第105回看護師国家試験―「国民衛生の動向」対応問題・回答
平成28年2月14日(日)に実施された第105回看護師国家試験について、全問題の正答と解説を示します。
また、「国民衛生の動向2024/2025」で内容を解説している問題に関しては、その参照章・ページを示しているので、同書を併用しながらの利用をおすすめします。
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厚生の指標増刊
国民衛生の動向 2024/2025
発売日:2024.8.27
定価:2,970円(税込)
412頁・B5判
雑誌コード:03854-08
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▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
第105回看護師国家試験目次
第105回看護師国家試験・必修問題(50問)
▶午前1改題
日本の令和4年(2022年)の生産年齢人口の構成割合に最も近いのはどれか。
- 49%
- 59%
- 69%
- 79%
② 59%
令和4年(2022年)の年齢3区分別人口構成割合は、年少人口(0~14歳)が11.6%、生産年齢人口(15~64歳)が59.4%、老年人口(65歳以上)が29.0%となっている。少子高齢化により、年少人口と生産年齢人口は減少傾向、老年人口は増加傾向にある。
*第2編1章 1.2〕年齢別人口 p41~42
▶午前2
運動習慣が身体機能に与える影響で正しいのはどれか。
- 筋肉量の減少
- 体脂肪率の増加
- 最大換気量の減少
- 基礎代謝量の増加
④ 基礎代謝量の増加
適切な身体活動・運動は、生活習慣病の予防やメンタルヘルス、生活の質の改善に有効であり、①筋肉量の増加、②体脂肪率の減少、③最大換気量の増加、④基礎代謝量の増加はそのもたらす効果である。
*第3編1章 2.3〕身体活動・運動 p90~91
▶午前3改題
日本の令和3年(2021年)における業務上疾病で、新型コロナウイルスり患によるものを除いた場合、発生件数が最も多いのはどれか。
- 振動障害
- 騒音による耳の疾患
- 負傷に起因する疾病
- じん肺症及びじん肺合併症
③ 負傷に起因する疾病
令和3年(2021年)の業務上疾病発生割合は、病原体による疾病が69.4%で最も多いが、そのうち新型コロナウイルスり患によるもの68.9%を除いた場合は、過去と同様に負傷に起因する疾病(そのうち災害性腰痛)が最も多い。
*第8編 8.労働災害補償と業務上疾病 p306~308
▶午前4
介護保険の給付はどれか。
- 年金給付
- 予防給付
- 求職者給付
- 教育訓練給付
② 予防給付
介護保険制度において、要介護(1~5)の者には介護給付が、要支援(1・2)の者には予防給付が支給される。
*第5編1章 3.介護給付 p222~225
*第5編1章 4.予防給付 p225
▶午前5
臨床研究を行うときに、研究対象者の立場を擁護するために審査を行う組織はどれか。
- 教育委員会
- 倫理委員会
- 医療事故調査委員会
- 院内感染対策委員会
② 倫理委員会
人間を対象とする医学研究の倫理的原則を掲げたヘルシンキ宣言等を踏まえ、わが国は「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」を制定している。倫理指針に基づき、倫理(審査)委員会は、臨床研究が倫理的配慮、科学的妥当性、研究機関・研究者等の利益相反に関する透明性が確保されているかどうかなどを審査する。
*第6編1章 10.臨床研究・治験 p255~256
▶午前6
正期産の定義はどれか。
- 妊娠36週0日から40週6日
- 妊娠37週0日から41週6日
- 妊娠38週0日から42週6日
- 妊娠39週0日から43週6日
② 妊娠37週0日から41週6日
妊娠満22週0日~36週6日の出産を早期産、妊娠満37週0日~41週6日の出産を正期産、妊娠満42週0日以降の出産を過期産という。
*第2編2章 2.出生 p51~55
▶午前7
日本の女性の平均閉経年齢に最も近いのはどれか。
- 40歳
- 45歳
- 50歳
- 55歳
③ 50歳
日本人女性の閉経は約45~55歳、平均閉経年齢は約50歳とされる。閉経を挟んで前後約10年間の更年期には卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減り、様々な症状が現れることがある。
▶午前8改題
日本の令和3年(2021年)における家族の世帯構造で最も少ないのはどれか。
- 単独世帯
- 三世代世帯
- 夫婦のみの世帯
- 夫婦と未婚の子のみの世帯
② 三世代世帯
令和3年(2021年)の世帯構造をみると、単独世帯が29.5%、夫婦と未婚の子のみの世帯が27.5%、夫婦のみの世帯が24.5%、ひとり親と未婚の子のみの世帯が7.1%、三世代世帯が4.9%などとなっている。
*第2編1章 2.世帯の動向 p44~48
▶午前9
保健所の設置主体で正しいのはどれか。
- 国
- 都道府県
- 社会福祉法人
- 独立行政法人
② 都道府県
保健所は地域保健法に基づき、地域における公衆衛生の向上と増進を図るため一般的に都道府県が設置する。
*第1編2章 2.衛生行政の組織 p22~24
▶午前10
チーム医療で正しいのはどれか。
- 国家資格を持つ者で構成される。
- リーダーとなる職種を固定する。
- 他施設との間で行うことはできない。
- メンバー間で情報を共有して意思決定をする。
④ メンバー間で情報を共有して意思決定をする。
チーム医療は、多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供するものである。
*第4編1章 4.6〕医療関係者の業務の動向 p199
▶午前11
内分泌器官はどれか。
- 乳腺
- 涙腺
- 甲状腺
- 唾液腺
③ 甲状腺
甲状腺は、代謝を促進する甲状腺ホルモンを血液中に分泌する内分泌器官である。ホルモン分泌の低下(甲状腺機能低下症)により低体温症状などを引き起こす。
▶午前12
臓器の移植に関する法律における脳死の判定基準に含まれるのはどれか。
- 低体温
- 心停止
- 平坦脳波
- 下顎呼吸
③ 平坦脳波
脳死は脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止した状態をいい、「深い昏睡」「瞳孔の散大と固定」「脳幹反射の消失」「平坦な脳波」「自発呼吸の停止」の5項目を行い、6時間以上経過した後の同じ一連の検査(2回目)により判定され、脳死下の臓器移植が可能となる(6歳未満の小児は脳死判定を24時間空けて行う)。
*第3編4章 6.臓器移植・組織移植 p161~162
▶午前13
高齢者の体重に占める水分量の割合に最も近いのはどれか。
- 45%
- 55%
- 65%
- 75%
② 55%
成人の体重に占める水分量は約60%であるが、高齢者は減少し約50~55%であるため脱水が生じやすい。
▶午前14
徐脈性の不整脈で起こりやすいのはどれか。
- 失語
- 失行
- 失神
- 失明
③ 失神
成人の標準的な脈拍は1分間に約60~100回であるが、これが60回未満になる徐脈性不整脈では、めまいや失神、眼前暗黒感の症状が現れることがある。
▶午前15
糖尿病の血糖コントロールの指標となる検査値はどれか。
- 総ビリルビン
- 総コレステロール
- グリコヘモグロビン
- クレアチニンクリアランス
③ グリコヘモグロビン
グリコヘモグロビン(HbA1C)は、赤血球中のヘモグロビンにグルコース(ブドウ糖)が非酵素的に結合した糖化蛋白質で、糖尿病の評価を行う上でその割合が血糖コントロールの指標として重要となる。
▶午前16
認知症の中核症状はどれか。
- 幻聴
- 抑うつ
- 希死念慮
- 見当識障害
④ 見当識障害
認知症の症状は、記憶障害や見当識障害(自分がどこにいるかわからなくなる等の症状)、理解力・判断力の低下などの中核症状と、行動・心理症状(BPSD)に大別される。
*第3編2章 2.2〕認知症施策のあゆみ p105~107
▶午前17
ステロイド薬の副作用(有害事象)はどれか。
- 便秘
- 口内炎
- 低血圧
- 骨粗鬆症
④ 骨粗鬆症
ステロイド(副腎皮質ステロイド)薬は、炎症の抑制や免疫力の抑制など幅広い疾患で用いられているが、高血糖や高血圧、易感染性、骨粗鬆症、食欲増進による体重増加、満月様顔貌〈ムーンフェイス〉など副作用が多く、注意を要する。
▶午前18
骨盤底筋訓練が最も有効なのはどれか。
- 溢流性尿失禁
- 切迫性尿失禁
- 反射性尿失禁
- 腹圧性尿失禁
④ 腹圧性尿失禁
腹圧性尿失禁は、重い物を持ち上げたときや運動時、せき・くしゃみをしたときなど、腹部に力を加えたときに起こる不随意の尿漏れである。骨盤底筋の衰えにより尿道がコントロールできないことが原因であるため、行動療法として骨盤底筋訓練が効果的である。
×① 溢流性尿失禁
溢流性尿失禁は、前立腺肥大症などに伴う排尿障害により、尿がうまく出せず、少しずつ漏出するして起こる失禁である。その疾病予防や治療、生活習慣の改善が有効である。
×② 切迫性尿失禁
切迫性尿失禁は、急に我慢できないほどの強い尿意を催す尿意切迫感による失禁である。薬物療法や排尿間隔の記録などの生活指導が有効である。
×③ 反射性尿失禁
反射性尿失禁は脊椎損傷などにより尿意を感じず不随意に起こる失禁で、尿道カテーテルを用いた間欠的自己導尿を行う。
▶午前19
口腔ケアで適切なのはどれか。
- 歯肉出血がある場合は実施しない。
- 含嗽ができない患者には禁忌である。
- 経口摂取の有無に関係なく実施する。
- 総義歯の場合は義歯を入れた状態で実施する。
③ 経口摂取の有無に関係なく実施する。
経鼻経管栄養法などにより経口摂取がない場合でも、唾液の分泌低下により自浄作用が低下し、口腔内の衛生は悪化するため、口腔ケアを実施する。
×① 歯肉出血がある場合は実施しない。
歯肉出血は歯垢(プラーク)の蓄積による炎症が原因で生じる。出血がみられた場合でも歯垢を除去し、柔らかい歯ブラシや指で歯肉をマッサージするなど、適切な口腔ケアがより必要である。
×② 含嗽ができない患者には禁忌である。
含嗽(うがい)ができない患者であっても、ブラッシングの後に水を切ったガーゼで口腔内を拭き取るなどで代替できる。
×④ 総義歯の場合は義歯を入れた状態で実施する。
総義歯の下の歯茎や粘膜の衛生を保つため、口腔ケア時には義歯を外すことが望ましい。
▶午前21
注射針を皮膚に対して45〜90度の角度で刺入するのはどれか。
- 皮内注射
- 皮下注射
- 筋肉内注射
- 静脈内注射
③ 筋肉内注射
筋肉内注射は、皮下組織の奥にある筋肉内に直接注射するため、確実に届くように45~90度の角度で刺入する。
▶午前22
薬剤の血中濃度の上昇が最も速い与薬方法はどれか。
- 坐薬
- 経口薬
- 筋肉内注射
- 静脈内注射
④ 静脈内注射
静脈内注射は、直接薬剤を血管内に投与し、全身に循環されるため、薬剤の吸収速度、血中濃度の上昇は最も速い。
▶午前23
患者が自己採血で簡単に測定できるのはどれか。
- 血糖
- カリウム
- カルシウム
- アルブミン
① 血糖
血糖は、簡易血糖測定器を用いて自己採血し、測定することができる。血糖値を適切な範囲で維持する(血糖コントロール)ため、糖尿病患者等のセルフケアとして活用される。
▶午前24
ベンチュリーマスクの写真を別に示す。
酸素流量の設定と併せて吸入酸素濃度を調節するのはどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
③ ③
ベンチュリーマスクは酸素療法で用いる酸素投与器具で、③の色分されたダイリューターで24~50%の酸素濃度を調節し、酸素流量を設定することで、患者の1回換気量に左右されず安定した投与ができる。
▶午前25
災害による心理的ストレスが身体反応として最も強く現れる時期はどれか。
- 発災後3~7日
- 発災後2週~1か月
- 発災後半年~3年
- 発災後4年目以降
① 発災後3~7日
発災後数日から数週間の急性期には急性ストレス障害が生じやすい。なお、発災後1か月以降の中長期以降には、慢性疾患の悪化や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患が生じやすい。
*第3編2章 4.6〕(7)災害時の支援 p117
▶午後1改題
日本の令和3年(2021年)における男性の平均寿命はどれか。
- 71.47年
- 76.47年
- 81.47年
- 86.47年
③ 81.47年
平均寿命とは0歳の平均余命をいい、令和3年(2021年)の簡易生命表では、男性が81.47年、女性が87.57年となっている。
*第2編3章 生命表 p70~73
▶午後2改題
日本の令和元年(2019年)の国民健康・栄養調査における男性の喫煙習慣者の割合はどれか。
- 7.1%
- 27.1%
- 47.1%
- 67.1%
② 27.1%
令和元年(2019年)の喫煙率は男性が27.1%、女性が7.6%となっている。男女ともに喫煙率は低下傾向にある。
*第3編1章 2.6〕喫煙 p92~94
▶午後3
地球温暖化をもたらす温室効果ガスはどれか。
- 酸素
- 水素
- 窒素
- 二酸化炭素
④ 二酸化炭素
二酸化炭素やメタン、フロンなどの温室効果ガスの排出により、大気中の温室効果ガスの濃度が上昇して温室効果が強まり、地球温暖化が進行している。
*第9編1章 4.1〕地球温暖化対策 p317~318
▶午後4
終末期に自分がどのような医療を受けたいかをあらかじめ文書で示しておくのはどれか。
- アドヒアランス
- リビングウィル
- セカンドオピニオン
- インフォームド・コンセント
② リビングウィル
リビングウィル(Living Will)は、終末期における医療・ケアの方法や方針などを、患者本人があらかじめ書面で意思表示することをいい、本人の意思を直接確認できない状態になった場合に書面に従って治療方針を決定する。
×① アドヒアランス
アドヒアランスは患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定の下で治療を受けることをいう。
×③ セカンドオピニオン
セカンドオピニオンは主治医以外の医師による助言を受けることをいう。
×④ インフォームド・コンセント
インフォームド・コンセントは医療提供者が適切な説明を行い、医療の受け手の理解を得るように努めることをいい、医療法に規定される。
▶午後5
医師の指示がある場合でも看護師に禁止されている業務はどれか。
- 静脈内注射
- 診断書の交付
- 末梢静脈路の確保
- 人工呼吸器の設定の変更
② 診断書の交付
看護師は傷病者もしくは褥婦に対する療養上の世話または診療の補助を行うことを業とする(保健師助産師看護師法5条)。診療の補助の範囲は厚生労働省通知により解釈がなされ、①、③、④は看護師が医師の指示の下に行うことができる。
*第4編1章 4.4〕看護職員等 p193~197
▶午後6
学童期の正常な脈拍数はどれか。
- 50〜70/分
- 80〜100/分
- 110〜130/分
- 140〜160/分
② 80〜100/分
脈拍数の基準値(目安)は、新生児期で120~140/分、乳児期で110~130/分、幼児期で90~110/分、学童期で80~100/分、成人期で60~100/分とされ、加齢とともに低くなる。
▶午後7
加齢に伴い老年期に上昇するのはどれか。
- 腎血流量
- 最大換気量
- 空腹時血糖
- 神経伝導速度
③ 空腹時血糖
加齢により、血糖値を一定に保つ働き(糖代謝)を持つインスリンの分泌量が低下することで、老年期に空腹時・食後の血糖値の上昇がみられる。その他は加齢により低下するが、特に②最大換気量は大幅に低下する。
▶午後8
医療法には「診療所とは、患者を入院させるための施設を有しないもの又は[ ]人以下の患者を入院させるための施設を有するもの」と定められている。
[ ]に入るのはどれか。
- 16
- 17
- 18
- 19
④ 19
なお、20人以上の患者を入院させるための施設を有するものは、医療法に規定する病院である。
*第4編1章 5.医療施設 p199~204
▶午後9
介護支援専門員が行うのはどれか。
- 通所介護の提供
- 福祉用具の貸与
- 短期入所生活介護の提供
- 居宅サービス計画の立案
④ 居宅サービス計画の立案
介護支援専門員は、要介護者等を支援する上で解決すべき課題を把握(アセスメント)し、課題を解決するための居宅・施設の介護サービス計画を作成する。なお、介護サービス計画は利用者自ら作成することも可能である。
*第5編1章 8.3〕介護支援専門員〈ケアマネジャー〉 p228
▶午後10
成人の膀胱の平均容量はどれか。
- 100mL
- 500mL
- 1,000mL
- 1,500mL
② 500mL
成人の膀胱容量は、個人差もあるが500mL程度である。成人の平均尿量(1,000mL~1,500mL/日)と、乏尿(尿量400mL/日未満)、無尿(尿量100mL/日未満)などの数値と合わせて押さえたい。
▶午後11
不随意筋はどれか。
- 心筋
- 僧帽筋
- 大殿筋
- ヒラメ筋
① 心筋
不随意筋は自分の意思で動かすことのできない筋肉で、横紋筋のうち心臓にある心筋や、平滑筋のうち心臓を除く内臓や血管にある筋肉がこれに当たる。一方、随意筋は自分の意思で動かすことができる筋肉で、横紋筋のうち骨格筋(②・③・④)などがこれに当たる。
▶午後12
特定の抗原となる物質によって生じるアレルギー反応で引き起こされるショックはどれか。
- 心原性ショック
- 出血性ショック
- 神経原性ショック
- アナフィラキシーショック
④ アナフィラキシーショック
アナフィラキシーショックはⅠ型アレルギー(即時型アレルギー)に分類され、体内に入った特定の原因物質(抗原)に対するIgE抗体の反応による、急性の過敏反応をいう。
▶午後13
咳嗽が起こりやすいのはどれか。
- 右心不全
- 左心不全
- 心筋梗塞
- 肺梗塞
② 左心不全
左心室は大動脈を通じて全身に血液を送るが、左心不全によりポンプ機能が低下することで、肺静脈系のうっ血が生じ、呼吸困難や咳嗽(せき)などの症状、呼吸困難を軽減するための起坐呼吸が多くみられる。
▶午後14
浮腫が生じやすいのはどれか。
- 甲状腺機能亢進症
- 過剰な運動
- 低栄養
- 熱中症
③ 低栄養
低栄養は血清アルブミンが3.5g/dL未満に低下した状態をいう。アルブミンは膠質浸透圧を保持して水分を血管内に留める働きがあるが、その低下により血管外に水分が漏出することで、浮腫(むくみ)を引き起こす。
×① 甲状腺機能亢進症
甲状腺は細胞の新陳代謝を促進する甲状腺ホルモンを分泌しているが、甲状腺機能低下症によりホルモンの分泌が低下すると水分の代謝が低下し、浮腫が症状として現れる。
×② 過剰な運動
×④ 熱中症
運動や熱中症では汗として水分が失われ(脱水)、直接的な浮腫の原因とはならない。
▶午後15
貧血の診断に用いられるのはどれか。
- 血糖値
- 尿酸値
- C反応性蛋白値
- ヘモグロビン濃度
④ ヘモグロビン濃度
貧血は、血液中のヘモグロビン濃度が減少している状態と定義される。
▶午後16
C型慢性肝炎に使用するのはどれか。
- ドパミン
- インスリン
- リドカイン
- インターフェロン
④ インターフェロン
インターフェロン療法はB型肝炎、C型肝炎の治療に用いる。
*第3編3章 3.3〕ウイルス性肝炎 p132~134
▶午後17
カルシウム拮抗薬の服用時に避けた方がよい食品はどれか。
- 納豆
- 牛乳
- わかめ
- グレープフルーツ
④ グレープフルーツ
カルシウム拮抗薬は血管を拡張し、血圧を下げる降圧薬である。グレープフルーツに含まれる成分はカルシウム拮抗薬を代謝する酵素の働きを弱めるため、薬物服用時の摂取により血中濃度が高まり、血圧の異常な低下などの相互作用が起きることがある。
▶午後18
患者の洗髪の介助方法で適切なのはどれか。
- 脱脂綿で耳栓をする。
- 43〜44℃の湯をかける。
- 指の腹を使って洗う。
- 強い振動を加えて洗う。
③ 指の腹を使って洗う。
洗髪の介助では、地肌を傷つけないように指の腹で揉むように洗う。
×① 脱脂綿で耳栓をする。
洗髪時に耳栓をする場合、脱脂綿は吸水力があるため、脱脂されていない青梅綿を用いる。
×② 43〜44℃の湯をかける。
40℃前後のお湯を用いる。
×④ 強い振動を加えて洗う。
頭をあまり揺らさないように洗う。
▶午後19
全身清拭時、洗面器に準備する湯の温度で適切なのはどれか。
- 20〜25℃
- 30〜35℃
- 40〜45℃
- 50〜55℃
④ 50〜55℃
清拭時の温度は40℃程度が適しているが、準備時間やタオルで湯を絞る際に温度が下がるため、洗面器に準備する湯の温度は50〜55℃とされる。
▶午後20
スタンダードプリコーションの対象はどれか。
- 汗
- 爪
- 唾液
- 頭髪
③ 唾液
感染源の有無にかかわらず、血液・体液、分泌物、排泄物、創傷のある皮膚・粘膜(湿性生体物質)を介する微生物の伝播リスクを減らすために、すべての患者に対して標準的な感染予防策(スタンダードプリコーション)を行う。なお、①汗は湿性生体物質であるが標準予防策からは除かれる。
*第4編1章 3.11〕院内感染対策 p180~181
▶午後21
経鼻経管栄養法の体位で適切なのはどれか。
- Fowler〈ファウラー〉位
- 仰臥位
- 腹臥位
- 側臥位
① Fowler〈ファウラー〉位
経鼻経管栄養法は、口からの食事が十分でない者に対して、鼻からチューブを挿入し、栄養剤を胃に送る方法である。注入時に栄養剤の逆流を防ぐため、上半身を45度程度上げる半坐位(ファウラー位)が適している。
▶午後22
成人用輸液セット1mL当たりの滴下数はどれか。
- 20滴
- 40滴
- 60滴
- 80滴
① 20滴
成人用輸液セット1mL当たりの滴下数は20滴である。1分当たりの滴下数や輸液残量を求める計算問題でよく用いられるが、1mL当たりの滴下数が伏せられている場合(105回午前90問)もあるため押さえておく。
▶午後23
ゴム製湯たんぽに入れる湯の温度で適切なのはどれか。
- 40℃程度
- 60℃程度
- 80℃程度
- 100℃程度
② 60℃程度
湯たんぽは、身体の一部に温熱刺激を与える温罨法で用いられる。ゴム製湯たんぽに入れる湯は60℃程度で、湯を3分の2程度入れて空気を抜いて使用する。
▶午後24
鼻腔内の吸引で正しいのはどれか。
- 無菌操作で行う。
- 吸引圧をかけた状態で吸引チューブを挿入する。
- 鼻翼から一定の距離で固定して吸引する。
- 吸引チューブを回転させながら吸引する。
④ 吸引チューブを回転させながら吸引する。
×① 無菌操作で行う。
鼻腔など上気道には常在菌が存在するため、鼻腔内吸引時に無菌操作は不要である。なお、原則無菌状態である下気道に挿管する気管内吸引では、細菌感染による肺炎等の予防のため無菌操作を行う。
×② 吸引圧をかけた状態で吸引チューブを挿入する。
×③ 鼻翼から一定の距離で固定して吸引する。
○④ 吸引チューブを回転させながら吸引する。
カテーテルは、鼻孔粘膜を傷つけないように陰圧(吸引圧)をかけずに深部まで挿入し、陰圧をかけて回転させながら引き抜きつつ吸引する。1回の吸引時間は10~15秒を目安し、できるだけ短時間とする。
▶午後25
母乳栄養で不足しやすいのはどれか。
- ビタミンA
- ビタミンB
- ビタミンC
- ビタミンE
- ビタミンK
⑤ ビタミンK
母乳中には血液凝固作用を持つビタミンKが少なく、新生児のビタミンK欠乏性出血症を予防するため、出生後にビタミンKの内服が行われている。
第105回看護師国家試験・一般問題(130問)
▶午前26
筋収縮で正しいのはどれか。
- 筋収縮はミオシンの短縮である。
- アクチンにATP分解酵素が存在する。
- α運動ニューロンは筋紡錘を興奮させる。
- 筋小胞体からカルシウムイオンが放出される。
④ 筋小胞体からカルシウムイオンが放出される。
神経の刺激により筋細胞内の小胞体からカルシウムイオンが放出されることをきっかけに、筋収縮が起こる。
×① 筋収縮はミオシンの短縮である。
筋収縮は、アクチンとミオシン間の滑り運動による。
×② アクチンにATP分解酵素が存在する。
筋収縮のエネルギー源であるATPの分解酵素はミオシン頭部に存在する。
×③ α運動ニューロンは筋紡錘を興奮させる。
筋紡錘を興奮させる運動神経繊維はγ運動ニューロンである。
▶午前27
血管に吻合がないのはどれか。
- 皮静脈
- 冠動脈
- 膝窩動脈
- 腸絨毛の毛細血管
② 冠動脈
吻合とは血管や神経が互いに連絡をもっている状態をいう。血管に吻合がないものとは他の動脈と相互につながっていない動脈(終動脈)で、心臓に血液を供給する冠動脈が該当し、その閉塞により狭心症や心筋梗塞を引き起こす。
▶午前28
一次脱水でみられるのはどれか。
- 尿量の減少
- 血漿浸透圧の低下
- バソプレシンの分泌の抑制
- 血漿ナトリウムイオン濃度の低下
① 尿量の減少
一次脱水は水欠乏性脱水(高張液脱水)であり、細胞内の水分が減少することで血漿ナトリウム濃度が上昇し、さらに血漿浸透圧が上昇するため抗利尿ホルモンであるバソプレシンの分泌が促進され、水再吸収が促されて尿量が減少する。
▶午前29
膵臓から分泌されるのはどれか。
- ガストリン
- カルシトニン
- アルドステロン
- ソマトスタチン
④ ソマトスタチン
膵臓の内分泌機能として、ランゲルハンス島のα細胞からグルカゴン、β細胞からインスリン、δ細胞からそれらの分泌量を調整するソマトスタチンが分泌され、そのホルモンの働きにより血糖値の調整が行われる。
×① ガストリン
ガストリンは、主に胃の幽門部の粘膜で産出されるホルモンで、胃酸の分泌を促す。
×② カルシトニン
カルシトニンは甲状腺から分泌されるホルモンで、血中のカルシウム濃度を低下させる働きを持つ。
×③ アルドステロン
アルドステロンは副腎皮質から分泌されるホルモンで、腎臓の遠位尿細管に作用することでナトリウムの再吸収を促進し、血圧の調節が行われる。
▶午前30
男性生殖器について正しいのはどれか。
- 精巣は腹腔内にある。
- 精囊は精子を貯留する。
- 前立腺は直腸の前面に位置する。
- 右精巣静脈は腎静脈に流入する。
③ 前立腺は直腸の前面に位置する。
前立腺は男性特有の生殖器官で、高齢者に多い前立腺肥大症の診断では、前立腺が直腸の前面に位置することを利用して、肛門から直接指を入れて調べる直腸内指診(直腸診)が行われる。
×① 精巣は腹腔内にある。
精巣は陰嚢内にあり、腹腔の外にある。
×② 精囊は精子を貯留する。
精巣(精細管)で作られた精子は、精巣上体で成熟、貯蔵される。精嚢は精嚢液を分泌して精子と混ぜ合わせて精液を作る。
×④ 右精巣静脈は腎静脈に流入する。
精巣(精索)静脈は、精巣から心臓へ血液を送る静脈である。腎静脈に直接流入するものは左精巣静脈で、この間の弁が機能せずに逆流を起こすと、男性不妊症の原因となる精索静脈瘤が起こりやすい。
▶午前31
腹部の検査の画像を別に示す。
生体の代謝を利用した検査はどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
③ ③
①はエックス線検査、②はCT検査、③はPET検査、④は腹部エコー検査に当たる。PET(陽電子放出断層撮影)検査では、放射性の薬剤を体内に投与することで糖代謝の異常を確認し、多くの悪性新生物の有無や状態を確かめることができる。
▶午前32
医療保険について正しいのはどれか。
- 医療給付には一部負担がある。
- 高額療養費の受給には年齢制限がある。
- 市町村国民健康保険は職域保険の1つである。
- 後期高齢者医療における公費負担は8割である。
① 医療給付には一部負担がある。
わが国の医療保険は、「被用者保険(職域保険)」「国民健康保険(地域保健)」「後期高齢者医療制度」に大別される。医療給付の一部負担金は、被用者保険と国民健康保険では原則3割、後期高齢者医療制度では原則1割となっている。
×② 高額療養費の受給には年齢制限がある。
各医療保険には、療養に要する費用が著しく高額になった場合、自己負担限度額を超える部分を償還払いする高額療養費制度が用意されている。年齢・所得区分により自己負担限度額が異なることはあるが、年齢制限はない。
×③ 市町村国民健康保険は職域保険の1つである。
市町村国民健康保険は地域保健の一つである。
×④ 後期高齢者医療における公費負担は8割である。
後期高齢者医療制度の医療給付の財源は、後期高齢者の保険料負担が1割、現役世代からの支援金が4割、公費負担が5割となっている。
*第4編2章 3.医療保険各制度の概要と現状 p209~213
▶午前33改題
日本の令和2年度(2020年度)の国民医療費について正しいのはどれか。
- 総額は約30兆円である。
- 財源の約半分は保険料である。
- 国民総生産に対する比率は5%台である。
- 人口1人当たりでは65歳以上が65歳未満の約2倍である。
② 財源の約半分は保険料である。
国民医療費は医療機関等における傷病の治療に要する費用を推計したものであり、令和2年(2020年)の国民医療費を財源別にみると保険料が49.5%と半分近くを占め、次いで公費が38.4%などとなっている。
×① 総額は約30兆円である。
国民医療費の総額は42兆9665億円である。
×③ 国民総生産に対する比率は5%台である。
国民総生産に対する比率は8.02%である。
×④ 人口1人当たりでは65歳以上が65歳未満の約2倍である。
人口1人当たりの国民医療費は34.1万円で、年齢階級別にみると65歳未満が18.4万円に対し、65歳以上は73.4万円(約4倍)、75歳以上は90.2万円(約5倍)となっている。
*第4編2章 6.国民医療費 p216~219
▶午前35
学校保健について正しいのはどれか。
- 学校医は健康相談を実施する。
- 校長は学校医を置くことができる。
- 教育委員会は小学校入学1年前の児童に対して健康診断を実施する。
- 学校医は感染症に罹患した児童生徒の出席を停止させることができる。
① 学校医は健康相談を実施する。
学校医の職務として、健康相談や保健指導、健康診断、疾病・感染症・食中毒予防処置などに従事する。
×② 校長は学校医を置くことができる。
学校医の設置は義務である。
×③ 教育委員会は小学校入学1年前の児童に対して健康診断を実施する。
就学時の健康診断は、学齢簿が作成された後、翌学年の初めから4カ月前(就学に関する手続きの実施に支障がない場合は3カ月前)までの間に行う。
×④ 学校医は感染症に罹患した児童生徒の出席を停止させることができる。
校長は感染症にかかっている者、その疑いのある者およびかかるおそれのある者の出席を停止させることができる。
*第10編 1.2〕保健管理 p342~344
▶午前36
高齢者が趣味の絵画を地区の展覧会に発表したいという欲求はどれか。
- 自尊の欲求
- 所属の欲求
- 安全の欲求
- 生理的欲求
① 自尊の欲求
マズローの欲求階層説では、低階層から、「生理的(食事、排泄、睡眠等)欲求」「安全(危険回避)の欲求」「社会的(所属・愛情)欲求」「自尊(承認)の欲求」「自己実現の欲求」となっており、人間は低階層の欲求が満たされると高階層の欲求に移っていくことをあらわす。
▶午前37
根拠に基づいた看護〈EBN〉で最も適切なのはどれか。
- 患者の好みは参考にしない。
- 先輩看護師の行動を模倣する。
- 研究論文の有用性を検討する。
- 既存の看護業務基準を遵守する。
③ 研究論文の有用性を検討する。
根拠に基づいた看護〈EBN〉は、個人の経験等によるものではなく、看護研究から得られた科学的知見に基づいた質の高い看護を実践するものである。
▶午前38
患者の状態と看護師のコミュニケーションの方法との組合せで正しいのはどれか。
- 構音障害――発音を促す
- 聴力障害――後方から声をかける
- 認知症――患者のペースに合わせて話す
- 失語――言葉の誤りを繰り返し訂正する
③ 認知症――患者のペースに合わせて話す
認知症の症状は、記憶障害や見当識障害、理解力・判断力の低下などの中核症状と、行動・心理症状(BPSD)に大別される。患者のペースに合わせて発話を遮らず、傾聴して理解しやすいように簡潔に対話することが適している。
×① 構音障害――発音を促す
構音障害は、言葉を理解し、伝える言葉もはっきりしているが、発話に関わる筋肉や器官に問題があるために、言葉を正常に発音できない状態をいう。筆談など相手に伝達するための代替手段の提案が適切である。
×② 聴力障害――後方から声をかける
聴力障害のある患者に対しては、声を掛けていることがわかるように正面から話しかけ、口の動きを見せるようにして会話を理解しやすくする。
×④ 失語――言葉の誤りを繰り返し訂正する
言語機能の障害である失語の患者に対しては、言葉の誤りを繰り返し訂正するのではなく、ジャスチャーなどの非言語コミュニケーションも含めてコミュニケーション能力の向上を図ることが適切である。
▶午前39
フィジカルアセスメントにおいて触診で判断するのはどれか。
- 腱反射の有無
- 瞬目反射の有無
- 腸蠕動運動の有無
- リンパ節の腫脹の有無
④ リンパ節の腫脹の有無
フィジカルアセスメントには、問診、視診、触診、打診、聴診などがあり、皮下に存在するリンパ節の腫脹は体表から触る触診で一定の判断ができる。①は打診、②は視診、③は聴診に当たる。
▶午前40
針刺し事故対策で最も適切なのはどれか。
- 針刺し部位を消毒液に浸す。
- 注射針のリキャップを習慣化する。
- 事故の当事者を対象にした研修を行う。
- 使用済みの針は専用容器に廃棄することを徹底する。
④ 使用済みの針は専用容器に廃棄することを徹底する。
医療従事者が患者の血液が付着した注射器等によって外傷を被る針刺し事故を防ぐため、廃棄容器は注射実施者の手の届く範囲に置き、使用済みの針を直ちに廃棄できるようにする。
×① 針刺し部位を消毒液に浸す。
針刺し事故発生時には、針刺し部位を流水と石けんで洗浄する。
×② 注射針のリキャップを習慣化する。
針刺し事故が起こる可能性があるため、使用済みの針にキャップ(リキャップ)をしない。
×③ 事故の当事者を対象にした研修を行う。
事故の当事者のみではなく、再発防止のために組織全体で共有・研修を行う。
▶午前41
片麻痺のある患者の歩行介助で正しいのはどれか。
- 患者の患側に立つ。
- 靴底は摩擦が少ないものを準備する。
- 杖を使用する場合は杖を持つ側で介助する。
- 階段を昇る場合は患側下肢から昇るように指導する。
① 患者の患側に立つ。
片麻痺のある患者の歩行介助では、患者の患側に立ち、脇の下を支えてバランスを保つ。
×② 靴底は摩擦が少ないものを準備する。
スリッパなど摩擦の少ないものは転倒のリスクを高めるため使用を控える。
×③ 杖を使用する場合は杖を持つ側で介助する。
介助者が患側を支え、反対の健側で杖や手すりを持てるようにする。
×④ 階段を昇る場合は患側下肢から昇るように指導する。
歩行介助時は(杖→)患側→健側の順で歩行するが、階段を昇る場合は(杖→)健側→患側の順で歩行する。
▶午前43
胃洗浄を行うときの体位で最も適切なのはどれか。
- 仰臥位
- 腹臥位
- 左側臥位
- 右側臥位
③ 左側臥位
胃洗浄は胃内の毒薬物を挿管により除去するもので、胃の出口である幽門部が高くなる左側臥位の体位をとることで十二指腸への流出を防ぐとともに、胃食道逆流や嘔吐時の誤嚥を防ぎやすい。
▶午前44
Aさん(59歳、男性)は、糖尿病で内服治療中、血糖コントロールの悪化を契機に膵癌と診断され手術予定である。HbA1c7.0%のため、手術の日前に入院し、食事療法、内服薬およびインスリンの皮下注射で血糖をコントロールしている。Aさんは、空腹感とインスリンを使うことの不安とで、怒りやすくなっている。
Aさんに対する説明で適切なのはどれか。
- 「手術によって糖尿病は軽快します」
- 「術後はインスリンを使用しません」
- 「少量であれば間食をしても大丈夫です」
- 「血糖のコントロールは術後の合併症を予防するために必要です」
④ 「血糖のコントロールは術後の合併症を予防するために必要です」
手術は膵癌に対するもので糖尿病が軽快するものではなく、引き続き合併症を予防する目的も含めて、インスリンや食事療法を併せた血糖コントロールが必要である。
▶午前45
冠動脈バイパス術〈CABG〉後5時間が経過したとき、心囊ドレーンからの排液が減少し、血圧低下と脈圧の狭小化とがあり、「息苦しい」と患者が訴えた。
最も考えられるのはどれか。
- 肺梗塞
- 不整脈
- 心筋虚血
- 心タンポナーデ
④ 心タンポナーデ
心タンポナーデは、心臓と心外膜の間にある心嚢液が大量に貯留し、心臓の拡張が抑制された状態をいい、心拍出量が低下するため、血圧低下や頻脈、呼吸困難などが起きる。
▶午前46
Aさん(48歳、男性)は、直腸癌のため全身麻酔下で手術中、出血量が多く輸血が行われていたところ、41℃に体温が上昇し、頻脈となり、血圧が低下した。麻酔科医は下顎から頸部の筋肉の硬直を確認した。既往歴に特記すべきことはない。
この状況の原因として考えられるのはどれか。
- アナフィラキシー
- 悪性高熱症
- 菌血症
- 貧血
② 悪性高熱症
悪性高熱症は全身麻酔時にまれに起こる、異常な筋収縮(筋肉の硬直)や体温の急上昇をもたらす疾患である。
▶午前47
慢性副鼻腔炎についての説明で適切なのはどれか。
- 1週間の内服で症状が軽減すれば受診の必要はない。
- 発症後1週は空気感染の危険性がある。
- 眼窩内感染を起こす危険性がある。
- 透明の鼻汁が特徴的である。
③ 眼窩内感染を起こす危険性がある。
慢性副鼻腔炎は炎症によって慢性的に副鼻腔内に膿がたまる病気で、副鼻腔に距離の近い眼窩内に感染を引き起こすおそれがある。
×① 1週間の内服で症状が軽減すれば受診の必要はない。
薬物療法としては抗菌薬の長期投与が行われ、1週間の内服で症状が軽減しても受診を続ける必要がある。
×② 発症後1週は空気感染の危険性がある。
副鼻腔炎はウイルスや細菌の感染またはアレルギーによる炎症が原因となるが、空気感染は引き起こさない。
×④ 透明の鼻汁が特徴的である。
粘調な鼻汁や鼻ポリープ(鼻茸)が特徴である。
▶午前48
過活動膀胱の説明で正しいのはどれか。
- 尿意切迫感がある。
- 失禁することはない。
- 水分を制限して治療する。
- 50歳台の有病率が最も高い。
① 尿意切迫感がある。
過活動膀胱は、膀胱のコントロールがうまくいかずに急に尿意を催す尿意切迫感を特徴とする。
×② 失禁することはない。
尿意切迫感に伴い、排泄が間に合わずに失禁につながる切迫性尿失禁が多くみられる。
×③ 水分を制限して治療する。
過活動膀胱の治療には、行動療法(膀胱や骨盤底筋の訓練)や薬物療法(抗コリン薬)がとられる。水分の過度な制限は腎臓や膀胱への負担、脱水につながるため、適切な水分を摂取する。
×④ 50歳台の有病率が最も高い。
加齢とともに有病率は高く、80歳以上で最も高い。
▶午前49
ハヴィガースト, R. J.による発達課題のうち、老年期の発達課題はどれか。
- 健康の衰退に適応する。
- 大人の余暇活動を充実する。
- 個人としての自立を達成する。
- 大人の社会的な責任を果たす。
① 健康の衰退に適応する。
ハヴィガーストは成長段階ごとに果たすべき発達課題を示しており、老年期は、体力と健康の衰退・退職と収入の減少・配偶者の死などに適応する時期である。②は中年期、③と④は青年期の発達課題である。
▶午前50
エイジズムを示す発言はどれか。
- 「介護を要する高齢者を社会で支えるべきだ」
- 「後期高齢者は車の運転免許証を返納するべきだ」
- 「認知症の患者の治療方針は医療従事者が決めるべきだ」
- 「高齢者が潜在的に持つ力を発揮できるような環境を整えるべきだ」
② 「後期高齢者は車の運転免許証を返納するべきだ」
エイジズムとは年齢による偏見や差別をいい、特に高齢者に対して行われる。後期高齢者の運転能力を一律に決めつけ(偏見)、後期高齢者に限り返納を迫っている(差別)。
▶午前51
高齢者の栄養管理について栄養サポートチーム〈NST〉と連携するときに、病棟看護師が行う看護活動で最も適切なのはどれか。
- 同時期に他のサポートチームが介入しないようにする。
- 栄養管理が不十分な高齢者のケアについて助言を得る。
- 家族にも栄養サポートチーム〈NST〉の一員になるよう勧める。
- 経管栄養法を行っている高齢者数を減らす方法を一緒に考える。
② 栄養管理が不十分な高齢者のケアについて助言を得る。
栄養サポートチーム〈NST〉とは、多職種が連携して個々の患者の栄養状態、摂食・嚥下能力に応じた最適な栄養療法を行う医療チームであり、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、言語聴覚士、歯科医師などで構成される。
▶午前52
Aさん(102歳、女性)は、重度の廃用症候群のために5年前から発語が少なく体を動かすことができない。誤嚥性肺炎で入退院を繰り返し、終末期である。同居している家族は積極的な治療をしないことを希望し、自宅でAさんを看取ることを決めた。
Aさんの家族への退院時の指導で最も適切なのはどれか。
- 「24時間付き添ってあげましょう」
- 「おむつの重さで尿量を測定しましょう」
- 「苦しそうになったら救急車を呼びましょう」
- 「Aさんが食べたければ食べさせてあげましょう」
④ 「Aさんが食べたければ食べさせてあげましょう」
積極的な治療を希望しない終末期患者やその家族の意思や自己決定を尊重することが求められる。
▶午前53
Aちゃん(生後10か月、男児)は、先天性心疾患のため手術を受けた。Aちゃんの体重の変化を図に示す。
手術後から現在までの体重の変化に対する評価で適切なのはどれか。
- 体重増加の不良
- 過度な体重増加
- 標準的な体重増加
- キャッチアップ現象
④ キャッチアップ現象
キャッチアップ現象とは、乳児等が病気や障害により成長不良となった後、その状況が改善されると成長速度が加速し、通常の発育に追いつくことをいう。図では、月齢3~4か月に3パーセンタイル未満(同月齢の中で3%未満)となった体重が、8か月ころには50パーセンタイル(中央値)付近に追いついていることがわかる。
▶午前54
小児の骨折の特徴で正しいのはどれか。
- 不全骨折しやすい。
- 圧迫骨折しやすい。
- 骨折部が変形しやすい。
- 骨癒合不全を起こしやすい。
① 不全骨折しやすい。
不全骨折とは、外傷による骨折で骨の連続性が一部残ったものをいい、小児では骨が柔らかく弾力性が高いため不全骨折が多く、特に亀裂を伴って曲がる若木骨折が多くみられる。
×② 圧迫骨折しやすい。
圧迫骨折は、加齢による骨粗鬆症に伴って多く生じる腰椎や脊椎などの骨折である。
×③ 骨折部が変形しやすい。
×④ 骨癒合不全を起こしやすい。
小児は自然にずれなく治癒するための自家矯正力が高いため、骨折後に変形や骨癒合不全を起こしにくい。
▶午前55
就労している妊婦に適用される措置と根拠法令との組合せで正しいのはどれか。
- 時差出勤――母子保健法
- 産前産後の休業――児童福祉法
- 軽易業務への転換――母体保護法
- 危険有害業務の制限――労働基準法
④ 危険有害業務の制限――労働基準法
労働基準法に基づき、妊産婦等の危険有害業務の就業制限が規定されている。
×① 時差出勤――母子保健法
男女雇用機会均等法に基づき、妊娠中の時差出勤が規定されている。
×② 産前産後の休業――児童福祉法
労働基準法に基づき、使用者は産前6週間で休業を請求した女性、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない(産前産後休業)。
×③ 軽易業務への転換――母体保護法
労働基準法に基づき、女性の請求による妊婦の軽易業務転換が規定されている。
*第5編2章 3.6〕妊産婦等の就業 p238~239
▶午前56
低用量経口避妊薬について正しいのはどれか。
- 血栓症のリスクは増加しない。
- 1日飲み忘れたときは中止する。
- 授乳期間を通じて内服は可能である。
- 副効用に月経前症候群〈PMS〉の軽減がある。
④ 副効用に月経前症候群〈PMS〉の軽減がある。
低用量経口避妊薬は、避妊効果のほか、月経前症候群〈PMS〉や月経不順の改善にも効果がある
×① 血栓症のリスクは増加しない。
副作用〈有害事象〉として、吐き気やめまい、浮腫などの症状が現れるほか、血栓症のリスクを高める。
×② 1日飲み忘れたときは中止する。
低用量経口避妊薬は生理後継続して毎日飲む必要があるが、1日の飲み忘れであれば翌日に気づいた時点と決まった時間に飲むことで一定の避妊効果は持続する。
×③ 授乳期間を通じて内服は可能である。
授乳中の低用量経口避妊薬は乳汁の分泌に影響を及ぼすため、産後6か月を経過するまでは控えることとされる。
▶午前57
常位胎盤早期剝離のリスク因子はどれか。
- 肥満
- 妊娠糖尿病
- 帝王切開術の既往
- 妊娠高血圧症候群
④ 妊娠高血圧症候群
妊娠高血圧症候群は、妊娠20週以降に高血圧(収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上)を認めるもので、胎盤が子宮壁から剥がれる常位胎盤早期剥離のリスク因子である。
▶午前58
地域精神保健活動における二次予防はどれか。
- 精神科病院で統合失調症患者に作業療法を行う。
- 精神疾患患者に再燃を予防するための教育を行う。
- 地域の住民を対象にストレスマネジメントの講演会を行う。
- 会社の健康診断でうつ傾向があると判定された人に面接を行う。
④ 会社の健康診断でうつ傾向があると判定された人に面接を行う。
疾病の予防対策には、生活習慣の改善や予防接種等により発症そのものを予防する一次予防、検診等により発症の早期発見・早期治療により重症化を予防する二次予防、リハビリテーション等により疾病の進行後の社会復帰を図る三次予防がある。③は一次予防、①と②は三次予防である。
*第3編1章 1.1〕生活習慣病の概念 p80
▶午前59
疾患と確定診断のために用いられる検査との組合せで最も適切なのはどれか。
- 脳炎――脳脊髄液検査
- パニック障害――脳波検査
- 特発性てんかん――頭部MRI
- パーソナリティ障害――頭部CT
① 脳炎――脳脊髄液検査
脳内へのウイルス等の侵入により起こる脳炎の検査として、多くは腰椎穿刺による脳脊髄液検査により、細胞数の増加や髄液圧、蛋白の上昇などを確認し、診断を確定する。
▶午前60
生活技能訓練〈SST〉について正しいのはどれか。
- 退院支援プログラムの1つである。
- 診断を確定する目的で実施される。
- セルフヘルプグループの一種である。
- 精神分析の考え方を応用したプログラムである。
① 退院支援プログラムの1つである。
生活技能訓練〈SST〉とは、主に精神疾患を持った患者が退院に向けて社会生活・対人関係の課題を解決するスキルを身に付けるため、少人数のグループで行う認知行動療法によるリハビリテーション(三次予防)技法である。
▶午前61
精神保健法から精神保健及び精神障害者の福祉に関する法律への改正で行われたのはどれか。
- 私宅監置の廃止
- 任意入院の新設
- 通院医療公費負担制度の導入
- 精神障害者保健福祉手帳制度の創設
④ 精神障害者保健福祉手帳制度の創設
精神障害者保健福祉手帳は、平成7年(1995年)の精神保健法から精神保健及び精神障害者の福祉に関する法律(精神保健福祉法)への改正により創設された。手帳の交付により、所得税・住民税の控除など各種税制の優遇措置等が受けられる。
×① 私宅監置の廃止
精神障害者の私宅監置は、昭和25年(1950年)の精神衛生法制定時に廃止された。
×② 任意入院の新設
精神障害者本人の同意に基づく任意入院は、昭和62年(1987年)の精神保健法改正時に新設された。
×③ 通院医療公費負担制度の導入
精神障害者の通院医療公費負担制度は、昭和40年(1965年)の精神衛生法改正時に導入された。なお、平成18年(2006年)からは障害者総合支援法の自立支援医療制度に一元化されている。
*第3編2章 4.1〕精神保健対策のあゆみ p111~112
▶午前62
介護保険被保険者で介護保険による訪問看護が提供されるのはどれか。
- 脳血管疾患
- 末期の結腸癌
- 脊髄小脳変性症
- 進行性筋ジストロフィー
① 脳血管疾患
65歳以上の第1号被保険者で要介護等認定された者、40歳~64歳の第2号被保険者で脳血管疾患などの特定疾病に罹患して要介護等の認定をされた者には、介護保険による訪問看護の給付が行われる。ただし、②~④などの厚生労働大臣が定める疾病等の利用者には医療保険による給付が行われる。
*第4編1章 3.2〕訪問看護 p170~172
*第5編1章 2.保険給付の手続き p221~222
▶午前63
訪問看護ステーションの管理・運営について正しいのはどれか。
- 事務所を設置する必要はない。
- 訪問看護の利用回数の調整は市町村が行う。
- 利用者が希望すれば訪問看護の記録を開示する。
- 利用者とのサービス契約後に重要事項を説明する。
③ 利用者が希望すれば訪問看護の記録を開示する。
個人情報の保護に関する法律に基づき、原則として医療・介護関係事業者は利用者本人から保有個人データの開示を求められた場合、本人に対して書面の交付等の方法により、そのデータを遅滞なく開示しなければならない。
×① 事務所を設置する必要はない。
訪問看護ステーションの開設に当たり、事業の運営を行うために必要な広さを有する専用の事務室を設置することとされている。
×② 訪問看護の利用回数の調整は市町村が行う。
利用者等の身体状態や意思を踏まえ、主治医や訪問看護師、介護支援専門員等と調整を行う。
×④ 利用者とのサービス契約後に重要事項を説明する。
サービス契約の前に利用者に対して重要事項を説明し、同意を得た上で書面による契約を行い、サービスを開始する。
*第4編1章 3.2〕訪問看護 p170~172
▶午前64
医療安全と関連する方法の組合せで誤っているのはどれか。
- 院内感染対策――プライマリナーシング
- 事故防止対策――インシデントレポート
- 医療の質の保証――クリニカルパス
- 手術時の安全対策――タイムアウト
① 院内感染対策――プライマリナーシング
プライマリナーシングは、患者の入院から退院まで一人の看護師が担当する方式をいう。
○② 事故防止対策――インシデントレポート
インシデントレポートは、医療事故につながりかねないインシデント(ヒヤリ・ハット)が発生した場合、再発防止のために状況把握、要因分析、対策、情報共有を行うものである。
○③ 医療の質の保証――クリニカルパス
クリニカルパスは、良質な医療を効率的、安全・適正に提供するため、入院から退院までの検査や治療の工程を示した診療計画表で、院内で共有することで診療の標準化などが期待される。
○④ 手術時の安全対策――タイムアウト
タイムアウトは手術前の休止をいい、手術に関わる全メンバーが患者の確認、手術部位、手術内容等を口頭で確認し、患者の誤認や手術部位の誤りを防止する医療安全管理対策の一つである。
▶午前65
診療情報を第三者に開示する際、個人情報の保護として正しいのはどれか。
- 死亡した患者の情報は対象にならない。
- 個人情報の利用目的を特定する必要はない。
- 特定機能病院では本人の同意なく開示できる。
- 法令に基づく保健所への届出に関して本人の同意は不要である。
④ 法令に基づく保健所への届出に関して本人の同意は不要である。
感染症法に基づき、1~4類感染症と5類感染症の一部(侵襲性髄膜炎菌感染症、風しんおよび麻しん)、新型インフルエンザ等感染症を診断した医師は直ちに最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出なければならない。また、5類感染症のうち麻しん等を除く全数把握対象疾患については7日以内に届け出なければならない。ただし、本人の同意は必要としない。
▶午前67
国際機関と事業内容の組合せで正しいのはどれか。
- 国連難民高等弁務官事務所〈UNHCR〉――有償資金協力
- 国連教育科学文化機関〈UNESCO〉――児童の健康改善
- 世界保健機関〈WHO〉――感染症対策
- 国際労働機関〈ILO〉――平和維持活動
③ 世界保健機関〈WHO〉――感染症対策
世界保健機関〈WHO〉は感染症対策や衛生統計の実施、国際疾病分類(ICD)等の基準づくり、保健分野における技術協力・研究開発など広範な活動を実施している。
×① 国連難民高等弁務官事務所〈UNHCR〉――有償資金協力
開発途上国等への2国間協力として、わが国は国際協力機構〈JICA〉を通じた政府開発援助〈ODA〉(有償資金協力、無償資金協力)を実施している。
×② 国連教育科学文化機関〈UNESCO〉――児童の健康改善
国連児童基金〈UNICEF〉の事業内容である。
×④ 国際労働機関〈ILO〉――平和維持活動
国連平和維持活動〈PKO〉の事業内容である。
*第1編2章 12.世界保健機関〈WHO〉 p36~39
▶午前68
頭部CTを別に示す。
出血部位について正しいのはどれか。
- 皮下組織
- 硬膜外腔
- くも膜下腔
- 脳実質内
- 脳室内
② 硬膜外腔
硬膜外血腫は頭蓋骨とその内側にある硬膜の間の出血による血腫であり、受傷直後の意識清明期を経て、時間経過により血腫が増大し病変が生じる場合があることが特徴的である。頭部CT写真では、硬膜が頭蓋骨から剥がれて凸レンズ型の白い血腫部分が認められる。
▶午前69
動脈硬化を直視して評価できる血管はどれか。
- 冠動脈
- 眼底動脈
- 大腿動脈
- 腹部大動脈
- 中大脳動脈
② 眼底動脈
眼底動脈は検眼鏡等を用いた眼底検査により直視で評価を行うことができる。
▶午前70
接触性皮膚炎の原因となるアレルギー反応で正しいのはどれか。
- Ⅰ型
- Ⅱ型
- Ⅲ型
- Ⅳ型
- Ⅴ型
④ Ⅳ型
アレルギー反応はⅠ型からⅣ型に分類される。Ⅳ型アレルギー(遅延型アレルギー)は感作リンパ球が関与するもので、金属アレルギーや接触皮膚炎、ツベルクリン反応などが挙げられる。
▶午前71
膀胱留置カテーテルの写真を別に示す。
成人女性に膀胱留置カテーテルが挿入されている場合、体内に留置されている長さで最も適切なのはどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
- ⑤
③ ③
女性の膀胱留置カテーテルは、尿道の長さよりも少し長い約4~7cmを挿入する。膀胱に到達後、滅菌蒸留水を注入して膨らます固定用バルーンの位置が①約4cmであり、そこから③9cmまでが約5cmであるため、体内に留置されている長さとして適切である。なお、男性では約18~20cmがカテーテルの長さである。
▶午前72
Aさん(60歳、男性)は、胃癌の手術目的で入院した。大動脈弁置換術を受けた既往があり、内服していたワルファリンをヘパリンに変更することになった。
確認すべきAさんの検査データはどれか。
- PT-INR
- 赤血球数
- 白血球数
- 出血時間
- ヘモグロビン値
① PT-INR
ワルファリンは血液を固まりにくくし、血栓や塞栓を防ぐ抗凝固剤であるが、出血を起こす、出血が止まらなくなることがあり、手術前に血液の凝固能を示すPT-INRの検査データを用いて、内服薬の変更に向けた量の調整を行う必要がある。
▶午前73
膀胱癌のため尿路ストーマを造設する予定の患者への説明で適切なのはどれか。
- 「尿道の一部を体外に出して排泄口を造ります」
- 「尿意を感じたらトイレで尿を捨てます」
- 「ストーマの装具は毎日貼り替えます」
- 「ストーマに装具を付けて入浴します」
- 「水分の摂りすぎに注意が必要です」
④ 「ストーマに装具を付けて入浴します」
尿路ストーマは、膀胱癌などで通常の尿路に障害が起きた場合に、尿路を変更して体外に造設される開口部をいい、尿を集めるための袋(ストーマ装具)を装着・適宜交換する必要がある。常に尿は排出されるため、入浴時も装着する。
×① 「尿道の一部を体外に出して排泄口を造ります」
尿管の一部を体外に出して開口部を造設する。
×② 「尿意を感じたらトイレで尿を捨てます」
尿路ストーマを造設すると尿意を感じなくなる。
×③ 「ストーマの装具は毎日貼り替えます」
ストーマ装具は、数日に1回の目安で交換する。
×⑤ 「水分の摂りすぎに注意が必要です」
尿路感染等を防ぐため、水分摂取を控える必要はない。
▶午前74
認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)で正しいのはどれか。
- 光熱費は自己負担である。
- 12人を1つのユニットとしている。
- 看護師の配置が義務付けられている。
- 介護保険制度の施設サービスである。
- 臨死期は提携している病院に入院する。
① 光熱費は自己負担である。
利用者の居住にかかる費用(水道光熱費・部屋代)、食費にかかる費用(食材費・調理費)などは保険給付の対象外(自己負担)となっている。
×② 12人を1つのユニットとしている。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は、比較的安定した状態にある認知症の要介護者(要支援者)が、共同生活(1ユニット5~9人)を営む住居で日常生活上の世話や機能訓練を受けるものである。
×③ 看護師の配置が義務付けられている。
介護従事者の配置は定められているが、看護師等医療従事者の配置は義務づけられていない。
×④ 介護保険制度の施設サービスである。
介護保険制度の地域密着型サービスである。
×⑤ 臨死期は提携している病院に入院する。
居住者は訪問看護を受けることができ、臨死期の看取りも可能である。
*第5編2章 5.5〕高齢者の住まい対策 p242~243
▶午前75
Aちゃん(3歳、女児)は、病室で朝食を食べていた。そこに、医師が訪室して採血を行いたいと話したところ、Aちゃんは何も答えず下を向いて泣き始めた。その様子を見ていた看護師は、Aちゃんは朝食を中断して採血されるのは嫌だと思っているようなので、朝食後に採血して欲しいと医師に話した。
この看護師の対応の根拠となる概念はどれか。
- アセント
- コンセント
- アドボカシー
- ノーマライゼーション
- ノンコンプライアンス
③ アドボカシー
アドボカシーは、権利擁護、代弁などの意で、患者や認知症高齢者など本人の意思や自己決定を尊重し、本人の保護を図ることが求められる。
*第5編2章 7.権利擁護〈アドボカシー〉 p245
▶午前76
3か月の乳児の親に対する問診で適切でないのはどれか。
- 「寝返りをしますか」
- 「あやすとよく笑いますか」
- 「物を見て上下左右に目で追いますか」
- 「アーアー、ウーウーなど声を出しますか」
- 「腹ばいにすると腕で体を支えて頭を持ち上げますか」
① 「寝返りをしますか」
DENVERⅡ(デンバー発達判定法)が示す乳児の粗大運動の発達目安では、寝返りは5~6か月ころとされ、3か月の乳児についての問診としては適切でない。
▶午前77
萎縮性腟炎に伴う状態について正しいのはどれか。
- 性交痛
- 白色の帯下
- 腟壁の肥厚化
- 腟の自浄作用の亢進
- エストロゲン分泌の増加
① 性交痛
萎縮性腟炎は、主に閉経前後の更年期において女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が低下して、膣壁の萎縮や乾燥から炎症が起きるもので、性交痛が起こりやすくなる。
▶午前78
うつ病で入院している患者が「自分は重大な過ちで皆に迷惑をかけてしまいました。死んでおわびします」という妄想を訴えた。
この患者にみられるのはどれか。
- 罪業妄想
- 心気妄想
- 追跡妄想
- 被毒妄想
- 貧困妄想
① 罪業妄想
罪業妄想はうつ病による妄想症状の一つで、自分の過去の出来事を重大な過ちとして過度に自責の念を抱く。
×② 心気妄想
心気妄想はうつ病による妄想症状の一つで、微細な身体の不調を重い病気と思い込む。
×③ 追跡妄想
追跡妄想は統合失調症による妄想症状の一つで、追跡・尾行されていると思い込む。
×④ 被毒妄想
被毒妄想は統合失調症による妄想症状の一つで、食べ物等に毒を盛られたと思い込む。
×⑤ 貧困妄想
品行妄想はうつ病による妄想症状の一つで、実際以上に経済的に困窮していると思い込む。
▶午前79
訪問看護師が人工肛門を造設して退院した在宅療養者を訪問すると「便が漏れるため外出ができない」と相談を受けた。観察すると、ストーマパウチの面板が皮膚に密着していない。
看護師の対応で適切なのはどれか。
- 無菌操作で交換する。
- 頻回に交換するよう説明する。
- 面板を温めて皮膚に貼付する。
- 面板を人工肛門より小さめに切る。
- 腹壁の皮膚を寄せて面板を貼付する。
③ 面板を温めて皮膚に貼付する。
人工肛門(ストーマ)は腸管を腹部の皮膚から出して固定した便の出口で、便を集める袋(ストーマ装具)を用いて受け止める。ストーマ装具の密着性を向上させるため、皮膚に粘着させる面板部を温めて装具を貼ることが適している。
×① 無菌操作で交換する。
無菌状態ではないストーマの装具交換に当たっては、滅菌手袋の装着など無菌操作は不要である。
×② 頻回に交換するよう説明する。
皮膚障害のおそれもあるため、ストーマ装具は数日に1回の目安で交換する。
×④ 面板を人工肛門より小さめに切る。
ストーマは腸管の動きに伴い大きさが変わるため、装具の穴はストーマよりも大きくする。
×⑤ 腹壁の皮膚を寄せて面板を貼付する。
便が漏れ出ることのないよう、腹壁のしわを伸ばしてストーマ装具を貼る。
▶午前80
トリアージタグを装着する部位の優先順位で適切なのはどれか。
- 頸部→右手→左手→右足→左足
- 頸部→左手→左足→右手→右足
- 右手→右足→左手→左足→頸部
- 右手→左手→右足→左足→頸部
- 左手→右手→左足→右足→頸部
④ 右手→左手→右足→左足→頸部
トリアージ(災害時等の治療優先度の決定)の際にはトリアージタグ(識別票)を利用し、傷病者の緊急度に応じて、優先順に赤、黄、緑、黒と分類し、傷病者の右手(不可能の場合は左手→右足→左足→頸部の順で代替)に装着する。
▶午前81
立ち直り反射に関与するのはどれか。2つ選べ。
- 視細胞
- コルチ器
- 圧受容器
- 化学受容器
- 頸筋の筋紡錘
① 視細胞
⑤ 頸筋の筋紡錘
立ち直り反射はヒトが身体の平衡や姿勢を保持するための姿勢反射の一つで、その中枢は中脳にあり、視覚や頸筋はこれに関与する。
▶午前82
ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉の感染経路で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 感染者の嘔吐物との接触
- 感染者の咳による曝露
- 感染者の糞便との接触
- 感染者からの輸血
- 感染者との性行為
④ 感染者からの輸血
⑤ 感染者との性行為
ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉の主な感染経路は、「HIV感染者との性行為」「血液または血液製剤の輸注」「母子感染(垂直感染)」の3つである。
*第3編3章 3.4〕HIV・エイズ〈AIDS〉 p135~137
▶午前83
慢性腎不全によって起こるのはどれか。2つ選べ。
- 低血圧
- 低リン血症
- 低カリウム血症
- 低カルシウム血症
- 代謝性アシドーシス
④ 低カルシウム血症
⑤ 代謝性アシドーシス
④ 腎臓はカルシウム吸収を促進するビタミンDの活性化を行っており、慢性腎不全により腎機能が低下することで低カルシウム血症が起こる。
⑤ 腎臓は重炭酸(HCO3)を調節して血液を弱アルカリ性に保っており、慢性腎不全により腎機能が低下することで血液が酸性に傾く代謝性アシドーシスが起こる。
×① 低血圧
水分やナトリウムの排泄低下により、血液量が増加して高血圧が起こる。
×② 低リン血症
×③ 低カリウム血症
リンやカリウム等の毒性物質の排泄低下により、高リン血症や高カリウム血症が起こる。
▶午前84
配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律に定められているのはどれか。2つ選べ。
- 離婚調停の支援
- 成年後見制度の利用
- 保健所による自立支援
- 婦人相談員による相談
- 裁判所による接近禁止命令
④ 婦人相談員による相談
⑤ 裁判所による接近禁止命令
同法に基づき、配偶者暴力相談支援センターでは通報を受けて婦人相談員による相談や自立支援、一時保護を行い、裁判所では加害者に対する被害者への接近禁止命令や退去命令などの保護命令を行う。
*第5編2章 3.5〕配偶者からの暴力の防止対策 p238
▶午前85
パルスオキシメータによる経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉の測定に適した部位はどれか。2つ選べ。
- 背部
- 上腕
- 指先
- 耳たぶ
- 大部
③ 指先
④ 耳たぶ
パルスオキシメータは、指先や耳たぶに装着して経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉と脈拍数を計測する測定器である。なお、それらの測定部位に末梢循環不全がある場合は、正確な測定のために避ける。
▶午前86
Aさん(60歳、男性)は、転倒して第5頸椎レベルの脊髄を損傷した。肩を上げることはできるが、上肢はわずかに指先を動かせる程度である。呼吸数22/分、脈拍86/分、血圧100/70mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉97%であった。Aさんは「息がしづらい」と言っている。
Aさんの状態で適切なのはどれか。2つ選べ。
- 低酸素血症がある。
- 胸郭運動がみられる。
- 無気肺を起こしやすい。
- 腹式呼吸を行っている。
- 閉塞性換気障害を起こしている。
③ 無気肺を起こしやすい。
④ 腹式呼吸を行っている。
第5頸椎レベルの脊髄の損傷では、横隔膜の機能は残っているものの、肋間筋が働かずに呼吸が浅くなる。そのため、肋間筋を使う胸式呼吸ではなく横隔膜を使う腹式呼吸となり、合併症として深い呼吸ができないことが一因となる無気肺が生じやすい。
▶午前87
Aさん(35歳、女性、会社員)は、動悸、手指の震え及び体重減少があり、受診したところ、頻脈と眼球突出とを指摘され抗甲状腺薬の内服を開始した。Aさんは看護師に「仕事のストレスは寝る前にビールを飲むことで解消するようにしているが、ちょっとしたことでイライラして眠れない」と話した。
Aさんへの説明で適切なのはどれか。2つ選べ。
- 「仕事を休みましょう」
- 「禁酒する必要があります」
- 「積極的に運動しましょう」
- 「発熱したときは受診してください」
- 「病気が原因でイライラしやすくなります」
④ 「発熱したときは受診してください」
⑤ 「病気が原因でイライラしやすくなります」
頻脈や不整脈、眼球突出は甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の特徴であり、動悸や体重減少、発汗、精神的ないらいらなどが生じることがある。その治療薬である抗甲状腺薬の副作用〈有害事象〉の一つとして、白血球のうち好中球等の減少による易感染から高熱等を発症する無顆粒球症がある。
▶午前88
Aさん(42歳、女性)は、2週前から腰痛と坐骨神経痛とを発症し整形外科で処方された鎮痛薬を内服している。帯下が増えて臭いもあるため婦人科を受診し、子宮頸癌と診断された。
進行期を決めるためにAさんに行われる検査で適切なのはどれか。2つ選べ。
- ヒトパピローマウイルス検査
- 小腸内視鏡検査
- 腎盂尿管造影
- 脊髄造影
- CT
③ 腎盂尿管造影
⑤ CT
ヒトパピローマウイルス〈HPV〉検査や精密検査を踏まえて子宮頸癌と診断された後に、子宮周囲組織への広がりや転移の有無などの進行度を確認するため、CTやMRIによる画像診断、腎盂尿管造影が行われる。
▶午前89
児の免疫に関する説明で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 胎児期は胎盤を通じて母体からIgGを受け取る。
- 出生後は母乳からIgMを受け取る。
- 生後3か月ころに免疫グロブリンが最も少なくなる。
- 1歳ころから抗体の産生が盛んになる。
- 3歳ころにIgAが成人と同じレベルに達する。
① 胎児期は胎盤を通じて母体からIgGを受け取る。
③ 生後3か月ころに免疫グロブリンが最も少なくなる。
免疫グロブリンのうちIgGは胎児期に胎盤を通じて母胎から受け取るもので、出生後にIgGは減少して生後3~4か月ころに最も少なくなり、免疫グロブリン総量としても最も少なくなる時期である。
×② 出生後は母乳からIgMを受け取る。
×⑤ 3歳ころにIgAが成人と同じレベルに達する。
母乳に豊富に含まれるものはIgAで、出生以降徐々に増加し、10歳ころに成人と同じレベルに達する。
×④ 1歳ころから抗体の産生が盛んになる。
抗体の産出は出生から盛んになる(IgGは出生半年後から)。
▶午前90
500mLの輸液を50滴/分の速度で成人用輸液セットを用いて順調に滴下し、現在80分が経過した。
このときの輸液の残量を求めよ。
ただし、小数点以下の数値が得られた場合には、小数点以下第1位を四捨五入すること。
解答:①②③mL
① 3
② 0
③ 0
80分経過した現在の滴下数は50×80=4,000滴である。成人用輸液セット1mL当たりの滴下数は20滴であるため、使用した輸液は4,000÷20=200mLとなり、輸液の残量は当初の500mLから使用した200mLを差し引いた300mLである。
▶午後26
耳の感覚器と刺激との組合せで正しいのはどれか。
- 蝸牛管――頭部の回転
- 球形囊――頭部の傾き
- 半規管――鼓膜の振動
- 卵形囊――骨の振動
② 球形囊――頭部の傾き
内耳は平衡覚を司る前庭器官と聴覚を司る蝸牛で構成される。前庭器官には角加速度(回転運動)の受容器である半規管と、直線加速度の受容器である耳石器があり、耳石器内の卵形嚢では水平方向、球形嚢では垂直方向の直線加速度を受容して頭部の傾きを感知する。
▶午後27
血液型で正しいのはどれか。
- 日本人の15%はRh(-)である。
- A型のヒトの血漿には抗B抗体がある。
- B型のヒトの赤血球膜表面にはA抗原がある。
- Coombs〈クームス〉試験でABO式の血液型の判定を行う。
② A型のヒトの血漿には抗B抗体がある。
ABO血液型検査では、赤血球の表面にある抗原(おもて検査)と、血清(血漿)内の赤血球に反応する抗体(うら検査)により判定する。血清(血漿)では、A型には抗B、B型には抗A、O型には抗Aと抗Bの両抗体があり、AB型にはどちらもない。
×① 日本人の15%はRh(-)である。
Rh血液型は輸血時に適合の必要があり、日本人に約0.5%程度の陰性の者には、同じく陰性の血液のみが適合する。
×③ B型のヒトの赤血球膜表面にはA抗原がある。
ABO血液型検査のうち赤血球(うら検査)では、A型にはA抗原、B型にはB抗原、AB型にはAとBの両抗原があり、O型にはどちらもない。
×④ Coombs〈クームス〉試験でABO式の血液型の判定を行う。
クームス試験は血中の不完全赤血球抗体を検出するもので、ABO式の血液型の判定を行うものではない。
▶午後28
胃酸の分泌を抑制するのはどれか。
- アセチルコリン
- ガストリン
- セクレチン
- ヒスタミン
③ セクレチン
セクレチンは十二指腸の粘膜から分泌されるホルモンで、酸性の胃の内容物が十二指腸に送り出されることでセクレチンが分泌され、重炭酸塩を含む膵液の分泌を促し、胃酸の分泌を抑制する。
×① アセチルコリン
アセチルコリンは副交感神経や運動神経に働く神経伝達物質である。
×② ガストリン
ガストリンは主に胃の幽門部の粘膜で産出されるホルモンで、胃酸の分泌を促進する。
×④ ヒスタミン
ヒスタミンはアレルギー様症状を引き起こす神経伝達物質である。
▶午後29
腎臓について正しいのはどれか。
- 腹腔内にある。
- 左右の腎臓は同じ高さにある。
- 腎静脈は下大静脈に合流する。
- 腎動脈は腹腔動脈から分かれる。
③ 腎静脈は下大静脈に合流する。
×① 腹腔内にある。
×② 左右の腎臓は同じ高さにある。
腎臓は、胃や肝臓、小腸、大腸など腹部の臓器を包み込んでいる腹膜よりも背中側にある左右一対の臓器(後腹膜器官)である。右の腎臓は右上腹部にある肝臓に押し下げられており、左の腎臓よりも低い位置にある。
○③ 腎静脈は下大静脈に合流する。
×④ 腎動脈は腹腔動脈から分かれる。
心臓から送られた血液は、腹部大動脈から分岐した腎動脈を通って腎臓に入り、血液から老廃物を除去、再吸収した後に腎静脈を通って下大静脈に合流する。
▶午後30
アポトーシスで正しいのはどれか。
- 群発的に発現する。
- 壊死のことである。
- 炎症反応が関与する。
- プログラムされた細胞死である。
④ プログラムされた細胞死である。
アポトーシスは遺伝子によりプログラムされた細胞死をいい、生命活動を維持・向上するための能動的な機能である。外傷等による細胞死であるネクローシス(壊死)とは異なり炎症が生じない。
▶午後31
感染性因子とその構成成分の組合せで正しいのはどれか。
- 細菌――核膜
- 真菌――細胞壁
- プリオン――核酸
- ウイルス――細胞膜
② 真菌――細胞壁
真菌には細胞壁や細胞膜、核膜に仕切られた核がある一方、細菌には細胞壁や細胞膜はあるが核膜がないため核様体となっている。また、ウイルスにはこれらの構造はなく、遺伝子である核酸とそれを包む蛋白の殻(カプシド)で構成されている。
▶午後32改題
日本の世帯構造の平成4年(1992年)から30年間の変化で正しいのはどれか。
- 単独世帯数は増加している。
- 平均世帯人数は増加している。
- ひとり親と未婚の子のみの世帯数は3倍になっている。
- 65歳以上の者のいる夫婦のみの世帯数は2倍になっている。
① 単独世帯数は増加している。
単独世帯数は増加傾向で、平成4年(1992年)に897万世帯であったものが、令和3年(2021年)には1529万世帯となっている。
×② 平均世帯人数は増加している。
単独世帯の増加、三世代世帯の減少などにより、平均世帯人員は2.99人から2.37人に減少している。
×③ ひとり親と未婚の子のみの世帯数は3倍になっている。
ひとり親と未婚の子のみの世帯(母子世帯や父子世帯)は、200万世帯から369万世帯と約1.8倍となっている。
×④ 65歳以上の者のいる夫婦のみの世帯数は2倍になっている。
65歳以上の者のいる夫婦のみの世帯は、271万世帯から825万世帯と約3倍となっている。
*第2編1章 2.世帯の動向 p44~48
▶午後33
食品衛生法に定められていないのはどれか。
- 残留農薬の規制
- 食品添加物の規制
- 食品安全委員会の設置
- ポジティブリスト制度の導入
③ 食品安全委員会の設置
食品衛生法は、食品等の事業者の責務や規格・基準、監視指導などを規定している。一方、平成15年(2003年)に成立した食品安全基本法は、リスク分析(評価・管理・コミュニケーション)により食品安全の確保を図るもので、リスク評価は内閣府に設置された食品安全委員会が担当する。
*第7編2章 1.食品安全行政の概要 p278~279
▶午後34
がん対策基本法で定められているのはどれか。
- 受動喫煙のない職場を実現する。
- がんによる死亡者の減少を目標とする。
- 都道府県がん対策推進計画を策定する。
- がんと診断されたときからの緩和ケアを推進する。
③ 都道府県がん対策推進計画を策定する。
がん対策基本法により、国はがん対策推進基本計画の策定、都道府県は都道府県がん対策推進計画の策定が定められている。なお、正答は当時のままだが、平成28年の法改正により、がん医療の均てん化の促進等として緩和ケアを提供する医療従事者の人材育成や体制確保について追加されている。
*第3編4章 1.がん対策 p149~152
▶午後35
患者と看護師との協働について適切なのはどれか。
- 患者が目標達成できるよう支援する。
- 治療に関する情報は看護師が占有する。
- 看護計画は看護師の視点を中心に立案する。
- ケアは看護師の業務予定に基づき実施する。
① 患者が目標達成できるよう支援する。
患者と看護師の協働においては、患者の自主性・主体性を尊重し、患者自ら達成可能な目標を立てて行動、評価することが重要であり、看護師はその支援を行う。
▶午後36
Aさん(56歳、男性)は、脳梗塞の後遺症のためにリハビリテーションをしている。食事中に箸がうまく使えずイライラしている。
この状況で看護師が最も連携すべき専門職はどれか。
- 精神保健福祉士
- 社会福祉士
- 理学療法士
- 作業療法士
④ 作業療法士
理学療法士は、身体に障害のある者に対し、主に立つ・座る・歩くといった基本的動作能力の回復を図る理学療法を行う者である。一方、作業療法士は、身体や精神に障害のある者に対し、主に応用的動作能力または社会的適応能力の回復を図る作業療法を行う者で、箸の持ち上げなどの食事の練習は、応用的動作能力の回復を図る作業療法に当たる。
*第4編1章 4.5〕その他の医療関係職種 p197~199
▶午後37
Aさん(80歳、女性)は、肺炎で入院して持続点滴中である。消灯時、訪室すると「体がだるくて眠れない」と訴えている。
Aさんへの入眠に向けた援助で最も適切なのはどれか。
- テレビをつける。
- 足浴を実施する。
- そのまま様子をみる。
- 睡眠薬を処方してもらう。
② 足浴を実施する。
足浴は全身浴と比べて心臓への負担が少なく、血行や睡眠の促進効果が認められ、入眠に向けた援助として適している。湯の適温は体温より少し高い38〜40℃程度とされる。
▶午後38
ベッド上での排便の介助時に使用した手袋を手から取り外すタイミングで適切なのはどれか。
- 肛門周囲の便を拭き取った後
- 排便後の患者の寝衣を整えた後
- ベッド周囲のカーテンを開けた後
- 使用した物品を汚物処理室で片づけた後
① 肛門周囲の便を拭き取った後
排泄ケア時には、標準的な感染予防策(スタンダードプリコーション)として手袋やエプロンなどの個人防護具を着用し、排泄介助後は接触して不潔にすることのないよう速やかに外す。
▶午後39
臥床患者の安楽な体位への援助として適切なのはどれか。
- 同一体位を5時間程度保持する。
- 仰臥位では膝の下に枕を入れる。
- 側臥位では両腕を胸の前で組む。
- 腹臥位では下腿を挙上する。
② 仰臥位では膝の下に枕を入れる。
長時間の同一体位の保持は褥瘡のリスクが高まるため、1~2時間に1回程度の体位変換を行う。仰臥位では最も圧力が集中する踵骨部が褥瘡の好発部位であり、その予防のための体圧分散、また膝関節を動かさないことによる関節拘縮を避けるために膝下に枕を入れることが適切である。
▶午後40
嚥下障害のある患者の食事の開始に適しているのはどれか。
- 白湯
- 味噌汁
- ゼリー
- 煮魚
③ ゼリー
嚥下障害のある患者の食事として、大きさや柔らかさなどが均一であること(均質性)、適度な粘り気とまとまりやすさがあること(凝集性)、咽頭を通過する際に変形しやすく滑りやすいこと(変形性)、口腔や咽喉の粘膜に付着しにくいこと(付着性)などが挙げられ、これらを備えたゼリーが嚥下食として適している。
▶午後41改題
病棟での医薬品の管理で正しいのはどれか。
- 生ワクチンは常温で保存する。
- 溶解した薬剤は冷凍保存する。
- 向精神薬は施錠できる場所に保管する。
- アンプルに残った麻薬注射液は廃棄する。
③ 向精神薬は施錠できる場所に保管する。
麻薬及び向精神薬取締法に基づき、麻薬や向精神薬は麻薬診療施設内に設けた鍵をかけた堅固な設備内に保管しなければならない。
×① 生ワクチンは常温で保存する。
生ワクチンは通常5℃以下で保存する。
×② 溶解した薬剤は冷凍保存する。
溶解した薬剤は原則として速やかに使用し、やむを得ず保存する場合も冷所等での短時間に限る。
×④ アンプルに残った麻薬注射液は廃棄する。
使用後のアンプルは残液がある場合および空であっても麻薬管理者に返納する。
▶午後42
不安の強い入院患者に対し問題中心の対処を促す方法で適切なのはどれか。
- 読書をして気分転換を促す。
- 原因に気付くように支援する。
- 平常な気持ちを保つように助言する。
- 家族に不満を聞いてもらうことを勧める。
② 原因に気付くように支援する。
問題中心の対処は、現状認められる課題を解決するためのアプローチであり、不安の原因を主観的・客観的情報から特定し、解決することが求められる。
▶午後43
セルフケア行動を継続するための支援で適切なのはどれか。
- 看護師が患者の目標を設定する。
- 目標は達成が容易でない水準にする。
- 行動の習慣化が重要であることを伝える。
- これまでの経験は忘れて新たな方法で取り組むよう促す。
③ 行動の習慣化が重要であることを伝える。
セルフケア行動では、患者本人が達成可能な目標を立て、行動の定着を図り、目標評価を行う。達成可能な目標を立てるのは、目標を達成し、実現能力を持っていると認識する(自己効力感)ことで、行動の持続、学習の促進につなげるためである。
▶午後44
Aさん(43歳、男性)は、胆道狭窄のため内視鏡的逆行性胆管膵管造影〈ERCP〉検査を受けた。検査後に心窩部痛が出現したため、禁食、抗菌薬および蛋白分解酵素阻害薬による治療が行われている。
翌日実施した血液検査の項目でAさんに生じている合併症を判断できるのはどれか。
- アミラーゼ
- アルブミン
- クレアチニン
- クレアチンキナーゼ
① アミラーゼ
内視鏡的逆行性胆管膵管造影〈ERCP〉は、内視鏡を口から食道・胃を通って十二指腸まで進め、胆管や膵管に直接カテーテルを挿入し、造影剤を注入して胆管や膵管の異常を調べる検査である。合併症としては急性膵炎があり、膵臓から分泌されるアミラーゼ(糖質分解酵素)の上昇が特徴的である。
▶午後45
維持血液透析中の看護で適切なのはどれか。
- シャント肢を抑制する。
- 室温を18℃に設定する。
- 筋肉のけいれんの出現に注意する。
- 患者が吐き気を感じたら座位にする。
③ 筋肉のけいれんの出現に注意する。
透析導入期には、血液と脳の尿毒素の濃度差により、筋けいれんや血圧低下、頭痛や吐き気などの不均衡症候群が現れやすい。
×① シャント肢を抑制する。
シャントは血液透析を行う際に十分な血液を確保するため、動脈と静脈をつなぎ合わせた血管をいい、シャント肢を抑制するなどの圧迫により、閉塞して透析が続けられなくなるおそれがあるため避ける。
×② 室温を18℃に設定する。
血液透析を受ける慢性腎臓病患者では、尿毒症により自律神経が障害を受けて体温調節機能が低下しており、室温が18℃では寒く感じやすいため、20℃以上の適温に設定する。
×④ 患者が吐き気を感じたら座位にする。
不均衡症候群による吐き気を感じた際は、胃食道逆流等に注意しながら頭の位置を低くした臥位などで安静を保つ。
▶午後46
Aさん(37歳、女性)は、月経異常で病院を受診し、糖尿病および高血圧症と診断された。また、満月様顔貌や中心性肥満の身体所見がみられたため検査が行われ、ホルモン分泌異常と診断された。
原因となるホルモンを分泌している臓器はどれか。
- 副甲状腺
- 甲状腺
- 副腎
- 卵巣
③ 副腎
副腎皮質ホルモンの長期過剰により、満月様顔貌〈ムーンフェイス〉や高血糖、高血圧、易感染性、骨粗鬆症、体重増加、月経不順などが症状として表れる(クッシング症候群)。
▶午後47改題
日本の令和3年(2021年)の国民生活基礎調査において高齢者世帯の所得で、1世帯当たり平均所得金額の構成割合が最も高いのはどれか。
- 稼働所得
- 財産所得
- 公的年金・恩給
- 仕送り・企業年金・個人年金・その他の所得
③ 公的年金・恩給
高齢者世帯の所得構成をみると、公的年金・恩給が207.4万円(62.3%)と半分以上を占め、次いで稼働所得が71.7万円(21.5%)となっている。
*第5編2章 1.公的年金 p234~235
▶午後48
認知症の高齢者に対するノーマライゼーションで正しいのはどれか。
- 散歩を勧める。
- 決められた服を着るよう勧める。
- 重度の場合は精神科病棟に入院を勧める。
- 食べこぼしのあるときに箸を使用しないよう勧める。
① 散歩を勧める。
ノーマライゼーションは、障害者等が障害を持たない者と同等に生活・活動する社会を目指す理念である。認知症高齢者の特性を理解した上で、その意思や自己決定を尊重することが求められる。
*第5編2章 4.障害者福祉等 p239~241
▶午後49
Aさん(80歳、男性)は、脳梗塞の治療のために入院した。Aさんは多弁であり「めがねをとってください」のことを「めとねをとってください」などと話す様子が観察される。
Aさんの症状で正しいのはどれか。
- 錯語
- 感情失禁
- 喚語困難
- 運動性失語
① 錯語
失語症でみられる錯語とは、意図した言葉と異なる誤った言葉を用いるもので、設問のような音韻を間違える字性錯語と、単語を間違える語性錯語(犬を猫と言う等)に分けられる。
×② 感情失禁
感情失禁は脳梗塞患者にみられ、情動の調整ができずに、わずかな刺激で喜怒哀楽などの感情の起伏が激しくなるものをいう。
×③ 喚語困難
×④ 運動性失語
錯語は感覚性失語(ウェルニッケ失語)で起こりやすいが、運動性失語(ブローカ失語)では言いたい言葉がなかなか出てこない喚語困難が生じやすい。
▶午後50
便秘の原因となる加齢に伴う身体的変化で誤っているのはどれか。
- 大腸粘膜の萎縮
- 骨盤底筋群の筋力低下
- 直腸内圧の閾値の低下
- 大腸の内括約筋の緊張の低下
③ 直腸内圧の閾値の低下
便の移動による直腸内圧の上昇が、骨盤神経から仙髄の排便中枢に伝わり副交感神経を刺激することで、直腸壁の平滑筋の収縮や内肛門括約筋の弛緩が行われ、排便が促される。老化により直腸内圧の閾値(反応下限値)が上昇することで、便意が伝わりづらくなり便秘の原因となる。
▶午後51
Aさん(75歳、女性)は、終末期のがんの夫を自宅で介護している。Aさんと夫は自宅での看取りを希望している。
Aさんへのケアで最も適切なのはどれか。
- 臨死期に起こる身体徴候について説明しておく。
- 自宅で看取る意思が揺らぐことがないように支援する。
- 配偶者を亡くした家族の会への参加を生前から勧める。
- 夫が元気だったころの思い出を話題にしないように勧める。
① 臨死期に起こる身体徴候について説明しておく。
自宅での看取りを希望する妻に対して、臨死期に起こる身体的徴候をあらかじめ伝えることにより、実際その場に立ち会った際に動揺や不安が起こらないよう、心の準備を促すことが適切である。
▶午後52
乳児が1日に必要とする体重1kg当たりの水分量はどれか。
- 80mL
- 100mL
- 150mL
- 180mL
③ 150mL
1日に必要とする体重1kg当たりの水分量は、乳児では150mL、幼児では100mL、学童期では80mL、成人では50mLとされる。
▶午後53改題
日本の令和4年(2022年)における周産期死亡率(出産千対)について正しいのはどれか。
- 1.3
- 3.3
- 5.3
- 7.3
② 3.3
周産期死亡とは、妊娠満22週以後の死産と生後1週未満の早期新生児死亡を合わせたものをいい、令和4年(2022年)の周産期死亡数は2,527(胎・人)、周産期死亡率(出産千対)は3.3となっている。
*第2編2章 6.周産期死亡 p66
▶午後54
性的対象とその性的指向の分類との組合せで正しいのはどれか。
- 同性――トランスセクシュアル
- 異性――ヘテロセクシュアル
- 両性――ホモセクシュアル
- なし――バイセクシュアル
② 異性――ヘテロセクシュアル
性的指向の対象によって、①同性の場合はホモセクシュアル、②異性の場合はヘテロセクシュアル、③両性の場合はバイセクシュアル、④なしの場合はアセクシュアルという。
▶午後55
更年期障害の女性にみられる特徴的な症状はどれか。
- 異常発汗
- 低血圧
- 妄想
- 便秘
① 異常発汗
閉経(約50歳)前後の更年期には、女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌量が減少する一方で、卵胞刺激ホルモン〈FSH〉と黄体形成ホルモン〈LH〉の分泌は増えることにより、ホルモンのバランスが乱れてほてりや発汗、抑うつなどの症状がみられる。
▶午後56
産後うつ病について正しいのはどれか。
- 一過性に涙もろくなる。
- スクリーニング調査票がある。
- 日本における発症頻度は約40%である。
- 産後10日ころまでに発症することが多い。
② スクリーニング調査票がある。
エジンバラ産後うつ病自己質問票(EPDS)により、産後1か月の女性を対象に簡易的なスクリーニング調査が実施されている。
×① 一過性に涙もろくなる。
マタニティブルーズの特徴であり、胎盤からの女性ホルモン(エストロゲン等)の急減を要因の一つとして、情緒不安定(涙もろさ等)、抑うつなどの精神症状を呈する。
×③ 日本における発症頻度は約40%である。
健やか親子21(第二次)の中間報告では、スクリーニング調査による産後うつ病のハイリスク群の割合は9.8%(平成29年)であった。
×④ 産後10日ころまでに発症することが多い。
産後うつは、産後1か月内で発症し、意欲低下等の症状がおよそ2週間以上続くものである。なお、マタニティブルーズは出産後3日~1週間前後に発症しやすく、10日目ほどで軽快する。
▶午後57
こころのバリアフリー宣言の目的で正しいのはどれか。
- 身体障害者の人格の尊重
- 高齢者の社会的な孤立の予防
- 精神疾患に対する正しい理解の促進
- 精神科に入院している患者の行動制限の最小化
③ 精神疾患に対する正しい理解の促進
精神疾患に対する正しい理解や偏見の解消の観点から、平成16年(2004年)に「『こころのバリアフリー宣言』―精神疾患を正しく理解し、新しい一歩を踏み出すための指針」が策定され、広く国民に普及啓発する取り組みがなされた。
*第3編2章 4.1〕精神保健対策のあゆみ p111~112
▶午後58
向精神薬と副作用〈有害事象〉の組合せで正しいのはどれか。
- 抗精神病薬――多毛
- 抗認知症薬――依存性
- 抗てんかん薬――急性ジストニア
- 抗うつ薬――セロトニン症候群
④ 抗うつ薬――セロトニン症候群
セロトニン症候群は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉などの抗うつ薬の副作用〈有害事象〉であり、不安や混乱、いらいらなどの精神症状、手足が勝手に動く、ふるえるなどの錐体外路症状、発熱や発汗などの自律神経症状がみられる。
▶午後59
Aさん(40歳、男性)は、5年前に勤めていた会社が倒産し再就職ができず、うつ病になった。その後、治療を受けて回復してきたため、一般企業への再就職を希望している。
Aさんが就労を目指して利用できる社会資源はどれか。
- 就労移行支援
- 就労継続支援A型
- 就労継続支援B型
- 自立訓練〈生活訓練〉
① 就労移行支援
障害者総合支援法では就労移行支援事業が設けられ、就労を希望し、一般雇用が可能な障害者に対して、一定期間就労に必要な知識・能力の向上のために必要な訓練を行っている。
×② 就労継続支援A型
×③ 就労継続支援B型
一般雇用が困難である者には、雇用契約に基づく就労継続支援A型、雇用契約に基づかない就労継続支援B型による支援が行われている。
×④ 自立訓練〈生活訓練〉
自立訓練〈生活訓練〉は、自立した日常生活または社会生活ができるよう、生活能力の維持・向上のために必要な支援・訓練を行うものである。
*第3編2章 3.障害児・者施策 p107~111
*第5編2章 4.6〕障害者雇用と支援 p240~241
▶午後60
精神保健指定医を指定するのはどれか。
- 保健所長
- 都道府県知事
- 厚生労働大臣
- 精神保健福祉センター長
③ 厚生労働大臣
精神保健福祉法に規定される精神保健指定医は、厚生労働大臣が指定し、非自発的な入院の要否や入院患者の行動制限の要否を判定する。
*第3編2章 4.3〕精神科の入院制度 p112~114
▶午後61
日本の平成24年(2012年)の高齢者の健康に関する意識調査において最期を迎える場に関する希望で最も多いのはどれか。
- 自宅
- 医療施設
- 福祉施設
- 高齢者向けのケア付き住宅
① 自宅
平成30年(2018年)の「高齢期における社会保障に関する意識調査」(厚生労働省)でも、人生の最後をむかえるときに生活したい場所として自宅が27.9%と最も高い。一方で、実際の死亡場所をみると、令和4年(2022年)では病院が64.5%で、自宅は17.4%にとどまっている(人口動態調査)。
*第4編1章 3.1〕在宅医療 p170
▶午後62
レスパイトケアの主な目的について適切なのはどれか。
- 高度な治療を集中的に行う。
- 家族へ介護方法の指導を行う。
- 居宅サービス料金を補助する。
- 介護を行う家族のリフレッシュを図る。
④ 介護を行う家族のリフレッシュを図る。
同居の主な介護者の悩みやストレスの原因をみると「家族の病気や介護」が最も多く、こうした介護者の負担軽減のため、訪問介護やデイサービス、ショートステイなどを利用したレスパイトケア(介護者の一時的な休息支援)の拡充が図られている。
*第5編1章 10.介護者・要介護者等の状況 p229~230
▶午後63
訪問看護サービスの提供の仕組みで正しいのはどれか。
- 主治医の意見書が必要である。
- 計画外の緊急訪問の費用は徴収できない。
- サービスの導入の決定は訪問看護師が行う。
- 主治医の特別指示書による訪問看護は医療保険サービスとして提供する。
④ 主治医の特別指示書による訪問看護は医療保険サービスとして提供する。
要介護者等には介護保険から訪問看護サービスが給付されるが、要介護者等であっても、厚生労働大臣が定める疾病等の利用者、主治医による特別訪問看護指示書の交付を受けた者、認知症以外の精神障害を有する者では医療保険から給付される。
×① 主治医の意見書が必要である。
訪問看護サービスの利用に主治医の意見書は不要である。なお、主治医の意見書は要介護認定時の申請に必要となる。
×② 計画外の緊急訪問の費用は徴収できない。
緊急の連絡や相談、訪問に対して緊急時訪問看護加算として算定することができる。
×③ サービスの導入の決定は訪問看護師が行う。
訪問看護サービスの導入は利用者の意思決定に基づく。
*第4編1章 3.2〕訪問看護 p170~172
▶午後64
看護基準の目的で最も適切なのはどれか。
- 看護の質の保証
- 個別的な看護の促進
- 看護業務の負担の軽減
- 高度な看護技術の提供
① 看護の質の保証
看護技術等の手順や評価基準により、医療機関全体として一定の看護の質が保証できる。
▶午後65
新生児標識について正しいのはどれか。
- 沐浴時には児の標識を外す。
- 標識は1個装着すればよい。
- 装着する時期は母児同室を開始する直前である。
- 母親に児を引き渡すときは母子の標識を照合する。
④ 母親に児を引き渡すときは母子の標識を照合する。
新生児を確実に識別し、取り違いなどの事故を防止するために、母児に標識を装着し、児の引き渡し時には同一の番号等により照合できるようにする。
×① 沐浴時には児の標識を外す。
沐浴時を含めて、入院中は標識を装着し続ける。
×② 標識は1個装着すればよい。
新生児の標識は脱落等に備えて少なくとも2種類を併用する。
×③ 装着する時期は母児同室を開始する直前である。
母親には分娩前、児には臍帯切断前の分娩直後に装着する。
▶午後66
山村部で地震による家屋倒壊と死者が出た災害が発生し、3週が経過した。避難所では、自宅の半壊や全壊の被害にあった高齢者を中心に10世帯が過ごしている。
高齢者の心のケアとして最も適切なのはどれか。
- 認知行動療法を行う。
- 自分が助かったことを喜ぶよう説明する。
- 地震発生時の状況について詳しく聞き取る。
- 長年親しんだものの喪失について話せる場をつくる。
④ 長年親しんだものの喪失について話せる場をつくる。
被災後数日から数週間の急性期には急性ストレス障害が生じやすく、中長期的な心的外傷後ストレス障害〈PTSD〉に移行しやすい。高齢者では特に近親者等の喪失をきっかけに気分障害を引き起こしやすく、落ち着いて話すことができる環境で被災高齢者の話を傾聴し、本人が喪失を受容できるようケアすることが適切である。
▶午後67
2国間の国際保健医療協力を行うのはどれか。
- 国際協力機構〈JICA〉
- 国際看護師協会〈ICN〉
- 国連開発計画〈UNDP〉
- 国連食糧農業機関〈FAO〉
① 国際協力機構〈JICA〉
開発途上国等への2国間協力として、わが国は国際協力機構〈JICA〉を通じた政府開発援助〈ODA〉を実施している。
*第1編2章 11.2〕2国間協力 p34~35
▶午後68
体温に影響しないのはどれか。
- 運動
- 食事
- ふるえ
- 不感蒸泄
- 精神性発汗
⑤ 精神性発汗
精神性発汗は、緊張や不安、痛みなどのストレスを受けた際に手のひらと足の裏に見られる発汗で、体温調節には関与しない。
×① 運動
運動などのエネルギー代謝による熱産生により体温が上昇すると、体温調節(熱放散)を行うために皮膚の汗腺から温熱性発汗が現れる。
×② 食事
食後は体内に吸収された栄養素が分解され、その一部は体熱として消費される(食事誘発性熱産生)。
×③ ふるえ
ふるえは体温の低下に対し、熱産生を誘導するための生体反応である。
×④ 不感蒸泄
不感蒸泄は発汗以外の皮膚や呼気から水分が喪失することをいい、気化熱として蒸発する際に熱放散が行われる。
▶午後69
貪食能を有する細胞はどれか。
- 好酸球
- Bリンパ球
- 線維芽細胞
- 血管内皮細胞
- マクロファージ
⑤ マクロファージ
マクロファージ(大食細胞)は白血球のうち単球から分化した自然免疫の一つであり、体内に侵入した細菌などの異物を捕食し(貪食作用)、消化・殺菌する。
▶午後70
流行性角結膜炎の原因はどれか。
- 淋菌
- 緑膿菌
- クラミジア
- アデノウイルス
- ヘルペスウイルス
④ アデノウイルス
流行性角結膜炎(感染症法上の5類感染症)は、アデノウイルスによる眼感染症であり、主に手を介した接触により感染する。
*第3編3章 1.感染症対策 p123~127
▶午後71
ビタミンの欠乏とその病態との組合せで正しいのはどれか。
- ビタミンA――壊血病
- ビタミンB1――代謝性アシドーシス
- ビタミンC――脚気
- ビタミンD――悪性貧血
- ビタミンE――出血傾向
② ビタミンB1――代謝性アシドーシス
ビタミンB1(チアミン)は糖代謝に必要な栄養素で、アルコール依存症患者で多くみられるビタミンB1欠乏により、脚気や代謝性アシドーシス、ウェルニッケ脳症を引き起こす。
×① ビタミンA――壊血病
ビタミンAは網膜で光の吸収を制御するロドプシンを構成する物質で、ビタミンA欠乏により夜盲症を引き起こす。
×③ ビタミンC――脚気
ビタミンCは骨や皮膚、結合組織、血管などの形成、維持、修復に関わる栄養素で、重度のビタミンC欠乏により出血症状や骨・歯などの形成異常を特徴とする壊血病を引き起こす。
×④ ビタミンD――悪性貧血
ビタミンDはカルシウム吸収を促進する作用を持ち、ビタミンD欠乏により骨軟化症や骨粗鬆症の悪化を引き起こす。なお、悪性貧血はビタミンB12や葉酸の欠乏により引き起こる。
×⑤ ビタミンE――出血傾向
ビタミンEは脂質の酸化を防止する抗酸化作用を持ち、ビタミンE欠乏により運動失調症を引き起こす。なお、出血傾向はビタミンK欠乏により引き起こり、母乳中に少ないため新生児の出血性疾患を来しやすく、出生後の内服が行われる。
▶午後72改題
日本人の食事摂取基準(2020年版)で、身体活動レベルⅠ、75歳以上の男性の1日の推定エネルギー必要量はどれか。
- 1,400kcal
- 1,800kcal
- 1,950kcal
- 2,150kcal
- 2,450kcal
② 1,800kcal
身体レベルⅠは自宅にいてほとんど外出しない者に相当する。なお、身体レベルⅡ(自立している者)の75歳以上の男性の1日の推定エネルギー必要量は2,100kcalとなっている。また、75歳以上の女性の1日の推定エネルギー必要量は身体レベルⅠが1,400kcal、Ⅱが1,650kcalとなっている。
▶午後73
触診法による血圧測定で適切なのはどれか。
- 血圧計は患者の心臓の高さに置く。
- マンシェットの幅は上腕全体を覆うサイズを選ぶ。
- 150mmHgまで加圧して減圧を開始する。
- 加圧後に1拍動当たり2〜4mmHgずつ減圧する。
- 減圧開始後に初めて脈が触知されたときの値を拡張期血圧とする。
④ 加圧後に1拍動当たり2〜4mmHgずつ減圧する。
×① 血圧計は患者の心臓の高さに置く。
×② マンシェットの幅は上腕全体を覆うサイズを選ぶ。
マンシェットの幅は14cm程度で上腕全体を覆うことのないようにし、心臓と同じ高さに巻く。
×③ 150mmHgまで加圧して減圧を開始する。
○④ 加圧後に1拍動当たり2〜4mmHgずつ減圧する。
動脈の拍動が触知できなくなった値から20〜30mmHg加圧し、その後1拍動または1秒当たり2~4mmHgずつ減圧する。
×⑤ 減圧開始後に初めて脈が触知されたときの値を拡張期血圧とする。
減圧開始後に初めて脈が触知されたときの値は収縮期血圧であり、触診法では拡張期血圧は測れない。
▶午後74
待機的に行う食道静脈瘤硬化療法について正しいのはどれか。
- 全身麻酔下で行う。
- 前日に下剤を内服する。
- 治療後48時間の安静が必要である。
- 治療翌日の朝から常食を開始する。
- 治療後に胸部痛が出現する可能性がある。
⑤ 治療後に胸部痛が出現する可能性がある。
肝硬変と合併しやすい食道静脈瘤では、内視鏡的治療として食道静脈瘤硬化療法がとられ、合併症として硬化剤注入後の胸部痛が挙げられる。
×① 全身麻酔下で行う。
局所麻酔下で行う。
×② 前日に下剤を内服する。
上部消化管に内視鏡を挿入する治療であり、下剤は不要である。
×③ 治療後48時間の安静が必要である。
症状に合わせて治療後6時間程度の安静が必要となる。
×④ 治療翌日の朝から常食を開始する。
治療当日は絶飲絶食で、翌日は流動食を開始する。
▶午後75
老人性白内障の症状で正しいのはどれか。
- 涙が流れ出る状態が続く。
- 小さい虫が飛んでいるように見える。
- 明るい場所ではまぶしくてよく見えない。
- 遠見視力は良好であるが近見視力は低下する。
- 暗い部屋に入ると目が慣れるのに時間がかかる。
③ 明るい場所ではまぶしくてよく見えない。
白内障は水晶体が加齢により白く濁り、視力の低下や羞明(光過敏)、霧視(視界のかすみ)を症状とする。
×① 涙が流れ出る状態が続く。
流涙は結膜炎や鼻涙管閉塞の症状である。
×② 小さい虫が飛んでいるように見える。
飛蚊症は網膜剥離などの症状である。
×④ 遠見視力は良好であるが近見視力は低下する。
×⑤ 暗い部屋に入ると目が慣れるのに時間がかかる。
老眼や暗順応の感度低下は、加齢による生理的な変化である。
▶午後76
臓器の移植に関する法律において脳死臓器提供が可能になるのはどれか。
- 1歳
- 6歳
- 15歳
- 20歳
- 年齢制限なし
⑤ 年齢制限なし
平成22年(2010年)の改正臓器移植法施行により、本人の意思が不明な場合(拒否の意思がない場合)でも、家族(遺族)の書面による承諾により脳死判定および臓器摘出が可能となったことにより、15歳未満であっても脳死下の臓器提供が認められることとなった。
*第3編4章 6.臓器移植・組織移植 p161~162
▶午後77
乳児の髄膜炎などを抑制するため、平成25年(2013年)に定期接種に導入されたのはどれか。
- 日本脳炎ワクチン
- ロタウイルスワクチン
- インフルエンザワクチン
- 麻しん風しん混合ワクチン
- Hibワクチン
⑤ Hibワクチン
令和2年(2020年)10月1日からは、ロタウイルスワクチンも定期接種となった。
*第3編3章 4.予防接種 p142~148
▶午後78
生後1、2か月のDown〈ダウン〉症候群の乳児にみられる特徴はどれか。
- 活気があり機嫌が良い。
- 体重増加は良好である。
- 筋緊張が強く抱っこしにくい。
- 舌が小さく吸啜が困難である。
- 哺乳の途中で眠ってしまうことが多い。
⑤ 哺乳の途中で眠ってしまうことが多い。
ダウン症候群は21番染色体の先天性異常(21トリソミー)により生じ、睡眠障害を起こす傾向にある。
×① 活気があり機嫌が良い。
活動的でなく、受動的傾向にある。
×② 体重増加は良好である。
身長や体重の発育が不良となる。
×③ 筋緊張が強く抱っこしにくい。
筋緊張が低下している。筋緊張の亢進は脳性麻痺の小児にみられる。
×④ 舌が小さく吸啜が困難である。
舌が大きく、突出するなどの特徴がみられる。
▶午後79
在胎40週0日、体重3,011gで出生した男児。出生後1分、呼吸数60/分、心拍数140/分であった。四肢を屈曲させ、刺激に対して啼泣している。体幹はピンク色、四肢にはチアノーゼがみられる。
この男児の1分後のApgar〈アプガー〉スコアはどれか。
- 1点
- 3点
- 5点
- 7点
- 9点
⑤ 9点
アプガースコア(指数)は出生直後の新生児の健康状態を判定するもので、5つの基準について0~2点の3段階で評価し、合計点が7点以上で正常、4~6点で軽症仮死、0~3点で重症仮死とされる。
|
0点
|
1点 |
2点 |
皮膚の色 |
全身蒼白 |
体は淡紅色・四肢にチアノーゼ(青色) |
全身淡紅色 |
心拍数 |
脈が触れない |
100回/分未満 |
100回/分以上 |
刺激に対する反射 |
反応なし |
顔をしかめる |
くしゃみや咳、泣く |
筋肉の緊張 |
動かず弛緩している |
四肢をやや動かす |
活発に動く、四肢屈曲 |
呼吸 |
なし |
不定期で弱い |
一定で強い、啼泣 |
設問の場合、皮膚の色のみ四肢にチアノーゼが見られるため1点でそのほかは2点、よって合計9点である。
▶午後80
関節リウマチで療養している人への日常生活指導で適切なのはどれか。
- 床に座って靴下を履く。
- 2階にある部屋を寝室にする。
- 水道の蛇口をレバー式にする。
- ボタンで着脱する衣服を選択する。
- 寝具はやわらかいマットレスにする。
③ 水道の蛇口をレバー式にする。
関節リウマチで療養している人に対しては、関節部位に負荷をかけない生活を指導する。蛇口をひねる、回す操作は手首や手指に負担となるため、レバー式にすることは適している。
×① 床に座って靴下を履く。
床に座る・立ち上がる際に膝関節や股関節に負荷がかかるため、椅子に座って靴下を履く。
×② 2階にある部屋を寝室にする。
階段の昇降は膝関節に負荷がかかるため、寝室を1階にする。
×④ ボタンで着脱する衣服を選択する。
ボタンのかけ外しは手指の関節に負荷がかかるため、ボタンのない衣服を選択する。
×⑤ 寝具はやわらかいマットレスにする。
やわらかいマットレスでは体が沈み、寝返り・起き上がり時に関節に負荷がかかるため、寝具は固めのマットレスにする。
▶午後81
食事摂取基準に耐容上限量が示されているビタミンはどれか。2つ選べ。
- ビタミンA
- ビタミンB1
- ビタミンB2
- ビタミンC
- ビタミンD
① ビタミンA
⑤ ビタミンD
ビタミンで耐容上限量(健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量)が設定されているのは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸である。
▶午後82
水腎症の原因で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 前立腺癌
- 陰囊水腫
- ループス腎炎
- 神経因性膀胱
- 腎アミロイドーシス
① 前立腺癌
④ 神経因性膀胱
水腎症は尿管から膀胱、尿道に通過障害が起きることで尿が腎臓(腎盂)にたまる病気で、前立腺癌による尿管・尿道の圧迫や神経因性膀胱による排尿障害が原因となる場合がある。
▶午後83
児童相談所の業務はどれか。2つ選べ。
- 児童の一時保護
- 自立支援給付の決定
- 不登校に関する相談
- 身体障害者手帳の交付
- 放課後児童健全育成事業の実施
① 児童の一時保護
③ 不登校に関する相談
児童相談所は各都道府県・指定都市に設置が義務づけられており、子どもに関する各種の相談に応じ、専門的な角度から調査・診断・判定を行う。それに基づいて児童の一時保護や児童福祉施設入所といった措置を行っている。
×② 自立支援給付の決定
障害者総合支援法に基づき市町村が行う。
×④ 身体障害者手帳の交付
身体障害者福祉法に基づき都道府県が行う。
×⑤ 放課後児童健全育成事業の実施
児童福祉法に基づき市町村が行う。
*第5編2章 3.3〕児童相談所 p237
▶午後84
前腕の内側中央部に創部がある患者で、創部のガーゼがずれないよう固定をする必要がある。
伸縮性のある巻軸包帯を使う場合に適切なのはどれか。2つ選べ。
- 創の部位から巻き始める。
- 包帯を伸ばした状態で巻く。
- 前腕部の巻き方は螺旋帯とする。
- 手関節から肘関節まで巻く。
- 巻き終わりは環行帯とする。
③ 前腕部の巻き方は螺旋帯とする。
⑤ 巻き終わりは環行帯とする。
包帯法の巻き始めと巻き終わりは同じ箇所に重ねて巻く環行帯とし、その間は末梢から中枢に向けて包帯を1/2~2/3程度重ねながら巻く螺旋帯とする。
×① 創の部位から巻き始める。
傷口に当てたガーゼを固定するため、包帯は創の部位から離して巻き始める。
×② 包帯を伸ばした状態で巻く。
伸縮性のある巻軸包帯は伸ばした状態で巻くと、縮んだ際に前腕が圧迫されて末梢循環不全を起こすおそれがあるため、伸ばさず用いる。
×④ 手関節から肘関節まで巻く。
創部は「前腕の内側中央部」にあり、関節の動きを制限しないためにも、手関節から肘関節まで巻く必要は無い。
▶午後85
壮年期の特徴はどれか。2つ選べ。
- 骨密度の増加
- 味覚の感度の向上
- 総合的判断力の向上
- 早朝覚醒による睡眠障害
- 水晶体の弾力性の低下による視機能の低下
③ 総合的判断力の向上
⑤ 水晶体の弾力性の低下による視機能の低下
壮年期(40~64歳)では、積み重ねた経験による総合的判断力(結晶性知能)の向上や、40歳ころからの水晶体の弾力性の低下(老眼)を特徴とする。
×① 骨密度の増加
×② 味覚の感度の向上
骨密度や味覚感度などの身体機能は、青年期をピークに加齢に伴って低下していく。
×④ 早朝覚醒による睡眠障害
加齢に伴って深いノンレム睡眠の時間は短く、浅いレム睡眠の時間は長くなるため、睡眠中の途中覚醒が多くなり、特に老年期で顕著に眠りが浅くなる。
▶午後86
Aさん(63歳、男性)は、胃癌にて胃亜全摘出術後3か月目に誤嚥性肺炎で緊急入院した。食物の通過や排便は問題なかったが、食事摂取量が少なく、術前より体重が10kg減少した。総義歯が外れやすく歯科を受診予定であった。
Aさんの肺炎の原因として考えられるのはどれか。2つ選べ。
- 消化管内容物の逆流
- 義歯の不適合
- 消化吸収障害
- 吻合部狭窄
- 腸閉塞
① 消化管内容物の逆流
② 義歯の不適合
誤嚥性肺炎は、嚥下機能の低下により、細菌等を含む食物や逆流した胃液が誤って気管に入ることで起こる肺炎である。胃亜全摘出術により胃の入り口である噴門機能が喪失することで胃食道逆流が起こりやすくなったこと、義歯の不適合により嚥下や咀嚼が適切に行われないことが原因として考えられる。
▶午後87
眼底検査が必要なのはどれか。2つ選べ。
- 中耳炎
- 糖尿病
- 麦粒腫
- 高血圧症
- 筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉
② 糖尿病
④ 高血圧症
糖尿病の合併症である糖尿病網膜症、高血圧症の合併症である高血圧網膜症を早期発見するために、検眼鏡を用いた眼底検査を行う必要がある。
▶午後88
加齢に伴う心血管系の変化で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 心拍数の増加
- 左室壁の肥厚
- 収縮期血圧の上昇
- 圧受容機能の亢進
- 刺激伝導系の細胞数の増加
② 左室壁の肥厚
③ 収縮期血圧の上昇
老年期では、大動脈の硬化による収縮期血圧の上昇、拡張期血圧の低下を特徴とし、さらに心臓の筋肉の繊維化が進む結果、心臓の壁が厚くなる(肥厚)。
×① 心拍数の増加
加齢に伴う心機能の低下により、心拍数は減少する。
×④ 圧受容機能の亢進
加齢に伴い、血圧を感知する圧受容機能は低下する。
×⑤ 刺激伝導系の細胞数の増加
加齢に伴い、心臓拍動のための興奮刺激の流れである刺激伝導系の細胞数は減少する。
▶午後89
定期巡回・随時対応型訪問介護看護の説明で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 介護予防サービスである。
- 24時間を通じて行われる。
- 地域密着型サービスである。
- 重症心身障害児を対象とする。
- 施設サービス計画の作成を行う。
② 24時間を通じて行われる。
③ 地域密着型サービスである。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、要介護状態の者を対象とする介護給付のうち地域密着型サービスで、日中・夜間を通じて24時間、定期的な巡回訪問または通報を受け、日常生活上の世話や療養上の世話を行う。
×① 介護予防サービスである。
介護予防サービスは要支援状態の者を対象とする予防給付である。
×④ 重症心身障害児を対象とする。
介護保険制度の対象は、65歳以上の第1号被保険者と、40~64歳の医療保険者である第2号被保険者である。重症心身障害児には児童福祉法等による必要な支援が行われる。
×⑤ 施設サービス計画の作成を行う。
施設サービス計画は、介護老人保健施設等の施設サービスを受ける際に作成されるもので、地域密着型サービスでは居宅サービス計画が作成される。
*第5編1章 3.2〕地域密着型サービス p223~224
▶午後90
車椅子で日常生活を送る在宅療養者の住宅改修で適切なのはどれか。2つ選べ。
- 床を畳に変える。
- 玄関を引き戸にする。
- 廊下と部屋との段差をなくす。
- トイレに和式便器を設置する。
- 廊下の幅は車椅子の幅と同じにする。
② 玄関を引き戸にする。
③ 廊下と部屋との段差をなくす。
車椅子での在宅生活のため、①フローリングの床、②左右にスライドする引き戸、③段差の除去(バリアフリー)、④洋式便器、⑤方向転換可能な廊下の幅などが、住宅改修の方向として適切である。
第105回看護師国家試験・状況設定問題(60問)
▶次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
Aさん(64歳、女性)は、慢性閉塞性肺疾患で通院加療中である。1週前から感冒様症状があり市販薬を服用し経過をみていたが、呼吸困難を訴えた後、反応が鈍くなり救急車で搬送された。Aさんは肩呼吸をしており、発汗が著明で口唇は乾燥している。体温38.3℃、呼吸数35/分、脈拍108/分、血圧96/70mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉89%であった。ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅱ-30。動脈血液ガス分析では動脈血酸素分圧〈PaO2〉60Torr、動脈血炭酸ガス分圧〈PaCO2〉68Torr、pH7.29であった。
▶午前91
この時点でのAさんのアセスメントで誤っているのはどれか。
- 脱水である。
- 意識障害がある。
- アシドーシスである。
- ショック状態である。
④ ショック状態である。
ショックでは血圧の低下(収縮期血圧90mmHg未満)が特徴的であるが、血圧96/70mmHgのため当たらない。
○① 脱水である。
著明な発汗、口唇の乾燥、高熱などから脱水が考えられる。
○② 意識障害がある。
意識レベルを評価するジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅱ-30は、痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すとかろうじて開眼する状態で、意識障害があると考えられる。
○③ アシドーシスである。
動脈血液ガス分析pH7.29であり、血液が酸性(7.30以下)に傾いているため、アシドーシスである。
▶午前92
Aさんは肺炎による急性呼吸不全と診断され、点滴、膀胱留置カテーテルの挿入および気管内挿管が実施された。
このときのAさんの観察で最も注意すべき状態はどれか。
- 乏尿
- 血圧上昇
- 末梢冷感
- 下肢の浮腫
- 呼吸音の減弱
⑤ 呼吸音の減弱
呼吸不全のうち、動脈血炭酸ガス分圧〈PaCO2〉が68TorrでⅡ型呼吸不全(45Torr超)に当たる。著明な二酸化炭素〈CO2〉の蓄積による呼吸性アシドーシスからCO2ナルコーシスを合併しやすく、呼吸抑制や意識障害を引き起こすおそれがあるため、その観察に最も注意を要する。
▶午前93
Aさんは、胸部エックス線写真で右中下肺野の浸潤影が認められ、膿性の痰が吸引されている。
このときの体位ドレナージで最も効果的なのはどれか。
- 右30°側臥位
- 左30°側臥位
- 右前傾側臥位
- 左前傾側臥位
- 腹臥位
④ 左前傾側臥位
体位ドレナージとして右中下肺野を上にした左側臥位をとり、重力により排痰を促すことが適している。また、効果的な排痰のためには60°程度の前傾側臥位が適している。
▶次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
Aさん(34歳、男性)は、運送会社で配達を担当している。6か月前の職場の健康診断で、血圧142/90mmHgと尿蛋白2+、尿潜血2+を指摘されたが放置していた。1週前、感冒様症状の後に紅茶色の尿がみられたため内科を受診した。血清IgAが高値でIgA腎症が疑われ入院した。
▶午前94
確定診断のために必要な検査はどれか。
- 腎生検
- 尿細胞診
- 腎血管造影
- 腹部超音波検査
- 腎シンチグラフィ
① 腎生検
腎生検とは、背中側から針を刺して腎臓の組織を採取し、IgA腎症など腎臓の状態の確定診断を行うものである。
▶午前95
AさんはIgA腎症と診断され、塩分1日6gの減塩食が開始された。入院前は塩辛いものが好物で外食が多かったAさんは「味が薄くて食べた気がしない。退院後も続けられるかな」と話している。
このときの対応で最も適切なのはどれか。
- 「つらいですが慣れてきます」
- 「最初に甘いものを食べてください」
- 「各食事で均等に塩分を摂取しましょう」
- 「酸味や香味を利用するとよいでしょう」
- 「市販のレトルト食品は塩分が少ないので活用するとよいです」
④ 「酸味や香味を利用するとよいでしょう」
減塩食の味が薄いことに不満や退院後の不安を感じている患者に対して、酸味や香味の利用による代替案を提案することは適切である。
▶午前96
Aさんは退院後、仕事が忙しくなり一度も受診をせずに2年が経過した。2か月前から疲れやすくなったが、仕事のせいだと思い放置していた。1週前から息切れ、食欲不振および浮腫があり、昨日から眠気、悪心および嘔吐が出現したため外来を受診した。体温36.5℃、脈拍98/分、血圧238/112mmHgであった。血液検査データは、尿素窒素100mg/dL、クレアチニン12.0mg/dL、Hb7.1g/dL。胸部エックス線写真で心拡大と肺うっ血とが認められ入院した。
直ちに行われるのはどれか。2つ選べ。
- 輸血
- 血液透析
- 利尿薬の内服
- 胸腔ドレナージ
- 降圧薬の点滴静脈内注射
② 血液透析
⑤ 降圧薬の点滴静脈内注射
② 腎機能の働きを調べる血液検査では、血中尿素窒素(基準8~20mg/dL)や血清クレアチニン(基準0.65~1.07mg/dL)が主な項目として挙げられ、いずれも大幅に正常値を外れている。心拡大や肺うっ血も認められ、緊急血液透析を行うべき状態である。
⑤ 収縮期血圧140mmHg以上かつ/または拡張期血圧90mmHg以上で高血圧症であり、238/112mmHgはいずれも大きく超過するⅢ度高血圧に当たるため、直ちに降圧薬の投与が必要となる。
▶次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
Aさん(94歳、男性)は、要介護1で、妻(84歳)と2人暮らしであった。肺炎で入院治療していたが本日退院し、介護老人保健施設に初めて入所した。現在の障害高齢者の日常生活自立度判定基準はランクB-2、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準はランクⅡaである。食欲は良好で、食事の姿勢や動作は自立している。部分義歯で不具合はなく、口腔内の異常はない。
▶午前97
入所時の身長170cm、体重50kg。1か月間で体重が3kg減少した。血液検査データは、血清アルブミン3.2g/dL、CRP0.1mg/dL。反復唾液嚥下テストは30秒間で4回である。
Aさんの状態のアセスメントで適切なのはどれか。
- 流動食が必要である。
- 炎症反応が続いている。
- 認知症による摂食行動の問題がある。
- タンパク質・エネルギー低栄養状態〈PEM〉である。
④ タンパク質・エネルギー低栄養状態〈PEM〉である。
蛋白質・エネルギー低栄養状態〈PEM〉は血清アルブミン値が3.5g/dL以下を指標とし、特に口腔機能の低下による食事量の減少、栄養素の偏りが生じる高齢者で起こりやすく、体脂肪や骨格筋の減少がみられる。
×① 流動食が必要である。
反復唾液嚥下テストは30秒間に唾液を飲み込めた回数で嚥下機能を検査するもので、3回以上で正常であるため、流動食は必要ない。
×② 炎症反応が続いている。
CRPは炎症疾患の指標である蛋白質であり、0.3mg/dL以下で正常である。当問では0.1mg/dLであるため、炎症反応は続いていない。
×③ 認知症による摂食行動の問題がある。
認知症高齢者の日常生活自立度判定基準ランクⅡaは、家庭外で日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意すれば自立できる状態であり、摂食行動の問題は通常認められない。
▶午前98
介護老人保健施設の看護師は、入所時にAさんと妻と面談をした。
このときの面談内容で適切なのはどれか。
- 自宅の改修を提案する。
- ベッド上安静の必要性を説明する。
- 急変時の救急搬送の希望を確認する。
- 通所リハビリテーションの利用を提案する。
③ 急変時の救急搬送の希望を確認する。
介護保険制度の施設サービスである介護老人保健施設では、症状が安定期にある要介護者に対し、居宅での生活が営めるよう支援するため、看護、医学的管理の下における必要な医療や日常生活上の世話を行う。症状が安定期にあるとはいえ急変は起こりうるため、事前にその対応について希望を確認することが適切である。
▶午前99
入所後3日。Aさんは「家では朝起きてすぐに歯磨きをして、口の中をすっきりさせて1日が始まった。ここでは、歯磨きは食後に介助すると言われたが、私は嫌だ」と言い、不満な様子である。Aさんはベッドから車椅子への移乗に介助が必要であるが、歯ブラシとコップとを用いて自分で歯磨きができる。
このときのAさんへの対応で最も適切なのはどれか。
- 朝食前の歯磨きは効果がないと説明する。
- 朝食前の歯磨きの習慣を変更するように勧める。
- 朝食前の歯磨きの援助方法をAさんと相談する。
- 朝食前は職員が少ないので対応できないと謝罪する。
③ 朝食前の歯磨きの援助方法をAさんと相談する。
朝食後の歯磨きに不満があるAさんの意思を尊重し、朝食前の歯磨きを継続するかの適否を含め、援助方法を相談して決めることが適切である。
▶次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
A君(6歳、男児)は、昨日午後から今朝にかけて5回の下痢便がみられ、体温が38.0℃であったため祖母と受診した。経口摂取は昨日の昼食が最後である。便の簡易検査の結果、ノロウイルスによる胃腸炎と診断され、個室に入院した。入院後、末梢静脈ラインが左手背に留置され持続点滴が開始された。両親は同様の症状があるため面会できない。祖母が帰宅した後、A君は顔をしかめ、側臥位で膝を腹部の方に寄せ抱えるようにしている。バイタルサインは、体温37.5℃、呼吸数36/分、心拍数120/分であった。
▶午前100
このときのA君に行う看護として最も適切なのはどれか。
- 起座位をとらせる。
- 食事の開始を検討する。
- 好きな玩具で遊ばせる。
- 痛みの程度を評価する。
- 解熱鎮痛薬を服薬させる。
④ 痛みの程度を評価する。
ノロウイルスの症状として強い腹痛があり、抵抗力の弱い子どもでは重症化することがある。6歳で体内の痛みを正確に表出しにくいA君に対して、表情を指し示すことで痛みを自己申告するペインスケール等の使用により、その程度を評価することが適している。
▶午前101
A君は病室内のトイレで排泄をしていた。看護師はマスク、手袋およびエプロンを着用しA君の排泄介助を行っていると、下着に便が付着していることに気付いた。看護師は、すぐにA君の下着を脱がせ流水で便を洗い流した。
下着の処理の方法で正しいのはどれか。
- 病室内のゴミ箱に捨てる。
- 病室内でエタノールに浸す。
- 病室内で次亜塩素酸ナトリウム溶液に浸す。
- 病室外の汚物処理室の感染性廃棄物用の容器に捨てる。
③ 病室内で次亜塩素酸ナトリウム溶液に浸す。
ノロウイルスの付着した物品の消毒には、次亜塩素酸ナトリウムを用いる。
▶午前102
入院後3日になったが両親は来院できない状況が続いている。A君は下痢が改善し体温も下がり笑顔がみられるようになった。看護師が清拭しながらA君と話していると「僕がお母さんの言うことを聞かなかったから病気になっちゃったんだ」と話した。
このときの看護師の対応で適切なのはどれか。
- 「お母さんが悲しむからそんなことを言ってはいけないよ」
- 「気持ちは分かるけれど病気になったのはA君のせいではないよ」
- 「A君の言うとおりだとすると入院している子はみんな悪い子なのかな」
- 「お母さんの言うことを聞いていたら病気にならなかったかもしれないね」
② 「気持ちは分かるけれど病気になったのはA君のせいではないよ」
6歳のA君に対して、共感的・肯定的にその負い目を理解しつつ、病気との関係はないことを正確・正直に伝える必要がある。
▶次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
Aちゃん(生後5か月、女児)は、出生時、腟の後方に瘻孔があり、腸内容物が排出され、低位鎖肛と診断された。他に奇形は認められず、瘻孔は腟と尿道に交通していなかったため、体重増加を待って会陰式肛門形成術を行う予定とされていた。Aちゃんは順調に体重が増加しており、定期受診のため来院した。
▶午前103
受診時の観察項目で優先度が高いのはどれか。
- 活気
- 腹部膨満
- 腹部腫瘤
- チアノーゼ
② 腹部膨満
鎖肛は直腸および肛門の形成異常により肛門が正常な位置にない状態をいい、女児では直腸と子宮・膣との間に瘻孔が生じることがある。排泄障害に伴う腹部膨満や嘔吐は観察項目として優先度が高い。
▶午前104
Aちゃんは、定期受診の1か月後、予定どおり会陰式肛門形成術を行った。術後2日、1日に6回の排便があり、造設された肛門周囲に発赤がみられている。
排便後の対応で最も適切なのはどれか。
- 石けんで洗浄する。
- 微温湯で洗浄する。
- お尻拭きシートで拭き取る。
- ポビドンヨードで消毒をする。
② 微温湯で洗浄する。
造設された肛門周囲に発赤がみられるため、排便後は石けんやお尻拭きシートの摩擦などの刺激を与えることなく、刺激の少ない微温湯(ぬるま湯)で洗浄する。
▶午前105
術後2週、全身状態や創部の状態が安定し、肛門拡張のためのブジーが開始された。退院後もブジーを継続するため母親に指導を行うことになった。
ブジーの指導で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 「食後は避けてください」
- 「腹臥位で行ってください」
- 「できるだけ深く入れてください」
- 「排便があった日は行わなくてよいです」
- 「直腸の向きに沿ってゆっくり入れてください」
① 「食後は避けてください」
⑤ 「直腸の向きに沿ってゆっくり入れてください」
肛門ブジーは肛門から器械や指を挿入して、その狭窄を徐々に拡張する方法である。嘔吐等を避けるために食後を避け、直腸粘膜を損傷しないように直腸の向きに沿ってゆっくり入れる。
×② 「腹臥位で行ってください」
肛門がよく観察できるように仰臥位で行う。
×③ 「できるだけ深く入れてください」
狭窄に応じて浅く始めて、徐々に深くする。
×④ 「排便があった日は行わなくてよいです」
排便の有無にかかわらず毎日継続する。
▶次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
Aさん(20歳、女性、大学生)は、最近、同じ大学に所属するパートナー(21歳、男性)との性交後に白色帯下が増えた。外陰部に腫瘤はみられず搔痒感や痛みはないが、時々、下腹部に痛みがあった。Aさんは性感染症〈STD〉を疑い、1人で産婦人科クリニックを受診した。診察時の体温36.8℃、脈拍62/分であった。
▶午前106
Aさんの状態に最もあてはまる性感染症〈STD〉はどれか。
- 性器ヘルペス
- 尖圭コンジローマ
- 腟トリコモナス症
- 性器クラミジア感染症
④ 性器クラミジア感染症
性器クラミジア感染症は多く無症状のまま進行し、女性では子宮頸管炎から始まり、子宮内膜炎や卵管炎、骨盤腹膜炎を起こし、不妊症や流早産の誘因となる。他の性感染症に見られるような外陰部の腫瘤や搔痒感、痛みがなく、無症状下の進行が考えられる。
▶午前107
Aさんは「彼とは交際を続けたいので、性感染症〈STD〉のことは黙っていてもよいですか。今日、相談に来たことも彼には話していません」と看護師に話した。
Aさんに対する看護師の対応で最も適切なのはどれか。
- パートナーには話さなくてもよいと伝える。
- パートナーに来院を促す電話をすると伝える。
- Aさんが通う大学の保健センターの看護師に相談するよう勧める。
- 性感染症〈STD〉に罹患したことをAさんからパートナーに伝えるよう勧める。
④ 性感染症〈STD〉に罹患したことをAさんからパートナーに伝えるよう勧める。
性感染症の治療・予防として、感染の可能性があるパートナー等も検査(早期発見)・治療(早期治療)を行うことが重要となる。性感染症の特性から人権・プライバシーに配慮する必要があるため、第三者ではなく、当事者である本人からパートナーに直接伝えることが望ましい。
▶午前108
Aさんは医師から「パートナーにも感染の可能性があるので性交渉をしないように」と説明を受けた。Aさんは看護師に「パートナーとはいつから性交渉をしてもよいですか」と相談した。
性交渉を再開する時期の説明で正しいのはどれか。
- 処方された内服薬をAさんが飲み終えた後
- Aさんの性感染症〈STD〉の症状がなくなった後
- パートナーが性感染症〈STD〉の検査を受けた後
- Aさんとパートナーの性感染症〈STD〉の治癒が確認された後
④ Aさんとパートナーの性感染症〈STD〉の治癒が確認された後
片方が感染していないことが検査でわかったり、感染後に治癒した後であっても、性交渉を通じて感染しているもう片方から感染し、それが繰り返される可能性がある(ピンポン感染)。双方の治癒が確認された後に性交渉を再開することが適切である。
▶次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
Aさん(36歳、経産婦)は、夫と長男(3歳)との3人で暮らしている。妊娠40週0日、午前9時にAさんは陣痛開始のため入院した。このときは未破水であった。午後1時、体温36.8℃、脈拍64/分、血圧126/70mmHgであった。Aさんに分娩監視装置を装着したところ、陣痛間欠4分、胎児心拍数基線は140bpmで、一過性徐脈はみられなかった。午後2時、破水感があり医師が診察したところ、子宮口は7cm開大であり、羊水の流出がみられた。
▶午前109
この時点でのAさんのアセスメントで適切なのはどれか。
- 胎児頻脈
- 前期破水
- 分娩第1期
- 妊娠高血圧症候群
③ 分娩第1期
分娩は第1期から第4期の経過に分かれ、第1期は陣痛開始から子宮口全開大まで、第2期は子宮口全開大から胎児娩出まで(発露、排臨含む)、第3期は胎児の娩出から胎盤の娩出まで、第4期は分娩後2時間をいう。
×① 胎児頻脈
胎児心拍数基線が110bpm未満(徐脈)と160bpm超(頻脈)の間を正常脈とする。140bpmであるため、頻脈には当たらない。
×② 前期破水
破水は卵膜が破れて羊水が流出することで、分娩開始前(陣痛開始前)の前期破水、分娩開始後から子宮口全開大前の早期破水、子宮口全開大時の適時破水に分類される。陣痛開始後、子宮口7cm開大での破水であるため、早期破水に当たる。
×④ 妊娠高血圧症候群
妊娠高血圧症候群は、妊娠20週以降に高血圧(収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上)を認めるもので、126/70mmHgであるAさんは当たらない。
▶午前110
午後2時30分、Aさんは3,300gの女児を正常分娩した。分娩時の出血量は200mLであった。産褥3日、体温37.0℃、脈拍76/分、血圧118/60mmHgであった。血液データは、Hb11g/dL、Ht35%であった。子宮底の位置は臍下2横指で硬く、赤色の悪露がみられた。乳房は左右とも張り、乳管の開口数は3本ずつで黄色の乳汁が分泌している。乳頭の伸びは少なく児が吸啜するまでに時間がかかっている。
看護師のAさんへの対応で最も適切なのはどれか。
- 鉄分の多い食事を勧める。
- 子宮底に冷罨法を行う。
- 乳頭のケアを行う。
- 授乳を中止する。
③ 乳頭のケアを行う。
乳頭の伸びは少なく、児が吸啜するまでに時間がかかっているため、乳頭マッサージ等のケアが適切である。
×① 鉄分の多い食事を勧める。
妊婦貧血ではヘモグロビン濃度(Hb)11g/dL未満、またはヘマトクリット(Ht)値33%未満が診断基準である。当問ではそれぞれ11g/dL、35%であり貧血には当たらず、鉄欠乏性貧血に対する鉄分の多い食事は不要である。
×② 子宮底に冷罨法を行う。
子宮底の位置は臍下2横指で硬く、悪露に凝血の混入もないため、子宮復古は順調であり、子宮収縮を促す冷罨法は不要である。
×④ 授乳を中止する。
母乳(初乳)分泌や乳房緊満(張り)など正常の経過であり、授乳を中止する必要はない。
▶午前111
産褥4日、Aさんの体調は回復し、退院が決定した。夫に連れられて来た長男が赤ちゃんを珍しそうに見ている。Aさんは退院後に長男の退行現象が現れることを心配している。
Aさんへの説明で適切でないのはどれか。
- 「長男と2人きりになる時間をつくるようにしましょう」
- 「長男と一緒に赤ちゃんのおむつを交換しましょう」
- 「長男にしっかりするように話しましょう」
- 「長男をほめて安心させましょう」
③ 「長男にしっかりするように話しましょう」
赤ちゃんの出産に伴い、母親との時間が少なくなることを理由に、長男に退行現象が生じるおそれがあり、①長男との時間を作る、②一緒に赤ちゃんの世話をする、④長男をほめるなど、愛情・注意を向けることが適切である。
▶次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
Aさん(42歳、男性)は、全身倦怠感を訴え病院を受診したところ、肝機能障害が認められ内科に入院した。Aさんは大量飲酒を長期間続けており、アルコール依存症が疑われた。内科医からの依頼で精神科医が診察をしたときは、Aさんは意識清明で見当識障害はなかった。妻とは不仲であり、半年前に仕事で大きなトラブルがあったため、朝から飲酒するようになり飲酒量はさらに増えていた。
▶午前112
Aさんに認められるのはどれか。
- 病的酩酊
- 妻との共依存
- コルサコフ症候群
- アルコールに対する耐性
④ アルコールに対する耐性
意識清明で見当識障害はなく、飲酒量が増えていることから、アルコールに対する耐性が作られ、酔うために多量の飲酒を行っている。
×① 病的酩酊
病的酩酊は意識障害を伴う状態で、意識清明であるAさんに該当しない。
×② 妻との共依存
共依存は、特定の相手と依存し合い、関係を増強する状態で、妻との関係が不仲であるAさんに該当しない。
×③ コルサコフ症候群
コルサコフ症候群は記憶障害症状を伴う状態で、見当識障害がないAさんに該当しない。
▶午前113
入院後2日、夜間にAさんは「壁や布団に虫がたくさんいる」と訴え、興奮して眠らなかった。
考えられるのはどれか。
- 振戦せん妄
- アルコール幻覚症
- レム睡眠行動障害
- 急性アルコール中毒
① 振戦せん妄
振戦せん妄は、長期間の飲酒歴のある重度のアルコール依存症者が飲酒を中断または減量した際に生じる離脱症状の一つで、著明な自律神経機能亢進や幻覚などの症状がみられる。実際に存在しない虫が多数見える幻視はその一つである。
▶午前114
その後、薬物治療によって興奮は改善した。肝機能も改善し、夜間もよく眠れるようになったため、退院が決定した。
Aさんに対する退院時の説明で適切なのはどれか。2つ選べ。
- 「仕事は辞めましょう」
- 「断酒会に参加しましょう」
- 「集団精神療法を受けましょう」
- 「飲酒しない日を週1日設けましょう」
- 「生活行動を家族に記録してもらいましょう」
② 「断酒会に参加しましょう」
③ 「集団精神療法を受けましょう」
② 断酒会など患者同士の交流が図られる自助グループ(セルフヘルプグループ)に参加を促すことで、当事者同士の支え合い(ピアサポート)により、断酒の継続や不安の解消が期待できる。
③ 集団精神療法は、治療者と患者グループにおいて対人関係の相互作用を用いた精神療法であり、うつ病やアルコール依存症、薬物依存症などの患者において効果が高い。
▶次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
Aさん(42歳、女性)は、2年前に筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉の確定診断を受けた。夫(50歳)と長女(16歳)と自宅で過ごしている。Aさんは「なるべく口から食べるようにしたい」と話し、食事と併せて胃瘻から栄養剤の注入を行っている。要介護2の認定を受け、訪問看護および訪問介護を利用している。食事の介助を行う夫から、訪問看護師に「介助の方法が良くないのか、妻はうまく飲み込めていません」と相談の電話があった。
▶午前115
夫に対する訪問看護師の対応として最も適切なのはどれか。
- 「食事の介助に時間をかけましょう」
- 「胃瘻からの栄養量を増やしましょう」
- 「介助方法に問題があるかもしれません」
- 「嚥下食の宅配サービスを頼んでみましょう」
- 「飲み込みの状態に応じた食事を一緒に考えましょう」
⑤ 「飲み込みの状態に応じた食事を一緒に考えましょう」
筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉は、随意筋を支配する運動ニューロン(上位・下位)が変性・消失していく疾患で、嚥下障害を伴うため誤嚥が生じやすい。「なるべく口から食べるようにしたい」というAさんの希望を尊重した上で、飲み込みの程度に応じた食事を介助者と一緒に考えることは適切である。
▶午前116
6か月後、Aさんは呼吸障害と嚥下障害とが進行し、気管切開による人工呼吸療法を開始するために入院した。
退院に向けて病棟看護師が行う家族への気管内吸引の説明として最も適切なのはどれか。
- 夜間に定期的な吸引を行う。
- 就寝前に体位ドレナージを行う。
- 気道内圧が低下したら吸引する。
- 吸引時は気管カニューレのカフ圧を上げる。
② 就寝前に体位ドレナージを行う。
就寝前に排痰を促す体位ドレナージや気管内吸引を行うことで、就寝中の咳を抑えて睡眠が十分に確保できる。
▶午前117
Aさんは要介護5に区分が変更され、自宅で療養通所介護を利用することになった。退院後1か月、Aさんは療養通所介護の看護師に「ゆっくりお風呂に入ってみたい」と文字盤を使って話した。入浴を開始するにあたり、看護師と介護職員との間でカンファレンスを行うことになった。
検討する内容として優先順位が高いのはどれか。
- 夫の介護負担
- 座位の保持能力
- 緊急時の対応方法
- 入浴後の人工呼吸器の回路交換の方法
- 入浴時の関節可動域〈ROM〉訓練の実施
③ 緊急時の対応方法
筋萎縮性側索硬化症の進行、人工呼吸療法中、全介助が必要な要介護5など、入浴に当たっては安全な介助、体調の注意深い観察が必要であり、緊急時の対応方法を含めてあらかじめ検討することが優先される。
▶次の文を読み118〜120の問いに答えよ。
Aさん(50歳、女性)は、子宮頸癌の終末期で入院し緩和ケア治療を行っている。倦怠感は強いが食事は摂れている。麻薬を使用し疼痛のコントロールはできており、ふらつきはあるがトイレ歩行はできる。医師からは余命2か月と告知されており、退院して自宅で最期を迎えたいと希望している。主な介護者となる夫は58歳で、5年前の脳梗塞の後遺症で不全麻痺がある。経済的には安定している。子どもはいない。
▶午前118
病棟看護師はAさんと夫とを交えてカンファレンスを行った。夫は「妻は体力がとても落ちて、見ているのがつらいです。病気が進行すると動けなくなると聞きました。私は介護に自信がありません」と不安を訴えた。
Aさんと夫への今後の不安に対する対応として最も適切なのはどれか。
- 生活保護の手続きをするよう促す。
- 要介護認定の申請手続きをするよう促す。
- 家事をしてくれる人を雇用するよう促す。
- 訪問リハビリテーションの利用を勧める。
② 要介護認定の申請手続きをするよう促す。
Aさんは50歳であり、介護保険の第2号被保険者(40~64歳)である。第2号被保険者は、回復の見込みのない癌などの特定疾病に罹患した場合、介護保険サービスを利用することができる。介護不安を覚えている夫に対して、介護保険制度を利用することを促すことは適切である。
▶午前119
看護師が退院に向けて最も連携すべき職種はどれか。
- 理学療法士
- 管理栄養士
- 介護支援専門員
- 保健所の保健師
③ 介護支援専門員
介護支援専門員は、要介護者等を支援する上で解決すべき課題を把握(アセスメント)し、課題を解決するための居宅・施設の介護サービス計画を作成する。切れ目のない在宅への移行に当たり、医療機関が連携すべき職種である。
▶午前120
退院後1か月。訪問看護ステーションの看護師が訪問した際、夫から「妻は痛みで苦しんでいる様子はない。トイレと食事以外は眠っていることが多く、このまま死んでしまうのでしょうか。家で看取ることができるか不安です」と相談を受けた。
夫への支援で最も適切なのはどれか。
- 夫に頑張るよう励ます。
- 病院に入院するよう提案する。
- 麻薬の量を増やすことを提案する。
- Aさんが希望する看取りの場について再度話し合う。
④ Aさんが希望する看取りの場について再度話し合う。
「自宅で最期を迎えたい」とするAさんの希望を尊重しつつ、家で看取ることができるか不安を抱いている夫に対して、再度看取りの場について話し合うことは適切である。
▶次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
Aさん(28歳、女性、会社員)は、夫と1歳の娘との3人で暮らしている。25歳のときに潰瘍性大腸炎と診断され、内服治療を続けてきた。Aさんは27歳で出産後、職場に復帰していたが3か月前から排便回数が増え、便に血液が混入するようになった。1週前から下痢が1日8〜10回あり、腹痛や発熱もみられ、外来受診したところ、潰瘍性大腸炎の再燃のため入院することになった。身長158.2cm、体重40.2kg。体温38.3℃、脈拍92/分、血圧108/76mmHgであった。血液検査データは、赤血球340万/μL、白血球9,800/μL、Hb7.8g/dL、アルブミン2.5g/dL、CRP5.5mg/dL。
▶午後91
Aさんの状態のアセスメントで適切なのはどれか。
- BMIによる肥満度の判定基準では普通体重に該当する。
- 貧血は心不全の徴候を示している。
- 浮腫が出現する可能性がある。
- 脱水に陥る可能性は低い。
③ 浮腫が出現する可能性がある。
アルブミンが3.5g/dL未満と低栄養状態である。アルブミンは膠質浸透圧を保持して水分を血管内に留める働きがあるが、その低下により血管外に水分が漏出することで、浮腫を引き起こす。
×① BMIによる肥満度の判定基準では普通体重に該当する。
成人の肥満・やせを判定できる指標としてBMIが用いられ、BMIが25以上で肥満、18.5未満でやせとされる。BMIは、体重(kg)÷(身長(m))2で求められる。本問では、40.2÷(1.582×1.582)≒16.1となり、やせに該当する。
×② 貧血は心不全の徴候を示している。
女性における貧血の診断基準はヘモグロビン濃度(Hb)11g/dL未満であり、7.8g/dLであるため貧血に当たるが、これは便に血液が混入していること(下血)による。
×④ 脱水に陥る可能性は低い。
下痢が1日8〜10回続いており、水分やナトリウムの欠乏から脱水に陥る可能性が高い。
▶午後92
入院後、Aさんは点滴静脈内注射による持続輸液とプレドニゾロン40mg/日の内服とが開始された。入院翌朝、Aさんが「たくさん汗をかいたのでさっぱりしたい」と話したため、看護師は清拭を行うと提案した。体温38.0℃、呼吸数18/分、脈拍82/分、血圧112/72mmHgであった。下痢は0時から6時までで3回あり、倦怠感が強い。
看護師が入浴ではなく清拭を提案した理由で適切なのはどれか。
- プレドニゾロンの内服
- 点滴静脈内注射の実施
- 急性増悪
- 貧血
③ 急性増悪
「たくさん汗をかいた」「下痢は0時から6時までで3回あり、倦怠感が強い」などから急性憎悪が考えられ、体温も高いため、体力を多く消耗する入浴ではなく清拭を提案したと考えられる。
▶午後93
入院後10日、Aさんの状態は改善し、経腸成分栄養剤300mL/日(1kcal/mL)が開始された。Aさんは「入院前も自分なりには気を付けていたつもりだったけど、また悪くならないようにするには退院後はどうしたらいいのかしら」と話した。
このときのAさんへの説明で最も適切なのはどれか。
- 「仕事は今までどおりで大丈夫です」
- 「下痢が続いたら炭水化物を減らしてください」
- 「経腸成分栄養剤600mLで1日分の栄養が確保できます」
- 「悪化のきっかけになるようなことがなかったか一緒に考えてみましょう」
④ 「悪化のきっかけになるようなことがなかったか一緒に考えてみましょう」
潰瘍性大腸炎は粘膜にびらんや潰瘍を形成する原因不明の大腸(特に直腸)の炎症性疾患で、寛解後も食事や睡眠、ストレス、運動などのあり方をきっかけに再燃を引き起こす可能性がある。不安を抱いているAさんに対し、今回の再燃のきっかけを一緒に考え、生活の見直しにつなげることが適切である。
▶次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
Aさん(48歳、男性)は、横断歩道を歩行中に乗用車に衝突され、救命救急センターに搬送された。搬送時、呼びかけに開眼せず、四肢の筋緊張が亢進していた。呼吸数30/分、脈拍60/分、血圧142/98mmHgであった。右側頭部と右肩甲骨部の擦過傷以外に目立った外傷はなかった。
▶午後94
搬送時のAさんの様子を図に示す。
Aさんの状態はどれか。
- 項部硬直
- 除脳硬直
- 除皮質硬直
- 間代性けいれん
- 強直性けいれん
③ 除皮質硬直
除皮質硬直は、大脳皮質や白質が障害されて生じる硬直姿勢で、手関節や肘関節の屈曲、下肢の伸展と足関節の底屈を特徴とする。
▶午後95
Aさんは、硬膜下血腫および脳挫傷と診断され、硬膜下血腫に対して開頭血腫除去術が行われた。ICUに入室後、マンニトールの投与が開始された。
このときの体位で最も適切なのはどれか。
※採点対象除外により省略。
▶午後96
術後14日。Aさんの意識レベルはジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅰ-2で、左上下肢に軽度の麻痺と左の視空間失認とがある。Aさんは座位を保持し、自力で食事を摂ることが可能となったが、左側の食べ物を残す様子がみられる。車椅子への移乗は看護師の介助が必要であるが、1人でベッドから降りようとする。Aさんは右利きである。
このときの適切な看護はどれか。
- 離床センサーを設置する。
- 右側を意識するように促す。
- 食器をAさんの左側に配置する。
- 残した食事は看護師が介助して口に運ぶ。
- 視空間失認が改善してから歩行訓練を開始する。
① 離床センサーを設置する。
離床センサーは患者等が離床したことを検知し、介護者等に通知するもので、転倒・転落や徘徊の防止を目的とする。車椅子への移乗介助が必要であるが、1人でベッドから降りようとするため、その設置が適している。
▶次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
Aさん(85歳、女性)は、1人暮らしで、他県に住んでいる長男家族がいる。腰部脊柱管狭窄症と診断されているが、ゆっくりとした動作であれば日常生活が可能であり、畑で野菜をつくることを趣味としている。
▶午後97
Aさんから尿失禁について外来受診時に相談があった。最近は尿意を感じてから洋式トイレに座るまでに時間がかかり、尿が少量漏れることがある。排尿回数は1日7回程度で、残尿感、排尿痛および排尿時不快感はない。咳、くしゃみ及び農作業の動作で尿が漏れることはない。
Aさんの尿失禁の種類として考えられるのはどれか。
- 溢流性尿失禁
- 機能性尿失禁
- 切迫性尿失禁
- 腹圧性尿失禁
② 機能性尿失禁
機能性尿失禁とは、泌尿器等の排尿機能に問題はないが、運動機能の低下や認知症により起こる尿失禁である。尿意を感じてからトイレに座るまでに時間がかかり尿が漏れることから、運動機能の低下による機能性尿失禁と考えられる。
×① 溢流性尿失禁
溢流性尿失禁は、前立腺肥大症などに伴う排尿障害により、尿がうまく出せず、少しずつ漏出して起こる失禁である。
×③ 切迫性尿失禁
切迫性尿失禁は、急に我慢できないほどの強い尿意を催す尿意切迫感による失禁である。
×④ 腹圧性尿失禁
腹圧性尿失禁は、骨盤底筋の衰えにより、腹部に力を加えたときに不随意に起こる失禁である。
▶午後98
Aさんから「尿が漏れて困ります。洗濯物が増えるので、干したり取り込んだりするのが大変です。どうしたらよいでしょうか」と相談を受けた。
看護師の対応で最も適切なのはどれか。
- テープ付き紙おむつを紹介する。
- 背もたれ付きポータブルトイレを紹介する。
- 介護保険の訪問介護を受けた方がよいと説明する。
- 下着の中に入れて使う尿失禁用パッドを紹介する。
④ 下着の中に入れて使う尿失禁用パッドを紹介する。
少量の尿漏れに悩んでおり、下着の中に入れる軽失禁用パッドの紹介が適切である。
▶午後99
Aさんは、買い物の途中で急に強い腰痛が出現して動けなくなり、入院した。入院後1日。腰痛は軽減したが「また痛くなりそうで怖い。家に戻りたいけど心配です」と話す。
看護師の対応で最も適切なのはどれか。
- 「痛くなれば、また入院して治療しましょう」
- 「入院が長引くと、もっと動けなくなりますよ」
- 「1人暮らしが心配なら息子さんと同居したらいかがですか」
- 「自宅でも痛みが強くならないような生活の工夫を考えましょう」
④ 「自宅でも痛みが強くならないような生活の工夫を考えましょう」
家に戻りたいという希望を尊重した上で、痛みの再発の不安を軽減するため、在宅で可能な痛みを避ける生活の工夫を考えることが適している。
▶次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
Aさん(81歳、女性)は、6年前にレビー小体型認知症と診断された。Aさんは雨の中を1人で外出して自宅に戻れなくなり、同居している娘に発見された。その夜、娘が話しかけたときのAさんの反応が鈍くなったため、かかりつけの病院を受診し、細菌性肺炎と診断され入院した。呼吸器疾患の既往はない。
▶午後100
入院時にみられる所見はどれか。
- 樽状胸郭
- 呼気の延長
- 粗い断続性副雑音
- 高調性連続性副雑音
③ 粗い断続性副雑音
肺炎等により気道分泌物が肺に貯留している場合、粗い断続性副雑音〈水泡音〉が聴取される。
×① 樽状胸郭
樽状胸郭とは空気が肺に残り続け、樽のように胸郭が膨らんだ状態で、残気量(吐ききった後に残る空気量)が増加する慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉に特徴的である。
×② 呼気の延長
呼気の延長とは吸い込んだ空気を吐き出す時間が長くなる状態で、気流が制限された慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉に特徴的である。
×④ 高調性連続性副雑音
高調性連続性副雑音〈笛音〉では、気管支喘息など気道の狭窄が疑われる。
▶午後101
入院当日、抗菌薬の点滴静脈内注射が開始された。投与開始直後からAさんが輸液ラインを指し「虫がいる」と大きな声を上げている。
このときの看護師の対応で最も適切なのはどれか。
- 虫がいないことを説明する。
- 点滴静脈内注射を中止する。
- Aさんをナースステーションに移動する。
- 輸液ラインをAさんから見えない状態にする。
④ 輸液ラインをAさんから見えない状態にする。
レビー小体型認知症の特徴的な症状としては、幻視(実際に見えない人や物が見えるといった錯視)がしばしば現れることが挙げられる。本人を否定することなく、錯視の原因となっている輸液ラインを視界に入らないようにすることは適切である。
▶午後102
入院後7日、症状が軽快し明日退院することが決まった。消灯前にAさんが部屋にいないため探すと、小刻みにすり足で歩いているところを発見した。看護師がどうしたのか質問すると「そこに小さい子どもがいるので見に行きたい」と、思いつめた表情で話した。
このときのAさんへの対応で最も適切なのはどれか。
- 転倒の危険を説明する。
- 行きたい場所へ付き添う。
- 子ども時代の思い出を尋ねる。
- 子どもはどこかへ行ってしまったと説明する。
② 行きたい場所へ付き添う。
幻視(錯視)により子どもを見に行きたいというAさんの意思を尊重した上で、小刻みにすり足で歩くなど転倒のリスクが高いため、看護師が一緒に歩くなどのサポートを優先的に行う必要がある。
▶次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
Aちゃん(11歳、女児)は、両親と3人で暮らしている。3週前から疲労感を訴え昼寝をするようになった。そのころから夜間に尿意で起きてトイレに行くようになり、1日の尿の回数が増えた。2日前から食欲がなくヨーグルトや水分を摂取していたが、今朝から吐き気と嘔吐とがあり水分も摂れない状態になったため、母親とともに受診した。血液検査データは、赤血球580万/μL、Hb13.9g/dL、Ht44%、白血球9,500/μL、尿素窒素31mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、Na141mEq/L、K4.8mEq/L、Cl94mEq/L、随時血糖900mg/dL。動脈血ガス分析は、pH7.21、BE-12.3、HCO3-10.9mEq/L。尿検査は、尿糖2+、尿ケトン体3+であった。Aちゃんは1型糖尿病の疑いで入院した。
▶午後103
入院時のバイタルサインは、体温37.3℃、呼吸数20/分、脈拍120/分、整、血圧110/68mmHgであり、点滴静脈内注射が開始された。
入院時のAちゃんの状態で注意すべき所見はどれか。2つ選べ。
- 冷汗
- 浮腫
- 悪寒
- 意識障害
- 皮膚の弾力性の低下
④ 意識障害
⑤ 皮膚の弾力性の低下
④ 尿ケトン体の陽性、酸性に傾いた血液(pH7.30以下)から、糖尿病の急性合併症である糖尿病ケトアシドーシスが考えられ、血糖値の急上昇に伴う昏睡や意識障害に注意する。
⑤ 水分摂取ができずに脱水状態であると考えられるため、皮膚の弾力性(ツルゴール)が低下し、手の甲の皮膚をつまみ上げた後の戻りが遅いことが考えられる。
×① 冷汗
冷汗は低血糖に特徴的な症状であるが、Aちゃんの随時血糖は900mg/dLで基準値(100mg/dL)を大きく上回る高血糖である。
×② 浮腫
浮腫は細胞間の水分がたまり排泄されない状態をいうが、脱水状態であるAちゃんに浮腫は通常生じない。
×③ 悪寒
ウイルス感染等に伴う高温の前に悪寒が生じることもあるが、Aちゃんには当たらない。
▶午後104
Aちゃんは、インスリンの持続的な注入を開始し、3日後、血糖値が安定した。1型糖尿病と診断が確定しインスリン自己注射を始めることになった。ペン型注入器を用いて、毎食前に超速効型インスリンの皮下注射、21時に持効型溶解インスリンの皮下注射を行うという指示が出ている。
Aちゃんと両親に対するインスリン自己注射の指導で適切なのはどれか。2つ選べ。
- インスリンを注射する部位は前回と違う部位に行う。
- 超速効型インスリンは単位数を変更せずに注射する。
- 食欲がないときは食後に超速効型インスリンを注射する。
- 血糖値が100mg/dL以下のときは持効型溶解インスリンの注射を中止する。
- インスリンの注射をした後は針を刺した場所をよくもむ。
① インスリンを注射する部位は前回と違う部位に行う。
③ 食欲がないときは食後に超速効型インスリンを注射する。
① 皮下の硬結を避けるため注射部位は毎回2~3cmずらす。
③ インスリン注射は通常食事の30分前に行うが、食欲不振時(シックデイ)は絶食を避けつつ食事量を調整し、低血糖を防ぐためにインスリン量を減らしたり、食後にインスリン注射を行うなどの工夫が必要となる。
▶午後105
Aちゃん及び両親は、1型糖尿病の療養生活に必要な知識や手技を順調に獲得した。血糖値が良好にコントロールされたため、退院に向けてAちゃんと両親、主治医、担当看護師および学校の関係者との間でこれからの学校生活について話し合った。
医療者から学校の関係者に伝える内容で最も適切なのはどれか。
- 「長距離走や水泳の授業は見学させてください」
- 「宿泊を伴う校外活動は保護者の同伴が必要です」
- 「教室内にインスリン注射を行う場所を設けてください」
- 「家庭科の調理実習は同級生と違う献立にしてください」
- 「手指の震えや強い空腹感があるときはブドウ糖の補食が必要です」
⑤ 「手指の震えや強い空腹感があるときはブドウ糖の補食が必要です」
インスリン投与中の食事の量や時間、運動などにより血糖値が正常範囲よりも低下し、冷や汗(発汗)や動悸、けいれんなどの自律神経障害を伴う低血糖症状を起こす可能性がある。症状が出現した際はブドウ糖などの補食を行う。
▶次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
Aさん(28歳、女性、会社員)は、結婚後1年で夫と2人で暮らしている。仕事上の役割も増えている。次回月経予定日を2週過ぎても月経がみられないため、勤務先近くの産婦人科クリニックを受診した。月経周期は28日型で、最終月経は3月2日から4日間であった。診察の結果、妊娠と診断された。
▶午後106
3月と4月のカレンダーを示す。
本日、4月14日のAさんの妊娠週数および日数を最終月経から求めよ。
解答:妊娠①週②日
① 6
② 1
最終月経の初日を0日とした順調な分娩予定日は40週0日(280日)である。最終月経の初日は3月2日で次回月経予定日はそこから28日後(4週)であったが、そこから2週過ぎたため、現在は妊娠6週1日である。
▶午後107
Aさんは医師から妊娠していると説明を受けた。Aさんは看護師に「初めての妊娠でうれしい。でも、任されている大きなプロジェクトが続けられなくなるため悲しくて、妊娠しなければよかったと思います」と話す。
この時期のAさんの心理状態で最も適切なのはどれか。
- 錯乱状態である。
- 他罰的な感情がある。
- マタニティブルーズである。
- アンビバレント〈両価的〉な感情がある。
④ アンビバレント〈両価的〉な感情がある。
アンビバレント〈両価性〉とは、ある対象に対して相反する感情を同時に、あるいは交互に持つことをいう。なお、③マタニティブルーズは出産後3日~1週間前後に発症する精神症状である。
▶午後108
Aさんの次回の受診は4週後になった。Aさんは「数日前から朝起きたときやおなかがすいたときに吐き気がします。次の受診までに私の体にどのような変化が起こるのでしょうか」と話した。
看護師のAさんに対する説明で最も適切なのはどれか。
- 「体がかゆくなります」
- 「おりものが多くなります」
- 「仰向けで寝ていると気分が悪くなります」
- 「下肢にけいれんが起こりやすくなります」
② 「おりものが多くなります」
妊娠初期からはつわりが生じやすく、空腹時に嘔気を催しやすい。このほか妊娠初期には女性ホルモンであるエストロゲンの増加により、子宮や膣からの分泌物(おりもの)が多くなる。
▶次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
Aさん(23歳、女性)は、未婚で両親と3人で暮らしている。専門学校卒業後に就職し、仕事も順調であった。4か月前、仕事のミスがあったことをきっかけに気分が落ち込み、食欲のない状態が1か月ほど続いたが、通勤は続けていた。Aさんは2か月前から不眠を訴えるようになり、先月からは給料の全額を宝くじの購入に費やしてしまう行為がみられるようになった。Aさんは、心配した両親に付き添われて精神科病院を受診した。
▶午後109
Aさんは、診察室では多弁であった。また、ささいなことで怒り出し、自分は病気ではないと治療を受けることを拒否した。意識は清明で見当識障害はみられなかった。Aさんは双極性障害と診断され医療保護入院をすることになった。
入院時のAさんのアセスメントで正しいのはどれか。
- 躁状態
- 緘黙状態
- 錯乱状態
- せん妄状態
① 躁状態
双極性障害は、躁状態(気分の高揚、活動性の上昇)と鬱状態(抑うつ、活動性の低下)を繰り返す精神疾患である。多弁や易怒性は躁状態の特徴である。
▶午後110
入院後2週が経過した。Aさんの携帯電話は母親が持ち帰っているため、Aさんは職場のことが気になると言って、毎日、病棟内の公衆電話から頻繁に会社の上司に電話をしている。看護師が面接をしたところ、今後への強い焦りの訴えが聞かれた。
Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。
- 休養の必要性をAさんと再確認する。
- 仕事のことは考えないように伝える。
- Aさんの上司にAさんの病状と行動との関連を説明する。
- Aさんのテレホンカードをナースステーションで管理する。
① 休養の必要性をAさんと再確認する。
双極性障害の治療として、気分安定薬や抗精神病薬などの薬物療法のほか、十分な休息の上で心理教育や認知行動療法などが取られる。治療には長期間を要するため、焦りを抱く患者に対して、その必要性を改めて理解してもらうことが適切である。
▶午後111
入院して2か月が経過し、Aさんは服薬による治療で多弁や易怒性などの症状が改善し、落ち着いて過ごせるようになった。Aさんは治療を継続する必要性についても理解している。看護師がAさんと家族への退院指導を行うことになった。
退院指導における説明で最も適切なのはどれか。
- 「薬の管理は家族が行ってください」
- 「今後も定期的な入院が必要になります」
- 「Aさんの言動の変化に気を付けましょう」
- 「服薬していれば再発することはありません」
③ 「Aさんの言動の変化に気を付けましょう」
双極性障害は改善後も再発のリスクがあり、再発を防ぐために投薬を継続する必要があるほか、言動の変化から双極性障害の徴候を見逃さない注意が必要である。
▶次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
Aさん(19歳、男性、大学生)は、実家近くのアパートに1人で暮らしている。ある日、線路沿いの道を裸足で歩きながら険しい表情でカッターナイフを振り回し、ぶつぶつと独り言を言い続けていたことから警察に保護された。Aさんは、警察から連絡を受けた両親とともに精神科病院を受診したが「自分は命を狙われている」、「この人たちは自分の親じゃない」と言い、医療者に対しても拒否的な態度をとっている。診察の結果、Aさんは統合失調症と診断された。Aさんの頭髪は乱れ、食事や睡眠がとれていない様子であったため、そのまま医療保護入院をすることになった。
▶午後112
入院当日にAさんの両親から情報収集する内容として、優先度が高いのはどれか。
- Aさんの大学の出席状況
- 両親がAさんと同居する可能性
- Aさんの子ども時代の両親の育て方
- Aさんの入院に対する両親の受け止め方
④ Aさんの入院に対する両親の受け止め方
医療保護入院は、医療および保護のために入院の必要があるが、本人の同意による任意入院が行われる状態にないと判定された者について、その家族等の同意がある場合に入院させる制度である。その特性上、入院に対する受け止め方などの気持ちを聞き取った上で、家族の理解を得るよう努める必要がある。
▶午後113
Aさんの入院後2週が経過した。Aさんの母親が疲れた表情で「Aはまだ誰かに殺されるのではないかと怖がっています。Aはなぜこんな病気になったのでしょうか。親としてどのようにAに接したらよいか分かりません」と担当の看護師に相談してきた。
この時点でAさんの両親に勧めるのはどれか。
- 毎日の面会
- 家族心理教育
- Aさんとの同伴での外出
- 共同生活援助〈グループホーム〉の見学
② 家族心理教育
心理教育は精神障害(統合失調症等)の再発防止に効果的とされる方法で、患者本人や家族が障害についての正しい知識や情報、服薬など対処方法を習得することによって主体的に療養生活を営めるようにするための援助である。
▶午後114
入院後2か月が経過し、主治医からは退院の話も出始めた。Aさんは入院をきっかけに大学を休学している。Aさんの両親が「Aは学業の遅れを心配して、退院後すぐに復学したいと言っています。Aはすぐに復学できるのでしょうか」と相談してきた。
看護師の説明として適切なのはどれか。
- 「復学の時期を大学に判断してもらいましょう」
- 「復学できる状態になるまで退院を延期しましょう」
- 「ご両親からAさんに焦らないよう説得してください」
- 「まずは家庭での日常生活に慣れることから始めましょう」
④ 「まずは家庭での日常生活に慣れることから始めましょう」
統合失調症の回復期に当たり、再発のリスクに気をつけつつ、社会復帰(復学)に向けて家庭での日常生活に徐々に慣れていくことや、精神科デイケアなどの社会資源を活用することが適切である。
▶次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
Aさん(58歳、男性)は、妻(55歳、会社員)、長女夫婦および生後5か月の孫の5人で暮らしている。頸椎の後縦靱帯骨化症と診断され椎弓形成術を受けた。リハビリテーション病院に転院し2か月前に退院した。退院時から週1回の訪問看護を受けている。現在の症状は、下肢のしびれ、知覚鈍麻、筋力低下、上下肢の痙性麻痺および膀胱直腸障害である。移動は車椅子で、食事はリハビリテーション用のフォークを使用して座位で摂取している。排泄は家族に見守られながら尿器とポータブルトイレとを使用し、自分で行っている。
▶午後115
Aさんへの訪問看護における身体状態の観察で、疾患に関連して最も重要なのはどれか。
- 排尿状態
- 上肢の筋力
- 嚥下の状態
- 外傷の有無
- 下肢のしびれ
① 排尿状態
膀胱直腸障害により、尿器とポータブルトイレとを使用して排泄を自分で行っているが、その頻度や下部尿路症状、便秘などを含めたアセスメントが優先される。
▶午後116
Aさんは1週前から排便がなく、センノシドを毎日就寝前に継続して内服している。訪問看護師が観察すると左腹部に便塊を触れ、腸蠕動音は微弱であった。Aさんは、2日間排便がないときはピコスルファートナトリウム水和物を適宜内服するよう医師に言われているが、以前に内服して下痢になったため内服していないと話す。
看護師のAさんへの提案で適切なのはどれか。
- 「もう少し様子をみましょう」
- 「下剤は2種類とも飲みましょう」
- 「便意を感じたらトイレに座りましょう」
- 「浣腸をしてもよいか医師に確認しましょう」
④ 「浣腸をしてもよいか医師に確認しましょう」
1週間排便がない、左腹部に便塊を触れる、腸蠕動音は微弱などから直腸性便秘と考えられる。浣腸等により便塊を取り除く必要があるが、椎弓形成術後の膀胱直腸障害があるため、医師と相談して実施する。
▶午後117
ある日、Aさんに軽度の歯肉出血および歯肉の腫脹がみられるようになった。疼痛はない。訪問歯科診療を受け、口腔ケアを徹底するよう促された。リハビリテーション病院に入院していたときは、自助具を利用して口腔ケアの練習をしていた。退院後は妻が口腔ケアを介助していたが、最近は仕事の帰りが遅く、Aさんは妻を待てずに寝てしまうと言う。また、Aさんは育児で疲れている長女には頼めないと話す。
看護師のAさんへの提案で最も適切なのはどれか。
- 日中の口腔ケアを徹底する。
- 長女に口腔ケアを依頼する。
- 就寝時刻を遅くするよう提案する。
- 妻が夜に実施できる時間帯を検討する。
- Aさんが自立してできる方法を検討する。
⑤ Aさんが自立してできる方法を検討する。
入院時に自助具を利用して口腔ケアの練習をしており、妻や長女に介助の負担をかけないよう、可能な範囲でAさん自身が自立して口腔ケアを行うことを検討することは適切である。
▶次の文を読み118〜120の問いに答えよ。
Aちゃん(4歳、男児)は、昨夜の土砂災害によって両親とともに小学校の体育館に避難している。母親は自分の両親の安否が不明なため眠ることができなかった。また、落ち着きがなく感情的になっている。父親はずっと毛布をかぶって横になっている。
▶午後118
昼間のAちゃんは体育館の中を走り回っている。また、指しゃぶりをしながら両親の姿を気にしているが、近づいて甘えようとはしない。
Aちゃんの反応で正しいのはどれか。
- 自我同一性の拡散
- 急性ストレス障害
- 外傷後ストレス障害〈PTSD〉
- 注意欠陥多動性障害〈ADHD〉
② 急性ストレス障害
急性ストレス障害は発災後数日から数週間の急性期に生じやすく、Aちゃんの多動傾向はその反応と考えられる。
×① 自我同一性の拡散
自己同一性の確立に対する拡散との葛藤は青年期(13歳から20歳ころ)に生じる。Aちゃんは4歳であるため当たらない。
×③ 外傷後ストレス障害〈PTSD〉
心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患は、発災後1か月以降の中長期以降に生じやすい。
×④ 注意欠陥多動性障害〈ADHD〉
発達障害であるADHDは多動性・衝動性(落ち着きがない、待てない)、不注意(注意が持続しにくい、作業ミスが多い)といった特性がある。先天的な脳機能障害であり、Aちゃんの反応は発災直後に特徴的なものであるため当たらない。
▶午後119
Aちゃんの母親は自分の両親と連絡がとれた。避難所生活5日目、親子3人で過ごすことが多くなってきた。Aちゃんの活気がなくなってきている。
地域の病院から派遣された看護師の対応で最も適切なのはどれか。
- 両親のAちゃんへの関わりを見守る。
- Aちゃんと災害時のことを一緒に話す。
- Aちゃんが他の子どもと遊べる機会をつくる。
- 災害時の様子を絵に描くようAちゃんに勧める。
③ Aちゃんが他の子どもと遊べる機会をつくる。
親子3人で過ごす中で、Aちゃんの活気がなくなってきている。遊びは精神的な不安・痛みに対する非薬物療法の一つであり、年齢の近い子どもと遊ぶ機会を設けることが適切である。
▶午後120
避難から3週後、Aちゃん家族は仮設住宅に移動が決定し、両親は忙しくしている。Aちゃんは1人で過ごすことが多く、絵本を持ってぼんやりとしていることが多い。母親からAちゃんの様子がいつもと違うと看護師に相談があった。
母親への対応で最も適切なのはどれか。
- 引っ越しすることを説明するよう促す。
- スキンシップの時間を増やすように促す。
- すぐに専門医の外来を受診するよう促す。
- 子どもの反応は母親の関わりが原因だと話す。
② スキンシップの時間を増やすように促す。
避難生活の中で両親が忙しく、Aちゃんと関わる時間が少なくなったため、心理的不安から様子が異なってきている。スキンシップの時間を増やし、その不安を解消することが適切である。
資料 厚生労働省「第102回保健師国家試験、第99回助産師国家試験、第105回看護師国家試験の問題および正答について」
注 当ページに掲載する解説は、看護師国家試験を解く上での理解しやすさを重視しているため、本来はより専門的・学術的な説明や議論がある部分を一部省略しています。正確な情報を掲載するように努めていますが、特に医療・看護行為や疾病、薬剤等の説明において、その正確性を保証するものではありませんので、学習以外での使用はお控え下さい。
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