第107回看護師国家試験 午前一般問題
平成30年2月18日(日)に実施された第107回看護師国家試験について、午前問題のうち一般問題の正答と解説を示します。
「国民衛生の動向2024/2025」で内容を解説している問題に関しては、その参照章・ページを示しているので、同書を併用しながらの利用をおすすめします。
▼第107回看護師国家試験
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厚生の指標増刊
国民衛生の動向 2024/2025
発売日:2024.8.27
定価:2,970円(税込)
412頁・B5判
雑誌コード:03854-08
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▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
午前 一般問題
▶午前2改題(必修除外)
令和4年(2022年)の病院報告による一般病床の平均在院日数はどれか。
- 6.2日
- 16.2日
- 26.2日
- 36.2日
② 16.2日
令和4年(2022年)の病院の平均在院日数は27.3日となっており、医療法に定める病床の種類別にみると、一般病床は16.2日、精神病床は276.7日、療養病床は126.5日(介護療養病床は307.8日)、感染症病床は10.5日、結核病症は44.5日などとなっている。
*第4編1章 5.医療施設 p199~204
▶午前9(必修除外)
一般病床の看護職員の配置基準は、入院患者【 】人に対して看護師及び准看護師1人と法令で定められている。
【 】に入るのはどれか。
- 2
- 3
- 4
- 6
② 3
医療法により病床種別ごとに人員配置基準(人員1人当たりの入院患者数)や構造設備基準が定められており、一般病床における看護師の人員配置基準は3:1(入院患者3人に対して看護師・准看護師1人)となっている。
*第4編1章 5.医療施設 p199~204
▶午前11(必修除外)
肝臓の機能で正しいのはどれか。
- 胆汁の貯蔵
- 脂肪の吸収
- ホルモンの代謝
- 血漿蛋白質の分解
③ ホルモンの代謝
肝臓の主な機能として、蛋白質の合成、有害物質(アンモニア等)の分解・解毒、栄養の貯蔵、胆汁の合成・分泌などがある。肝臓で作られる胆汁は、胆嚢で濃縮・貯留され、十二指腸に分泌されて脂肪を乳化することで、膵臓内のリパーゼ(脂肪分解酵素)の働きを助ける。
▶午前26
健常な成人の血液中にみられる細胞のうち、核が無いのはどれか。
- 単球
- 好中球
- 赤血球
- リンパ球
③ 赤血球
赤血球は、骨髄内の赤芽球から核が放出(脱核)されることで血管内に移動するため核がない。なお、白血球は好中球(②)やリンパ球(④)、単球(①)に分類され、いずれも核を有する。
▶午前27
自発呼吸時の胸腔内圧を示す曲線はどれか。

④
×①
×②
胸腔内では吸息相、呼息相ともに陰圧であり、陽圧になることはない。
×③
○④
吸息相では空気を流入するため呼息相よりも陰圧が高まる。
▶午前28
急性大動脈解離について正しいのはどれか。
- 大動脈壁の外膜が解離する。
- 診断には造影剤を用いないCT検査を行う。
- Stanford〈スタンフォード〉分類B型では緊急手術を要する。
- 若年者ではMarfan〈マルファン〉症候群の患者にみられることが多い。
④ 若年者ではMarfan〈マルファン〉症候群の患者にみられることが多い。
指定難病であるマルファン症候群は、細胞同士をつなぐ全身の結合組織の働きが先天的に弱く、長身長などの骨格症状、眼の症状、心臓血管の症状が現れるもので、若年層であっても大動脈瘤や大動脈解離の発症がみられる。
×① 大動脈壁の外膜が解離する。
大動脈は内膜、中膜、外膜の3層に分かれており、大動脈解離は内膜の裂け目から血液が流れ込み、中膜が解離するものである。
×② 診断には造影剤を用いないCT検査を行う。
診断画像を明瞭にする造影剤を使ったCT検査により、最終的な診断を行う。
×③ Stanford〈スタンフォード〉分類B型では緊急手術を要する。
大動脈解離の緊急度を判定するスタンフォード分類では、上行大動脈に解離が及んでいるA型(緊急手術が必要)と、上行大動脈に解離が及んでいないB型に分類している。
▶午前29改題
令和3年度(2021年度)における社会保障給付費の内訳で多い順に並んでいるのはどれか。
- 年金>医療>福祉その他
- 年金>福祉その他>医療
- 医療>年金>福祉その他
- 医療>福祉その他>年金
① 年金>医療>福祉その他
令和3年度(2021年度)の社会保障給付費の内訳を部門別にみると、年金が55.8兆円(40.2%)、医療が47.4兆円(34.2%)、福祉その他が35.5兆円(25.6%)である。
*第1編1章 1.5〕社会保障の状況 p16~17
▶午前30
法律とその内容の組合せで正しいのはどれか。
- 児童福祉法――受胎調節の実地指導
- 地域保健法――市町村保健センターの設置
- 健康増進法――医療安全支援センターの設置
- 学校保健安全法――特定給食施設における栄養管理
② 地域保健法――市町村保健センターの設置
市町村保健センターは地域保健法に基づき、健康相談・保健指導・健康診査など地域保健に関し必要な事業を行うため、市町村が設置することができる。
×① 児童福祉法――受胎調節の実地指導
母体保護法に規定されている。
×③ 健康増進法――医療安全支援センターの設置
医療法に規定されている。
×④ 学校保健安全法――特定給食施設における栄養管理
健康増進法に規定されている。
*第1編2章 2.衛生行政の組織 p22~24
▶午前31
排泄行動が自立している入院中の男性高齢者が、夜間の排尿について「夜は何度もトイレに行きたくなります。そのたびにトイレまで歩くのは疲れます」と訴えている。
この患者の看護で適切なのはどれか。
- おむつの使用
- 夜間の尿器の使用
- 就寝前の水分摂取の制限
- 膀胱留置カテーテルの挿入
② 夜間の尿器の使用
夜間頻尿であるがトイレまで歩くことが疲れると訴えており、ふらつき等による転倒リスクも高い。夜間においては尿器を使用することが適している。
×① おむつの使用
×④ 膀胱留置カテーテルの挿入
排泄行動は自立しているため、おむつや膀胱留置カテーテルの利用は不適当である。
×③ 就寝前の水分摂取の制限
体重に占める水分量が少なくなる高齢者においては脱水のリスクが高く、水分摂取の過度な制限は控える。
▶午前32
良質の医療を受ける権利を宣言しているのはどれか。
- リスボン宣言
- ヘルシンキ宣言
- ジュネーブ宣言
- ニュルンベルク綱領
① リスボン宣言
リスボン宣言(患者の権利宣言)は、良質な医療を受ける権利、選択の自由の権利、自己決定の権利などの原則を規定している。
×② ヘルシンキ宣言
ヘルシンキ宣言(1964年)は人間を対象とする医学研究の倫理的原則で、インフォームド・コンセントなども規定された。
×③ ジュネーブ宣言
ジュネーブ宣言(1948年)では、医師が患者の権利・尊厳を尊重し、奉仕する等を宣言している。
×④ ニュルンベルク綱領
ニュルンベルク綱領(1947年)は、ドイツのナチスによる人体実験の反省から宣言された、人を対象とする医学研究に関する倫理原則である。
*第6編1章 10.臨床研究・治験 p255~256
▶午前33
看護における問題解決過程で誤っているのはどれか。
- 多面的な情報を分析する。
- 看護問題の優先順位は変化する。
- 家族を含めた看護計画を立てる。
- 看護問題は疾患によって確定される。
④ 看護問題は疾患によって確定される。
看護過程では、疾患を含めた様々な情報を収集、多面的に分析し、解決すべき看護問題を特定する。その解決のため、患者の家族のケアを含めた看護計画を立案し、継続的に情報収集を行うことで優先順位を入れ替えるなど計画を適宜修正、実施する。
▶午前34
検査に用いる器具を別に示す。

Weber〈ウェーバー〉試験に用いるのはどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
① ①
ウェーバー試験は音叉を用いて聴力を検査するもので、振動する音叉を頭頂部に当てた際に、健側に偏って伝わる場合は感音性難聴、患側に偏って伝わる場合は伝音性難聴とされる。
×② ②
膝蓋腱反射に用いる打腱器である。
×③ ③
眼の内部を診察する検眼鏡である。
×④ ④
痛覚や圧触覚を検査する知覚計である。
▶午前35
患者と看護師が面談をする際、両者の信頼関係を構築するための看護師の行動で最も適切なのはどれか。
- 患者の正面に座る。
- メモを取ることに集中する。
- 患者と視線の高さを合わせる。
- 事前に用意した文章を読み上げる。
③ 患者と視線の高さを合わせる。
看護師の患者との信頼関係は言語的、非言語的コミュニケーションを基に構築される。圧迫感を与えないため患者の正面ではなく斜めに座り、視線の高さを合わせ、アイコンタクトを保ち、患者の価値観を尊重して傾聴、対話を行う。
▶午前36
成人に経鼻経管栄養法を行う際の胃管を挿入する方法で適切なのはどれか。
- 体位は仰臥位とする。
- 管が咽頭に達したら頸部を後屈する。
- 咳嗽が生じた場合は直ちに抜去する。
- 嚥下運動よりも速い速度で挿入する。
③ 咳嗽が生じた場合は直ちに抜去する。
×① 体位は仰臥位とする。
経鼻経管栄養法では栄養剤の逆流を防ぐため、上半身を45度程度上げる半坐位(ファウラー位)が適している。
×② 管が咽頭に達したら頸部を後屈する。
○③ 咳嗽が生じた場合は直ちに抜去する。
頸部を後屈させると咽頭と気管が直線的となり、管が食道ではなく気管に入るおそれがあるため、管が咽頭に達した後は頸部前屈が望ましい。咳嗽が生じた場合は誤って気管に挿入したおそれがあるため、直ちに抜去する。
×④ 嚥下運動よりも速い速度で挿入する。
管が咽頭に達した後は嚥下を促し、嚥下運動に合わせて挿入する。
▶午前37
ボディメカニクスを活用して、看護師が患者を仰臥位から側臥位に体位変換する方法で正しいのはどれか。
- 患者の支持基底面を狭くする。
- 患者の重心を看護師から離す。
- 患者の膝を伸展したままにする。
- 患者の体幹を肩から回転させる。
① 患者の支持基底面を狭くする。
仰臥位から側臥位への体位変換においては、ねじり(回転)の力であるトルクの原理を利用し、腕を組んで膝を高く立てることで支持基底面(体重を支える床面積)を狭くし、患者の重心を近づけ膝を先に倒して腰を少ない力で回転させる。
▶午前38
入浴の際に血圧が低下しやすい状況はどれか。
- 浴槽に入る前に湯を身体にかけたとき
- 浴槽の湯に肩まで浸かったとき
- 浴槽から出たとき
- 浴室から脱衣所に移動したとき
③ 浴槽から出たとき
静止した水に浸かることで水圧による全身のマッサージ効果が生まれ、血液循環が促進されて血圧が上昇する(静水圧作用)。浴槽から出ることで静水圧作用が急激に解除されると、血圧や心拍出量の低下を引き起こし、失神やめまいの危険性が高くなる。
▶午前39
輸血後、数日から数週間経過してから出現する副作用〈有害事象〉はどれか。
- 溶血性反応
- 末梢血管収縮反応
- アナフィラキシー反応
- 輸血後移植片対宿主病〈PT-GVHD〉
④ 輸血後移植片対宿主病〈PT-GVHD〉
輸血副作用・合併症は発症の時期により即時型(あるいは急性型)と遅発型とに分けられる。輸血後移植片対宿主病〈PT-GVHD〉は遅発型副作用で、輸血後7~14日頃に発熱等を伴い発症する。
*第6編3章 1.血液製剤 p265~268
▶午前40
上部消化管内視鏡検査について適切なのはどれか。
- 2時間前から絶飲食とする。
- 前投薬には筋弛緩薬を用いる。
- 体位は左側臥位とする。
- 終了直後から飲食は可能である。
③ 体位は左側臥位とする。
唾液の誤嚥や胃食道逆流を防止するため、胃内視鏡検査では左側臥位をとる。
×① 2時間前から絶飲食とする。
上部消化管である胃内視鏡検査では検査前12時間を絶飲食とする。
×② 前投薬には筋弛緩薬を用いる。
胃内視鏡検査を行いやすくするため、腸管の収縮を抑える抗コリン作用をもつ鎮痙薬が用いられる。
×④ 終了直後から飲食は可能である。
検査後も咽頭の麻酔が切れるまでの数時間は絶飲食である。
▶午前41
全身麻酔下で食道再建術を受ける患者への術前オリエンテーションで適切なのはどれか。
- 「口から息を吸って鼻から吐く練習をしてください」
- 「手術の直前に下剤を飲んでもらいます」
- 「手術中はコンタクトレンズをつけたままで良いです」
- 「麻酔の際は喉に呼吸用の管を入れます」
④ 「麻酔の際は喉に呼吸用の管を入れます」
全身麻酔では筋弛緩薬を用いるため自発呼吸ができなくなるので、気管挿管による人工呼吸を行う。
×① 「口から息を吸って鼻から吐く練習をしてください」
術後の呼吸回復を促すため、術前に鼻から息を吸って口から吐く腹式呼吸の練習を行う。
×② 「手術の直前に下剤を飲んでもらいます」
必要に応じて手術前日の下剤、手術前の浣腸を行う。
×③ 「手術中はコンタクトレンズをつけたままで良いです」
角膜損傷を起こすおそれがあるため、手術中はコンタクトレンズを取り外す。
▶午前42
生活習慣が発症に関連している疾患はどれか。
- 肺気腫
- 1型糖尿病
- 肥大型心筋症
- 重症筋無力症
① 肺気腫
肺気腫や慢性気管支炎など慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉は、長期の喫煙によってもたらされる肺の炎症性疾患である。
×② 1型糖尿病
糖尿病は、生活習慣と無関係に発症する1型糖尿病と、生活習慣が関連する2型糖尿病がある。本問の場合は2型糖尿病のリスクが高い。
×③ 肥大型心筋症
肥大型心筋症は、主に左心室の壁が肥大して拡張機能障害を来す疾病で、遺伝子の変異が主要な原因である。
×④ 重症筋無力症
重症筋無力症は、免疫系が正常に機能せずに自己組織を破壊する自己免疫疾患で、生活習慣とは関連しない。
*第3編1章 2.6〕喫煙 p92~94
▶午前43
難病の患者に対する医療等に関する法律〈難病法〉に基づく医療費助成の対象となる疾患はどれか。
- 中皮腫
- C型肝炎
- 慢性腎不全
- 再生不良性貧血
④ 再生不良性貧血
難病法に基づき、医療費助成の対象となる難病を指定難病として認定している。再生不良性貧血は、造血機能が低下し、赤血球の減少による貧血、白血球(好中球)の減少による易感染性、血小板の減少による出血傾向などがみられる指定難病である。
×① 中皮腫
アスベスト(石綿)による中皮腫については、労働者災害補償保険法や石綿健康被害救済法により医療費助成が行われる。
×② C型肝炎
B型肝炎・C型肝炎の肝炎治療に対しては、平成20年度から医療費助成事業が行われている。
×③ 慢性腎不全
慢性腎不全の悪化に伴い腎代替療法の適応となった場合は、障害者総合支援法の自立支援医療(更生医療・育成医療)として公費負担が行われる。
*第3編4章 2.難病対策 p153~157
▶午前44
慢性疾患の患者に対する自己管理の支援で最も適切なのはどれか。
- 患者自身の失敗体験をもとに指導する。
- 病気に関する広範囲な知識を提供する。
- 症状に慣れる方法を身につけるように促す。
- 自分の身体徴候を把握するように指導する。
④ 自分の身体徴候を把握するように指導する。
患者の自己管理では、患者本人が自覚症状・身体徴候を把握し、無理のない達成可能な目標を立て、行動の定着・習慣化を図り、目標評価を行う。自己効力感を高めて自己管理の継続を図るため、うまくいった行動に目を向けるようにすることが望ましい。
▶午前45
Aさん(56歳、男性)は、化学療法後の血液検査にて好中球数300/mm3であった。
Aさんの状態で正しいのはどれか。
- 入浴を控える必要がある。
- 日和見感染症のリスクが高い。
- 口腔ケアには歯間ブラシを用いる必要がある。
- 化学療法の開始前と比べリンパ球数は増加している。
② 日和見感染症のリスクが高い。
化学療法により骨髄の造血機能が低下する骨髄抑制が考えられ、主要な生体防御機構(免疫)である好中球が500/mm3未満(重度の好中球減少症)に低下し、易感染の状態である。日和見感染症は、正常な宿主に対しては病原性を発揮しない病原体が、抵抗力の弱まった宿主に対しては病原性を発揮して起こる感染症であり、そのリスクが高い。
▶午前46
Aさん(35歳、男性)。身長175cm、体重74kgである。1か月前から腰痛と右下肢のしびれが続くため受診した。腰椎椎間板ヘルニアと診断され、保存的療法で経過をみることになった。
Aさんへの生活指導として適切なのはどれか。
- 「体重を減らしましょう」
- 「痛いときは冷罨法が効果的です」
- 「前かがみの姿勢を控えましょう」
- 「腰の下に枕を入れて寝ると良いですよ」
③ 「前かがみの姿勢を控えましょう」
腰椎椎間板ヘルニアは、腰に近い椎間板の突出(ヘルニア)により神経が圧迫されて痛みや麻痺が生じるもので、治療には保存療法が第一選択であり、前屈みや反り腰など腰部に負荷をかける姿勢を避けて安静にする必要がある。
×① 「体重を減らしましょう」
体格指数であるBMI(体重(kg)÷身長(m)2)は、74÷(1.75×1.75)≒24.2で肥満(BMI≧25.0)に当たらないため、直ちに減量は必要ない。
×② 「痛いときは冷罨法が効果的です」
疼痛緩和効果のある温罨法が効果的である。
×④ 「腰の下に枕を入れて寝ると良いですよ」
腰の下に枕を入れると反り腰となり、痛みや麻痺を増強するおそれがある。
▶午前47
老年期の心理社会的葛藤を「統合」対「絶望」と表現した人物はどれか。
- ペック, R. C.
- バトラー, R. N.
- エリクソン, E. H.
- ハヴィガースト, R. J.
③ エリクソン, E. H.
エリクソンは成長段階ごとに果たすべき発達課題を示している。老年期は、自分の人生の意味を見いだすため、自我の統合対絶望の葛藤が生じる。
▶午前48改題
令和4年(2022年)の国民生活基礎調査における65歳以上の高齢者がいる世帯について正しいのはどれか。
- 単独世帯は1割である。
- 三世代世帯は3割である。
- 夫婦のみの世帯は4割である。
- 親と未婚の子のみの世帯は2割である。
④ 親と未婚の子のみの世帯は2割である。
令和4年(2022年)では、65歳以上の高齢者がいる世帯のうち、単独世帯が31.8%、夫婦のみの世帯が32.1%、親と未婚の子のみの世帯が20.1%、三世代世帯が7.1%となっている。
*第2編1章 2.世帯の動向 p44~48
▶午前49
Aさん(66歳、男性)は、Lewy〈レビー〉小体型認知症であるが、日常生活動作〈ADL〉は自立している。介護老人保健施設の短期入所〈ショートステイ〉を初めて利用することとなった。施設の看護師は、同居している家族から「以前、入院したときに、ご飯にかかっているゴマを虫だと言って騒いだことがあったが、自宅ではそのような様子はみられない」と聞いた。
入所当日の夜間の対応で適切なのはどれか。
- 虫はいないと説明する。
- 部屋の照明をつけたままにする。
- 細かい模様のある物は片付ける。
- 窓のカーテンは開けたままにする。
③ 細かい模様のある物は片付ける。
レビー小体型認知症の特徴的な症状として、発症初期から幻視(実際に見えない人や物が見えるといった錯視)がしばしば現れる。本人を否定することなく、暗い場所で錯視の原因となる染みや模様のあるもの、影を作るもの等を片付けるなど、室内環境の見直しが重要である。
▶午前50
Aさん(70歳、女性)。夫(72歳)と2人暮らし。慢性腎不全のため腹膜透析を行うことになった。認知機能や身体機能の障害はない。腹膜透析について説明を受けた後、Aさんは「私のように高齢でも自分で腹膜透析をできるのか心配です。毎日続けられるでしょうか」と話した。
Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。
- 「誰でも簡単にできます」
- 「ご家族に操作をしてもらいましょう」
- 「訪問看護師に毎日見守ってもらいましょう」
- 「同年代で腹膜透析をしている人の体験を聞いてみましょう」
④ 「同年代で腹膜透析をしている人の体験を聞いてみましょう」
高齢者でも腹膜透析ができるかどうかという不安を解消するため、同年代の当事者の体験を聞くこと(ピアサポート)が適している。
×① 「誰でも簡単にできます」
腹膜透析には自己管理が必要であるため、安易な決めつけは不適切である。
×② 「ご家族に操作をしてもらいましょう」
×③ 「訪問看護師に毎日見守ってもらいましょう」
認知機能や身体機能に障害はないため、自己管理を中心として、必要に応じて周囲がサポートする。
▶午前51
Aさん(80歳、女性)。大腿骨頸部骨折のため人工骨頭置換術を受けた。手術後14日、Aさんの経過は順調で歩行訓練を行っている。歩行による疼痛の訴えはない。
現在のAさんの状態で最も注意すべきなのはどれか。
- せん妄
- 創部感染
- 股関節脱臼
- 深部静脈血栓症
③ 股関節脱臼
骨盤と関節を作る大腿骨頸部骨折では、重症度によって大腿骨頭を切除して人工骨頭に置換する人工骨頭置換術を行う。術後約3か月以内は人工股関節の脱臼に注意が必要である。なお、①、②、④も手術の合併症として注意が必要だが、いずれも早期に発症するもので、術後14日を経過し、経過も良好であるためリスクは低い。
▶午前52
胎生期から小児期の血清免疫グロブリン濃度の年齢による変動を図に示す。

①が示しているのはどれか。
- IgA
- IgD
- IgG
- IgM
① IgA
免疫グロブリンのうちIgAは母乳に豊富に含まれ、出生以降徐々に増加し、10歳ころに成人と同じレベルに達する。
×③ IgG
図中の一点短鎖線はIgGで、胎児期に胎盤を通じて母胎から受け取るため、胎生期から増加し、出生後に母体由来のIgGが減少して、生後3~4か月ころに最も少なくなる。
×④ IgM
図中の破線はIgMで、細菌やウイルス(抗原)が体内に侵入した際に最初に産生され、出生後1歳ころに成人と同レベルに達する。
▶午前53
Aちゃん(生後4か月、女児)は、嘔吐とけいれんのため病院を受診した。受診時、Aちゃんは傾眠状態で、顔色不良と眼球上転がみられたため入院となった。
受診時の体温は36.8℃であった。四肢は硬直し、数か所の内出血斑があった。大泉門は平坦であったが、次第に膨隆を認めるようになった。このときの頭部CTを別に示す。

Aちゃんの所見として考えられるのはどれか。
- 急性脳症
- てんかん
- 硬膜下血腫
- 細菌性髄膜炎
③ 硬膜下血腫
硬膜下血腫は頭蓋骨の内側にある硬膜の出血による血腫であり、脳が圧迫されることで意識障害をはじめ、頭痛、めまい、嘔吐、麻痺などが生じる。頭部CT写真では脳の表面に白い三日月型の血腫(図右縁)が認められる。
▶午前54
性同一性障害〈GID〉/性別違和〈GD〉について正しいのはどれか。
- 出現するのは成人期以降である。
- ホルモン療法の対象にはならない。
- 生物学的性と性の自己認識とが一致しない。
- 生物学的性と同一の性への恋愛感情をもつことである。
③ 生物学的性と性の自己認識とが一致しない。
性同一性障害は、生物学的な性と性自認に不一致を来している状態であり、性的指向は問わない。日本精神神経学会のガイドラインに従い、ホルモン療法などの身体的治療や精神科領域の治療が行われる。
▶午前55
ルービン, R.による母親役割獲得過程におけるロールプレイはどれか。
- 友人の出産体験を聞く。
- 人形で沐浴の練習をする。
- 購入する育児用品を考える。
- 看護師が行う児の抱き方を見る。
② 人形で沐浴の練習をする。
ルービンは、女性が母親としての役割を獲得する過程を、「模倣」「ロールプレイ(役割演技)」「空想」「取り込み-投影-拒絶」「悲嘆作業」の5段階で説明している。①と④は模倣、③は空想に当たる。
▶午前56
産科外来を初めて受診した妊婦。夫婦ともに外国籍で、日本の在留資格を取得している。
この妊婦への説明で正しいのはどれか。
- 「母子健康手帳は有料で入手できます」
- 「妊婦健康診査は公費の助成を受けられます」
- 「出生届は外務省に提出します」
- 「生まれた子どもは出生時に日本国籍を取得できます」
② 「妊婦健康診査は公費の助成を受けられます」
妊婦健康診査は母子保健法に定める一般財源による事業である。母子保健法は人道的な観点から、国籍・在留資格に関係なく、日本にいるすべての妊産婦に適用される。
*第3編2章 1.1〕母子保健法に基づく施策 p96~99
▶午前57
大震災の2日後、避難所にいる成人への心理的援助で適切なのはどれか。
- 宗教の多様性への配慮は後で行う。
- 会話が途切れないように話しかける。
- 確証がなくても安全であると保証する。
- ストレス反応に関する情報提供を行う。
④ ストレス反応に関する情報提供を行う。
発災後数日から数週間の急性期には急性ストレス障害が生じやすい。情報提供により認知に働きかけて発症を予防・軽減することが適切である。
*第3編2章 4.6〕(7)災害時の支援 p117
▶午前58
修正型電気けいれん療法について正しいのはどれか。
- 保護室で行う。
- 全身麻酔下で行う。
- 強直間代発作が生じる。
- 発生頻度の高い合併症は骨折である。
② 全身麻酔下で行う。
電気けいれん療法は重度の統合失調症やうつ病などの患者に対して、脳に短時間の電気刺激を与えて精神症状の緩和を図るものである。現在は、全身麻酔薬や筋弛緩薬により身体への負担を減らした修正型電気けいれん療法が行われている。
▶午前59
自殺念慮を訴える患者で、自殺が最も切迫している状態はどれか。
- 自殺の手段が未定である。
- 自殺する日を決めている。
- 将来の希望について時々話す。
- 普段と変わらない様子で生活している。
② 自殺する日を決めている。
自殺の危機にある者の多くは、それまでとは異なる言葉や行動による警告サインが発生し、とくに自殺の計画を立てる、手段を用意するといった具体的な準備は切迫性が高い。
▶午前60
養護者による虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者が、高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律〈高齢者虐待防止法〉に基づき通報する先として正しいのはどれか。
- 市町村
- 警察署
- 消防署
- 訪問看護事業所
① 市町村
高齢者虐待の防止、虐待を受けた高齢者の迅速で適切な保護、養護者に対する支援については、市町村(特別区を含む)が第一義的に責任を持つ。
*第5編2章 5.2〕高齢者虐待防止対策 p241~242
▶午前61
Aさん(83歳、男性)は、脳梗塞の後遺症で右片麻痺があり、在宅療養中である。
嚥下障害のため胃瘻を造設している。義歯を装着しているが、自分の歯が数本残っている。
Aさんの口腔ケアについて、介護者への指導で適切なのはどれか。
- 義歯を装着したまま歯を磨く。
- 経管栄養直後に実施する。
- ペースト状の歯磨剤を使用する。
- 歯垢の除去には歯ブラシを用いる。
④ 歯垢の除去には歯ブラシを用いる。
歯垢(プラーク)を除去する基本的な方法は、歯ブラシによる毎日の丁寧な歯磨きである。
×① 義歯を装着したまま歯を磨く。
義歯の下の歯茎や粘膜の衛生を保つため、口腔ケア時には義歯を外すことが望ましい。
×② 経管栄養直後に実施する。
経管栄養は咀嚼を行わないため唾液の分泌が減り、自浄作用が低下するので口腔ケアが必要であるが、口腔刺激による嘔吐や誤嚥を避けるために、経管栄養直後ではなく空腹時に行う。
×③ ペースト状の歯磨剤を使用する。
ペースト状の歯磨剤は発泡剤を配合しており、右片麻痺、嚥下障害のある当患者では誤嚥のリスクが高まるため、発泡剤を含まないジェル状の歯磨剤を用いる。
▶午前62
特別訪問看護指示書による訪問看護について正しいのはどれか。
- 提供できる頻度は週に3回までである。
- 提供できる期間は最大6か月である。
- 対象に指定難病は含まない。
- 医療保険が適用される。
④ 医療保険が適用される。
急性増悪等により一時的に頻回(週4日以上)の訪問看護の必要があるとして主治医による特別訪問看護指示書(14日間有効、一部2回交付可)の交付を受けた者には、医療保険の給付による訪問看護が行われ、週3日を超えての提供が可能となっている。
*第4編1章 3.2〕訪問看護 p170~172
▶午前63
要介護2と認定された高齢者の在宅療養支援において、支援に関与する者とその役割の組合せで適切なのはどれか。
- 介護支援専門員――家事の援助
- 市町村保健師――居宅サービス計画書の作成
- 訪問看護師――日常生活動作〈ADL〉の向上のための訓練
- 訪問介護員――運動機能の評価
③ 訪問看護師――日常生活動作〈ADL〉の向上のための訓練
×① 介護支援専門員――家事の援助
訪問介護員の役割である。
×② 市町村保健師――居宅サービス計画書の作成
介護支援専門員の役割である。
×④ 訪問介護員――運動機能の評価
理学療法士の役割である。
*第4編1章 3.2〕訪問看護 p170~172
▶午前64
日本の医療保険制度について正しいのはどれか。
- 健康診断は医療保険が適用される。
- 75歳以上の者は医療費の自己負担はない。
- 医療保険適用者の約4分の1が国民健康保険に加入している。
- 健康保険の種類によって1つのサービスに対する診療報酬の点数が異なる。
③ 医療保険適用者の約4分の1が国民健康保険に加入している。
わが国はすべての国民が、「被用者保険」「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」のいずれかの医療保険制度に加入することとされており(国民皆保険)、令和3年度(2021年度)末現在の適用者は、順に62.5%、22.6%、14.9%となっている。
×① 健康診断は医療保険が適用される。
医療給付内容には、診察、処置・手術、薬剤・治療材料、食事療養、入院・看護、在宅療養・看護、訪問看護があり、健康の維持・増進を目的とした健康診断・予防接種などに要する費用は含まない。
×② 75歳以上の者は医療費の自己負担はない。
75歳以上の者には後期高齢者医療制度が適用され、被保険者の自己負担は1割(一定以上の所得者2割、現役並み所得者3割)となっている。
×④ 健康保険の種類によって1つのサービスに対する診療報酬の点数が異なる。
診療報酬の点数は健康保険の種類にかかわらず同一である。
*第4編2章 3.医療保険各制度の概要と現状 p209~213
*第4編2章 4.診療報酬 p213~214
▶午前65改題
日本の医療提供施設について正しいのはどれか。
- 病院数は1995年から増加傾向である。
- 2019年の人口対病床数は先進国の中で最も多い。
- 介護老人保健施設数は2000年から減少傾向である。
- 精神科の平均在院日数は1990年から先進国で最短である。
② 2019年の人口対病床数は先進国の中で最も多い。
経済協力開発機構〈OECD〉の報告書によると、日本の人口千人当たりの病床数は12.8で、平均(4.4)を大きく上回り、OECD諸国で最も多い。
×① 病院数は1995年から増加傾向である。
病院数は平成2年(1990年)ころをピークに減少傾向である。
×③ 介護老人保健施設数は2000年から減少傾向である。
介護保険法に定める施設サービスの一つである介護老人保健施設は、平成12年(2000年)に2,667施設であったものが、令和4年(2022年)は4,273施設と増加傾向にある。
×④ 精神科の平均在院日数は1990年から先進国で最短である。
令和4年(2022年)の精神病床の平均在院日数は276.7日で、以前と比べて短縮しているものの国際的にみても非常に高い水準にある。
*第4編1章 5.医療施設 p199~204
▶午前66
看護師が自ら進んで能力を開発することの努力義務を定めているのはどれか。
- 医療法
- 労働契約法
- 教育基本法
- 看護師等の人材確保の促進に関する法律
④ 看護師等の人材確保の促進に関する法律
看護師等の人材確保の促進に関する法律により、国・地方公共団体には財政・金融上の措置、病院等の開設者等には処遇改善・臨床研修等の実施、看護師等には能力の開発・向上、国民には関心・理解などの責務を定めている。
*第4編1章 4.4〕看護職員等 p193~197
▶午前67
災害医療について正しいのはどれか。
- 災害拠点病院は市町村が指定する。
- 医療計画の中に災害医療が含まれる。
- 防災訓練は災害救助法に規定されている。
- 災害派遣医療チーム〈DMAT〉は災害に関連した長期的な医療支援活動を担う。
② 医療計画の中に災害医療が含まれる。
都道府県が策定する医療計画の5事業として、「救急医療」「災害医療」「へき地医療」「周産期医療」「小児医療(小児救急医療を含む)」が規定されている。
×① 災害拠点病院は市町村が指定する。
災害拠点病院は都道府県が平時に指定し、広域災害時等に医療チームの派遣や患者の受入を行う。
×③ 防災訓練は災害救助法に規定されている。
物資の備蓄や防災訓練義務といった平時における予防等の責務などは災害対策基本法に規定されている。発災後、被災地域に適用される災害救助法では、避難所や応急仮設住宅の設置、衣食や医療・助産の提供など応急対策が行われる。
×④ 災害派遣医療チーム〈DMAT〉は災害に関連した長期的な医療支援活動を担う。
災害派遣医療チーム〈DMAT〉は急性期(おおむね48時間以内)から活動できる機動性を持つ専門的な医療チームで、災害拠点病院を中心に整備されている。
*第4編1章 2.医療計画 p166~169
*第4編1章 3.6〕災害時医療 p175~176
▶午前68
小腸で消化吸収される栄養素のうち、胸管を通って輸送されるのはどれか。
- 糖質
- 蛋白質
- 電解質
- 中性脂肪
- 水溶性ビタミン
④ 中性脂肪
小腸で消化吸収された栄養素のうち、長鎖脂肪酸である中性脂肪は、リンパ管、胸管を経て全身循環血に移行する。そのほかは毛細血管から門脈へ移行し、肝臓に運ばれた後、全身循環血に移行する。
▶午前69
性周期が規則的で健常な成人女性において、着床が起こる時期に血中濃度が最も高くなるホルモンはどれか。
- アルドステロン
- プロゲステロン
- エストラジオール
- 黄体形成ホルモン〈LH〉
- 卵胞刺激ホルモン〈FSH〉
② プロゲステロン
プロゲステロン(黄体ホルモン)は排卵後の黄体期に増加し、排卵された卵子が着床しやすくなるよう、子宮内膜の安定など妊娠の準備を行う。
▶午前70
腹部CTを別に示す。

胆石が半年間で胆囊内をAからCまで移動した。
Cの状態を表すのはどれか。
- 嵌頓
- 侵入
- 転位
- 停留
- 迷入
① 嵌頓
胆石の嵌頓(かんとん)とは、胆石が胆嚢の出口(胆嚢管)にはまり込んでいる状態をいい、進行すると胆嚢が炎症を起こし、右上腹部痛や高熱を伴う急性胆嚢炎となる。CT画像では胆嚢内の胆石が胆嚢管側へ移動していることが確認できる。
▶午前71
胸腺腫に合併する疾患で多くみられるのはどれか。
- Parkinson〈パーキンソン〉病
- 筋ジストロフィー
- 重症筋無力症
- 多発性硬化症
- 多発性筋炎
③ 重症筋無力症
重症筋無力症は、免疫系が正常に機能せずに自己組織を破壊する自己免疫疾患であり、全身の筋力低下、特に眼瞼下垂や複視など眼筋型の症状を起こしやすい。合併症として胸腺腫や胸腺過形成などの胸腺異常が挙げられ、胸腺腫合併例では原則として胸腺摘除術が行われる。
▶午前72
頭部CTを別に示す。

論理的思考を制御する領域はどれか。
- A
- B
- C
- D
- E
① A
Aは前頭葉を示し、注意力や思考力、意欲、感情などを制御している。このため前頭葉の障害では、遂行能力の欠如や脱抑制、人格変化、意欲低下などが症状としてあらわれる。
▶午前73
糖尿病の合併症のうち、健康日本21(第三次)の目標に含まれるのはどれか。
- 腎症
- 感染症
- 網膜症
- 神経障害
- 血行障害
① 腎症
糖尿病性腎症は近年の新規透析導入原因の第1位であり、健康日本21(第三次)では糖尿病性腎症による年間新規透析導入患者数の減少を目標に掲げて対策を推進している。
*第3編1章 1.2〕(1)糖尿病 p80~81
▶午前74
創傷の治癒過程で炎症期に起こる現象はどれか。
- 創傷周囲の線維芽細胞が活性化する。
- 肉芽の形成が促進される。
- 滲出液が創に溜まる。
- 創の収縮が起こる。
- 上皮化が起こる。
③ 滲出液が創に溜まる。
創傷の治癒過程は「出血凝固期」「炎症期」「増殖期」「成熟期」の4段階を経る。炎症期では、毛細血管の透過性が亢進し、白血球や血漿成分を含んだ滲出液が創に溜まることで、創の清浄化が進む。その他は増殖期から成熟期に当たる。
▶午前75
Ménière〈メニエール〉病の患者への指導内容について正しいのはどれか。
- 静かな環境を保持する。
- 発作時は部屋を明るくする。
- めまいがあるときは一点を凝視する。
- 嘔吐を伴う場合は仰臥位安静にする。
- 耳鳴があるときは周囲の音を遮断する。
① 静かな環境を保持する。
メニエール病は蝸牛や前庭機能など内耳の異常疾患で、聴覚障害(感音性難聴、耳鳴り、耳閉感)を伴う回転性めまい発作を特徴とする。治療は薬物療法による対症療法を中心とし、静かな環境を整える、めまいや耳鳴りなどの発作時に刺激を緩和するなど、生活環境や習慣を見直すことも重要である。
▶午前76
車椅子での座位の姿勢を別に示す。

このような姿勢を長時間続けることで最も褥瘡が発生しやすい部位はどれか。
- 右肘関節部
- 右大転子部
- 左坐骨結節部
- 左膝関節外側部
- 左足関節外果部
③ 左坐骨結節部
車椅子による座位では、圧力が集中する仙骨部や坐骨部は褥瘡の好発部位であり、特に片麻痺とみられる写真の患者では、骨盤が後傾し、左側の坐骨結節に体重が掛かっており、左坐骨結節部の褥瘡リスクが最も高い。
▶午前77改題
令和5年(2023年)の人口動態統計において、1~4歳の死因で最も多いのはどれか。
- 肺炎
- 心疾患
- 悪性新生物
- 不慮の事故
- 先天奇形、変形及び染色体異常
⑤ 先天奇形、変形及び染色体異常
令和5年(2023年)の小児の年齢階級別死因をみると、0歳と1~4歳では「先天奇形、変形及び染色体異常」、5~9歳では「悪性新生物〈腫瘍〉」、10~14歳では「自殺」が最も多い。
*第2編2章 3.2〕死因の概要 p56~58
▶午前78
Aちゃん(8歳、女児)は、白血病の終末期で入院しているが、病状は安定している。両親と姉のBちゃん(10歳)の4人家族である。
Aちゃんの家族へ看護師が伝える内容として適切なのはどれか。
- 「Aちゃんは外出できません」
- 「Bちゃんは面会できません」
- 「Aちゃんが食べたい物を食べて良いです」
- 「Aちゃんよりもご家族の意思を優先します」
- 「Aちゃんに終末期であることは伝えないでください」
③ 「Aちゃんが食べたい物を食べて良いです」
終末期患者の意思や自己決定を尊重して、QOL(生活の質)を維持するための痛み緩和などの対処の上で、行動や食事の制限は可能な限り行わない。
▶午前79
Aさん(28歳、女性)は、2歳の子どもを養育しながら働いている。
Aさんが所定労働時間の短縮を希望した場合、事業主にその措置を義務付けているのはどれか。
- 児童福祉法
- 労働基準法
- 男女共同参画社会基本法
- 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律〈男女雇用機会均等法〉
- 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律〈育児・介護休業法〉
⑤ 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律〈育児・介護休業法〉
育児・介護休業法では、子どもが1歳になるまでの育児休業や、3歳までの子を養育する労働者の請求による所定外労働の制限や所定労働時間の短縮、小学校就学前までの子を養育する労働者の看護休暇の取得や時間外労働の制限を規定している。
*第5編2章 3.6〕妊産婦等の就業 p238~239
▶午前80
難病患者が自分の病気について学ぶことで不安を解消しようとする防衛機制はどれか。
- 否認
- 昇華
- 知性化
- 合理化
- 反動形成
③ 知性化
防衛機制とは、直面した危機や困難に対し、その不安を和らげるために無意識に働く心理的な防衛反応である。知性化は、耐えがたい感情や欲求を、客観的な知識によって理解し、解消しようとすることをいう。
×① 否認
否認は、受け入れがたい現実・体験に対して、その事実を直視せずに認めようとしないことをいう。
×② 昇華
昇華は、反社会的な性的欲求や攻撃的欲求を、芸術やスポーツ、学業などの社会的行動に変えて発散することをいう。
×④ 合理化
合理化は、耐えがたい感情や欲求に対してもっともらしい理由を付けて、自分自身を納得させることをいう。
×⑤ 反動形成
反動形成は、抑圧された無意識の欲求を表出しないよう、それと反対の意識・行動を強調して示すことをいう。
▶午前81
新人看護師のAさんは、夜勤の看護師からの引き継ぎが終了した後、日勤で行う業務を書き出した。
Aさんが書き出した以下の業務のうち最も優先して行うのはどれか。
- 頭部の搔痒感を訴える患者の洗髪
- 夜間せん妄のあった患者との散歩
- 午後に入院する患者の診療録の準備
- 翌日に検査を受ける予定の患者への説明
- 人工呼吸器を装着中の患者の状態の確認
⑤ 人工呼吸器を装着中の患者の状態の確認
生命維持管理装置である人工呼吸器を装着中の患者の状態確認が最優先である。
▶午前82
車軸関節はどれか。2つ選べ。
- 正中環軸関節
- 腕尺関節
- 上橈尺関節
- 指節間関節
- 顎関節
① 正中環軸関節
③ 上橈尺関節
関節は、関節頭(凸部)と関節窩(凹部)で構成され、その形状や運動性により分類される。車軸関節は、骨の長軸方向に回転する一軸性の関節であり、頸椎の環椎と軸椎の間にある正中環軸関節や、前腕の橈骨と尺骨の間の上橈尺関節はこれに当たる。
×② 腕尺関節
×④ 指節間関節
関節頭が円柱状で、一軸性を持つ蝶番関節である。
×⑤ 顎関節
関節頭が浅い楕円状で、二軸性を持つ顆状関節である。
▶午前84
パルスオキシメータを別に示す。

表示されている数値が示すのはどれか。2つ選べ。
- 脈拍数
- 酸素分圧
- 酸素飽和度
- 重炭酸濃度
- 二酸化炭素濃度
① 脈拍数
③ 酸素飽和度
パルスオキシメータは、指先や耳たぶに装着して経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉と脈拍数を計測する測定器である。写真の「98」はSpO2、「71」は脈拍数を表す。
▶午前85
網膜剝離について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 確定診断のために眼底検査を行う。
- 前駆症状として光視症がみられる。
- 初期症状として夜盲がみられる。
- 失明には至らない。
- 若年者に好発する。
① 確定診断のために眼底検査を行う。
② 前駆症状として光視症がみられる。
① 網膜剥離は眼球内の網膜が打撲や加齢、強い近視等により剥がれるもので、検眼鏡を用いた眼底検査による早期の確定診断、治療が重要である。
② 網膜剥離の前駆症状としては視界に小さな虫のようなものが見える飛蚊症、視界に閃光のようなものが見える光視症がある。
×③ 初期症状として夜盲がみられる。
暗いところで見え方が悪くなる夜盲は、ビタミンAの欠乏により生じるもので、網膜色素変性症の初期症状としてみられる。
×④ 失明には至らない。
剥離が網膜の中心部である黄斑部に達した場合、視力が急激に低下し、視野の欠損や失明のおそれがある。
×⑤ 若年者に好発する。
近視の若年者で発症もみられるが、眼の加齢変化により50歳以降で好発する。
▶午前86
労働基準法で定められているのはどれか。2つ選べ。
- 妊娠の届出
- 妊婦の保健指導
- 産前産後の休業
- 配偶者の育児休業
- 妊産婦の時間外労働の制限
③ 産前産後の休業
⑤ 妊産婦の時間外労働の制限
労働基準法に基づき、使用者は産前6週間で休業を請求した女性、産後8週間(産後6週間経過後の女性の請求による就業は可)を経過しない女性を就業させてはならない(産前産後休業)ほか、妊産婦の危険有害業務の就業禁止、妊婦の軽易業務転換、妊産婦の時間外労働・休日労働・深夜業制限、生後1年未満の生児を育てる女性の育児時間などを規定している。
×① 妊娠の届出
母子保健法に基づき、妊娠した者は速やかに市町村長に妊娠の届出をする。
×② 妊婦の保健指導
母子保健法に基づき、妊産婦、新生児、未熟児に対して、必要に応じて医師や助産師、保健師がその家庭を訪問して保健指導を行っている。
×④ 配偶者の育児休業
育児・介護休業法に基づき、男女ともに原則として子どもが1歳になるまで育児休業を取得することができる。
*第5編2章 3.6〕妊産婦等の就業 p238~239
▶午前87
ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症について適切なのはどれか。2つ選べ。
- 本人より先に家族に病名を告知する。
- 国内では異性間性的接触による感染が最も多い。
- 適切な対応によって母子感染率を下げることができる。
- 性行為の際には必ずコンドームを使用するよう指導する。
- HIVに感染していれば後天性免疫不全症候群〈AIDS〉と診断できる。
③ 適切な対応によって母子感染率を下げることができる。
④ 性行為の際には必ずコンドームを使用するよう指導する。
ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉の主な感染経路は、性行為による感染、血液を介した感染、母子感染(垂直感染)の3つである。性感染にはコンドームの使用、血液感染には針刺し事故の対策、母子感染には抗HIV薬の使用など、適切な対策が効果的である。
×① 本人より先に家族に病名を告知する。
本人告知を原則として、まず本人に病名を告知し、誰に知らせるかを本人が落ち着いて決める。
×② 国内では異性間性的接触による感染が最も多い。
令和4年(2022年)のHIV感染者報告数は632件であり、そのうち同性間の性的接触が443件と約70%を占めている。
×⑤ HIVに感染していれば後天性免疫不全症候群〈AIDS〉と診断できる。
HIVに感染後、免疫不全状態が進み、特徴的疾患であるニューモシスティス肺炎(カリニ肺炎)やカンジダ症、カポジ肉腫などの23の指標疾患の1つ以上を発症するとエイズと診断される。
*第3編3章 3.4〕HIV・エイズ〈AIDS〉 p135~137
▶午前88
Aさん(63歳、男性)。BMI24。前立腺肥大症のため経尿道的前立腺切除術を受け、手術後3日で膀胱留置カテーテルが抜去された。数日後に退院する予定である。
Aさんへの退院指導で適切なのはどれか。2つ選べ。
- 散歩を控える。
- 水分摂取を促す。
- 長時間の座位を控える。
- 時間をかけて入浴する。
- 排便時に強くいきまないようにする。
② 水分摂取を促す。
⑤ 排便時に強くいきまないようにする。
前立腺肥大症に対する外科治療として、内視鏡を用いた経尿道的前立腺切除術〈TUR-P〉が標準的治療である。手術後は尿路感染症を防ぐために水分を多く取って排尿を促し、頻度の高い合併症である出血を避けるために排便で強くいきまないようにする。
×① 散歩を控える。
出血を避けるために強い運動を避ける必要はあるが、散歩などの適度な有酸素運動は筋力低下を避けるためにも望ましい。
×③ 長時間の座位を控える。
出血を避けるために自転車・バイクなどまたがって座る乗り物の利用を避ける必要はあるが、通常の座位であれば問題はない。
×④ 時間をかけて入浴する。
出血を避けるため、長時間の入浴による血圧の上昇を避ける。
▶午前89
精神科病院で行動制限を受ける患者への対応で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 行動制限の理由を患者に説明する。
- 原則として2名以上のスタッフで対応する。
- 信書の発受の対象は患者の家族に限定する。
- 精神保健指定医による診察は週1回とする。
- 12時間を超えない隔離は看護師の判断で実施する。
① 行動制限の理由を患者に説明する。
② 原則として2名以上のスタッフで対応する。
① 精神科の入院において、隔離等の行動制限を行う際には患者に理由を知らせ、その理由、開始・解除日時を診療録に記載する。
② 精神障害者が興奮状態となる、攻撃性が高まるなどの事態に備えて、スタッフ等の安全を保つために複数名で対応することが適切である。
×③ 信書の発受の対象は患者の家族に限定する。
隔離や身体的拘束などの行動制限がある場合でも、信書の発受や、行政機関の職員、代理人である弁護士との電話・面会については制限できない。
×④ 精神保健指定医による診察は週1回とする。
隔離時には、医師は原則として少なくとも毎日一回診察を行うこととされる。
×⑤ 12時間を超えない隔離は看護師の判断で実施する。
12時間を超える隔離については精神保健指定医の判断が必要となる。12時間を超えない場合には精神保健指定医の判断は要しないが、この場合でもその要否の判断は医師によって行われなければならない。
*第3編2章 4.3〕精神科の入院制度 p112~114
▶午前90
3L/分で酸素療法中の入院患者が、500L酸素ボンベ(14.7MPaで充塡)を用いて移動した。現在の酸素ボンベの圧力計は5MPaを示している。
酸素ボンベの残りの使用可能時間を求めよ。
ただし、小数点以下の数値が得られた場合には、小数点以下第1位を四捨五入すること。
解答:①②分
① 5
② 7
酸素ボンベの残量(L)は以下のとおり求められる。
- 500:14.7=x:5
- 14.7x=2500
- x=2500÷14.7
- x≒170
3L/分であるため、残りの使用時間は170÷3=56.666…を四捨五入し57分となる。
資料 厚生労働省「第104回保健師国家試験、第101回助産師国家試験、第107回看護師国家試験の問題および正答について」
注 当ページに掲載する解説は、看護師国家試験を解く上での理解しやすさを重視しているため、本来はより専門的・学術的な説明や議論がある部分を一部省略しています。正確な情報を掲載するように努めていますが、特に医療・看護行為や疾病、薬剤等の説明において、その正確性を保証するものではありませんので、学習以外での使用はお控え下さい。
▼第107回看護師国家試験
▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 保健師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 助産師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 医師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 薬剤師国家試験に出る国民衛生の動向