 通院日に来院せず、家でゲームをしていたと話す――逃避
防衛機制とは、直面した危機や困難に対し、その不安を和らげるために無意識に働く心理的な防衛反応である。逃避は、耐えがたい感情や困難から心理的・物理的に逃げる・避けることをいう。
×① がんのことは考えないようにする――投射
抑圧の説明であり、耐えがたい感情を押さえつけて忘れようとすることをいう。
×② がんになったのは家族のせいだと言う――抑圧
投影(投射)の説明であり、自分が持っている受け入れがたい感情などを、相手が持っていると思い込むことをいう。
×③ 親ががんで亡くなったので自分も同じだと話す――代償
合理化の説明であり、耐えがたい感情に対してもっともらしい理由を付けて、自分自身を納得させることをいう。
▶午後40
カウンセリングの基本的態度で適切なのはどれか。
- 同情
- 指導
- 受容
- 評価
③ 受容
ロジャーズはカウンセリングに当たり積極的傾聴を提唱し、その3原則として、「共感的理解」「無条件の肯定的関心」「自己一致」を挙げている。無条件の肯定的関心は、聴く側が自らの価値観を入れずに相手の話を否定せず肯定的な関心を持って聴くことで、受容に当たる。
▶午後41
学習の特徴について誤っているのはどれか。
- 環境の影響を受ける。
- 報酬によって強化される。
- 永続的な行動の変容である。
- 情報の一時的な獲得である。
④ 情報の一時的な獲得である。
学習とは個人の経験の積み重ねを基礎とした、永続性を持つ行動の変容をいう。④は一次記憶にとどまる勉強といえる。
▶午後42
異常な呼吸音とその原因の組合せで正しいのはどれか。
- 連続性副雑音――気道の狭窄
- 断続性副雑音――胸膜での炎症
- 胸膜摩擦音――肺胞の伸展性の低下
- 捻髪音――気道での分泌物貯留
① 連続性副雑音――気道の狭窄
異常呼吸音(副雑音)のうち、連続性副雑音(低調性のいびき音と高調性の笛音)では気道の狭窄が疑われる。
×② 断続性副雑音――胸膜での炎症
×④ 捻髪音――気道での分泌物貯留
断続性副雑音のうち、細かい捻髪音では肺胞の伸展性の低下が、粗い水泡音では気道での分泌物貯留が疑われる。
×③ 胸膜摩擦音――肺胞の伸展性の低下
胸膜摩擦音では胸膜での炎症などが疑われる。
▶午後43
経鼻経管栄養法の実施方法とその目的の組合せで正しいのはどれか。
- 注入前に胃内容物を吸引する――消化の促進
- 注入中はFowler〈ファウラー〉位にする――逆流の防止
- 注入終了後に微温湯を流す――誤嚥の予防
- 注入終了後はチューブを閉鎖する――嘔吐の予防
② 注入中はFowler〈ファウラー〉位にする――逆流の防止
経鼻胃管による栄養注入時は、栄養剤の逆流を防ぐため、上半身を45度程度上げる半坐位(ファウラー位)が適している。
×① 注入前に胃内容物を吸引する――消化の促進
注入時に胃管の先端が胃内にない場合、誤嚥等の事故につながるおそれがある。そのため、注入前に胃内容物を吸引し、胃管の先端が留置されていることを確認する。
×③ 注入終了後に微温湯を流す――誤嚥の予防
注入後のチューブ内に栄養剤が残留すると細菌繁殖や閉塞のおそれがあるため、注入終了後に微温湯を流す。
×④ 注入終了後はチューブを閉鎖する――嘔吐の予防
胃内容物の逆流を防止するため、注入終了後はチューブを閉鎖する。
▶午後44
気管内挿管中の患者の体位ドレナージの実施について適切なのはどれか。
- 実施前後に気管内吸引を行う。
- 体位ドレナージ後に吸入療法を行う。
- 自分で体位変換できる患者には行わない。
- 創部ドレーンが挿入されている場合は禁忌である。
① 実施前後に気管内吸引を行う。
体位ドレナージは、痰が貯留した肺の部位を上にした体位をとり、重力により気道分泌物の排出(排痰)を促すことをいう。実施前に気管支を広げる吸入薬を用いることで排痰がより促され、実施前後には貯留・排出した痰を吸引する。
▶午後45
赤血球濃厚液の輸血について正しいのはどれか。
- 専用の輸血セットを使用する。
- 使用直前まで振盪させて使用する。
- 使用直前に冷蔵庫から取り出して使用する。
- 呼吸困難出現時は滴下数を減らして続行する。
① 専用の輸血セットを使用する。
赤血球濃厚液の輸血に当たっては、濾過装置を備えた専用の輸血セットを用いる。
×② 使用直前まで振盪させて使用する。
凝集の予防のために保存中の振盪が必要なのは血小板製剤である。
×③ 使用直前に冷蔵庫から取り出して使用する。
赤血球製剤の保存温度は2~6℃とされ、冷蔵庫で保存することは適切であるが、不適合輸血を防止するために、冷蔵庫から取り出した後、医療従事者による二重チェックを行う。
×④ 呼吸困難出現時は滴下数を減らして続行する。
呼吸困難が出現した場合は直ちに輸血を中止する。
▶午後46
地域連携クリニカルパスについて正しいのはどれか。
- 診療報酬の評価の対象ではない。
- 市町村を単位とした連携である。
- 記載内容は医師の治療計画である。
- 医療機関から在宅まで継続した医療を提供する。
④ 医療機関から在宅まで継続した医療を提供する。
地域連携クリニカルパスは、急性期病院から回復期病院を経て早期に自宅に帰れるような全体的な診療計画をいい、治療を受ける地域内の医療機関で共有して用いる。
*第4編1章 2.医療計画 p166~169
▶午後47
Aさん(26歳、男性)は、大量服薬による急性中毒が疑われ、午後9時30分に救急搬送された。呼吸状態と循環動態に異常はないが、意識は低下している。付き添って来たAさんの母親は「午後8時に夕食を終えて息子は部屋に戻りました。午後9時にお風呂へ入るよう声をかけに部屋に行ったら、倒れていたんです。息子はうつ病で通院中でしたが、最近は症状が落ち着いていました」と話す。
このときの対応で適切なのはどれか。
- 気管内挿管を行う。
- 咽頭を刺激して吐かせる。
- 胃酸分泌抑制薬を投与する。
- Aさんの母親にどんな薬を内服していたかを尋ねる。
④ Aさんの母親にどんな薬を内服していたかを尋ねる。
急性中毒をもたらした内服薬の情報を収集した上で、それに沿った治療・対応を行うことが適切である。
▶午後48
Aさん(56歳、男性)は、進行結腸癌の術後に両側の多発肺転移が進行し、終末期で在宅療養中であったが呼吸困難が増悪したため入院した。経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉は95%であるが、安静時でも呼吸困難を訴え、浅い頻呼吸となっている。 発熱はなく、咳嗽はあるが肺炎の併発はない。
Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。
- 仰臥位を保つ。
- 酸素投与は行わない。
- モルヒネ塩酸塩の投与を検討する。
- 安静を保つため訪室は最低限とする。
③ モルヒネ塩酸塩の投与を検討する。
モルヒネ塩酸塩は呼吸数を抑えて呼吸困難症状を緩和するため、呼吸困難が増悪したAさんへの投与の検討は適切である。
×① 仰臥位を保つ。
仰臥位では肋骨や横隔膜の動きが制限されて呼吸が浅くなる。上体を起こして呼吸が楽になる起坐位や、難しい場合は半坐位〈ファウラー位〉を保つ。
×② 酸素投与は行わない。
経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉は95%と低くはないが、安静時でも呼吸困難を訴えるなど重症度が高く、酸素投与を必要とする。
×④ 安静を保つため訪室は最低限とする。
急変等に備えた頻回の訪室を行う。
▶午後49
Aさん(58歳、女性)は、10年前に肺気腫を指摘されたが喫煙を続け、体動時に軽い息切れを自覚していた。Aさんは、肺炎で救急病院に入院し経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉86%でフェイスマスクによる酸素投与(4L/分)が開始された。抗菌薬投与後6日、鼻腔カニューラによる酸素投与(2L/分)でAさんの経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉が94%まで回復した。夜間Aさんは眠れているようだが、早朝に頭痛を訴え、日中も傾眠傾向になった。
Aさんへの対応で適切なのはどれか。
- 抗菌薬の変更
- 酸素投与量の増加
- 動脈血液ガス分析の実施
- 胸部エックス線撮影の実施
③ 動脈血液ガス分析の実施
早朝の頭痛や日中の傾眠傾向からCO2ナルコーシスが考えられる。CO2ナルコーシスは、動脈血二酸化炭素分圧〈PaCO2〉が45mmHgを超えるⅡ型呼吸不全患者に起こりやすい合併症で、意識障害や頭痛などの中枢神経症状を引き起こす(呼吸性アシドーシス)。動脈血液ガス分析によりPaCO2を確認することが適切である。
▶午後50
B型肝炎と比べたC型肝炎の特徴について正しいのはどれか。
- 劇症化しやすい。
- 性行為による感染が多い。
- 無症状のまま慢性化しやすい。
- ワクチン接種による感染予防対策がある。
③ 無症状のまま慢性化しやすい。
C型肝炎の多くは自覚症状が現れず慢性化し、肝硬変や肝がんに進行する場合がある。
×① 劇症化しやすい。
劇症化する危険性が高いものはA型肝炎である。
×② 性行為による感染が多い。
C型肝炎の主な感染経路は血液感染である。B型肝炎には感染経路の一つとして性行為感染がある。
×④ ワクチン接種による感染予防対策がある。
C型肝炎に対するワクチンはない。B型肝炎にはワクチンがあり、定期予防接種の対象となっている。
*第3編3章 3.3〕ウイルス性肝炎 p132~134
▶午後51
頭蓋内圧亢進を助長するのはどれか。
- 便秘
- 酸素療法
- 浸透圧利尿薬
- Fowler〈ファウラー〉位
① 便秘
便秘時には排泄の際に通常よりも強いいきみ(怒責)が必要で、腹圧がより高まり血圧、頭蓋内圧が亢進する。その他は頭蓋内圧を低下させる。
▶午後52
Aさん(42歳、男性)は、血尿を主訴に泌尿器科を受診した。診察の結果、Aさんは膀胱鏡検査を受けることになった。
Aさんへの検査についての説明で適切なのはどれか。
- 「入院が必要です」
- 「前日は夕食を食べないでください」
- 「局所麻酔で行います」
- 「終了後は水分の摂取を控えてください」
③ 「局所麻酔で行います」
膀胱鏡検査は尿道口から内視鏡を挿入し、膀胱内部を直接観察する。尿道の長い男性では尿道局所麻酔の上で実施する。
×① 「入院が必要です」
膀胱鏡検査は日帰りで行うことができる。
×② 「前日は夕食を食べないでください」
膀胱鏡検査前の食事制限は不要である。
×④ 「終了後は水分の摂取を控えてください」
尿路感染を防ぐために、水分摂取を勧めて排尿を促す。
▶午後53
Aさん(85歳、男性)は、認知症である。Aさんは肺炎で入院し、病状が改善したため、主治医は退院を許可した。Aさんは「家に帰りたい」と繰り返し言っているが、同居していた長男夫婦は高齢者施設への入所を希望している。
このときの看護師の対応で最も適切なのはどれか。
- 主治医に退院後の療養場所を決定してもらう。
- 長男夫婦にAさんの希望を尊重するよう話す。
- 長男夫婦に入所が可能な高齢者施設の情報を提供する。
- 長男夫婦がAさんの施設への入所を希望している理由を確認する。
④ 長男夫婦がAさんの施設への入所を希望している理由を確認する。
本人の希望を尊重することも重要であるが、同居する長男夫婦が施設入所を希望しており、同居・介護に不安を抱いていると考えられる。本人が認知症であり、その程度を含めて長男夫婦に確認し、受けられる社会的資源を考え、双方が納得できる形を模索することが適切である。
▶午後54
高齢者の蛋白質・エネルギー低栄養状態〈protein-energy malnutrition:PEM〉について正しいのはどれか。
- 体脂肪の消耗はみられない。
- 要介護度が高いほどPEMの発症率は高い。
- PEMの発症率は心疾患によるものが最も高い。
- 栄養指標は血清アルブミン3.7g/dL以下である。
② 要介護度が高いほどPEMの発症率は高い。
蛋白質・エネルギー低栄養状態〈PEM〉は血清アルブミン値が3.5g/dL以下を指標とし、特に口腔機能の低下による食事量の減少、栄養素の偏りが生じる高齢者で起こりやすく、体脂肪や骨格筋の減少がみられる。
▶午後55
加齢による視覚の変化とその原因の組合せで正しいのはどれか。
- 老視――毛様体筋の萎縮
- 色覚異常――眼圧の亢進
- 視野狭窄――散瞳反応時間の延長
- 明暗順応の低下――水晶体の硬化
① 老視――毛様体筋の萎縮
毛様体筋は、遠くを見るときは弛緩して水晶体を薄く、近くを見るときは収縮して水晶体を厚くすることでピント調整を行っているが、生理的加齢(老視)に伴い毛様体筋の萎縮、水晶体の弾力性の低下が起こり、ピント調整機能が低下する。
×② 色覚異常――眼圧の亢進
×③ 視野狭窄――散瞳反応時間の延長
眼圧の亢進を原因とし、視野の狭窄などの症状が生じるものは緑内障である。
×④ 明暗順応の低下――水晶体の硬化
明暗順応の低下は、瞳孔の周囲にある光の量を調節する虹彩の機能が、加齢により低下することで生じる。
▶午後56
Aさん(80歳、男性)は、肺炎と高血圧症で入院している。入院日の夜からAさんにはせん妄の症状がみられる。Aさんの家族は「しっかりした人だったのに急におかしくなってしまった」と動揺している。
せん妄についてAさんの家族への説明で正しいのはどれか。
- 「認知症の一種です」
- 「昼間に起こりやすいです」
- 「一度起こると治りません」
- 「環境の変化で起こることがあります」
④ 「環境の変化で起こることがあります」
せん妄は睡眠障害や見当識障害、幻覚・妄想、気分障害などを症状とするもので、手術や入院など環境の変化によるストレス等でも一時的に生じることがある。とくに夜間に不安感が強くなり不眠と重なって起こりやすい(夜間せん妄)。
▶午後57
大腿骨転子部骨折のため人工骨頭置換術を行った。
術後の腓骨神経麻痺予防のための看護で適切なのはどれか。
- 大腿四頭筋訓練を実施する。
- 患側下肢を外旋位に固定する。
- 患側下肢に弾性ストッキングを着用する。
- 患側下肢の母趾と第2趾間の知覚異常の有無を観察する。
④ 患側下肢の母趾と第2趾間の知覚異常の有無を観察する。
人工骨頭置換術は大腿骨頭を切除して人工骨頭に置換する手術で、術後の体位により膝外側の腓骨頭部が外部から圧迫されると腓骨神経麻痺が生じる。その予防のため、特徴的な足関節や足背、足趾(指)の知覚異常の有無を確認する。
×① 大腿四頭筋訓練を実施する。
大腿四頭筋訓練は筋力低下の防止のために実施される。
×② 患側下肢を外旋位に固定する。
股関節を外旋位に固定すると腓骨頭部が圧迫され、腓骨神経麻痺が生じやすくなる。
×③ 患側下肢に弾性ストッキングを着用する。
弾性ストッキングは下肢の深部静脈血栓症の防止のために用いられる。
▶午後58
小規模多機能型居宅介護で正しいのはどれか。
- 都道府県が事業者を指定する。
- 介護給付の施設サービスの1つである。
- 1日あたりの利用定員は19人以下である。
- 要介護者の状態に応じて短期間の宿泊が可能である。
④ 要介護者の状態に応じて短期間の宿泊が可能である。
小規模多機能型居宅介護は介護保険法に定めるサービスで、居宅または通所、短期間宿泊(ショートステイ)で受ける日常生活上の世話および機能訓練をいう。
×① 都道府県が事業者を指定する。
×② 介護給付の施設サービスの1つである。
介護保険法のサービス類型のうち、居宅サービスと施設サービスは都道府県が、地域密着型サービスは市町村が指定・監督を行う。小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであるため、市町村が指定・監督を行う。
×③ 1日あたりの利用定員は19人以下である。
小規模多機能型居宅介護では、通いの利用定員は18人、泊まりの利用定員は9人を最大とする。
*第5編1章 3.介護給付 p222~225
▶午後59
Aちゃん(3歳、女児)は母親とともに小児科外来を受診した。診察の結果、Aちゃんは血液検査が必要と判断され、処置室で採血を行うことになった。
看護師の対応で適切なのはどれか。
- 処置前、母親ひとりに採血の説明をする。
- 坐位で行うか仰臥位で行うかをAちゃんに選ばせる。
- 注射器に血液の逆流が見られた時に「終わったよ」とAちゃんに伝える。
- 処置後、Aちゃんと採血について話さないようにする。
② 坐位で行うか仰臥位で行うかをAちゃんに選ばせる。
小児医療において、本人のアドボカシー(権利擁護・代弁)は重要で、本人の意思や自己決定を尊重することが求められる。
▶午後60
正常に発達している小児が2歳0か月ころ、新たに獲得する言語で正しいのはどれか。
- 「おちゃ、ちょうだい」
- 「おかしがないの」
- 「これ、なあに」
- 「まんま」
① 「おちゃ、ちょうだい」
乳幼児の発達スクリーニング検査として用いられるDENVERⅡ(デンバー発達判定法)では、2語文は1歳10か月ころに半数程度の乳幼児が可能となる。なお、④意味のある1語は1歳ころが目安で、②格助詞「が」を用いた言語、③疑問文は2語文より後の獲得である。
▶午後61
Aちゃん(3歳0か月)は、午後から38.0℃の発熱があったが、食事は摂取でき活気があった。夜間になり、3回嘔吐したため救急外来を受診した。来院時、Aちゃんは傾眠傾向にあった。診察の結果、髄膜炎が疑われ、点滴静脈内注射を開始し入院した。入院時、Aちゃんは、体温38.5℃、呼吸数30/分、心拍数120/分、血圧102/60mmHgであった。
入院時のAちゃんへの対応で最も優先度が高いのはどれか。
- 冷罨法を行う。
- 水平仰臥位を保つ。
- 意識レベルを観察する。
- 大泉門の状態を観察する。
③ 意識レベルを観察する。
細菌性髄膜炎の症状として、項部硬直、高熱、羞明(光過敏)、錯乱、頭痛、嘔吐などがあげられ、進行すると意識障害や痙攣がみられる。意識レベルを優先的に確認する必要があり、評価時には小児用のグラスゴー・コーマ・スケール〈GCS〉やジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉を用いる。
▶午後62
食物アレルギーのある8歳の児童がアナフィラキシーショックを発症した場合の対応として適切なのはどれか。
- 水分の補給
- 抗ヒスタミン薬の内服
- 副腎皮質ステロイドの吸入
- アドレナリンの筋肉内注射
④ アドレナリンの筋肉内注射
アナフィラキシーショックはⅠ型アレルギー(即時型アレルギー)に分類され、体内に入った特定の原因物質(抗原)に対するIgE抗体の反応による急性の過敏反応をいう。血圧の低下や呼吸器障害に対してアドレナリンの筋肉内注射を行うことが適切である。
▶午後63
A君(15歳、男子)は、病院に併設された院内学級に通いながら骨肉腫に対する治療を続けていた。現在、肺に転移しており終末期にある。呼吸困難があり、鼻腔カニュ-ラで酸素(2L/分)を投与中である。A君の食事の摂取量は徐々に減っているが、意識は清明である。1週間後に院内で卒業式が予定されている。A君は「卒業式は出席したい」と話している。
看護師のA君への対応として最も適切なのはどれか。
- 今の状態では出席は難しいと話す。
- 出席できるように準備しようと話す。
- 出席を決める前に体力をつけようと話す。
- 卒業式の前日に出席するかどうか決めようと話す。
② 出席できるように準備しようと話す。
終末期患者の意思や自己決定を尊重することが望ましく、「卒業式は出席したい」というA君の希望を実現するためのサポートを行うことが適切である。
▶午後64
妊娠中期から末期の便秘について適切なのはどれか。
- 妊娠中期は妊娠末期と比較して生じやすい。
- エストロゲンの作用が影響している。
- 子宮による腸の圧迫が影響している。
- けいれん性の便秘を生じやすい。
③ 子宮による腸の圧迫が影響している。
妊娠期には、女性ホルモンであるプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が増加して腸の蠕動運動が抑制されるほか、特に妊娠末期で子宮が増大して腸が圧迫されるため、便秘が生じやすい。
▶午後65
正常な胎児の分娩機転について正しいのはどれか。
- 分娩開始時、胎児の背中は母体の背側にある。
- 後頭部が先進する。
- 胎児の顔は母体の腹側を向いて娩出される。
- 肩甲横径が骨盤の横径に一致する方向で娩出される。
② 後頭部が先進する。
×① 分娩開始時、胎児の背中は母体の背側にある。
○② 後頭部が先進する。
骨盤内への嵌入時、胎児の頤部(あご先)が胸部に接近することで後頭部(小泉門)が先進し、胎児の背中は母体の右側または左側に位置する。
×③ 胎児の顔は母体の腹側を向いて娩出される。
×④ 肩甲横径が骨盤の横径に一致する方向で娩出される。
娩出時は、胎児の顔は母体の背側を向き、胎児の肩甲横径(肩幅)が骨盤の前後径に一致する方向で娩出される。
▶午後66
新生児室の環境で適切なのはどれか。
- 無菌室
- 湿度は50~60%
- 温度は27~28℃
- コット間の距離は60cm
② 湿度は50~60%
①無菌室である必要はなく、③温度は25℃前後、④コット(新生児用の可動式ベッド)間の距離は60㎝以上に設定する。
▶午後67
Aさん(50歳、男性)は、アルコール依存症のために断酒目的で入院した。入院前日の夜まで毎日飲酒をしていたと話している。
入院当日に優先的に行うのはどれか。
- 抗酒薬の説明を行う。
- 断酒会への参加を促す。
- 振戦の有無を確認する。
- ストレス対処行動を分析する。
③ 振戦の有無を確認する。
長期間の飲酒歴のある重度のアルコール依存症者が飲酒を中断または減量した際、離脱症状として振戦せん妄が生じ、著明な自律神経機能亢進や幻覚などの症状が現れる。依存性の程度の把握や発症時の対応を適切に行うため、その有無の確認を優先的に行うことが適している。
▶午後68
Aさん(23歳、女性)は、トラックの横転事故に巻き込まれて一緒に歩いていた友人が死亡し、自分も軽度の外傷で入院している。看護師がAさんに「大変でしたね」と声をかけると、笑顔で「大丈夫ですよ。何のことですか」と言うだけで、事故のことは話さない。Aさんは検査の結果、軽度の外傷以外に身体的な異常や記憶の障害はない。
この現象はどれか。
- 解離
- 昇華
- 合理化
- 反動形成
① 解離
防衛機制とは、直面した危機や困難に対し、その不安を和らげるために無意識に働く心理的な防衛反応である。解離は、耐えがたい感情や困難を記憶・意識から切り離し、自分の体験として統合しないことをいう。
×② 昇華
昇華は、反社会的な性的欲求や攻撃的欲求を、芸術やスポーツ、学業などの社会的行動に変えて発散することをいう。
×③ 合理化
合理化は、耐えがたい感情や欲求に対してもっともらしい理由を付けて、自分自身を納得させることをいう。
×④ 反動形成
反動形成は、抑圧された無意識の欲求を表出しないよう、それと反対の意識・行動を強調して示すことをいう。
▶午後69
精神疾患患者の家族の感情表出〈expressed emotion:EE〉について正しいのはどれか。
- 家族の訴えが明確になる。
- 認知行動療法の技法である。
- 統合失調症の再発に関連がある。
- 家族のストレス対処として効果的である。
③ 統合失調症の再発に関連がある。
感情表出〈EE〉は感情の表し方をいい、感情を表す際に批判性・敵意性・情緒性などが強く見られる場合はEEが高いとされる。特に統合失調症患者の家族が患者本人に対して高いEEを向けるほど、本人の再発率が高いとされる。
▶午後70
Aさん(21歳、男性)は、統合失調症と診断され、入院してハロペリドールの投与が開始された。入院後3日、39.5℃の急激な発熱、発汗、筋固縮および意識障害を認めた。
Aさんの状態で考えられるのはどれか。
- 昏迷
- 悪性症候群
- てんかん発作
- 静座不能〈アカシジア〉
② 悪性症候群
悪性症候群とは、向精神薬の投与に伴う発熱、意識障害、錐体外路症状(筋緊張等)、自律神経症状(発汗)を主な特徴とする副作用〈有害事象〉であり、適切な治療を行わなければ死に至るおそれもある。
×① 昏迷
昏迷とは激しい物理的刺激を加えなければ反応がなく、覚醒も一瞬であるような意識障害をいう。なお、反応や覚醒が一切ない状態を昏睡という。
×③ てんかん発作
てんかん発作とは、脳神経細胞の異常な電気活動により、運動障害や感覚障害、自律神経障害、意識障害などの症状をもたらすことをいう。向精神薬の副作用〈有害事象〉では認められない。
×④ 静座不能〈アカシジア〉
アカシジア〈静座不能〉は向精神薬などの服用により起こる副作用〈有害事象〉で、座り続けることができずにそわそわと動き回る不随意運動を特徴とする。
▶午後71
訪問看護師が、在宅医療に移行する患者の退院調整のために医療機関の看護師から得る情報で、優先度が高いのはどれか。
- 医療処置の指導内容
- 経済的な問題への対応
- 介護サービス利用の有無
- 訪問看護指示書の記載内容
① 医療処置の指導内容
入院医療から在宅医療に移行する際には、医療機関で受けていた医療処置の切れ目のない継続が重要で、それに関する情報を元に在宅での医療資源等を考慮する。
▶午後72改題
健康保険法による訪問看護サービスで正しいのはどれか。
- サービス対象は65歳以上である。
- 介護支援専門員がケアプランを作成する。
- 末期の悪性腫瘍の療養者への訪問回数に制限はない。
- 特定医療費(指定難病)受給者証を持っている者は自己負担額1割である。
③ 末期の悪性腫瘍の療養者への訪問回数に制限はない。
末期の悪性腫瘍など厚生労働大臣が定める疾病等の者には、健康保険等の医療保険から訪問看護サービスが給付され、原則週3日以内である訪問看護の提供日数を超えて利用が可能となっている。
×① サービス対象は65歳以上である。
原則として介護保険から訪問看護サービスが給付される対象は、65歳以上の第1号被保険者、40歳~64歳の特定疾病に罹患した第2号被保険者で、要介護認定された者である。それ以外の者には医療保険から給付が行われ、年齢の制限はない。
×② 介護支援専門員がケアプランを作成する。
介護支援専門員による介護サービス計画〈ケアプラン〉の作成を受けられるのは、介護保険による給付である。
×④ 特定医療費(指定難病)受給者証を持っている者は自己負担額1割である。
特定医療費(指定難病)受給者証は、指定難病の対象と認定された者に交付されるもので、自己負担割合は2割となり、所得や重症度に応じて月額限度額が設けられている。
*第4編1章 3.2〕訪問看護 p170~172
▶午後73
Aさんは、1人で暮らしている。血管性認知症があり、降圧薬を内服している。要介護1で、週3回の訪問介護と週1回の訪問看護を利用している。最近では、Aさんは日中眠っていることが多く、週1回訪ねてくる長男に暴言を吐くようになっている。
Aさんの長男の話を傾聴した上で、訪問看護師の長男への対応で最も適切なのはどれか。
- デイサービスの利用を提案する。
- Aさんを怒らせないように助言する。
- Aさん宅に行かないように助言する。
- 薬の内服介助をするように提案する。
① デイサービスの利用を提案する。
収集した情報のうち、日中眠っていることが多く、生活リズム(概日リズム)の乱れが最も懸念されるため、日中に老人デイサービスセンターに通う(通所介護)ことで生活リズムを整えることが、提案として適している。
▶午後74
在宅酸素療法(1L/分24時間)を行っている療養者の居住地域で2週間後に日中3時間の停電が予定されている。
停電への対応で最も適切なのはどれか。
- 事前の呼吸訓練
- 医療機関への入院
- 自家発電器の購入
- 携帯用酸素ボンベの準備
④ 携帯用酸素ボンベの準備
在宅酸素療法〈HOT〉における停電への備えとして、残量が十分な携帯用酸素ボンベを用意し、停電により酸素濃縮器が使用できなくなった際に速やかに切り替えることができるようにすることが優先される。
▶午後75
病院における医療安全管理体制で正しいのはどれか。
- 特定機能病院の医療安全管理者は兼任でよい。
- 医療安全管理のために必要な研修を3年に1度行う。
- 医療安全管理のための指針を整備しなければならない。
- 医薬品安全管理責任者の配置は義務づけられていない。
③ 医療安全管理のための指針を整備しなければならない。
医療法に基づき、病院の管理者は、医療に係る安全管理のための指針の整備、委員会の開催、職員研修の実施などの体制を整備しなければならない。
×① 特定機能病院の医療安全管理者は兼任でよい。
病院には医療安全管理者を配置することとされ、特に高度医療等を提供する特定機能病院では専任であることが要件である。
×② 医療安全管理のために必要な研修を3年に1度行う。
医療安全管理のため、年2回程度の職員研修の実施体制を確保する。
×④ 医薬品安全管理責任者の配置は義務づけられていない。
病院の管理者は、医療品の安全使用のため、医薬品安全管理責任者を配置しなければならない。
*第4編1章 3.9〕医療安全管理体制 p178~179
▶午後76
大規模災害時のトリアージで緊急度が最も高いと判断されるのはどれか。
- 下腿に創傷があるが補助があれば歩行できる。
- 自発呼吸はあるが橈骨動脈は触知できない。
- 気道確保しても自発呼吸がない。
- 開眼・閉眼の指示に応じる。
② 自発呼吸はあるが橈骨動脈は触知できない。
START法によるトリアージ(災害時等の治療優先度の決定)では、歩行、呼吸、循環、意識の順番に確認を行い、傷病者の緊急度に応じて、優先順に赤、黄、緑、黒と分類している。呼吸はあるが脈拍が触れない場合は赤に分類され、最優先治療群である。
×① 下腿に創傷があるが補助があれば歩行できる。
歩行は可能だが、負傷がある場合は緑(軽処置群)に分類される。
×③ 気道確保しても自発呼吸がない。
呼吸はなく、気道を確保しても呼吸が再開しない場合は黒(不処置群)に分類される。
×④ 開眼・閉眼の指示に応じる。
簡単な指示に従える場合は黄(非緊急治療群)に分類される。
▶午後77
災害の慢性期(復興期)における避難所内の看護師の役割で最も適切なのはどれか。
- 住宅支援
- 感染予防
- 安全な避難と誘導
- 居住スペースの確保
② 感染予防
復興期においては、中長期にわたる避難所等の生活により活動性が低下することで、身体機能の低下をもたらす廃用症候群が生じやすくなるなど感染症への抵抗力が弱まるため、一層の感染対策が必要である。
▶午後78改題
国際連合児童基金〈UNICEF〉の報告による5歳未満児の死亡率(2019年)が最も高い地域はどれか。
- サハラ以南のアフリカ
- 南アジア
- 北アメリカ
- ヨーロッパ・中央アジア
① サハラ以南のアフリカ
国際連合児童基金〈UNICEF〉の報告(世界子供白書2021)によると、地域別にみた2019年の5歳未満児死亡率(出生千対)は、サハラ以南のアフリカが76(東部・南部アフリカ55、西部・中部アフリカ95)と最も高い。
▶午後79
Aさんは、3年前に来日した外国人でネフローゼ症候群のため入院した。Aさんは日本語を話し日常会話には支障はない。Aさんの食事について、文化的に特定の食品を食べてはいけないなどの制限があるがどうしたらよいかと、担当看護師が看護師長に相談した。
担当看護師に対する看護師長の助言で最も適切なのはどれか。
- 日本の病院なので文化的制限には配慮できないと話す。
- 文化的制限は理解できるが治療が最優先されると話す。
- Aさんの友人から文化的制限に配慮した食事を差し入れてもらうよう話す。
- 文化的制限に配慮した食事の提供が可能か栄養管理部に相談するよう話す。
④ 文化的制限に配慮した食事の提供が可能か栄養管理部に相談するよう話す。
ネフローゼ症候群は低蛋白血症により浮腫(むくみ)が生じる疾患であり、食事療法としてはナトリウム(塩分)の摂取を制限することが必要である。本問では、患者の文化的制限に配慮した上で、適切な食事療法を図るため、栄養管理部と相談することが適切である。
▶午後80
血液検査で抗凝固剤が入っている採血管を使用するのはどれか。
- 血球数
- 電解質
- 中性脂肪
- 梅毒抗体
- 交差適合試験
① 血球数
血液凝固により血球数の確認ができなくなるため、血球数を検査する際には抗凝固剤の入った採血管を使用する。
▶午後81
市町村の業務でないのはどれか。
- 妊娠届の受理
- 母子健康手帳の交付
- 乳児家庭全戸訪問事業
- 3歳児健康診査
- 小児慢性特定疾患公費負担医療給付
⑤ 小児慢性特定疾患公費負担医療給付
児童福祉法の規定により、小児慢性特定疾病にかかっている18歳未満の児童等を対象に、都道府県、指定都市、中核市が実施主体となって医療費の自己負担分の一部を助成している。
×① 妊娠届の受理
×② 母子健康手帳の交付
母子保健法に基づき、妊娠した者は速やかに市町村長に妊娠の届出をすることとなっており、市町村は届け出をした者に対して母子健康手帳を交付する。
×③ 乳児家庭全戸訪問事業
児童福祉法に基づき、市町村は生後4か月までの乳児のいる全家庭を訪問し、乳児と保護者の心身の状況や養育環境の把握などを行う。
×④ 3歳児健康診査
母子保健法に基づき、市町村は1歳6か月児および3歳児に対して健康診査を行わなければならない。
*第3編2章 1.1〕母子保健法に基づく施策 p96~99
*第3編4章 2.7〕小児慢性特定疾病対策 p157
▶午後82
糖尿病神経障害のある患者へのフットケアの説明で適切なのはどれか。
- 「靴は大きめのサイズがよいです」
- 「靴下を履くようにしてください」
- 「1週間に1回は足の観察をしてください」
- 「足の傷は痛くなったら受診してください」
- 「外出後は足をアルコールで消毒しましょう」
② 「靴下を履くようにしてください」
糖尿病患者に多くみられる感覚障害では血管や神経の障害による足病変が起こりやすく、わずかな創傷からでも重症化するおそれがあるため、外出しない場合でも自宅等では靴下を履くことが適している。
×① 「靴は大きめのサイズがよいです」
足にフィットした靴擦れしない靴を選ぶ。
×③ 「1週間に1回は足の観察をしてください」
毎日両足部を観察して異常を見逃さないようにする。
×④ 「足の傷は痛くなったら受診してください」
痛みがなくとも創傷や火傷、鶏眼〈うおのめ〉などがあれば、速やかに受診する。
×⑤ 「外出後は足をアルコールで消毒しましょう」
刺激の強いアルコールではなく、石けんを泡立ててこすらないように足を洗い、清潔を保つ。
▶午後83
Ⅳ型(遅延型)アレルギー反応について正しいのはどれか。2つ選べ。
- IgE抗体が関与する。
- 肥満細胞が関与する。
- Tリンパ球が関与する。
- ヒスタミンが放出される。
- ツベルクリン反応でみられる。
③ Tリンパ球が関与する。
⑤ ツベルクリン反応でみられる。
アレルギー反応はⅠ型からⅣ型に分類される。Ⅳ型アレルギー(遅延型アレルギー)は感作Tリンパ球が関与するもので、金属アレルギーや接触皮膚炎、ツベルクリン反応などが挙げられる。その他はⅠ型アレルギー(即時型アレルギー)の特徴である。
▶午後84
肝硬変でみられる検査所見はどれか。2つ選べ。
- 血小板増多
- 尿酸値上昇
- 血清アルブミン値低下
- 血中アンモニア値上昇
- プロトロンビン時間短縮
③ 血清アルブミン値低下
④ 血中アンモニア値上昇
③ アルブミンは肝臓で作られる蛋白質で、血清膠質浸透圧を保持して物質を運搬する作用をもち、肝硬変により血清アルブミンが低下する。
④ アンモニアなどの有害物質を解毒・分解する肝臓の機能が肝硬変により低下することで、血中アンモニア値が上昇する。
▶午後85
膀胱留置カテーテル挿入中のシャワー浴について適切なのはどれか。2つ選べ。
- 実施前に蓄尿バッグを空にする。
- シャワー中はカテーテルを閉鎖する。
- 蓄尿バッグは腰より高い位置にかける。
- 終了後は挿入部をエタノールで消毒する。
- 終了後はカテーテルを固定するテープの位置を変える。
① 実施前に蓄尿バッグを空にする。
⑤ 終了後はカテーテルを固定するテープの位置を変える。
膀胱留置カテーテルは排尿が困難な場合に挿入されるもので、シャワー浴の実施前には逆流を防ぐため蓄尿バッグを空にし、終了後は皮膚トラブルを避けるために固定テープの位置を変える。
▶午後86
潰瘍性大腸炎と比べたCrohn〈クローン〉病の特徴について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 悪性化の頻度は低い。
- 瘻孔を併発しやすい。
- 初発症状は粘血便である。
- 炎症は大腸に限局している。
- 好発年齢は50歳以上である。
① 悪性化の頻度は低い。
② 瘻孔を併発しやすい。
クローン病は口腔から肛門に至る消化管の部位に炎症やそれに伴う瘻孔(身体組織に開いた穴)、潰瘍などが起こる指定難病で、潰瘍性大腸炎に比べて悪性化の頻度は低い。
×③ 初発症状は粘血便である。
×④ 炎症は大腸に限局している。
潰瘍性大腸炎の説明であり、粘膜にびらんや潰瘍を形成する原因不明の大腸(特に直腸)の炎症性疾患で、滲出性下痢や粘血便はその特徴である。
×⑤ 好発年齢は50歳以上である。
クローン病は10~20歳代の若年層に好発する。
▶午後87
抗甲状腺ホルモン薬の副作用はどれか。2つ選べ。
- 多毛
- 眼球突出
- 中心性肥満
- 肝機能障害
- 無顆粒球症
④ 肝機能障害
⑤ 無顆粒球症
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)では頻脈など不整脈や眼球突出がみられる。その治療薬である抗甲状腺ホルモン薬の副作用〈有害事象〉としては、主に肝機能障害や無顆粒球症が挙げられる。
▶午後88
胎児と胎児付属物について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 妊娠4週では、Doppler〈ドプラ〉法で胎児心音が聴取できる。
- 妊娠12週では、胎盤が完成している。
- 妊娠24週では、胎児の呼吸様運動がみられる。
- 妊娠26週では、胎児の胎位は固定している。
- 妊娠36週では、肺胞内に十分な肺表面活性物質が分泌されている。
③ 妊娠24週では、胎児の呼吸様運動がみられる。
⑤ 妊娠36週では、肺胞内に十分な肺表面活性物質が分泌されている。
在胎26週ころに肺胞などの肺構造が完成し、在胎34週ころに肺表面活性物質(肺サーファクタント)が十分に分泌されることで、胎児の肺機能が成熟する。①は12週、②は16週、④は30週ころである。
▶午後89
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律により、病院の管理者が精神科病院に入院中の者に対して制限できるのはどれか。2つ選べ。
- 手紙の発信
- 弁護士との面会
- 任意入院患者の開放処遇
- 信書の中の異物の受け渡し
- 人権擁護に関する行政機関の職員との電話
③ 任意入院患者の開放処遇
④ 信書の中の異物の受け渡し
③ 本人の同意に基づく任意入院患者においては、原則として開放的な環境での処遇(開放処遇)を受けるが、医療または保護のために必要があると医師が判断した場合は、開放処遇を制限できる。
④ 信書の受領において異物が入っていると疑われる場合は、病院職員立ち会いの下、本人が開封し、異物を取り除く等の処置を行うことができる。
×① 手紙の発信
×② 弁護士との面会
×⑤ 人権擁護に関する行政機関の職員との電話
隔離や身体的拘束などの行動制限がある場合でも、信書の発受、行政機関の職員や代理人である弁護士との電話・面会については制限できない。
*第3編2章 4.3〕精神科の入院制度 p112~114
▶午後90
「フロセミド注15mgを静脈内注射」の指示を受けた。注射薬のラベルに「20mg/2mL」と表示されていた。
注射量を求めよ。
ただし、小数点以下第2位を四捨五入すること。
解答:①.②mL
① 1
② 5
「20mg/2mL」は、注射薬2mLのうちフロセミドが20mg含まれることを示す。フロセミドを15mg注射する場合、必要注射量をXとして、
15:X=20:2
20X=15×2
20X=30
X=30÷20
X=1.5mLとなる。
資料 厚生労働省「第100回保健師国家試験、第97回助産師国家試験、第103回看護師国家試験及び第103回看護師国家試験(追加試験)の問題および正答について」
注 当ページに掲載する解説は、看護師国家試験を解く上での理解しやすさを重視しているため、本来はより専門的・学術的な説明や議論がある部分を一部省略しています。正確な情報を掲載するように努めていますが、特に医療・看護行為や疾病、薬剤等の説明において、その正確性を保証するものではありませんので、学習以外での使用はお控え下さい。
▼第103回看護師国家試験
▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 保健師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 助産師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 医師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 薬剤師国家試験に出る国民衛生の動向