第106回看護師国家試験 午前一般問題
平成29年2月19日(日)に実施された第106回看護師国家試験について、午前問題のうち一般問題の正答と解説を示します。
「国民衛生の動向2024/2025」で内容を解説している問題に関しては、その参照章・ページを示しているので、同書を併用しながらの利用をおすすめします。
▼第106回看護師国家試験
|
|
厚生の指標増刊
国民衛生の動向 2024/2025
発売日:2024.8.27
定価:2,970円(税込)
412頁・B5判
雑誌コード:03854-08
ご注文は書店、または下記ネット書店、電子書籍をご利用下さい。
|
ネット書店

電子書籍

▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
午前 一般問題
▶午前10(必修除外)
ヒューマンエラーによる医療事故を防止するための対策で最も適切なのはどれか。
- 性格検査の実施
- 事故発生時の罰則の規定
- 注意力強化のための訓練の実施
- 操作を誤りにくい医療機器の導入
④ 操作を誤りにくい医療機器の導入
人間が引き起こすヒューマンエラーを完全に防ぐことはできない。性格検査や訓練、懲罰などによって人間を作業環境・方法に合わせようとするよりも、人間はミスを起こすという前提に立って、操作機器や手順などの作業環境・方法を人間に合うように改善することが、ヒューマンエラーによる医療事故を防止する上で有効である(エラープルーフ化)。
▶午前15(必修除外)
せん妄の誘発因子はどれか。
- 身体拘束
- 心血管障害
- 低栄養状態
- 電解質バランス異常
① 身体拘束
せん妄は睡眠障害や見当識障害、幻覚・妄想、気分障害などを症状とするもので、せん妄発症に強く影響する誘発因子として入院等に伴う環境変化や身体拘束が挙げられ、直接因子としては心血管障害や低栄養状態などが関わる。
▶午前26
単層円柱上皮はどれか。
- 表皮
- 腹膜
- 膀胱
- 胃
④ 胃
上皮組織は、体表面や管腔、体腔の表面を覆っている上皮細胞の層をいい、層の数により単層上皮、重層上皮、さらに細胞の形により扁平上皮、立方上皮、円柱上皮などに分類される。胃や小腸、大腸などは単層円柱上皮である。
×① 表皮
皮膚表皮や食道は重層扁平上皮である。
×② 腹膜
腹膜や胸膜は単層扁平上皮である。
×③ 膀胱
膀胱や尿管は移行上皮(尿路上皮)である。
▶午前27
角加速度を感知するのはどれか。
- 耳管
- 前庭
- 耳小骨
- 半規管
④ 半規管
角加速度とは物体が回転運動をするときの回転の速さである角速度の変化率をいい、内耳にある半規管では頭部の回転等に伴うリンパ液の回転により有毛細胞が揺れ、角加速度を感知する。なお、②前庭の耳石器(卵形嚢・球形嚢)では直線加速度を感知する。
▶午前28
縦隔に含まれるのはどれか。
- 肺
- 胸腺
- 副腎
- 甲状腺
② 胸腺
縦隔は左右の肺の間にある空間で、胸腺や心臓、大血管、食道、気管などが含まれる。
▶午前29
膵液について正しいのはどれか。
- 弱アルカリ性である。
- 糖質分解酵素を含まない。
- セクレチンによって分泌量が減少する。
- Langerhans〈ランゲルハンス〉島のβ細胞から分泌される。
① 弱アルカリ性である。
膵臓で分泌される膵液は、pH1~2の強酸性の胃酸を中和するため、弱アルカリ性である。
×② 糖質分解酵素を含まない。
膵液は、脂肪分解酵素(リパーゼ)や糖質分解酵素(アミラーゼ)、タンパク分解酵素(トリプシン)などを含む。
×③ セクレチンによって分泌量が減少する。
十二指腸から分泌されるセクレチンにより、十二指腸への膵液分泌が促される(外分泌機能)。
×④ Langerhans〈ランゲルハンス〉島のβ細胞から分泌される。
膵臓のランゲルハンス島のα細胞からグルカゴン、β細胞からインスリン、δ細胞からそれらの分泌量を調整するソマトスタチンが分泌され、そのホルモンの働きにより血糖値の調整が行われる(内分泌機能)。
▶午前30
ホルモンと分泌部位の組合せで正しいのはどれか。
- サイロキシン――副甲状腺
- テストステロン――前立腺
- バソプレシン――副腎皮質
- プロラクチン――下垂体前葉
④ プロラクチン――下垂体前葉
プロラクチンは視床下部の下垂体前葉から分泌され、分娩後の授乳刺激により乳汁産生を促進するなど乳汁分泌作用を持つ。
×① サイロキシン――副甲状腺
サイロキシンは甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンの一種で、全身の代謝を調整する働きを持つ。
×② テストステロン――前立腺
男性ホルモンであるテストステロンは精巣から分泌され、タンパク合成を促進することにより骨格筋の成長・維持を行う。
×③ バソプレシン――副腎皮質
バソプレシンは下垂体後葉から分泌され、一次脱水時に水再吸収を促して尿量を減少させるなどの働きを持つ。
▶午前31
腹部CTを別に示す。

矢印で示す部位について正しいのはどれか。
- 肥満細胞で構成される。
- 厚さはBMIの算出に用いられる。
- 厚い場合は洋梨型の体型の肥満が特徴的である。
- 厚い場合はメタボリックシンドロームと診断される。
③ 厚い場合は洋梨型の体型の肥満が特徴的である。
矢印の示す部位は皮下脂肪であり、それより内側の濃い部分は内臓脂肪である。皮下脂肪型の肥満では洋梨型の体型、内臓脂肪型の肥満ではリンゴ型の体型が特徴的である。
×① 肥満細胞で構成される。
肥満細胞はアレルギー反応に関与する細胞であり、肥満とは関係ない。肥満に関係する細胞は脂肪細胞である。
×② 厚さはBMIの算出に用いられる。
BMIの算出には体重(kg)÷身長(m)2が用いられ、BMIが25以上で肥満とされる。
×④ 厚い場合はメタボリックシンドロームと診断される。
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の診断には内臓脂肪面積に相当する腹囲が用いられ、男性で85cm以上、女性で90cm以上を診断基準とする。
▶午前32
放射線療法について正しいのはどれか。
- Gyは吸収線量を表す。
- 主に非電離放射線を用いる。
- 電子線は生体の深部まで到達する。
- 多門照射によって正常組織への線量が増加する。
① Gyは吸収線量を表す。
放射線を受けた物質が、1kg当たりにエネルギーを吸収した量(吸収線量)をGy(グレイ)という単位で表す。
×② 主に非電離放射線を用いる。
×③ 電子線は生体の深部まで到達する。
放射線療法では、生体の深部まで到達するX線やγ線、皮膚表面に高い線量を照射できる電子線などの電離放射線が用いられる。
×④ 多門照射によって正常組織への線量が増加する。
多門照射では複数の方向から集中照射することで、正常組織への線量を抑えることができる。
▶午前33
Alzheimer〈アルツハイマー〉病で正しいのはどれか。
- 基礎疾患として高血圧症が多い。
- 初期には記銘力障害はみられない。
- アミロイドβタンパクが蓄積する。
- MRI所見では前頭葉の萎縮が特徴的である。
③ アミロイドβタンパクが蓄積する。
アルツハイマー病は、脳神経が変性して脳の一部が萎縮するアルツハイマー型認知症で、脳内で産生されるアミロイドβタンパクの蓄積が発症に関与するとされる。
×① 基礎疾患として高血圧症が多い。
高血圧症が基礎疾患となるものは血管性認知症である。
×② 初期には記銘力障害はみられない。
アルツハイマー型認知症の初期には記憶障害や実行機能障害がみられる。
×④ MRI所見では前頭葉の萎縮が特徴的である。
前頭葉や側頭葉の萎縮は前頭側頭型認知症の特徴である。アルツハイマー型認知症では頭頂葉の血流低下を特徴とする。
▶午前34
ペースメーカー装着患者における右心室ペーシング波形の心電図を別に示す。

心電図の記録速度は通常の25mm/秒であり、矢印で示した小さなノッチがペースメーカーからの電気刺激が入るタイミングを示している。
心電図波形によって計測した心拍数で正しいのはどれか。
- 30/分以上、50/分未満
- 50/分以上、70/分未満
- 70/分以上、90/分未満
- 90/分以上、99/分以下
③ 70/分以上、90/分未満
記録速度は1秒25mm、1分間では25×60=1500mmとなる。矢印で示したノッチ間は約18mmであり、1分間の心拍数は1500÷18=83.33...となる。
▶午前35
労働者災害補償保険法に規定されているのはどれか。
- 失業時の教育訓練給付金
- 災害発生時の超過勤務手当
- 有害業務従事者の健康診断
- 業務上の事故による介護補償給付
④ 業務上の事故による介護補償給付
労働者災害補償保険法に基づき、業務上の事由や通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡などに対して必要な保険給付を行っている。
×① 失業時の教育訓練給付金
雇用保険法に規定されている。
×② 災害発生時の超過勤務手当
労働基準法に規定されている。
×③ 有害業務従事者の健康診断
労働安全衛生法に規定されている。
*第8編 8.労働災害補償と業務上疾病 p306~308
▶午前36
高齢者における肺炎の三次予防はどれか。
- 口腔内の衛生管理
- 肺炎球菌ワクチンの接種
- 呼吸リハビリテーション
- 健康診断での胸部エックス線撮影
③ 呼吸リハビリテーション
疾病の予防対策には、生活習慣の改善や予防接種等により発症そのものを予防する一次予防、検診等により発症の早期発見・早期治療により重症化を予防する二次予防、リハビリテーション等により疾病の進行後の社会復帰を図る三次予防がある。①と②は一次予防、④は二次予防である。
*第3編1章 1.1〕生活習慣病の概念 p80
▶午前37
患者と看護師の関係において、ラポールを意味するのはどれか。
- 侵されたくない個人の空間
- 人間対人間の関係の確立
- 意図的な身体への接触
- 自己開示
② 人間対人間の関係の確立
ラポールは相互の親密な信頼関係を意味し、患者と医療従事者間の関係で重要となる。
▶午前38
看護における情報について正しいのはどれか。
- 尺度で測定された患者の心理状態は主観的情報である。
- 入院費用に関する患者の不安は客観的情報である。
- 観察した食事摂取量は客観的情報である。
- 既往歴は主観的情報である。
③ 観察した食事摂取量は客観的情報である。
患者の話や訴えから得られた情報は主観的情報で、観察や測定、既往歴で得られる客観的情報と区別して患者の状態を把握する。
▶午前39
Barré〈バレー〉徴候の査定の開始時と判定時の写真を別に示す。

左上肢のBarré〈バレー〉徴候陽性を示すのはどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
④ ④
上肢バレー徴候は、脳梗塞等による錐体路の障害により上肢に軽度の運動麻痺がある場合に現れるもので、写真のように麻痺側の上肢(当問では左上肢)が回内しながら下がってくる。
▶午前40
入院中の妻を亡くした直後の夫へのグリーフケアで最も適切なのはどれか。
- 妻の話を夫とすることは避ける。
- 夫の悲嘆が軽減してからケアを開始する。
- 夫が希望する場合は死後の処置を一緒に行う。
- 妻を亡くした夫のためのサポートグループへの参加を促す。
③ 夫が希望する場合は死後の処置を一緒に行う。
死別直後は死の衝撃から否認を経て死を受け入れる段階であり、遺族に対するグリーフケアとして、本人の希望を前提に死後処置を行い、死を受容することが適切である。
▶午前41
ヨード制限食が提供されるのはどれか。
- 甲状腺シンチグラフィ
- 慢性腎不全の治療
- 肝臓の庇護
- 貧血の治療
① 甲状腺シンチグラフィ
甲状腺シンチグラフィは放射性ヨード(ヨウ素)を内服して行う甲状腺の検査であり、正確な検査のために約1週間前からは海藻類などに多く含まれるヨードの摂取を制限する必要がある。
▶午前42
体位が身体に与える影響について正しいのはどれか。
- 座位から仰臥位になると楽に呼吸ができる。
- 立位と比較して座位の方が収縮期血圧は低い。
- 仰臥位から急に立位になると脈拍が速くなる。
- 立位からTrendelenburg〈トレンデレンブルグ〉位になると収縮期血圧が下降する。
③ 仰臥位から急に立位になると脈拍が速くなる。
急な立位により心拍出量・血圧の低下、脈拍の増加を引き起こし(起立性低血圧)、めまいやふらつき、意識障害による転倒や転落につながるリスクが高くなる。
×① 座位から仰臥位になると楽に呼吸ができる。
仰臥位では胸郭の運動が制限されて呼吸困難が強まるため、呼吸困難が生じている患者ではその軽減のため起座位による起座呼吸が多くみられる。
×② 立位と比較して座位の方が収縮期血圧は低い。
収縮期血圧は座位よりも立位が低く、拡張期血圧では立位よりも座位が低い。
×④ 立位からTrendelenburg〈トレンデレンブルグ〉位になると収縮期血圧が下降する。
仰臥位で頭部低位・腰部高位とするトレンデレンブルグ位は、ショックによる低血圧を来している場合に用いられることがある体位で、収縮期血圧の上昇がみられる。
▶午前43
洗髪を行うときに、患者のエネルギー消費が最も少ない体位はどれか。
- 仰臥位
- 端座位
- 起座位
- Fowler〈ファウラー〉位
① 仰臥位
仰臥位はエネルギー消費が最も少なく、ケリーパッドを用いた仰臥位による洗髪介助が実施される。
▶午前44
前腕部からの動脈性の外出血に対する用手間接圧迫法で血流を遮断するのはどれか。
- 鎖骨下動脈
- 腋窩動脈
- 上腕動脈
- 橈骨動脈
③ 上腕動脈
失血を防ぐための圧迫止血法には、ガーゼなどで出血部位を強く押さえる直接圧迫止血法と、出血部位に近い中枢側(心臓側)の動脈を手や指で圧迫する(用手)間接圧迫止血法がある。本問では、前腕部から近い中枢側の動脈として上腕動脈が適切である。
▶午前45
看護師が医療事故を起こした場合の法的責任について正しいのはどれか。
- 罰金以上の刑に処せられた者は行政処分の対象となる。
- 事故の程度にかかわらず業務停止の処分を受ける。
- 民事責任として業務上過失致死傷罪に問われる。
- 刑法に基づき所属施設が使用者責任を問われる。
① 罰金以上の刑に処せられた者は行政処分の対象となる。
保健師助産師看護師法に基づき、看護師免許付与における相対的欠格事由として以下を定め、いずれかに該当した場合は免許を与えないことがあり、看護師が該当した場合は厚生労働大臣が免許の取消し等の行政処分をすることができる。
- 罰金以上の刑に処せられた者
- 医事に関し犯罪または不正の行為のあった者
- 心身の障害により看護師の業務を適正に行うことができない者
- 麻薬、大麻またはあへんの中毒者
*第4編1章 4.4〕看護職員等 p193~197
▶午前46
疾患と原因となる生活習慣の組合せで適切なのはどれか。
- 低血圧症――飲酒
- 心筋梗塞――長時間労働
- 悪性中皮腫――喫煙
- 1型糖尿病――過食
② 心筋梗塞――長時間労働
長時間にわたる過重な労働は、脳・心臓疾患との関連性が強いという医学的知見が得られている。
×① 低血圧症――飲酒
飲酒が原因となるものには、高血圧症などがある。
×③ 悪性中皮腫――喫煙
喫煙が原因となるものには、がんや脳卒中、心疾患、慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉などがある。
×④ 1型糖尿病――過食
過食が原因となるものは2型糖尿病で、1型糖尿病は生活習慣と無関係に発症する。
*第8編 9.1〕過重労働による健康障害防止対策 p308
▶午前47
自動体外式除細動器〈AED〉による電気的除細動の適応となるのはどれか。
- 心静止
- 心房細動
- 心室細動
- 房室ブロック
③ 心室細動
自動体外式除細動器〈AED〉は、致死性不整脈である心室細動および無脈性心室頻拍を電気ショックによって取り除く(除細動)装置である。
▶午前48
術中の仰臥位の保持によって発生することがある腕神経叢麻痺の原因はどれか。
- 上腕の持続的圧迫
- 前腕の回外の持続
- 肘関節の持続的圧迫
- 上肢の90度以上の外転
④ 上肢の90度以上の外転
腕神経叢麻痺は、腕神経叢に過大な牽引力がかかることで生じる腕や手の麻痺で、上肢(肩関節)の90度以上の外転を仰臥位で保持することで発生のおそれがある。
▶午前49
点滴静脈内注射によって抗癌薬を投与している患者の看護で適切なのはどれか。
- 悪心は薬で緩和する。
- 留置針は原則として手背に挿入する。
- 血管痛がある場合は直ちに留置針を差し替える。
- 2回目以降の投与では過敏症の症状の確認は必要ない。
① 悪心は薬で緩和する。
抗癌薬の副作用〈有害作用〉として悪心(嘔気)や嘔吐、骨髄抑制などがあり、悪心に関しては制吐薬の使用による緩和が図られる。
×② 留置針は原則として手背に挿入する。
留置針は前腕に挿入する。
×③ 血管痛がある場合は直ちに留置針を差し替える。
血管痛の原因を確認し、血管外漏出のおそれがある場合は直ちに注入を中止する。
×④ 2回目以降の投与では過敏症の症状の確認は必要ない。
2回目以降の投与でも過敏症のおそれはあり、適宜症状を確認する必要がある。
▶午前50
Aさん(60歳、男性)は、慢性心不全の終末期で、積極的な治療を行わないことを希望している。現在、入院中で、リザーバーマスク10L/分で酸素を吸入し、水分制限がある。時々息切れがみられるが、Aさんは面会に来た長女との会話を楽しみにしている。バイタルサインは呼吸数28/分、脈拍110/分、血圧76/50mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉88%であった。
このときの対応で最も適切なのはどれか。
- 面会は制限しない。
- 水分制限を厳しくする。
- Aさんに仰臥位を維持してもらう。
- 面会中は酸素マスクを鼻腔カニューラに変更する。
① 面会は制限しない。
心不全の終末期患者で積極的な治療を望まず、面会での長女との会話を楽しみにしており、面会の制限は必要ない。
×② 水分制限を厳しくする。
心不全患者に対して過度の水分摂取は制限するが、積極的な治療を望まない終末期患者に対して、制限を厳しくする必要は無い。
×③ Aさんに仰臥位を維持してもらう。
×④ 面会中は酸素マスクを鼻腔カニューラに変更する。
QOL(生活の質)を維持するための緩和ケアとして、呼吸困難症状を軽減するため、上半身を起こした体位への切替や、酸素マスクの常時着用が適切である。
▶午前51
Aさん(42歳、女性)は、3日前から微熱と強い全身倦怠感を自覚したため病院を受診したところ、肝機能障害が認められ、急性肝炎の診断で入院した。1か月前に生の牡蠣を摂取している。Aさんはこれまで肝臓に異常を指摘されたことはなく、家族で肝臓疾患を罹患した者はいない。
Aさんが罹患した肝炎について正しいのはどれか。
- 細菌感染である。
- 劇症化する危険性がある。
- 慢性肝炎に移行しやすい。
- インターフェロン療法を行う。
② 劇症化する危険性がある。
問題文より、汚染された食品や水などを介した経口感染が主な感染経路であるA型肝炎と考えられる。A型肝炎はまれに劇症化することがある。
×① 細菌感染である。
A型肝炎ウイルス(HAV)によるウイルス感染である。
×③ 慢性肝炎に移行しやすい。
B型肝炎やC型肝炎とは異なり、A型肝炎は慢性化することはない。
×④ インターフェロン療法を行う。
インターフェロン療法はB型肝炎、C型肝炎に用いる。
*第3編3章 3.3〕ウイルス性肝炎 p132~134
▶午前52
ホルモン負荷試験について正しいのはどれか。
- ホルモン分泌異常を生じている部位の推定に用いる。
- 分泌異常が疑われるホルモンを投与する。
- 前日の夕食から禁食にする。
- 入院が必要である。
① ホルモン分泌異常を生じている部位の推定に用いる。
ホルモン負荷試験は、分泌異常が疑われるホルモンの分泌を刺激するホルモンを投与し、その分泌量を検査して異常部位を推定する。③当日の朝食は禁食、④入院を必要としない。
▶午前53
乳癌の自己検診法の説明で適切なのはどれか。
- 月経前に行う。
- 年に1回実施する。
- 指先を立てて乳房に触る。
- 乳房の皮膚のくぼみの有無を観察する。
④ 乳房の皮膚のくぼみの有無を観察する。
乳癌の早期発見・早期治療のため自己検診が勧められている。②毎月1回、①乳房が柔らかくなる月経後に、③指先をそろえて指の腹でなでるようにしこりの有無を確認するとともに、④くぼみやただれ、異常分泌物などの有無を観察する。
▶午前54
高齢者の看護において目標志向型思考を重視する理由で最も適切なのはどれか。
- 疾患の治癒促進
- 老化現象の進行の抑制
- 病態の関連図の作成の効率化
- 生活全体を豊かにするケアの実践
④ 生活全体を豊かにするケアの実践
目標志向型のアプローチは、高齢者へのアセスメントの結果を総合的に勘案して、より豊かな生活を実現するための目標を設定し、達成する手法である。①~③は現状認められる課題を解決する問題解決型のアプローチである。
▶午前55
高齢者の活動と休息のリズムの調整について最も適切なのはどれか。
- 午前中に日光を浴びる機会をつくる。
- 昼食後に入浴する。
- 昼寝をしない。
- 就寝前に水分を多く摂る。
① 午前中に日光を浴びる機会をつくる。
体内環境を変化させるサーカディアンリズム(概日リズム)は約24時間周期であり、光の明暗による刺激により調整されるため、特に朝の決まった時間に太陽の刺激を浴びることで夜間の睡眠を促すことができる。
×② 昼食後に入浴する。
入浴は副交感神経を優位にし、スムーズな入眠に導くため、就寝前に入浴することが適している。
×③ 昼寝をしない。
午後の早い時刻に30分以内の短い昼寝を行うことは、加齢で短くなった夜間の睡眠時間を補うことができる。ただし、30分以上の昼寝では目覚めの悪さ(睡眠惰性)が生じ、夜間の睡眠にも影響するので避ける。
×④ 就寝前に水分を多く摂る。
就寝前に過度な水分を摂取すると、夜間に尿意を催し、睡眠を阻害する。
▶午前56
加齢による咀嚼・嚥下障害の特徴で正しいのはどれか。
- 咳嗽反射が低下する。
- 口腔内の残渣物が減る。
- 唾液の粘稠度が低下する。
- 食道入口部の開大が円滑になる。
① 咳嗽反射が低下する。
咳嗽反射とは、気管に侵入した分泌物や異物を咳き込んで排除する防御反応である。加齢に伴い咳嗽反射が低下すると気管に異物等が入りやすくなり、誤嚥性肺炎のリスクが増大する。
×② 口腔内の残渣物が減る。
加齢に伴う口腔内の残渣物の増加によって、口腔衛生が悪化する。
×③ 唾液の粘稠度が低下する。
加齢に伴う唾液分泌量の低下(粘稠度の上昇)によって、嚥下機能が低下する。
×④ 食道入口部の開大が円滑になる。
加齢に伴う食道入口部開大の不良によって、通過障害を引き起こしやすくなる。
▶午前57
Aさん(85歳、女性)は、両側の感音難聴で「音は聞こえるけれど、話の内容が聞き取れないので困っています」と話した。
Aさんに対する看護師の対応で適切なのはどれか。
- 大きな声で話す。
- 話の内容をより詳しく説明する。
- Aさんが文字盤を使えるようにする。
- 看護師の口の動きが見えるように話す。
④ 看護師の口の動きが見えるように話す。
蝸牛など感音系の器官が障害される加齢性難聴では、特に高音域が聞こえづらくなる。ゆっくり低く短文で話し、口の動きを見せる、ジェスチャーを交えるなど非言語の工夫で話を補うことが適切である。
▶午前58
Lewy〈レビー〉小体型認知症の初期にみられる症状はどれか。
- 幻視
- 失語
- 脱抑制
- 人格変化
① 幻視
レビー小体型認知症は、脳神経が変性して脳の一部が萎縮する過程で起こる認知症で、特徴的な症状として発症初期から幻視(実際に見えない人や物が見えるといった錯視)がしばしば現れることが挙げられる。その他は前頭側頭型認知症で多くみられる症状である。
▶午前59改題
介護保険法で「入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことを目的とする施設」と規定されているのはどれか。
- 介護老人保健施設
- 介護老人福祉施設
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
② 介護老人福祉施設
介護保険制度の施設サービスとして、「介護老人福祉施設」「介護老人保健施設」「介護医療院」が規定されている。介護老人福祉施設では、原則要介護3以上の要介護者に対し、日常生活上の世話、機能訓練、健康管理および療養上の世話を行う。
×① 介護老人保健施設
介護老人保健施設では、症状が安定期にある要介護者に対し、居宅での生活が営めるよう支援するため、看護、医学的管理の下における必要な医療や日常生活上の世話を行う。
×③ 介護療養型医療施設
×④ 介護医療院
介護医療院では、長期にわたり療養が必要である要介護者に対し、療養上の管理、看護、医学的管理の下における必要な医療や日常生活上の世話を行う。なお、介護療養型医療施設は介護医療院に転換が図られている。
*第5編1章 3.3〕施設サービス p224~225
▶午前60
出産や育児に関する社会資源と法律の組合せで正しいのはどれか。
- 入院助産――児童福祉法
- 出産扶助――母体保護法
- 出産手当金――母子保健法
- 養育医療――児童手当法
① 入院助産――児童福祉法
入院助産は児童福祉法に規定され、妊産婦が経済的理由により入院助産を受けることができない場合に、本人から申込みがあったときは助産施設で助産を行わなければならない。
×② 出産扶助――母体保護法
出産扶助は生活保護法の8扶助(生活、教育、住宅、医療、介護、出産、生業、葬祭)の一つである。
×③ 出産手当金――母子保健法
出産手当金は健康保険法に基づく。
×④ 養育医療――児童手当法
未熟児に対する養育医療の給付は、母子保健法に規定している。
*第3編2章 1.1〕母子保健法に基づく施策 p96~99
*第5編2章 2.生活保護 p235
*第5編2章 3.6〕妊産婦等の就業 p238~239
▶午前61
Aさん(16歳、女子)。身長160cm、体重40kg。1年で体重が12kg減少した。Aさんは6か月前から月経がみられないため婦人科クリニックを受診し、体重減少性無月経と診断された。
今後、Aさんの無月経が長期間続いた場合、増加することが予想されるのはどれか。
- 血糖値
- 骨吸収
- 体脂肪率
- エストロゲン
② 骨吸収
体重減少性無月経は、標準体重の15%以上の体重減少を伴う無月経である。無月経が長時間続くことで女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が減少し、エストロゲンにより抑制されていた骨吸収が進行(破骨)、骨粗鬆症のリスクが高まる。
▶午前62
配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律〈DV防止法〉で正しいのはどれか。
- 婚姻の届出をしていない場合は保護の対象とはならない。
- 暴力を受けている者を発見した者は保健所へ通報する。
- 暴力には心身に有害な影響を及ぼす言葉が含まれる。
- 母子健康センターは被害者の保護をする。
③ 暴力には心身に有害な影響を及ぼす言葉が含まれる。
DV防止法の「暴力」は、身体に対する暴力またはこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動を指す。
×① 婚姻の届出をしていない場合は保護の対象とはならない。
DV防止法の「配偶者」には、男性・女性の別を問わず、婚姻の届出をしていない事実婚、離婚後(事実上離婚したと同様の事情に入ることを含む)、生活の本拠を共にする交際相手からの暴力も含む。
×② 暴力を受けている者を発見した者は保健所へ通報する。
DV防止法に基づき、配偶者からの暴力を受けている者を発見した者は、配偶者暴力相談支援センターまたは警察官に通報するよう努めなければならない。
×④ 母子健康センターは被害者の保護をする。
通報を受けた配偶者暴力相談支援センターが相談や自立支援、一時保護などを行う。なお、加害者に対する被害者への接近禁止命令や退去命令などの保護命令は裁判所が行う。
*第5編2章 3.5〕配偶者からの暴力の防止対策 p238
▶午前63
妊婦の感染症と児への影響の組合せで正しいのはどれか。
- 風疹――白内障
- 性器ヘルペス――聴力障害
- トキソプラズマ症――先天性心疾患
- 性器クラミジア感染症――小頭症
① 風疹――白内障
風疹は、発熱や発疹、リンパ節腫脹を特徴とする風疹ウイルスによる感染性疾患で、主に飛沫感染が感染経路である。妊婦が妊娠20週ごろまでに風疹に感染すると、白内障や先天性心疾患、難聴などを特徴とする先天性風疹症候群の児が生まれる可能性がある。
*第3編3章 3.5〕風しん・麻しん p138
▶午前64
Aさん(68歳、女性)は、胃癌のため入院した。入院初日に「夫も癌になって、亡くなる前に痛みで苦しんでいました。私も痛みが怖いんです」と言った。看護師は、Aさんが夫のように苦しむことへの恐怖や不安があることが分かり、Aさんとともに対処法について考えた。
この時点での患者―看護師関係の段階はどれか。
- 方向付け
- 同一化
- 開拓利用
- 問題解決
① 方向付け
ペプロウ看護論は患者と看護師の関係発達過程として、「方向付け」「同一化」「開拓利用」「問題解決」の4段階を示している。初期段階である方向付けでは、看護師が患者と出会い、患者の抱える健康問題等を共有し、それを解決するための支援を開始する。
▶午前65
訪問看護の利用者に関する訪問看護と病院の外来看護の連携で適切なのはどれか。
- 訪問看護報告書は外来看護師に提出する。
- 利用者の個人情報の相互共有に利用者の承諾書は不要である。
- 利用者が使用している医療材料の情報を外来看護師と共有する。
- 訪問看護師から外来看護師に利用者の外来診察の予約を依頼する。
③ 利用者が使用している医療材料の情報を外来看護師と共有する。
訪問看護の利用者が病院の外来看護を組み合わせて利用するに当たり、正確でスムーズな連携を実現するため、訪問看護師が医師の訪問看護指示書を基に使用した医療材料の情報を、外来看護師と共有することは適切である。
▶午前66
Aさん(42歳、女性)は、交通事故による脊髄損傷で入院し、リハビリテーションを受けた。Aさんの排泄の状況は、間欠的導尿による排尿と、坐薬による3日に1回の排便である。同居する夫と実母が導尿の指導を受け、退院することになった。初回の訪問看護は退院後3日目とし、その後は訪問看護を週2回受けることになった。
入院していた医療機関から提供された患者情報のうち、初回訪問のケア計画を立案するのに最も優先度の高い情報はどれか。
- 食事の摂取量
- 1日の導尿回数
- 最終排便の日時
- リハビリテーションの内容
③ 最終排便の日時
脊椎損傷の症状として排便障害があり、便秘や腸閉塞、褥瘡などの予防のため、初回訪問のケア計画を立案する際には最終排便の日時を確認し、排便記録を付けて排便コントロールを行うようにすることが適している。
▶午前67
A君(6歳、男児)は、父母と姉との4人で暮らしている。3歳児健康診査で運動機能の発達の遅延を指摘され、5歳のときにDuchenne〈デュシェンヌ〉型筋ジストロフィーの確定診断を受けた。現在は、床からの立ち上がり動作に介助が必要である。見守りが必要ではあるが、室内の歩行は自立している。在宅支援サービスは利用していない。A君の外来受診時に母親から「最近、Aの世話をしていると、8歳の姉が私にしがみついて離れないので困ります」と看護師に相談があった。
このときの看護師の対応で最も優先されるのはどれか。
- 姉の小学校の養護教諭に家庭訪問を依頼する。
- 姉にA君の歩行の見守りをさせるよう勧める。
- 短期入所を利用して父母と姉とで旅行するよう勧める。
- 居宅介護を利用して母が姉と関わる時間を確保することを提案する。
④ 居宅介護を利用して母が姉と関わる時間を確保することを提案する。
母親はA君の世話によって姉と関わる時間が減り、姉に退行現象が生じていると考えられる。A君は筋ジストロフィーにより室内の歩行は自立しているものの介助や見守りを必要とするため、在宅支援サービスを利用していない同居家族の負担は大きい。介護者の負担軽減(レスパイトケア)のため居宅介護を利用して、姉との時間を確保することは提案として適切である。
▶午前68
在宅で訪問看護師が行う要介護者の入浴に関する援助で適切なのはどれか。
- 入浴前後に水分摂取を促す。
- 浴室の換気は入浴直前に行う。
- 浴槽に入っている間に更衣の準備をする。
- 入浴前の身体状態の観察を家族に依頼する。
① 入浴前後に水分摂取を促す。
成人の体重に占める水分量は約60%だが、高齢者では50~55%と減るため脱水を起こしやすく、発汗が強くなる入浴前後に水分摂取を促すことが適切である。
×② 浴室の換気は入浴直前に行う。
温度の急激な変化による血圧の大幅な変動が起こすいわゆるヒートショックを避けるため、入浴前は浴室を暖めるなどして浴室と脱衣所の温度差を小さくする。
×③ 浴槽に入っている間に更衣の準備をする。
要介護者の入浴中の溺水等を防ぐため注意をそらさない。
×④ 入浴前の身体状態の観察を家族に依頼する。
身体状態の観察は訪問看護師が中心に行う。
▶午前69
Aさん(65歳、女性)は、夫と実父との3人暮らしである。脊柱管狭窄症の術後、地域包括ケア病棟に入院中である。退院後は自宅に戻り室内で車椅子を利用する予定である。Aさんの障害高齢者の日常生活自立度判定基準はB-1である。
看護師による家族への指導で最も適切なのはどれか。
- 家族の生活習慣を中心に屋内環境を整備する。
- 夜間の車椅子によるトイレへの移動は制限する。
- 退院後の生活の課題に応じて福祉用具を選定する。
- ベッドから車椅子への移動介助にリフトの導入を勧める。
③ 退院後の生活の課題に応じて福祉用具を選定する。
障害高齢者の日常生活自立度判定基準B-1は、介助なしに車椅子に移乗し食事も排泄もベッドから離れて行う場合に該当し、自立した車椅子での在宅生活により生じる課題に応じて、福祉用具の選定を行うのが適切である。
▶午前70
特定行為に係る看護師の研修制度に関して正しいのはどれか。
- 特定行為は診療の補助行為である。
- 研修は都道府県知事が指定する研修機関で実施する。
- 研修を受けるには10年以上の実務経験が必要である。
- 看護師等の人材確保の促進に関する法律に定められている。
① 特定行為は診療の補助行為である。
特定行為とは、看護師が医師または歯科医師の作成する手順書により行う診療の補助をいい、38行為が規定されている。
×② 研修は都道府県知事が指定する研修機関で実施する。
平成27年(2015年)から特定行為に係る看護師の研修制度が開始し、厚生労働大臣が特定行為研修を行う研修機関を指定している。
×③ 研修を受けるには10年以上の実務経験が必要である。
研修を受けるに当たり実務経験は問わない。
×④ 看護師等の人材確保の促進に関する法律に定められている。
特定行為やその研修については、保健師助産師看護師法に定められている。
*第4編1章 4.4〕看護職員等 p193~197
▶午前71
ある組織では、リーダーの支援の下でグループ討議を経て方針を決定している。
このリーダーシップスタイルはどれか。
- 委任的リーダーシップ
- 参加的リーダーシップ
- 教示的リーダーシップ
- カリスマ的リーダーシップ
② 参加的リーダーシップ
参加的(民主型)リーダーシップは、組織のメンバー全員の協力の下に意見を出し合い、共有し、意思決定を行う方式で、リーダーは進行役やとりまとめ役を担う。
×① 委任的リーダーシップ
委任的リーダーシップは、業務遂行の決定権や責任をメンバーに委ねるリーダーシップをいう。
×③ 教示的リーダーシップ
教示的リーダーシップは、業務の具体的な指示を一方的に与えるリーダーシップをいう。
×④ カリスマ的リーダーシップ
カリスマ的リーダーシップは、周囲に支持されるカリスマ性を持った者が組織を強力に牽引するリーダーシップをいう。
▶午前72
Aさん(32歳、女性)は小児専門の病院に勤務していたが、国際保健医療協力プログラムで中央アフリカ地域の州事務所に母子保健担当の看護師として派遣された。この地域は長く紛争が続き、母子の健康状態が不良と聞いた。
Aさんが現地で最初に行う業務はどれか。
- 経口補水液の配布
- 乳幼児の栄養状態の把握
- 女性の識字率向上の支援
- 病院における母子看護業務の把握
② 乳幼児の栄養状態の把握
国内外にかかわらず、看護過程の第1段階はアセスメント(情報収集)であり、不良とされる母子の健康状態に関する主観的・客観的情報を収集することが適している。
▶午前73
最も順応しにくいのはどれか。
- 視覚
- 嗅覚
- 味覚
- 触覚
- 痛覚
⑤ 痛覚
通常、感覚は視覚における明順応(明るいところに出たときの順応)や暗順応(暗いところに入ったときの順応)のように時間とともに感度が低下する順応が生じるが、皮膚や粘膜にある表在感覚のうち痛覚では順応が起こりにくく、刺激に対する痛みが持続する。
▶午前74
起立性低血圧について正しいのはどれか。
- 脱水との関連はない。
- 高齢者には起こりにくい。
- 塩分の過剰摂取によって起こる。
- 脳血流の一時的な増加によって生じる。
- 自律神経障害を起こす疾患で生じやすい。
⑤ 自律神経障害を起こす疾患で生じやすい。
起立性低血圧は急に立ち上がった際などに血圧が低下し、めまいやふらつき、意識障害が生じるもので、自律神経の機能低下に伴い生じることが多い。
×① 脱水との関連はない。
×③ 塩分の過剰摂取によって起こる。
水や塩分(電解質)を失う脱水が発症に関連する。
×② 高齢者には起こりにくい。
体内の水分量が少ない高齢者に生じやすい。
×④ 脳血流の一時的な増加によって生じる。
脳血流が減少することで生じる。
▶午前75改題
令和5年(2023年)の人口動態統計における妻の平均初婚年齢はどれか。
- 23.7歳
- 25.7歳
- 27.7歳
- 29.7歳
- 31.7歳
④ 29.7歳
令和5年(2023年)の平均初婚年齢は、夫が31.1歳、妻が29.7歳である。なお、第一子出生時の母親の平均年齢は30.9歳となっている。
*第2編2章 8.婚姻 p68~69
▶午前76
人獣共通感染症で蚊が媒介するのはどれか。
- Q熱
- 黄熱
- 狂犬病
- オウム病
- 重症熱性血小板減少症候群〈SFTS〉
② 黄熱
人獣共通感染症は、動物由来感染症のうち、同一の病原体によりヒトとヒト以外の脊椎動物の双方が罹患する感染症である。黄熱は蚊によって媒介され、サルやヒトを宿主とする。
*第3編3章 1.感染症対策 p123~127
▶午前77
医療職や介護職の業務で法律に規定されているのはどれか。
- 介護福祉士は訪問看護ができる。
- 薬剤師は薬を処方することができる。
- 臨床検査技師は肘静脈から採血ができる。
- 看護師は病院の管理者となることができる。
- 診療放射線技師はエックス線写真に基づく診断ができる。
③ 臨床検査技師は肘静脈から採血ができる。
臨床検査技師は、診療の補助として医師または歯科医師の指示の下に採血や検体採取、省令で定める生理学的検査を行う。
×① 介護福祉士は訪問看護ができる。
訪問看護を行うことができる職種として、看護師、保健師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が認められている。
×② 薬剤師は薬を処方することができる。
薬剤師は、医師、歯科医師または獣医師が交付した処方箋によって調剤するもので、処方するものではない。
×④ 看護師は病院の管理者となることができる。
病院の管理者は、医業の場合は臨床研修等修了医師を、歯科医業の場合は臨床研修等修了歯科医師を当てなければならない。
×⑤ 診療放射線技師はエックス線写真に基づく診断ができる。
診療放射線技師は、放射線を人体に照射することを業とする者であり、診断を行うものではない。
*第4編1章 4.医療関係者 p184~199
▶午前78
思春期に、親や家族との関係が依存的な関係から対等な関係に変化し、精神的に自立することを示すのはどれか。
- 自我同一性の獲得
- 心理的離乳
- 愛着形成
- 探索行動
- 母子分離
② 心理的離乳
思春期には、依存と独立のアンビバレント〈両価的〉な感情を持ちながらも、自我同一性(アイデンティティ)の確立の過程で、親からの心理的離乳、年長者の価値観への拒絶、同世代の仲間との価値観の共有がみられる(第2反抗期)。
▶午前79
排泄が自立していない男児の一般尿を採尿バッグを用いて採取する方法で正しいのはどれか。
- 採尿バッグに空気が入らないようにする。
- 採尿口の下縁を陰茎の根元の位置に貼付する。
- 採尿バッグを貼付している間は座位とする。
- 採取できるまで1時間ごとに貼り替える。
- 採取後は貼付部位をアルコール綿で清拭する。
② 採尿口の下縁を陰茎の根元の位置に貼付する。
採尿バッグは排泄が自立していない児の採尿に用いるもので、男児では採尿口の下縁を陰茎の根元(女児では会陰部)に密着させるように貼付する。
×① 採尿バッグに空気が入らないようにする。
採尿バッグの貼付前に空気を入れて、尿を溜めやすく・漏れにくくする。
×③ 採尿バッグを貼付している間は座位とする。
採尿バッグが剥がれないように仰臥位等の安静な姿勢をとる。
×④ 採取できるまで1時間ごとに貼り替える。
採尿バッグは採取ができるまで貼り続ける。
×⑤ 採取後は貼付部位をアルコール綿で清拭する。
採取前後は濡れたタオルなどで陰部を清拭し乾燥させる。刺激の強いアルコールは用いない。
▶午前80
Aちゃん(6歳、女児)は、左上腕骨顆上骨折と診断され、牽引治療のために入院した。医師からAちゃんと家族に対し、牽引と安静臥床の必要性を説明した後、弾性包帯を用いて左上肢の介達牽引を開始した。
Aちゃんに対する看護で適切なのはどれか。
- 食事を全介助する。
- 左手指の熱感を観察する。
- 抑制ジャケットを装着する。
- 1日1回は弾性包帯を巻き直す。
- 痛みに応じて牽引の重錘の重さを変更する。
④ 1日1回は弾性包帯を巻き直す。
上腕骨顆上骨折は小児に多くみられる肘の骨折で、腫れが強い場合は患側の上肢の牽引を行う。牽引では弾性包帯にゆるみが生じやすく、また循環障害、神経障害、皮膚障害の有無を観察するためにも、1日1回弾性包帯を巻き直すことが適切である。
▶午前81
精神科病院の閉鎖病棟に入院中の患者宛てに厚みのある封筒が届いた。差出人は記載されていなかった。
当日の看護師の対応で適切なのはどれか。
- 患者に渡さず破棄する。
- 患者による開封に立ち会う。
- 開封せず患者の家族に転送する。
- 看護師が開封して内容を確認してから患者に渡す。
- 退院まで開封せずにナースステーションで保管する。
② 患者による開封に立ち会う。
精神保健指定医の判断による隔離や身体的拘束などの行動制限がある場合でも、信書の発受は決して制限できない。ただし、異物が入っていると疑われる場合(当問の場合は差出人が記載されていない厚みのある封筒のため)は、病院職員立ち会いの下、本人が開封し、異物を取り除くことがある。
*第3編2章 4.3〕精神科の入院制度 p112~114
▶午前82
潰瘍性大腸炎の特徴で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 遺伝性である。
- 直腸に好発する。
- 縦走潰瘍が特徴である。
- 大腸癌の危険因子である。
- 大量の水様性下痢が特徴である。
② 直腸に好発する。
④ 大腸癌の危険因子である。
潰瘍性大腸炎は粘膜にびらんや潰瘍を形成する原因不明の大腸(特に直腸)の炎症性疾患で、滲出性下痢や粘血便はその特徴であり、大腸癌を合併するリスク因子でもある。なお、③はクローン病の特徴である。
▶午前83
児童相談所について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 国が設置する。
- 児童福祉司が配置されている。
- 母親を一時保護する機能を持つ。
- 知的障害に関する相談を受ける。
- 児童の保健について正しい衛生知識の普及を図る。
② 児童福祉司が配置されている。
④ 知的障害に関する相談を受ける。
児童相談所は、児童福祉司や児童心理司、小児科医など専門職員を配置し、子どもに関する各種の相談に応じる。相談内容は、養護相談、保健相談、障害相談、非行相談、育成相談などに分類されている。
×① 国が設置する。
児童相談所は、都道府県・指定都市に設置が義務づけられている。
×③ 母親を一時保護する機能を持つ。
児童相談所では必要な場合、児童の一時保護や児童福祉施設への入所といった措置をとる。
×⑤ 児童の保健について正しい衛生知識の普及を図る。
保健所が、児童の保健について正しい衛生知識の普及を図る。
*第5編2章 3.3〕児童相談所 p237
▶午前84
国際生活機能分類〈ICF〉の構成要素はどれか。2つ選べ。
- 参加
- 休息
- 社会的不利
- 生活関連動作
- 心身機能・構造
① 参加
⑤ 心身機能・構造
国際生活機能分類〈ICF〉は、世界保健機関〈WHO〉が作成した人間の生活機能と障害の分類で、「心身機能・身体構造」「活動」「参加」からなる生活機能と、それらに影響を及ぼす「環境因子」などの背景因子の項目で構成される。
▶午前85
Aさん(48歳、男性)は、右眼の視野に見えにくい部位があることに気付き眼科を受診した。暗い部屋で見えにくいことはない。頭痛や悪心はない。
Aさんの疾患を診断するのに必要な検査はどれか。2つ選べ。
- 脳波検査
- 色覚検査
- 眼圧測定
- 眼底検査
- 眼球運動検査
③ 眼圧測定
④ 眼底検査
右眼の視野欠損があり、暗いところで見えにくい夜盲症や頭痛・悪心はない。眼圧の上昇を原因として不可逆的に視野が狭まる緑内障や、黄斑部の網膜剥離による視野欠損が疑われ、診断には眼圧測定や眼底検査が必要となる。
▶午前86
麻疹に関して正しいのはどれか。2つ選べ。
- 合併症として脳炎がある。
- 感染力は発疹期が最も強い。
- 効果的な抗ウイルス薬がある。
- 2回のワクチン定期接種が行われている。
- エンテロウイルスの感染によって発症する。
① 合併症として脳炎がある。
④ 2回のワクチン定期接種が行われている。
① 麻疹に罹患するとまれに急性脳炎を発症し、精神発達遅滞などの重篤な後遺症が残る、または死亡することがある。
④ 麻疹の定期予防接種として、生後12月から生後24月に至るまでの間にある者(一期)、小学校就学前の5歳以上7歳未満の者(二期)を対象に実施している。
×② 感染力は発疹期が最も強い。
麻疹の症状は、高熱や発症初期に頬粘膜に生じる白色のコプリック斑(カタル期)、その後の耳後部から始まり体の下方へと広がる赤い発疹(発疹期)を特徴とし、特にカタル期で感染力が強い。
×③ 効果的な抗ウイルス薬がある。
麻疹発症者に対する特異的な治療法はなく、症状を和らげる対症療法が行われる。
×⑤ エンテロウイルスの感染によって発症する。
麻疹は麻疹ウイルスの空気感染等によって発症する。
*第3編3章 3.5〕風しん・麻しん p138
▶午前87
Aさん(30歳、女性)。月経周期は28日型で規則的である。5日間月経があり、現在、月経終了後14日が経過した。
この時期のAさんの状態で推定されるのはどれか。2つ選べ。
- 排卵後である。
- 乳房緊満感がある。
- 子宮内膜は増殖期である。
- 基礎体温は低温相である。
- 子宮頸管の粘液量が増加する。
① 排卵後である。
② 乳房緊満感がある。
およそ28日の月経周期のうち、5日間の月経と月経終了後14日が経過しているため、月経初日から19日間が経過している。月経初日から14日後が排卵であるため、現在は排卵後の分泌期(黄体期)で、基礎体温の上昇(高温相)や、プロゲステロンの増加による子宮頸管の粘液量の低下、乳房緊満感が特徴である。
▶午前88
入院集団精神療法において、看護師が担うリーダーの役割で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 患者間の発言量を均等にする。
- 沈黙も意味があると受け止める。
- メンバーの座る位置を固定する。
- 患者の非言語的サインに注目する。
- 話題が変わった場合はすぐに戻す。
② 沈黙も意味があると受け止める。
④ 患者の非言語的サインに注目する。
集団精神療法は、治療者と患者グループにおいて対人関係の相互作用を用いた精神療法であり、うつ病やアルコール依存症、薬物依存症などの患者において効果が高い。治療者(リーダー)はグループ内の対話の方向性を一方的に決めるのではなく、患者が自由に話しやすい対話の場にし、言語的コミュニケーションだけではなく沈黙や非言語的コミュニケーションも見逃さないことが重要である。
▶午前89
精神保健医療福祉に関する法律について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 自殺対策基本法に基づき自殺総合対策大綱が策定されている。
- 障害者基本法の対象は身体障害と精神障害の2障害と規定されている。
- 発達障害者支援法における発達障害の定義には統合失調症が含まれる。
- 精神通院医療の公費負担は精神保健福祉法による自立支援医療で規定されている。
- 犯罪被害者等基本法は犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目標としている。
① 自殺対策基本法に基づき自殺総合対策大綱が策定されている。
⑤ 犯罪被害者等基本法は犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目標としている。
① 自殺対策基本法に基づき、政府には自殺総合対策大綱の策定を、都道府県や市町村には自殺対策計画の策定を義務づけている。
⑤ 犯罪被害者等基本法は、犯罪等により害を被った者及びその家族または遺族(犯罪被害者等)を対象に、その権利利益の保護を図ることを目的とする。
×② 障害者基本法の対象は身体障害と精神障害の2障害と規定されている。
障害者基本法の対象は身体障害、知的障害、精神障害(発達障害含む)その他の心身の機能の障害がある者で、障害・社会的障壁により継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受ける状態にある者とされている。
×③ 発達障害者支援法における発達障害の定義には統合失調症が含まれる。
発達障害者支援法では、発達障害を広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群など)、学習障害、注意欠陥多動性障害など、通常低年齢で発症する脳機能の障害と定義している。
×④ 精神通院医療の公費負担は精神保健福祉法による自立支援医療で規定されている。
精神通院医療などの自立支援医療に係る公費負担は、障害者総合支援法に規定されている。
*第3編2章 6.自殺対策 p121~122
▶午前90
災害拠点病院について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 広域災害医療に対応する。
- 災害発生時に指定される。
- 医療救護班の派遣機能を持つ。
- 免震構造であることが指定要件である。
- 救急救命士の配置が義務付けられている。
① 広域災害医療に対応する。
③ 医療救護班の派遣機能を持つ。
災害拠点病院は、広域災害時に被災地からの重症患者等の受け入れや治療を行い、被災地へ災害派遣医療チーム〈DMAT〉を派遣するなどの機能を持つ。
×② 災害発生時に指定される。
災害拠点病院は、都道府県が平時において指定する。
×④ 免震構造であることが指定要件である。
災害拠点病院の指定要件の一つとして、耐震構造を持つ施設であることとしている。
×⑤ 救急救命士の配置が義務付けられている。
災害拠点病院に救急救命士の配置は問わない。
*第4編1章 3.6〕災害時医療 p175~176
資料 厚生労働省「第103回保健師国家試験、第100回助産師国家試験、第106回看護師国家試験の問題および正答について」
注 当ページに掲載する解説は、看護師国家試験を解く上での理解しやすさを重視しているため、本来はより専門的・学術的な説明や議論がある部分を一部省略しています。正確な情報を掲載するように努めていますが、特に医療・看護行為や疾病、薬剤等の説明において、その正確性を保証するものではありませんので、学習以外での使用はお控え下さい。
▼第106回看護師国家試験
▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 保健師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 助産師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 医師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 薬剤師国家試験に出る国民衛生の動向