第106回看護師国家試験 午後一般問題
平成29年2月19日(日)に実施された第106回看護師国家試験について、午後問題のうち一般問題の正答と解説を示します。
「国民衛生の動向2024/2025」で内容を解説している問題に関しては、その参照章・ページを示しているので、同書を併用しながらの利用をおすすめします。
▼第106回看護師国家試験
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厚生の指標増刊
国民衛生の動向 2024/2025
発売日:2024.8.27
定価:2,970円(税込)
412頁・B5判
雑誌コード:03854-08
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▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
午後 一般問題
▶午後26
刺激伝導系でないのはどれか。
- 腱索
- 洞房結節
- 房室結節
- Purkinje〈プルキンエ〉線維
① 腱索
刺激伝導系は心臓を一定間隔で拍動させるための興奮刺激の流れをいい、右心房の洞房結節から房室結節に集まり、ヒス束、プルキンエ線維、心室固有筋へと伝わっていく。
▶午後27
アルドステロンで正しいのはどれか。
- 近位尿細管に作用する。
- 副腎髄質から分泌される。
- ナトリウムの再吸収を促進する。
- アンジオテンシンⅠによって分泌が促進される。
③ ナトリウムの再吸収を促進する。
アルドステロンは副腎皮質から分泌されるホルモンであり、腎臓で生成されるレニンが分解・活性化の過程で作るアンジオテンシンⅡにより分泌が促進される。腎臓の遠位尿細管に作用することでナトリウムの再吸収を促進し、血圧を調節する。
▶午後28
慢性閉塞性肺疾患について正しいのはどれか。
- 残気量は減少する。
- %肺活量の低下が著明である。
- 肺コンプライアンスは上昇する。
- 可逆性の気流閉塞が特徴である。
③ 肺コンプライアンスは上昇する。
慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉は、長期の喫煙によってもたらされる肺の炎症性疾患である。肺コンプライアンス(肺の膨らみやすさを)の上昇は、肺胞の弾性収縮力を失ったCOPD患者に特徴的である。
×① 残気量は減少する。
COPDでは大きく息を吸い込み吐き出したときの量(%肺活量)は維持されるが、その際最初の1秒間に吐き出した割合(1秒率)が著しく低下し、吐ききった後に残る空気量(残気量)が増加する。
×② %肺活量の低下が著明である。
1秒率を維持しつつ、%肺活量の低下が著明となるものは、間質性肺疾患など拘束性肺疾患の特徴である。
×④ 可逆性の気流閉塞が特徴である。
COPDでは不可逆的に気流閉塞が進行する。可逆性の気流閉塞は気管支喘息等の特徴である。
▶午後29
腰椎椎間板ヘルニアで正しいのはどれか。
- 高齢の女性に多発する。
- 診断にはMRIが有用である。
- 好発部位は第1・2腰椎間である。
- 急性期では手術による治療を行う。
② 診断にはMRIが有用である。
腰椎椎間板ヘルニアは、腰に近い椎間板の突出(ヘルニア)により神経が圧迫されて痛みや麻痺が生じるもので、椎間板の状態を診断するに当たり、MRIによる画像診断が有用である。
×① 高齢の女性に多発する。
20代~40代の比較的若い男性に多発する。
×③ 好発部位は第1・2腰椎間である。
第4・5腰椎間または第5腰椎・仙骨間の椎間板に好発する。
×④ 急性期では手術による治療を行う。
急性期における第一選択の治療として保存療法が取られ、体重や外部からの負荷が腰にかからないよう安静にする必要がある。
▶午後30
配偶者暴力相談支援センターの機能はどれか。
- 一時保護
- 就労の仲介
- 外傷の治療
- 生活資金の給付
① 一時保護
配偶者暴力相談支援センターは、通報などを受けて暴力被害者の相談や自立支援を行うほか、必要な場合には母子生活支援施設や民間シェルターへの一時保護を行っている。
*第5編2章 3.5〕配偶者からの暴力の防止対策 p238
▶午後31改題
施行日が最も新しい法律はどれか。
- 高齢社会対策基本法
- 高齢者の医療の確保に関する法律
- 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律
- 地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律〈医療介護総合確保推進法〉
④ 地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律〈医療介護総合確保推進法〉
平成26年(2014年)に成立・施行した医療介護総合確保推進法は、団塊の世代が75歳以上になる令和7年(2025年)を目標に地域包括ケアシステムの構築、地域医療構想の策定などを定めている。
×① 高齢社会対策基本法
平成7年(1995年)の施行である。
×② 高齢者の医療の確保に関する法律
平成20年(2008年)の施行である(後期高齢者医療制度の開始)。
×③ 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律
平成18年(2006年)の施行である。
*第4編1章 2.4〕地域医療構想 p168~169
▶午後32
保健師助産師看護師法に定められているのはどれか。
- 免許取得後の臨床研修が義務付けられている。
- 心身の障害は免許付与の相対的欠格事由である。
- 看護師籍の登録事項に変更があった場合は2か月以内に申請する。
- 都道府県知事は都道府県ナースセンターを指定することができる。
② 心身の障害は免許付与の相対的欠格事由である。
保健師助産師看護師法では、看護師免許付与における相対的欠格事由として、「罰金以上の刑に処せられた者」「医事に関し犯罪または不正の行為のあった者」「心身の障害により看護師の業務を適正に行うことができない者」「麻薬、大麻またはあへんの中毒者」を規定している。
×① 免許取得後の臨床研修が義務付けられている。
免許取得後も、臨床研修等を受け、その資質の向上を図るように努めることとされる(義務ではない)。
×③ 看護師籍の登録事項に変更があった場合は2か月以内に申請する。
登録事項に変更があった場合は、30日以内に厚生労働大臣に訂正を申請する。
×④ 都道府県知事は都道府県ナースセンターを指定することができる。
都道府県ナースセンターの指定等は、看護師等の人材確保の促進に関する法律に規定される。
*第4編1章 4.4〕看護職員等 p193~197
▶午後34
車椅子による移送で適切なのはどれか。
- エレベーターの中で方向転換する。
- 急な下り坂では前向きに車椅子を進める。
- ティッピングレバーを踏み、段差を乗り越える。
- 移乗する前にフットレスト〈足のせ台〉を下げる。
③ ティッピングレバーを踏み、段差を乗り越える。
段差を上るときはティッピングレバーを踏んで、小車輪(前輪)を浮かせる。
×① エレベーターの中で方向転換する。
エレベーターに乗り込む前に方向転換して後ろ向きに入る。
×② 急な下り坂では前向きに車椅子を進める。
坂を上るときは足側から、急な下り坂では背もたれ側から進む。
×④ 移乗する前にフットレスト〈足のせ台〉を下げる。
乗降する前は、転倒を防止するために足を乗せるフットレストを上げる。
▶午後35
病室環境に適した照度はどれか。
- 100〜200ルクス
- 300〜400ルクス
- 500〜600ルクス
- 700〜800ルクス
① 100〜200ルクス
保健医療施設の照度は日本産業標準調査会のJIS規格により定められており、病室は全般で100ルクス、手術室は全般1,000ルクスで手術野は10,000~100,000ルクスなどとなっている。
▶午後36
検査の目的と採尿方法の組合せで正しいのはどれか。
- 細菌の特定――中間尿
- 腎機能の評価――杯分尿
- 肝機能の評価――24時間尿
- 尿道の病変の推定――早朝尿
① 細菌の特定――中間尿
中間尿は排泄途中の尿を採取するもので、特に出始めの尿には外尿道周辺の細菌が混じるため、中間尿を用いることで尿中の細菌の特定が容易である。
×② 腎機能の評価――杯分尿
杯分尿は、1回の排尿を前半と後半に容器を分けて採尿する方法で、尿道の病変箇所の推定に用いられる。
×③ 肝機能の評価――24時間尿
24時間尿は、膀胱を空にした開始時点から24時間の尿を蓄尿する方法で、腎機能の評価に用いられる。
×④ 尿道の病変の推定――早朝尿
早朝尿は尿成分が濃縮されており、検査の精度が高まり、尿蛋白の異常を検出しやすい。
▶午後37
職業病や労働災害の防止、より健康的な労働環境の確保および労働者の健康の向上を目的としている法律はどれか。
- 労働組合法
- 労働基準法
- 労働安全衛生法
- 労働関係調整法
③ 労働安全衛生法
労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康の確保、快適な職場環境の形成促進のため、労働衛生の3管理(作業環境管理・作業管理・健康管理)を整備している。
*第8編 3.労働衛生管理の基本 p300~301
▶午後38
合併症のない全身状態が良好な患者に対して、全身麻酔のための気管挿管を行い用手換気をしたところ、左胸郭の挙上が不良であった。
原因として考えられるのはどれか。
- 無気肺
- 食道挿管
- 片肺挿管
- 換気量不足
③ 片肺挿管
換気時に左胸郭の挙上が不良であり、右主気管支への気管挿管による片肺挿管が考えられ、挿管チューブを少しずつ抜く必要がある。
▶午後39
脳出血の後遺症で左片麻痺と嚥下障害のある患者の家族に、食事介助の指導を行うときの説明で適切なのはどれか。
- 「食材にこんにゃくを入れると良いですよ」
- 「体を起こしたら、左の脇の下をクッションで支えましょう」
- 「口の左側に食べ物を入れるようにしましょう」
- 「飲み込むときに咳が出なければ誤嚥の心配はありません」
② 「体を起こしたら、左の脇の下をクッションで支えましょう」
左片麻痺があるため、体を起こした後に患側をクッションで支えるなど、食事中の姿勢(体幹)を安定させることが適切である。
×① 「食材にこんにゃくを入れると良いですよ」
こんにゃくは口腔内でまとまりにくく、嚥下障害のある患者では誤嚥しやすいため避ける。
×③ 「口の左側に食べ物を入れるようにしましょう」
患者が咀嚼して食塊を作りやすいように、健側(右側)に食べ物を入れる。
×④ 「飲み込むときに咳が出なければ誤嚥の心配はありません」
咳嗽反射は気管に入った食物を排除するための防御反応であり、咳嗽反射が低下して誤嚥を引き起こすおそれもあるため、咳の有無で誤嚥の可能性を判断しない。
▶午後40
自助具を図に示す。
関節リウマチによって肩関節に痛みがある患者の関節保護のための自助具として最も適切なのはどれか。

②
関節リウマチにより肩関節の動きに制限があるため、腕を上げずにヘアケアができる長柄ブラシが自助具として適している。そのほかは手首や手指の関節に痛みが生じている場合に有用である。
▶午後41
Aさん(59歳、女性)は、半年前に下咽頭癌で放射線治療を受けた。口腔内が乾燥し、水を飲まないと話すことも不自由なことがある。
Aさんに起こりやすいのはどれか。
- う歯
- 顎骨壊死
- 嗅覚障害
- 甲状腺機能亢進症
① う歯
口腔内が乾燥しており、唾液の分泌量の低下が考えられる。唾液による自浄作用が低下し、むし歯(う歯)が起こりやすいため、口腔ケアの必要がある。
▶午後42
1型糖尿病と診断された人への説明で適切なのはどれか。
- 自己血糖測定の試験紙の費用は医療保険の対象外である。
- 食事が摂取できないときはインスリン注射を中止する。
- 低血糖症状には振戦などの自律神経症状がある。
- 運動は朝食前が効果的である。
③ 低血糖症状には振戦などの自律神経症状がある。
インスリン自己注射を行う患者では、食事量、食事間隔、運動量などにより血糖値が正常範囲よりも低下して低血糖を起こす可能性があり、冷や汗(発汗)や動悸、けいれん、ふるえ(振戦)などの自律神経症状がみられる。
×① 自己血糖測定の試験紙の費用は医療保険の対象外である。
糖尿病患者の血糖コントロールに用いられる測定器等は医療保険の対象である。
×② 食事が摂取できないときはインスリン注射を中止する。
食事が取れない場合でも、インスリン不足によるケトン体の蓄積(ケトアシドーシス)を防ぐため、量を減らしたインスリン注射が必要であり、長時間食事が摂取できない場合は主治医等に相談する。
×④ 運動は朝食前が効果的である。
血糖が高くなる食後に運動を行うことが効果的である。
▶午後43
アレルギー性鼻炎について正しいのはどれか。
- 食後に症状が増悪する。
- Ⅳ型アレルギーである。
- スクラッチテストで原因を検索する。
- アレルゲンの除去は症状の抑制に有効である。
④ アレルゲンの除去は症状の抑制に有効である。
例えばスギ花粉によるアレルギー性鼻炎であれば、こまめな掃除や洗濯物の部屋干しなど、アレルゲンの除去が症状の抑制に効果的である。
×① 食後に症状が増悪する。
食後に症状が増悪するのは食物アレルギーである。
×② Ⅳ型アレルギーである。
アレルギー性鼻炎はIgE抗体が関与するⅠ型アレルギー(即時型アレルギー)であり、ダニやハウスダスト、花粉などのアレルゲン(抗原)が原因となり発症する。
×③ スクラッチテストで原因を検索する。
スクラッチテスト(皮膚テスト)はIgE抗体の存在を知るための検査であり、原因アレルゲンを確定するためには抗原特異的IgE検査が行われる。
▶午後44
他動運動による関節可動域〈ROM〉訓練を行うときの注意点で適切なのはどれか。
- 有酸素運動を取り入れる。
- 等尺性運動を取り入れる。
- 近位の関節を支持して行う。
- 痛みがある場合は速く動かす。
③ 近位の関節を支持して行う。
関節可動域〈ROM〉訓練は、関節可動域を維持・増大するために行われる訓練で、他動運動では体幹に近い近位の関節を支持して行う。
×① 有酸素運動を取り入れる。
×④ 痛みがある場合は速く動かす。
他動運動は自身の努力で関節を動かす自動運動が困難な場合などに、他者がゆっくり痛みを生じさせないように関節を動かすものであり、有酸素運動は行われない。
×② 等尺性運動を取り入れる。
等尺性運動は関節を動かさずに筋肉を収縮させるもので、関節可動域〈ROM〉訓練では関節動作を伴う等張性運動を取り入れる。
▶午後45
Aさん(80歳、女性)は、要介護となったため長男家族(長男50歳、長男の妻45歳、18歳と16歳の孫)と同居することとなった。在宅介護はこの家族にとって初めての経験である。
Aさんの家族が新たな生活に適応していくための対処方法で最も適切なのはどれか。
- 活用できる在宅サービスをできる限り多く利用する。
- 家族が持つニーズよりもAさんのニーズを優先する。
- 介護の負担が特定の家族に集中しないように家族で話し合う。
- 10代の子どもを持つ家族の発達課題への取り組みを一時保留にする。
③ 介護の負担が特定の家族に集中しないように家族で話し合う。
同居の主な介護者の悩みやストレスの原因をみると「家族の病気や介護」が最も多く、こうした介護者の負担軽減のため、レスパイトケア(介護者の一時的な休息支援)の視点が重要である。
*第5編1章 10.介護者・要介護者等の状況 p229~230
▶午後46改題
令和4年(2022年)の就業構造基本調査における65歳以上75歳未満の高齢者の就業について正しいのはどれか。
- 女性では就業している者の割合は40%以上である。
- 就業していない者よりも就業している者の割合が多い。
- 就業していない者のうち40%以上が就業を希望している。
- 就業している者のうち非正規職員・従業員の割合は成人期より多い。
④ 就業している者のうち非正規職員・従業員の割合は成人期より多い。
60歳を境に役員を除く非正規の職員・従業員比率は上昇する。
×① 女性では就業している者の割合は40%以上である。
65歳以上75歳未満の女性高齢者の有業率は32.4%である(65~69歳41.4%、70~74歳25.3%)。
×② 就業していない者よりも就業している者の割合が多い。
65~69歳で有業者384万人・無業者370万人、70~74歳で有業者311万人・無業者は622万人となっており、65歳以上75歳未満では無業者の方が多い。
×③ 就業していない者のうち40%以上が就業を希望している。
無業者のうち就業を希望している就業希望者は、65~69歳で63.6万人(17.2%)、70~74歳で65.8万人(10.6%)となっている。
*第5編2章 5.4〕高齢者の就労支援 p242
▶午後47
高齢者施設に入所中のAさん(78歳、女性)は、長期間寝たきり状態で、便秘傾向のため下剤を内服している。下腹部痛と便意を訴えるが3日以上排便がなく、浣腸を行うと短く硬い便塊の後に、多量の軟便が排泄されることが数回続いている。既往歴に、消化管の疾患や痔はない。
Aさんの今後の排便に対する看護として最も適切なのはどれか。
- 直腸の便塊の有無を確認する。
- 止痢薬の処方を医師に依頼する。
- 1日の水分摂取量を800mL程度とする。
- 食物繊維の少ない食事への変更を提案する。
① 直腸の便塊の有無を確認する。
便意があるものの排便ができず、浣腸により硬い便塊とともに多量の軟便が数回排泄されており、直腸性便秘が考えられる。まずは直腸の便塊(嵌入便)の有無を確認する。
×② 止痢薬の処方を医師に依頼する。
直腸性便秘への対応として、下剤服用を見直す。
×③ 1日の水分摂取量を800mL程度とする。
約1500mLの適切な水分を摂取することで便を柔らかくし、胃結腸反射により排便を促進する。
×④ 食物繊維の少ない食事への変更を提案する。
便通を整える食物繊維を摂取することが適切である。
▶午後48
老年期のうつ病に特徴的な症状はどれか。
- 幻覚
- 感情鈍麻
- 心気症状
- 着衣失行
③ 心気症状
気分障害であるうつ病は、気分の落ち込み、興味や喜びの喪失といった精神症状と、不眠、食欲不振、疲労感といった身体症状があらわれる。高齢者では特に身体症状に対する訴えや強い不安を特徴とし、微細な身体の不調を重い病気と思い込む心気症状はその一つである。
▶午後49
高齢者に術後の呼吸器合併症が発症しやすい理由で正しいのはどれか。
- 残気量の減少
- 肺活量の低下
- 嚥下反射の閾値の低下
- 気道の線毛運動の亢進
② 肺活量の低下
加齢による呼吸機能の変化として、「肺活量の減少」「1秒率の減少」「残気量の増加」など深呼吸の制限や、「嚥下反射の低下(閾値の上昇)」「気道の線毛運動の低下」による喀痰排出の制限があり、呼吸器合併症の発症リスクを高める。
▶午後50
学童期の肥満について正しいのはどれか。
- 肥満傾向児は肥満度30%以上と定義される。
- 肥満傾向児は高学年より低学年が多い。
- 肥満傾向児は男子より女子が多い。
- 成人期の肥満に移行しやすい。
④ 成人期の肥満に移行しやすい。
学童期の肥満は成人期の肥満に移行しやすく、生活習慣病のリスク因子となる。
×① 肥満傾向児は肥満度30%以上と定義される。
児童・生徒の肥満度・痩身度を判定する計算式として、(実測体重(kg)-標準体重(kg))÷標準体重(kg)×100が用いられ、肥満傾向児は肥満度20%以上とされる。
×② 肥満傾向児は高学年より低学年が多い。
肥満傾向児は高学年になるほど多くなる。例えば、令和4年度(2022年度)の学校保健統計調査では、小学校6歳で男5.74%・女5.50%、11歳で男13.95%・女10.47%となっている。
×③ 肥満傾向児は男子より女子が多い。
令和4年度(2022年度)の学校保健統計調査でみると、小学校6歳~高等学校17歳までいずれの児童・生徒でも肥満傾向児の割合は男子が高い。
*第10編 4.学齢期の健康状況 p347~349
▶午後51
外性器異常が疑われた新生児の親への対応として適切なのはどれか。
- 出生直後に性別を伝える。
- 内性器には異常がないことを伝える。
- 出生直後に母児の早期接触を行わない。
- 出生届は性別保留で提出できることを説明する。
④ 出生届は性別保留で提出できることを説明する。
新生児の外性器異常により性別がはっきりしない場合、親には可能性で安易に性を告げず、出生届の性別や名前を保留して提出することができるので出生届を急がせることを避ける。
▶午後52
受胎のメカニズムで正しいのはどれか。
- 排卵は黄体形成ホルモン〈LH〉の分泌が減少して起こる。
- 卵子の受精能力は排卵後72時間持続する。
- 受精は卵管膨大部で起こることが多い。
- 受精後2日で受精卵は着床を完了する。
③ 受精は卵管膨大部で起こることが多い。
×① 排卵は黄体形成ホルモン〈LH〉の分泌が減少して起こる。
黄体形成ホルモン〈LH〉の分泌増加により排卵が促される。
×② 卵子の受精能力は排卵後72時間持続する。
卵子の受精能は排卵後約24時間である。なお、精子の受精能は射精後約48~72時間である。
○③ 受精は卵管膨大部で起こることが多い。
排卵された卵子は卵管膨大部で精子と融合して受精卵となる(受精)。
×④ 受精後2日で受精卵は着床を完了する。
受精卵は細胞分裂を繰り返しながら子宮に移動(受精後4~5日)した後、子宮内膜に着床を開始(受精後6〜7日)する。
▶午後53
成熟期女性の受胎調節について適切なのはどれか。
- 経口避妊薬は女性が主導で使用できる。
- コンドーム法の避妊効果は99%以上である。
- 基礎体温法は月経が不順な女性に有用である。
- 子宮内避妊器具〈IUD〉は経産婦より未産婦に挿入しやすい。
① 経口避妊薬は女性が主導で使用できる。
経口避妊薬は女性が主導で使用でき、排卵を抑制して高い避妊効果を示す。
×② コンドーム法の避妊効果は99%以上である。
コンドームの使用は避妊により効果的であるが、数%から十数%の失敗率がある。
×③ 基礎体温法は月経が不順な女性に有用である。
基礎体温法は、主に毎朝基礎体温を測って排卵期を予測するものであるが、月経不順や体調不良等の女性では予測が困難となる。
×④ 子宮内避妊器具〈IUD〉は経産婦より未産婦に挿入しやすい。
子宮内避妊器具〈IUD〉はいったん子宮内に装着すれば数年にわたり避妊が可能になるが、経膣分娩をしていない未産婦では入らない、痛みを伴うなどの可能性があり、経産婦の使用が適している。
▶午後55
Aさん(65歳、男性)は、胃癌を疑われ検査入院した。入院時、認知機能に問題はなかった。不眠を訴え、入院翌日からベンゾジアゼピン系の睡眠薬の内服が開始された。その日の夜、Aさんは突然ナースステーションに来て、意味不明な内容を叫んでいた。翌朝、Aさんは穏やかに話し意思疎通も取れたが「昨夜のことは覚えていない」と言う。
Aさんの昨夜の行動のアセスメントで最も適切なのはどれか。
- 観念奔逸
- 感情失禁
- 妄想気分
- 夜間せん妄
④ 夜間せん妄
せん妄は睡眠障害や見当識障害、幻覚・妄想、気分障害などを症状とするもので、入院などの環境変化や、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の服用はせん妄の誘因となる。とくに夜間に不安感が強くなり不眠と重なってせん妄の症状が現れるものを夜間せん妄という。
▶午後56
2人以上の精神保健指定医による診察結果の一致が要件となる入院形態はどれか。
- 応急入院
- 措置入院
- 医療保護入院
- 緊急措置入院
② 措置入院
×① 応急入院
×③ 医療保護入院
医療保護入院は、入院の必要がある精神障害者について家族等の同意がある場合に、精神保健指定医1名の診察を要件に入院させる制度である。家族等の同意を得ることができず急速を要する場合には72時間以内の応急入院を行うことができるが、同様に指定医1名の診察が要件である。
○② 措置入院
×④ 緊急措置入院
措置入院は、入院させなければ自傷他害のおそれがある精神障害者に対して、精神保健指定医2名の診察を要件に入院させる制度である。措置入院の対象であるが急速な入院の必要性がある場合には、指定医1名の診察を要件に72時間以内の緊急措置入院を行うことができる。
*第3編2章 4.3〕精神科の入院制度 p112~114
▶午後57
Aさん(65歳、男性)は、肺気腫で在宅酸素療法を受けている。ある日、Aさんの妻(70歳)から「同居している孫がインフルエンザにかかりました。今朝から夫も体が熱く、ぐったりしています」と訪問看護ステーションに電話で連絡があったため緊急訪問した。
訪問看護師が確認する項目で優先度が高いのはどれか。
- 喀痰の性状
- 胸痛の有無
- 関節痛の有無
- 経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉
④ 経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉
同居者が飛沫感染を起こすインフルエンザにかかり、Aさんも発熱症状があるため感染疑いがある。もともと肺気腫で在宅酸素療法を受けており、インフルエンザの感染により増悪のおそれがあるため、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉を確認し、呼吸不全を起こしていないか優先して確認する必要がある。
▶午後58
地域包括ケアシステムについて正しいのはどれか。
- 都道府県を単位として構築することが想定されている。
- 75歳以上の人口が急増する地域に重点が置かれている。
- 本人・家族の在宅生活の選択と心構えが前提条件とされている。
- 地域特性にかかわらず同じサービスが受けられることを目指している。
③ 本人・家族の在宅生活の選択と心構えが前提条件とされている。
地域包括ケアシステムは、医療・介護・予防・福祉などの様々な生活援助サービスを、日常生活の場(日常生活圏域)で適切に提供できるような地域の体制で、市町村や都道府県が地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて構築することとされる。
*第5編1章 7.地域包括ケアシステム p227
▶午後59
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律〈障害者総合支援法〉に基づいて、障害者が利用できるサービスはどれか。
- 育成医療
- 居宅療養管理指導
- 共同生活援助〈グループホーム〉
- 介護予防通所リハビリテーション
③ 共同生活援助〈グループホーム〉
共同生活援助〈グループホーム〉は障害者総合支援法に定める障害福祉サービス(訓練等給付)の一つで、障害者に対して主に夜間に、共同生活住居で日常生活上の援助を行う。
×① 育成医療
育成医療は、障害者総合支援法に定める自立支援医療(公費負担医療制度)であるが、対象者は身体に障害のある児童(障害児)である。
×② 居宅療養管理指導
×④ 介護予防通所リハビリテーション
いずれも介護保険法に基づくサービスである。
*第3編2章 3.障害児・者施策 p107~111
▶午後60
Aさん(55歳、女性)は、夫と2人で暮らしている。進行性の多発性硬化症で在宅療養をしている。脊髄系の症状が主で、両下肢の麻痺、膀胱直腸障害および尿閉がある。最近は座位の保持が難しく、疲れやすくなってきている。排尿はセルフカテーテルを使用してAさんが自己導尿を行い、排便は訪問看護師が浣腸を行っている。夫は仕事のため日中は不在である。
Aさんの身体状態に合わせた療養生活で適切なのはどれか。
- 入浴はシャワー浴とする。
- 介助型の車椅子を利用する。
- ベッドの高さは最低の位置で固定する。
- セルフカテーテルはトイレに保管する。
① 入浴はシャワー浴とする。
多発性硬化症は自己免疫性の神経疾患で、脳や脊髄、視神経が通る脱髄の炎症により、中枢神経内に空間的・時間的に症状が多発する指定難病である。体温の上昇による一時的な症状の悪化等(ウートフ徴候)のおそれがあるため、入浴よりもシャワー浴が適している。
×② 介助型の車椅子を利用する。
上肢には麻痺がないため、自走式の車椅子を利用する。
×③ ベッドの高さは最低の位置で固定する。
ベッドの高さは、移乗介助が容易な位置にする。
×④ セルフカテーテルはトイレに保管する。
移動や座位の困難さから、居室のベッドそばにセルフカテーテルを保管することが適している。
▶午後61
医療の標準化を目的に活用されているのはどれか。
- コーピング
- クリニカルパス
- エンパワメント
- コンサルテーション
② クリニカルパス
クリニカルパスは入院から退院までの検査や治療の工程を示した診療計画表で、院内で共有することで診療の標準化が期待される。
▶午後62
Aさん(27歳、男性)は、地震によって倒壊した建物に下腿を挟まれていたが、2日後に救出された。既往歴に特記すべきことはない。
注意すべき状態はどれか。
- 尿崩症
- 高カリウム血症
- 低ミオグロビン血症
- 代謝性アルカローシス
② 高カリウム血症
災害時等に長時間重量物に挟まれると、壊死した筋肉から毒性を持つカリウムやミオグロビンなどが血中に混じり、救出後に圧迫から解放されて血流が再開することで、高カリウム血症による急性心不全、高ミオグロビン血症による急性腎不全などをもたらす(クラッシュ症候群:挫滅症候群)。
▶午後63
災害医療におけるトリアージについて正しいのはどれか。
- 傷病者を病名によって分類する。
- 危険区域と安全区域を分けることである。
- 医療資源の効率的な配分のために行われる。
- 救命が困難な患者に対する治療を優先する。
③ 医療資源の効率的な配分のために行われる。
トリアージとは、大地震や大規模事故などにより大勢の傷病者が発生した際、限られた人的・物的医療資源を効率的に配分するため、傷病者の治療優先度を決めるものである。
×① 傷病者を病名によって分類する。
トリアージの際にはトリアージタグ(識別票)を利用し、傷病者の緊急度・重症度に応じて分類する。
×② 危険区域と安全区域を分けることである。
災害時の医療現場において、危険度や用途に応じて地域や建造物を区分することをゾーニングという。傷病者を対象とするトリアージとは異なる。
×④ 救命が困難な患者に対する治療を優先する。
トリアージタグは、優先順に赤(Ⅰ:最優先治療群・重症群)、黄(Ⅱ:非緊急治療群・中等症群)、緑(Ⅲ:軽処置群・軽症群)、黒(0:不処置群・死亡群)と分類する。救命が困難な患者は黒に該当し、治療処置を行わない。
▶午後64
国際保健に関する機関について正しいのはどれか。
- 国際協力機構〈JICA〉は国境なき医師団の派遣を行う。
- 国連開発計画〈UNDP〉は労働者の健康保護の勧告を行う。
- 世界保健機関〈WHO〉は国際疾病分類〈ICD〉を定めている。
- 赤十字国際委員会〈ICRC〉は国際連合〈UN〉の機関の1つである。
③ 世界保健機関〈WHO〉は国際疾病分類〈ICD〉を定めている。
世界保健機関〈WHO〉は感染症対策や衛生統計の実施、国際疾病分類(ICD)等の基準づくり、保健分野における技術協力・研究開発など広範な活動を実施している。
*第1編2章 12.世界保健機関〈WHO〉 p36~39
▶午後65
女性の骨盤腔内器官について腹側から背側への配列で正しいのはどれか。
- 尿道――肛門管――腟
- 腟――尿道――肛門管
- 肛門管――腟――尿道
- 尿道――腟――肛門管
- 腟――肛門管――尿道
▶午後66
公的年金制度について正しいのはどれか。
- 学生は申請によって納付が免除される。
- 生活保護を受けると支給が停止される。
- 保険料が主要財源である。
- 任意加入である。
- 積立方式である。
③ 保険料が主要財源である。
公的年金では、加入者が保険料を拠出し、年金給付を受ける社会保険方式を特徴としている。一部国庫負担もあるが、主要な財源は現役世代の保険料である。
×① 学生は申請によって納付が免除される。
20歳以上の本人の所得が一定以下の学生については、申請により在学中の保険料の納付が「猶予」される学生納付特例制度が設けられている。
×② 生活保護を受けると支給が停止される。
生活保護は厚生労働大臣が定める保護基準で計算される最低生活費と収入(年金収入含む)を比較し、収入が最低生活費に満たない場合、その差額が保護費として支給される。
×④ 任意加入である。
公的年金の特徴の一つとして、20歳以上60歳未満の国民すべてが国民年金に加入する国民皆年金が挙げられる。
×⑤ 積立方式である。
公的年金の特徴の一つとして、現在の現役世代が負担した保険料を原資に、現在の高齢世代が年金給付を受ける賦課方式が挙げられる。一方、積立方式は現役世代に払った保険料を高齢世代になって受け取る仕組みをいう。
*第5編2章 1.公的年金 p234~235
▶午後67
健康に影響を及ぼす生活環境とそれを規定している法律の組合せで正しいのはどれか。
- 上水道水質――汚濁防止法
- 飲食店――食品衛生法
- 家庭ごみ――悪臭防止法
- 学校環境――教育基本法
- 住宅用の建築材料――環境基本法
② 飲食店――食品衛生法
食品衛生法は、食品等の事業者や営業者の責務や規格・基準、監視指導などを規定している。
×① 上水道水質――汚濁防止法
水道法に規定している。
×③ 家庭ごみ――悪臭防止法
廃棄物処理法に規定している。
×④ 学校環境――教育基本法
学校保健安全法に規定している。
×⑤ 住宅用の建築材料――環境基本法
建築基準法に規定している。
*第7編2章 1.食品安全行政の概要 p278~279
▶午後68
チェーンソーの使用によって生じるのはどれか。
- じん肺
- 視力低下
- 心筋梗塞
- 肘関節の拘縮
- Raynaud〈レイノー〉現象
⑤ Raynaud〈レイノー〉現象
チェーンソーの使用など身体局所への振動に伴う職業性疾病として、振動障害、レイノー(蒼白発作)現象(白ろう病)など手指や前腕の末梢循環障害、末梢神経障害、運動器障害が生じる。
*第8編 5.職業性疾病の予防対策 p302~303
▶午後69
Aさん(61歳、男性)は、水分が飲み込めないため入院した。高度の狭窄を伴う進行食道癌と診断され、中心静脈栄養が開始された。入院後1週、Aさんは口渇と全身倦怠感を訴えた。意識は清明であり、バイタルサインは脈拍108/分、血圧98/70mmHgであった。尿量は1,600mL/日で、血液検査データは、アルブミン3.5g/dL、AST〈GOT〉45IU/L、ALT〈GPT〉40IU/L、クレアチニン1.1mg/dL、血糖190mg/dL、Hb11.0g/dLであった。
Aさんの口渇と全身倦怠感の要因として最も考えられるのはどれか。
- 貧血
- 低栄養
- 高血糖
- 腎機能障害
- 肝機能障害
③ 高血糖
中心静脈栄養法〈TPN〉による高カロリー輸液では、末梢静脈栄養法よりも糖濃度の高い輸液を投与することができるが、高血糖が起こりやすい。血糖は190mg/dLで基準(食後血糖値70~140mg/dL)を上回っており、口渇と全身倦怠感は高血糖症状である。
▶午後70
病的な老化を示すのはどれか。
- 肝臓の萎縮
- 動脈の粥状硬化
- 毛様体筋の機能低下
- 心筋の弾性線維の減少
- 膀胱の平滑筋の線維化
② 動脈の粥状硬化
粥状動脈硬化は、血管の老化に伴う病的な老化に当たる。血管内皮細胞が障害され、酸化LDLをマクロファージが貪食して変化した泡沫細胞が関与して形成される粥腫(プラーク)による動脈硬化であり、高血圧や喫煙、食事などの生活習慣を危険因子としてリスクが高まる。
▶午後71
生後1か月の男児。Hirschsprung〈ヒルシュスプルング〉病と診断され、生後6日、回腸部にストーマ造設術を行った。術後の経過は良好であり、退院に向けてストーマケアに関する指導を行うことになった。
母親に対する指導として適切なのはどれか。
- 「面板をはがした部位はタオルで拭いてください」
- 「ストーマ装具の交換は授乳直後に行ってください」
- 「ストーマから水様の便が出る時は受診してください」
- 「ストーマ装具の交換は滅菌手袋を装着して行ってください」
- 「ストーマ装具は便を捨てる部分が体の外側に向くように貼ってください」
⑤ 「ストーマ装具は便を捨てる部分が体の外側に向くように貼ってください」
人工肛門(ストーマ)は腸管を腹部の皮膚から出して固定した便の出口で、便を集める袋(ストーマ装具)を用いて受け止める。便を溜め始めやすくするため、便を捨てる部分が体の外側に向くようにストーマ装具を貼る。
×① 「面板をはがした部位はタオルで拭いてください」
乳児の皮膚は刺激に弱いため、摩擦の少ないティッシュやガーゼ等で拭く。
×② 「ストーマ装具の交換は授乳直後に行ってください」
授乳により排便が促進されるため、授乳直後は避けて、授乳前にストーマ装具の交換を行う。
×③ 「ストーマから水様の便が出る時は受診してください」
回腸ストーマは小腸開口部であり、水分を吸収する大腸を経由しないため軟便や水様便が出るが、通常の特徴であるため受診の必要はない。
×④ 「ストーマ装具の交換は滅菌手袋を装着して行ってください」
無菌状態ではないストーマの装具交換に当たっては、滅菌手袋の装着など無菌操作は不要である。
▶午後73
ホメオスタシスに関与するのはどれか。2つ選べ。
- 味蕾
- 筋紡錘
- 痛覚受容器
- 浸透圧受容器
- 中枢化学受容体
④ 浸透圧受容器
⑤ 中枢化学受容体
神経やホルモンの働きにより、外的・内的変化に関わらず、体温や血液量、呼吸、免疫など人体の生理状態は一定の均衡状態を保っている(恒常性:ホメオスタシス)。浸透圧受容器は血液浸透圧、中枢化学受容体は呼吸運動に関わる。
▶午後74
眼球内での光の通路に関与するのはどれか。2つ選べ。
- 強膜
- 脈絡膜
- 毛様体
- 硝子体
- 水晶体
④ 硝子体
⑤ 水晶体
光は眼球の角膜から入り、瞳孔、水晶体、硝子体、網膜と進み、視神経を通じて信号が脳に伝達される。その際、瞳孔の周囲にある虹彩は光の量の調整を、水晶体の上下にある毛様体(毛様体筋)はピント調整を行う。なお、①強膜、②脈絡膜は網膜の外側にある膜である。
▶午後75
排便時の努責で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 直腸平滑筋は弛緩する。
- 呼息位で呼吸が止まる。
- 外肛門括約筋は収縮する。
- 内肛門括約筋は弛緩する。
- 腹腔内圧は安静時より低下する。
② 呼息位で呼吸が止まる。
④ 内肛門括約筋は弛緩する。
×① 直腸平滑筋は弛緩する。
×③ 外肛門括約筋は収縮する。
○④ 内肛門括約筋は弛緩する。
便の移動による直腸内圧の上昇が、骨盤神経から仙髄の排便中枢に伝わり副交感神経を刺激することで、直腸壁の平滑筋の収縮や、内肛門括約筋・外肛門括約筋の弛緩が行われ、排便が促される。
○② 呼息位で呼吸が止まる。
×⑤ 腹腔内圧は安静時より低下する。
排便時の努責(いきみ)では、息を止めて腹腔内圧を上昇させ、排便を容易にする。
▶午後76
急性炎症と比較して慢性炎症に特徴的な所見はどれか。2つ選べ。
- 好中球浸潤
- CRPの上昇
- リンパ球浸潤
- 形質細胞の浸潤
- 血管透過性の亢進
③ リンパ球浸潤
④ 形質細胞の浸潤
炎症が長期化している慢性炎症では、リンパ球や形質細胞の浸潤が特徴的になる。
×① 好中球浸潤
×⑤ 血管透過性の亢進
急性炎症は怪我や病気、感染に対する最初の生体防御反応で、血管透過性が亢進することで急性炎症期における主要な生体防御機構(免疫)である好中球の浸潤が行われる。
×② CRPの上昇
CRPは炎症疾患の指標である蛋白質で、急性炎症・慢性炎症いずれでも高くなる。
▶午後77
狭心症の治療に用いる薬はどれか。2つ選べ。
- アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬
- スルホニル尿素薬
- ジギタリス製剤
- 抗血小板薬
- 硝酸薬
④ 抗血小板薬
⑤ 硝酸薬
④ アスピリンなどの抗血小板薬は、非ステロイド抗炎症薬として解熱や鎮痛、抗炎症作用のほか、低用量で血小板の機能を抑制し、血栓の生成を防止する抗血小板作用を発揮するため、血流の悪化した狭心症の治療薬として用いられる。
⑤ ニトログリセリンなどの硝酸薬は、狭心症に対する速効性の薬剤で、狭心症発作時に舌の下に入れて口内の粘膜で吸収し(舌下投与)、血管が拡張することで症状を緩和する。
▶午後78
出血傾向を把握するために重要なのはどれか。2つ選べ。
- 血糖値
- 血清鉄
- 血小板数
- アルカリフォスファターゼ値
- 活性化部分トロンボプラスチン時間〈APTT〉
③ 血小板数
⑤ 活性化部分トロンボプラスチン時間〈APTT〉
出血傾向は止血機構に異常が生じ、止血困難となっている状態である。出血傾向の把握には、血栓により一次止血を行う血小板数のほか、主に内因系の凝固因子の異常を調べる活性化部分トロンボプラスチン時間〈APTT〉が用いられる。
▶午後79
胃食道逆流症について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 食道の扁平上皮化生を起こす。
- 上部食道括約筋の弛緩によって生じる。
- 食道炎の程度と症状の強さが一致する。
- プロトンポンプ阻害薬が第一選択の治療法である。
- Barrett〈バレット〉上皮は腺癌の発生リスクが高い。
④ プロトンポンプ阻害薬が第一選択の治療法である。
⑤ Barrett〈バレット〉上皮は腺癌の発生リスクが高い。
×① 食道の扁平上皮化生を起こす。
○⑤ Barrett〈バレット〉上皮は腺癌の発生リスクが高い。
食道の粘膜は通常扁平上皮であるが、これが胃食道逆流により胃の粘膜と同じ円柱上皮に置換される円柱上皮化生が起きる(バレット上皮)。このバレット上皮では食道腺癌の発生リスクが高い。
×② 上部食道括約筋の弛緩によって生じる。
胃食道逆流は胃酸が食道へ逆流することをいい、加齢等による下部食道括約筋の弛緩によって生じる。
×③ 食道炎の程度と症状の強さが一致する。
食道炎の程度と症状の強さは必ずしも一致せず、自覚症状等がない無症候性の場合もある。
○④ プロトンポンプ阻害薬が第一選択の治療法である。
胃食道逆流の薬物治療として、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬が第一選択の治療法として用いられる。
▶午後80
患者の自立支援で適切なのはどれか。2つ選べ。
- 不足している知識を補う。
- 発病前の生活習慣を尊重する。
- 支援目標を看護師があらかじめ定める。
- できないことに焦点を当てて行動を修正する。
- 支援者である看護師が上位の関係が望ましい。
① 不足している知識を補う。
② 発病前の生活習慣を尊重する。
患者の自立においては、本人の自主性・主体性を尊重した支援を行い、患者が自ら達成可能な目標を立てて行動、評価することが重要である。自己効力感を高めて自立の継続を図るため、できないことよりもできたことに焦点を当てることが望ましい。
▶午後81
腹圧性尿失禁のケアとして適切なのはどれか。2つ選べ。
- 下腹部を保温する。
- 骨盤底筋群訓練を促す。
- 定期的な水分摂取を促す。
- 恥骨上部の圧迫を指導する。
- 尿意を感じたら早めにトイレへ行くことを促す。
② 骨盤底筋群訓練を促す。
⑤ 尿意を感じたら早めにトイレへ行くことを促す。
② 腹圧性尿失禁は、重い物を持ち上げたときや運動時、せき・くしゃみをしたときなど、腹部に力を加えたときに起こる不随意の尿漏れである。骨盤底筋の衰えにより尿道がコントロールできないことが原因であるため、行動療法として骨盤底筋訓練が効果的である。
⑤ 余裕をもって排尿を行っておくことで不意に腹圧を高めたとしても失禁を予防・軽減できる。
▶午後82
手段的日常生活動作〈IADL〉はどれか。2つ選べ。
- 食事
- 洗濯
- 入浴
- 更衣
- 買い物
② 洗濯
⑤ 買い物
ADL(日常生活動作)は、①、③、④などの日常生活の基本的な動作を評価する指標である。一方、IADL(手段的日常生活動作)はADLよりも複雑な動作・判断が求められる応用的な動作(買い物、調整、洗濯、電話、薬の管理、財産管理、乗り物等)を評価項目としている。
▶午後83
開放性損傷はどれか。2つ選べ。
- 切創
- 打撲傷
- 擦過創
- 皮下出血
- 内臓損傷
① 切創
③ 擦過創
皮膚損傷の有無により開放性損傷と非開放性損傷に分けられる。表皮の損傷を伴わない②打撲傷、④皮下出血、⑤内臓損傷は非開放性損傷である。
▶午後84
児童憲章について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 児童がよい環境の中で育てられることを定めている。
- 児童の権利に関する条約を受けて制定された。
- 児童が人として尊ばれることを定めている。
- 保護者の責務を定めている。
- 違反すると罰則規定がある。
① 児童がよい環境の中で育てられることを定めている。
③ 児童が人として尊ばれることを定めている。
昭和26年(1951年)に制定された児童憲章は、「児童は人として尊ばれる」「児童は社会の一員として重んぜられる」「児童はよい環境の中で尊ばれる」ことを理念とした道徳的規範である。
×② 児童の権利に関する条約を受けて制定された。
児童の権利に関する条約は、平成元年(1989)年に国際連合総会で採択されたものである。
×④ 保護者の責務を定めている。
×⑤ 違反すると罰則規定がある。
児童憲章は道徳的規範であり、保護者等の責務や罰則、法的責任を定めているものではない。
*第5編2章 3.1〕子どもの権利等のあゆみ p235~236
▶午後85
急性中耳炎で内服薬による治療を受けた5歳の男児および保護者に対して、治癒後に行う生活指導で適切なのはどれか。2つ選べ。
- 片側ずつ鼻をかむ。
- 耳垢は毎日除去する。
- 入浴時は耳栓を使用する。
- 大声を出させないようにする。
- 発熱時は耳漏の有無を確認する。
① 片側ずつ鼻をかむ。
⑤ 発熱時は耳漏の有無を確認する。
① 急性中耳炎は、鼓膜の奥にある中耳(鼓室)が感染により炎症を起こすもので、抗生剤等による治療後の再発防止のため、耳管に陰圧をかけないように片方ずつ鼻をかむ。
⑤ 発熱は急性中耳炎特有の症状であり、耳漏などの再発の徴候を見逃さない。
×② 耳垢は毎日除去する。
頻回の耳垢の除去は外耳を傷つけることにもなるため避ける。
×③ 入浴時は耳栓を使用する。
内服薬による急性中耳炎治療後には、入浴時の耳栓は必要ない。なお、鼓膜切開術や鼓膜チューブ留置術後等は必要とされる。
×④ 大声を出させないようにする。
大声を出すことと中耳炎に直接関係はない。
▶午後86
Aさん(50歳、女性)は、急に体が熱くなったり汗をかいたりし、夜は眠れなくなり疲れやすさを感じるようになった。月経はこの1年間で2回あった。
Aさんのホルモンで上昇しているのはどれか。2つ選べ。
- エストロゲン
- プロラクチン
- プロゲステロン
- 黄体形成ホルモン〈LH〉
- 卵胞刺激ホルモン〈FSH〉
④ 黄体形成ホルモン〈LH〉
⑤ 卵胞刺激ホルモン〈FSH〉
閉経(約50歳)前後の更年期には、女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌量が減少する一方で、卵胞刺激ホルモン〈FSH〉と黄体形成ホルモン〈LH〉の分泌は増えることにより、ホルモンのバランスが乱れてほてりや発汗、抑うつなどの症状がみられる。
▶午後87
医療現場における暴力について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 精神科に特有のものである。
- 病室環境は誘因にならない。
- 目撃者は被害者に含まれない。
- 暴力予防プログラムに合わせて対処する。
- 発生を防止するためには組織的な体制の整備が重要である。
④ 暴力予防プログラムに合わせて対処する。
⑤ 発生を防止するためには組織的な体制の整備が重要である。
医療従事者と患者間の精神的・身体的暴力は、特定の診療科にかかわらずどの医療機関においても起こりうる問題であり、組織的に発生を防止する体制や予防プログラム、マニュアルなどを事前に整備し、それに基づいて対処することが重要である。
▶午後88
精神医療におけるピアサポーターの活動について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 訪問活動は禁止されている。
- 活動には専門家の同行が条件となる。
- ピアサポーター自身の回復が促進される。
- 精神保健医療福祉サービスの利用を終了していることが条件となる。
- 自分の精神障害の経験を活かして同様の体験をしている人を支援する。
③ ピアサポーター自身の回復が促進される。
⑤ 自分の精神障害の経験を活かして同様の体験をしている人を支援する。
ピアサポートは当事者同士の支え合いをいい、同様の精神障害や疾病を抱えている者同士が自らの体験に基づいて支援し合い、問題解決や地域における交流・社会参加につなげていく。
▶午後89
6%A消毒液を用いて、医療器材の消毒用の0.02%A消毒液を1,500mL作るために必要な6%A消毒液の量を求めよ。
ただし、小数点以下第2位を四捨五入すること。
解答:①.②mL
① 5
② 0
必要な原液量(mL)は、希釈液濃度(%)÷原液濃度(%)×作成する希釈液量(mL)で求められる。希釈液は0.02%A消毒液、原液は6%A消毒液なので、0.02÷6×1500=4.999……で、小数点第2位を四捨五入し5.0となる。
▶午後90
体重9.6kgの患児に、小児用輸液セットを用いて体重1kg当たり1日100mLの輸液を行う。このときの1分間の滴下数を求めよ。
ただし、小数点以下の数値が得られた場合には、小数点以下第1位を四捨五入すること。
解答:①②滴/分
① 4
② 0
1日輸液量は1kgあたり100mLで体重が9.6kgなので、100mL×9.6kg=960mL。小児用輸液セット1mL当たりの滴下数は60滴であるため、1日滴下数は60滴×960mL=57600滴。これを24時間で割ると1時間滴下数は2400滴、さらに60分で割ると1分間滴下数は40滴となる。
資料 厚生労働省「第103回保健師国家試験、第100回助産師国家試験、第106回看護師国家試験の問題および正答について」
注 当ページに掲載する解説は、看護師国家試験を解く上での理解しやすさを重視しているため、本来はより専門的・学術的な説明や議論がある部分を一部省略しています。正確な情報を掲載するように努めていますが、特に医療・看護行為や疾病、薬剤等の説明において、その正確性を保証するものではありませんので、学習以外での使用はお控え下さい。
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