第113回看護師国家試験 午前一般問題
令和6年2月11日(日)に実施された第113回看護師国家試験について、午前問題のうち一般問題の正答と解説を示します。
「国民衛生の動向2024/2025」で内容を解説している問題に関しては、その参照章・ページを示しているので、同書を併用しながらの利用をおすすめします。
▼第113回看護師国家試験
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厚生の指標増刊
国民衛生の動向 2024/2025
発売日:2024.8.27
定価:2,970円(税込)
412頁・B5判
雑誌コード:03854-08
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▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
午前 一般問題
▶午前5(必修除外)
臨床研究の倫理指針で被験者の権利を優先することを提唱しているのはどれか。
- オタワ憲章
- リスボン宣言
- ジュネーブ宣言
- ヘルシンキ宣言
④ ヘルシンキ宣言
人間を対象とする医学研究の倫理的原則を掲げたヘルシンキ宣言を踏まえ、わが国は「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」を制定している。
*第6編1章 10.臨床研究・治験 p255~256
▶午前23(必修除外)
トリアージタッグを別に示す。

待機的治療群となるトリアージタッグはどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
③ ③
トリアージ(災害時等の治療優先度の決定)の際にはトリアージタグ(識別票)を利用し、傷病者の緊急度に応じて、優先順に赤(Ⅰ:最優先治療群・重症群)、黄(Ⅱ:待機的治療群・中等症群)、緑(Ⅲ:保留群・軽症群)、そして黒(0:不処置群・死亡群)と分類し、該当する色を残す。
▶午前25(必修除外)
代謝性アシドーシスによって起こる呼吸はどれか。
- 奇異呼吸
- 口すぼめ呼吸
- Biot〈ビオー〉呼吸
- Kussmaul〈クスマウル〉呼吸
- Cheyne-Stokes〈チェーン-ストークス〉呼吸
④ Kussmaul〈クスマウル〉呼吸
クスマウル呼吸とは規則正しく速く深い呼吸が続く異常呼吸をいい、糖尿病ケトアシドーシス患者等の代謝性アシドーシスによって起こる。
▶午前26
神経線維には髄鞘のあるものとないものがあるが、活動電位に対する髄鞘の働きはどれか。
- 活動電位の発生頻度を増やす。
- 活動電位のピークを高くする。
- 活動電位の伝導速度を速くする。
- 活動電位が周囲の神経線維に伝わるのを防ぐ。
③ 活動電位の伝導速度を速くする。
神経線維は神経細胞(ニューロン)の一部で、髄鞘に包まれた有髄神経と、包まれていない無髄神経がある。髄鞘は絶縁体の働きを持ち、有髄神経では髄鞘をスキップして活動電位(神経信号)が伝導するため、その伝導速度が速くなる(跳躍伝導)。
▶午前27
舌の模式図を示す。

味蕾が少ない部位はどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
② ②
味は舌などにある多数の味蕾で受容し、5つの基本味(甘味・苦味・酸味・塩味・旨味)を知覚する。味蕾は舌先や横側、奥に多くあるが、舌の中央にはほとんどない。
▶午前28改題
労働力調査における平成22年(2010年)と令和5年(2023年)の男性と女性の労働力人口の比較で正しいのはどれか。
- 男性、女性とも減少している。
- 男性、女性とも増加している。
- 男性は減少し、女性は増加している。
- 男性は増加し、女性は減少している。
③ 男性は減少し、女性は増加している。
労働力人口とは15歳以上人口のうち就業者と完全失業者の合計をいい、平成22年(2010年)には6632万人(男性3850万・女性2783万人)であったものが、令和5年(2023年)には6925万人(男3801万人・女3124万人)と、男性が微減しているのに対し、女性は300万人程度増加している。
*第2編1章 3.労働力人口 p48~49
▶午前29
生活保護法に基づき生活保護の実務を行うのはどれか。
- 保健所
- 福祉事務所
- 精神保健福祉センター
- 地域包括支援センター
② 福祉事務所
生活保護の決定と実施に関する権限は、都道府県知事と市長、福祉事務所を設置する町村の長が有し、多くの場合、その設置する福祉事務所の長に権限が委任されている。
*第5編2章 2.生活保護 p235
▶午前30
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律〈感染症法〉において、診断した際に全数を届け出る疾患はどれか。
- インフルエンザ
- 細菌性髄膜炎
- 水痘
- 梅毒
④ 梅毒
選択肢はいずれも感染症法に基づく5類感染症である。5類感染症は全数把握対象疾患と定点把握対象疾患に分かれ、梅毒は全数把握対象疾患に当たる。
*第3編3章 3.6〕性感染症 p138~139
▶午前31
健やか親子21(第2次)の基盤課題A「切れ目ない妊産婦・乳幼児への保健対策」の目標はどれか。
- 児童虐待による死亡数の減少
- 十代の人工妊娠中絶率の減少
- 妊娠・出産について満足している者の割合の増加
- マタニティマークを妊娠中に使用したことのある母親の割合の増加
③ 妊娠・出産について満足している者の割合の増加
健やか親子21(第2次)はすべての子どもが健やかに育つ社会の実現のため、3つの基盤課題と2つの重点課題を設定し、それぞれ目標を定めている。
×① 児童虐待による死亡数の減少
重点課題2「妊娠期からの児童虐待防止対策」に当たる。
×② 十代の人工妊娠中絶率の減少
基盤課題B「学童期・思春期から成人期に向けた保健対策」に当たる。
×④ マタニティマークを妊娠中に使用したことのある母親の割合の増加
基盤課題C「子どもの健やかな成長を見守り育む地域づくり」に当たる。
*第3編2章 1.3〕健やか親子21 p99~100
▶午前32
健康寿命の説明で適切なのはどれか。
- 生活習慣病の予防は健康寿命を伸ばす。
- 令和元年(2019年)の健康寿命は女性より男性の方が長い。
- 令和元年(2019年)の健康寿命は平成28年(2016年)よりも短い。
- 平均寿命と健康寿命の差は健康上の問題なく日常生活が過ごせる期間である。
① 生活習慣病の予防は健康寿命を伸ばす。
健康寿命とは日常生活に制限のない期間であり、健康日本21(第三次)では生活習慣病の予防などによりこの期間を延ばすことが目標として掲げられている。
×② 令和元年(2019年)の健康寿命は女性より男性の方が長い。
×③ 令和元年(2019年)の健康寿命は平成28年(2016年)よりも短い。
令和元年(2019年)の健康寿命は男性72.68年・女性75.38年で、平成28年(2016年)と比べて男性では0.54年、女性では0.59年伸びている。
×④ 平均寿命と健康寿命の差は健康上の問題なく日常生活が過ごせる期間である。
平均寿命と健康寿命の差は、健康上の問題により日常生活に制限のある期間といえる。
*第3編1章 2.1〕(6)健康寿命の延伸 p87~88
▶午前33
入院中のAさんの親族と名乗る者から「急用があるためAさんと話をさせてほしい」と病棟に電話があった。
看護師の対応で正しいのはどれか。
- 「用件を教えてください」
- 「このままおつなぎします」
- 「Aさんにかけ直してもらいます」
- 「Aさんという方が入院中かどうかはお答えできません」
④ 「Aさんという方が入院中かどうかはお答えできません」
個人情報保護の観点から、患者自身が入院治療を受けている事実自体が保護すべき情報に当たるため、患者本人の了解を得ずに答えることは不適切である。
▶午前34
成人の心音の聴診部位を図に示す。

心音の聴診における、僧帽弁領域はどれか。
ただし、聴取部位は●で示す。
- ①
- ②
- ③
- ④
③
左心房と左心室の間にある僧帽弁は低く短い心音(Ⅰ音)を発し、第5肋間左鎖骨中線上心尖部で聴取される。
▶午前35
滅菌手袋を図に示す。

右手から装着する場合に、左手の母指と示指でつかんで持ち上げる位置で適切なのはどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
④
滅菌手袋の装着時には手袋の外側に触れないように注意する。手袋を装着していない左手を用いて右手から装着する際は、右手袋の折り返した内側部分をつかんで持ち上げて五指を入れる。
▶午前36
仰臥位の患者の良肢位で正しいのはどれか。
- 肩関節外転90度
- 肘関節屈曲90度
- 膝関節屈曲90度
- 足関節底屈90度
② 肘関節屈曲90度
良肢位は関節の機能障害の影響を最小限にとどめるための肢位で、肘関節は屈曲90度が良肢位となっている。
×① 肩関節外転90度
肩関節は外転10~30度が良肢位である。
×③ 膝関節屈曲90度
膝関節は屈曲10~20度が良肢位である。
×④ 足関節底屈90度
足関節は背屈・底屈0度が良肢位である。
▶午前37
病室で読書をする際に適した照度はどれか。
- 100ルクス
- 300ルクス
- 500ルクス
- 1,000ルクス
② 300ルクス
保健医療施設の照度は日本産業標準調査会のJIS規格により定められており、病室は全般100ルクスであり、ベッドの読書は300ルクスとしている。
▶午前38
成人男性への膀胱留置カテーテルの挿入で適切なのはどれか。
- 挿入時は腹圧をかけるように促す。
- カテーテルを挿入する長さの目安は12〜14cmである。
- 尿の流出の開始と同時に固定用バルーンを膨らませる。
- 陰茎を頭側に向け、カテーテルを下腹部に固定する。
④ 陰茎を頭側に向け、カテーテルを下腹部に固定する。
膀胱留置カテーテルは排尿が困難な場合に挿入・留置されるもので、男性では陰嚢・陰茎を圧迫しないよう、陰茎を上に向けて下腹部に固定する(女性は大腿内側に固定)。
×① 挿入時は腹圧をかけるように促す。
カテーテルが挿入しやすいように、口呼吸などで腹圧を下げて尿道括約筋を弛緩させるようにする。
×② カテーテルを挿入する長さの目安は12~14cmである。
尿道よりも少し長い18~20cm挿入する。
×③ 尿の流出の開始と同時に固定用バルーンを膨らませる。
尿の流出を確認後、膀胱に到達してから滅菌蒸留水を用いて固定用バルーンを膨らませる。
▶午前39
排痰を促す目的で行うのはどれか。
- タッチング
- スクイージング
- 漸進的筋弛緩法
- 持続的気道陽圧〈CPAP〉療法
② スクイージング
スクイージングは排痰促進法の一つであり、患者の呼気に合わせて胸郭を絞る(squeeze)ように圧迫するものである。
▶午前40
鼻中隔前方からの出血への対応で正しいのはどれか。
- 仰臥位にする。
- Bellocq〈ベロック〉タンポンを挿入する。
- Kiesselbach〈キーゼルバッハ〉部位を圧迫する。
- 咽頭に流れてきた血液は飲み込むよう説明する。
③ Kiesselbach〈キーゼルバッハ〉部位を圧迫する。
鼻出血(鼻血)は、鼻内部を左右に仕切る鼻中隔の前方(キーゼルバッハ部位)からの出血が多くを占めており、止血には鼻翼(小鼻)をつまむ形で当部位を圧迫する。
×① 仰臥位にする。
×④ 咽頭に流れてきた血液は飲み込むよう説明する。
血液を飲み込むと嘔吐や窒息のおそれがあるため、鼻血が咽頭に流れにくい前屈みの姿勢をとり、流れてきた場合は吐き出すようにする。
×② Bellocq〈ベロック〉タンポンを挿入する。
ベロックタンポンは鼻腔後方からの激しい出血に用いられる。
▶午前41
成人のがん患者が痛みの程度を数値で回答するスケールはどれか。
- フェイススケール
- NRS
- VAS
- VRS
② NRS
NRS(Numerical Rating Scale)は、患者の痛みを評価する指標として、0(痛みなし)から10(想像できる最大の痛み)までを数値で回答するスケールである。
×① フェイススケール
フェイススケールは痛みの程度を6段階に分けた表情を指し示すもので、3歳以降の小児等に用いられる。
×③ VAS
VAS(Visual Analogue Scale)は、横に引いた線の中で左端(痛みなし)から右端(想像できる最大の痛み)までを視覚的・アナログに回答するスケールである。
×④ VRS
VRS (Verbal Rating Scale)は、0(痛くない)、1(少し痛む)、2(かなり痛む)、3(耐えられない程痛む)の言語的な4段階で回答するスケールである。
▶午前42
肝切除術後3日の患者のドレーンから黄褐色の排液がみられた。
考えられる原因はどれか。
- 黄疸
- 出血
- 腹水
- 胆汁漏
④ 胆汁漏
肝切除術の主要な合併症として、肝臓の切除面から胆汁が腹腔内に漏れ出す胆汁漏があり、漏れ出た胆汁を体外に排出するためのドレーンを一定期間留置する必要がある。黄褐色の排液は胆汁漏の特徴である。
▶午前43
減感作療法を受ける患者への説明で適切なのはどれか。
- 「治療期間は1か月です」
- 「静脈内注射でアレルゲンを投与します」
- 「治療後はアレルゲンを気にせず生活できます」
- 「投与後30分はアナフィラキシー症状を観察します」
④ 「投与後30分はアナフィラキシー症状を観察します」
減感作療法とは、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を徐々に継続投与することで、耐性を高めて過敏症を抑える根治療法である。重大な副作用として急性過敏反応であるアナフィラキシーショックがあり、投与後は注意深い観察が必要となる。
×① 「治療期間は1か月です」
効果の発現に時間がかかり、治療期間は数年間に及ぶ。
×② 「静脈内注射でアレルゲンを投与します」
皮下注射または舌下免疫療法により投与される。
×③ 「治療後はアレルゲンを気にせず生活できます」
治療後も効果が減弱することがある。
▶午前44
尋常性乾癬の患者への説明で正しいのはどれか。
- 患部に日光を当てない。
- 搔痒感があるときは患部を温める。
- 機械的刺激が加わらないよう患部を覆う。
- 落屑が多いときは蛋白質の摂取を減らす。
③ 機械的刺激が加わらないよう患部を覆う。
乾癬とは皮膚と関節に炎症を繰り返す慢性疾患で、患者の多くは紅斑、肥厚、鱗屑を症状とする尋常性乾癬である。外部からの機械的な刺激により症状が出現・悪化するため、摩擦等を避けて患部を覆うことが適している。
×① 患部に日光を当てない。
日光に含まれる紫外線が症状緩和に効果的であるため、適度な日光浴が適している。
×② 搔痒感があるときは患部を温める。
痛痒感がある場合は患部を冷やすことで鎮めることができる。
×④ 落屑が多いときは蛋白質の摂取を減らす。
乾癬の発症に関わる環境因子として不規則な食生活や肥満などがあり、食事としては脂質の摂取を抑えることが適している。
▶午前45
喉頭摘出および気管孔造設術を受けた患者にみられるのはどれか。
- 難聴
- 嗅覚低下
- 咀嚼困難
- 誤嚥
② 嗅覚低下
咽頭癌の進行により行われる喉頭摘出では、喉頭切除後、気道と食道を完全に分離して、咽頭は食道に、頸部に造影した気管孔は気管・肺に直接つなぐ。通常の鼻呼吸ができなくなるため、嗅覚が低下する。
×① 難聴
×③ 咀嚼困難
通常、咀嚼機能や聴覚機能に影響は出ない。
×④ 誤嚥
気道と食道の分離により、食事が誤って気道に入る誤嚥は起きない。
▶午前46
自助具を図に示す。
関節リウマチによって肩関節に痛みがある患者の関節への負担を軽減する自助具で適切なのはどれか。

② 長柄ブラシ
関節リウマチにより肩関節の動きに制限があるため、腕を上げずにヘアケアができる長柄ブラシが自助具として適している。そのほかは手首や手指の関節に痛みが生じている場合に有用である。
▶午前47
Aさん(47歳、男性、会社員)は尿管結石による疝痛発作で入院した。入院翌日、自然に排石され、疼痛は消失したものの、結石が残存している。入院前は、ほぼ毎日、飲酒を伴う外食をしていた。
Aさんへの退院指導で適切なのはどれか。
- 「シュウ酸を多く含む食品を摂取しましょう」
- 「1日2L程度の水分を摂取しましょう」
- 「排石までは安静にしましょう」
- 「飲酒量に制限はありません」
② 「1日2L程度の水分を摂取しましょう」
尿管結石症は、尿路に結石が生じて疝痛発作等が現れるもので、その自然排石を促して再発を防止するに当たり、1日2L程度の水分摂取が望ましい。
×① 「シュウ酸を多く含む食品を摂取しましょう」
結石の主な原因としてシュウ酸の過剰があり、ほうれん草などシュウ酸を多く含む食品を摂取しすぎないようにする必要がある。
×③ 「排石までは安静にしましょう」
安静時に骨からカルシウムが溶け出し、尿中にカルシウムが多量に排出されて結石の原因となるおそれがある。Aさんは結石が残存しているが疼痛は消失しており、排石を促すためにも適度な有酸素運動が適している。
×④ 「飲酒量に制限はありません」
高尿酸血症を原因とする尿酸結石を防止するため、尿酸値を上げる飲酒の制限が適している。
▶午前48
マンモグラフィを受ける成人女性への説明で適切なのはどれか。
- 「仰臥位で行います」
- 「検査前は絶食です」
- 「造影剤を使います」
- 「二方向から撮影します」
④ 「二方向から撮影します」
マンモグラフィは乳房専用のX線撮影をいい、乳房を器具で挟んで内外斜位方向と頭尾方向の2方向から撮影する。
×① 「仰臥位で行います」
基本的に立位で、乳房を撮影台の上に乗せて行う。立位が難しい場合は座位も可能である。
×② 「検査前は絶食です」
検査前の食事制限は不要である。
×③ 「造影剤を使います」
造影剤は乳癌の転移を調べる際のMRI検査等で用いる。
▶午前49
Aさん(86歳、女性)は、生まれ育った地域で、近所に住む友人と交流しながら1人で暮らしていた。買い物へ行く途中に転倒し、腰椎圧迫骨折で入院治療を受けた。退院後は他県に住む長女夫婦と同居している。暮らし始めて間もなく、Aさんは「私はここで暮らして、新しい友人ができるかしら」と長女に訴えるようになり、徐々に口数が少なくなった。
このときのAさんの状況はどれか。
- 閉じこもり
- 廃用症候群
- セルフ・ネグレクト
- リロケーションダメージ
④ リロケーションダメージ
リロケーションダメージとは、長年住み慣れた場所から転居するなど、急激な環境変化によって生じるストレスから心身の不調を来した状態をいう。高齢者に多く、Aさんは口数が少なくなるなど抑うつ症状がみられる。
×① 閉じこもり
閉じこもり(症候群)とは、寝たきりではないが、外出せずに1日のほとんどを家の中で過ごしている状態をいう。環境の変化に伴いAさんに起こりうるが、現時点では当たらない。
×② 廃用症候群
廃用症候群とは、活動性の低下により筋力の低下や筋萎縮、起立性低血圧、食欲低下など二次的に身体機能が低下するものである。上記、閉じこもりなどから起こりうるが、現時点では当たらない。
×③ セルフ・ネグレクト
セルフ・ネグレクトとは、自ら介護・医療サービスを拒否するなどにより社会から孤立し、生活行為や心身の健康維持ができなくなっている状態をいう。
▶午前50
高齢者の歩行時につまずきが見られる場合、筋力低下が考えられる筋肉はどれか。
- 大殿筋
- 前脛骨筋
- 下腿三頭筋
- 大腿四頭筋
② 前脛骨筋
前脛骨筋はすねの前外側にある筋肉で、つま先を上げるといった足関節の背屈運動を担う。そのため、前脛骨筋の筋力低下によりつま先が上がりきらず、歩行時につまずきが生じやすくなる。
▶午前51
高齢者の医療の確保に関する法律の内容で正しいのはどれか。
- 医療の給付は市町村が行う。
- 高齢者は一律3割の医療費を自己負担する。
- 40歳以上の被保険者と被扶養者にがん検診を行う。
- 後期高齢者の医療給付の内容は国民健康保険と同じである。
④ 後期高齢者の医療給付の内容は国民健康保険と同じである。
高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、原則75歳以上の者は後期高齢者医療制度の被保険者となる。被用者保険や国民健康保険など医療保険の種類に関わらず、医療給付の内容は同じである。
×① 医療の給付は市町村が行う。
医療の給付は保健医療機関(病院、診療所等)が行う。
×② 高齢者は一律3割の医療費を自己負担する。
75歳以上の後期高齢者では、原則1割(所得により2割または3割)の医療費を自己負担する。
×③ 40歳以上の被保険者と被扶養者にがん検診を行う。
健康増進法に基づき、市町村は健康増進事業としてがん検診を行う(対象年齢は検診の種類による)。なお、高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、40~74歳の被保険者・被扶養者に対して行うものは特定健康診査である。
*第4編2章 3.3〕後期高齢者医療制度 p211~212
▶午前52
高齢者のコミュニケーション障害の要因と状態の組合せで正しいのはどれか。
- 歯牙の欠損――言葉が出てこない。
- 耳垢の蓄積――音が小さく聞こえる。
- 想起能力の低下――相手の表情が読み取れない。
- 語音弁別能の低下――はっきり発音できない。
② 耳垢の蓄積――音が小さく聞こえる。
高齢者は外耳道の自浄作用の低下により、耳垢を排出する能力が低下して蓄積しやすく、音を聞き取りづらくなる。
▶午前53
Aさん(92歳、女性)は重度の障害のため体を動かすことができないが、表情などで意思表示はできる。Aさんは食べることが好きで「最期まで口から食べたい」と言っていた。最近は誤嚥性肺炎で入退院を繰り返しており、現在は入院中で終末期である。同居している家族は積極的な治療をしないことを希望し、自宅でAさんを看取ることを決めた。
家族への退院時の指導で適切なのはどれか。
- 「24時間付き添ってあげましょう」
- 「オムツの重さで尿量を測定しましょう」
- 「Aさんの息が苦しそうになったら救急車を呼びましょう」
- 「Aさんが食べたいと望めば、口から食べさせてあげましょう」
④ 「Aさんが食べたいと望めば、口から食べさせてあげましょう」
在宅で積極的な治療を望まない終末期患者家族の意思や自己決定を尊重して、QOL(生活の質)を維持するための痛み緩和などの対処の上で、行動や食事の制限は可能な限り行わない。
▶午前54
Bowlby〈ボウルビィ〉が提唱したアタッチメントの記述で正しいのはどれか。
- 人見知りは6、7か月の乳児に出現する。
- 安全基地は家の中での子どもの居場所のことである。
- 子どもと不特定の他者との間に築かれる情緒的な結びつきである。
- 愛着対象との分離で生じる子どもの行動の第一段階は「絶望の段階」である。
① 人見知りは6、7か月の乳児に出現する。
ボウルビイが提唱したアタッチメント(愛着)理論では、生後6~8か月ころから身近な家族等の顔を見分け、母親など養育者等(安全基地)と応答的な愛着関係がみられるようになり、離されることへの分離不安や、知らない相手には人見知りがはじまるとしている。
▶午前55
出生体重3,020gの正期産児。
新生児期に最もチアノーゼを生じやすい先天性心疾患はどれか。
- 動脈管開存症
- 心室中隔欠損症
- 心房中隔欠損症
- Fallot〈ファロー〉四徴症
④ Fallot〈ファロー〉四徴症
ファロー四徴症とは、「心室中隔欠損」「肺動脈狭窄」「大動脈騎乗」「右室肥大」の4特徴を持つ先天性心疾患のことで、血中の酸素不足により皮膚や粘膜が青紫色に変色するチアノーゼが最も生じやすい。
▶午前56
子どもに医療処置を行う際、看護師が行うディストラクションはどれか。
- 処置後に子どものがんばりを認める。
- 人形を用いて子どもに処置を説明する。
- 子どもの対処行動のパターンを把握する。
- 子どもの注意を処置ではなく他のものに向ける。
④ 子どもの注意を処置ではなく他のものに向ける。
ディストラクションとは痛みから気をそらすことをいい、幼児等に医療処置を行う際には説明(プレパレーション)よりも効果的であることがある。
▶午前57
乳児に対する一次救命処置〈BLS〉で正しいのはどれか。
- 脈拍の確認は橈骨動脈の触知で行う。
- 意識レベルは足底を叩きながら反応を確認する。
- 救助者が2名いる場合、胸骨圧迫と人工呼吸の回数の比率は30:2である。
- 胸骨圧迫の速さ(回数)は130〜150回/分である。
② 意識レベルは足底を叩きながら反応を確認する。
1歳未満の乳児に対する一次救命処置(BLS)では、まず足底を叩くなどの刺激を与えて反応を確認する。
×① 脈拍の確認は橈骨動脈の触知で行う。
乳児の脈拍確認は上腕動脈の触知で行う。
×③ 救助者が2名いる場合、胸骨圧迫と人工呼吸の回数の比率は30:2である。
救助者が1名の場合は成人と同様に30:2の比率による処置を行うが、救助者が2名いる場合は15:2の比率で行う。
×④ 胸骨圧迫の速さ(回数)は130〜150回/分である。
成人と同様に、胸骨圧迫は100~120回/分の速さで行う。
▶午前58
児童虐待の防止等に関する法律〈児童虐待防止法〉に基づいて行う通告で正しいのはどれか。
- 警察に通告する。
- 守秘義務の遵守が優先される。
- 通告にあたっては児童自身の意思を尊重することが規定されている。
- 児童が同居している家庭における配偶者に対する暴力は通告の対象となる。
④ 児童が同居している家庭における配偶者に対する暴力は通告の対象となる。
児童虐待防止法では、虐待を受けたと思われる児童を発見した者に通告義務を課している。児童虐待のうち心理的虐待については、児童に対する著しい暴言や拒絶的な対応のほか、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力など、児童に著しい心理的外傷を与える言動と定義している。
×① 警察に通告する。
虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、福祉事務所もしくは児童相談所に通告しなければならない。
×② 守秘義務の遵守が優先される。
保健師助産師看護師法に定める看護師の守秘義務などの規定によって、通告義務を遵守することが妨げられるものではない(通告義務の遵守が優先される)。
×③ 通告にあたっては児童自身の意思を尊重することが規定されている。
児童虐待防止法では、しつけに当たって児童の人格を尊重することなどが規定されているが、通告に当たって児童自身の意思を尊重する旨の規定はない。
*第5編2章 3.4〕児童虐待防止対策 p237~238
▶午前59
法律で定められている育児時間に関する説明で正しいのはどれか。
- 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律〈育児・介護休業法〉に規定されている。
- 請求できるのは子が1歳6か月に達するまでである。
- 父親と母親の両方が取得できる。
- 1日に2回請求できる。
④ 1日に2回請求できる。
労働基準法に基づき、生後満1年に満たない生児を育てる女性は、休憩時間のほかに1日2回、少なくとも各30分の育児時間を請求できる。
*第5編2章 3.6〕妊産婦等の就業 p238~239
▶午前60
日本の人工妊娠中絶で正しいのはどれか。
- 配偶者の同意が必須である。
- 妊娠10週以降は死産の届出が必要である。
- 実施が可能なのは妊娠22週未満の場合である。
- 実施率は母の年齢が20~24歳よりも20歳未満の方が高い。
③ 実施が可能なのは妊娠22週未満の場合である。
母体保護法に定める人工妊娠中絶とは、胎児が母体外で生命を保続することのできない時期(通常妊娠満22週未満)に、人工的に母体外に排出することをいう。
×① 配偶者の同意が必須である。
指定医師は本人および配偶者の同意を得て人工妊娠中絶を行うことができる。ただし、配偶者が知れないときや意思表示ができないとき、または妊娠後に配偶者がなくなったときには本人の同意だけで足りる。
×② 妊娠10週以降は死産の届出が必要である。
死産の届出に関する規程に基づき、妊娠満12週以後の死児の出産について、死産の届出が必要である。
×④ 実施率は母の年齢が20~24歳よりも20歳未満の方が高い。
令和4年度(2022年度)の人工妊娠中絶件数は12.3万件で、20~24歳が3.1万件と最も多く、20歳未満は1.0万件となっている。
*第2編2章 5.死産 p64~66
*第3編2章 1.8〕(4)家族計画 p103
▶午前61
自然流産を連続( )回以上繰り返した状態を習慣流産という。
( )に当てはまるのはどれか。
- 2
- 3
- 4
- 5
② 3
妊娠22週未満の胎児が母体から娩出されることを流産といい、流産を2回連続で繰り返した状態を反復流産、3回以上繰り返した状態を習慣流産という。
▶午前62
正常新生児の卵円孔の機能的閉鎖に関する説明で正しいのはどれか。
- 動脈血酸素分圧〈PaO2〉の上昇によって閉鎖する。
- 肺血流の増加によって起こる。
- 出生から数週後に閉鎖する。
- 動脈管の閉鎖が要因となる。
② 肺血流の増加によって起こる。
胎盤が肺の役割を果たしている胎児期には、心臓上部の右心房と左心房の間の壁(心房中隔)に卵円孔があり、右心房に入った血液が右心室を通して肺に向かわずに、そのまま左心房に流れ込む。卵円孔は、出生後数か月以内に、肺循環の開始とともに肺血流が増加し、左心房圧が上昇することで多くは自然と閉鎖する。
▶午前63
自殺対策基本法について正しいのはどれか。
- 自殺対策強化月間を設けることを定めている。
- 国の責務としてゲートキーパーの養成を定めている。
- 民間団体による地域自殺対策推進センターの設置を定めている。
- 事業主が職場のハラスメントの防止に必要な措置を講じることを義務付けている。
① 自殺対策強化月間を設けることを定めている。
自殺対策基本法に基づき、国民に広く自殺対策の重要性に関する理解と関心を深めるため、自殺予防週間(9月10日~16日)、自殺対策強化月間(3月)を設けている。
×② 国の責務としてゲートキーパーの養成を定めている。
ゲートキーパーとは、自殺の危険性に対して適切な対応(気づき、声をかけ、話しを聞いて、必要な支援につなげ、見守る)ができる人をいう。自殺対策基本法に定めはないが、同法に基づき国が策定する自殺総合対策大綱にその養成が掲げられている。
×③ 民間団体による地域自殺対策推進センターの設置を定めている。
地域自殺対策推進センターは、都道府県・指定都市が設置し、市区町村の地域自殺対策計画の策定・進捗管理、検証などを支援している。自殺対策基本法に定めはない。
×④ 事業主が職場のハラスメントの防止に必要な措置を講じることを義務付けている。
当義務は、令和2年(2020年)に成立した「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(労働施策総合推進法)に規定されている。
*第3編2章 6.自殺対策 p121~122
▶午前64
患者とその家族や医療者が患者にとって望ましい治療を探り、お互いが納得する治療を選択できるようにしていくのはどれか。
- 心理教育
- 共同意思決定
- ストレングス
- アドヒアランス
② 共同意思決定
×① 心理教育
心理教育は、患者や家族が障害についての正しい知識や情報、対処方法を習得することによって主体的に療養生活を営めるようにするための援助で、精神障害の再発防止等に効果的である。
×③ ストレングス
ストレングスは患者が持つ強み・力をいい、そこに着目して生活や仕事、地域社会などへの参加を主体的に選択するリカバリが実施される。
×④ アドヒアランス
アドヒアランスは患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定の下で治療を受けることをいう。
▶午前65
Aさん(30歳、男性)は、昼間の過剰な眠気を主訴に来院した。会社の会議ではいつも寝てしまい、居眠り運転で交通事故を起こしたこともある。笑ったときに脱力してしまうことや、入眠時に誰もいないのに人影が見えたり、睡眠と覚醒の移行期に体を動かせなくなることがある。
最も考えられる疾患はどれか。
- ナルコレプシー
- レム睡眠行動障害
- 睡眠時無呼吸症候群
- レストレスレッグス症候群〈むずむず脚症候群〉
① ナルコレプシー
ナルコレプシーは日中突然の強い眠気をもたらす過眠症であり、特徴的な症状として、驚いたときや笑ったときに脱力する、入眠時に幻覚や金縛りを体験することが挙げられる。
×② レム睡眠行動障害
レム睡眠は骨格筋活動の低下を特徴とするが、レム睡眠行動障害により骨格筋活動が現れ、眠りながら大声を上げる、暴れるなどの動作が出現する。
×③ 睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に何度も呼吸が止まり、低酸素状態が生じるもので、いびきや起床時の頭痛・めまい、日中の眠気などの症状を起こす。
×④ レストレスレッグス症候群〈むずむず脚症候群〉
レストレスレッグス症候群〈むずむず脚症候群〉は、主に下肢にむずむず、ぴりぴりなどの異常な感覚が出現するもので、特に夜間にかけて症状が現れることが多いため、不眠などの睡眠障害につながりやすい。
▶午前66
Aさん(43歳、男性)は統合失調症で通院していたが、服薬中断によって幻覚妄想状態が続いていた。ある日、Aさんの父親に対する被害妄想が強くなり、父親へ殴りかかろうとしたところを母親に制止された。その後、Aさんは母親に促されて精神科病院を受診し「薬は飲みたくないけど、父親が嫌がらせをするので、すぐに入院して家から離れたい」と訴えた。母親も入院治療を強く希望している。
Aさんの入院形態はどれか。
- 応急入院
- 措置入院
- 任意入院
- 医療保護入院
③ 任意入院
任意入院は精神障害者自身の同意に基づく入院制度である。Aさんは「すぐに入院して家から離れたい」と入院の希望を持っており、Aさん自身の同意に基づく任意入院が適している。
×① 応急入院
×④ 医療保護入院
任意入院が行われる状態にない者については、家族等の同意に基づく医療保護入院、家族等の同意が得られないが急速を要する場合、72時間以内に限る応急入院を行うことができる。Aさんは任意入院が可能であるため、当たらない。
×② 措置入院
2人以上の指定医の診察を要件に、入院させなければ自傷他害のおそれがある精神障害者については措置入院を行うことができる。Aさんには当たらない。
*第3編2章 4.3〕精神科の入院制度 p112~114
▶午前67
Aさん(55歳、男性)は筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉で、経口摂取と胃瘻による経管栄養を併用し、在宅療養することになった。
Aさんと家族介護者への指導内容で適切なのはどれか。
- 水分は経口による摂取とする。
- 経口摂取中は頸部前屈位とする。
- 経管栄養剤以外の注入を禁止する。
- 注入時間に合わせて生活パターンを変更する。
② 経口摂取中は頸部前屈位とする。
筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉は、随意筋を支配する運動ニューロン(上位・下位)が変性・消失していく疾患で、嚥下障害を伴うため誤嚥が生じやすい。水分摂取等は胃瘻から行い、経口摂取を行う際には食事が気管に入りやすくなる頸部後屈ではなく、頸部前屈の体位が望ましい。
▶午前68改題
令和4年(2022年)の介護サービス施設・事業所調査において、介護保険制度による訪問看護の利用者の特徴で正しいのはどれか。
- 要介護5の利用者が最も多い。
- 傷病別では悪性新生物が最も多い。
- 医療保険制度による利用者よりも多い。
- 要支援1、2の利用者は全体の利用者の4割を占める。
③ 医療保険制度による利用者よりも多い。
原則として要介護者等には介護保険から、それ以外の者には医療保険から訪問看護の給付が行われる。令和5年(2023年)の訪問看護の利用者のうち、介護保険法によるものが74.4万人、健康保険法等によるものが48.4万人となっている。
×① 要介護5の利用者が最も多い。
要介護度別にみると、要介護2の利用者が15.9万人と最も多く、そこから要介護(要支援)度が上がる・下がるにつれて減少する。
×② 傷病別では悪性新生物が最も多い。
傷病分類別にみると、循環器系の疾患が26.9万人(うち、脳血管疾患12.4万人)と最も多い。
×④ 要支援1、2の利用者は全体の利用者の4割を占める。
要支援1、2の利用者は、全体の利用者の1割弱である。
*第4編1章 3.2〕訪問看護 p170~172
▶午前69
Aさん(82歳、女性、要介護1)は1人で暮らしている。認知症と診断され、週1回の訪問看護を利用することになった。訪問看護師は、Aさんが調理できなくなったので、配食サービスを導入したと介護支援専門員から情報を得た。初回訪問時に、Aさんは季節外れの服を着ており、今日の日付を答えられなかった。トイレで排泄できている。
訪問看護師が収集した情報のうち、手段的日常生活動作〈IADL〉はどれか。
- 調理ができない。
- 季節外れの服を着ている。
- トイレで排泄できている。
- 今日の日付を答えられない。
① 調理ができない。
手段的日常生活動作〈IADL〉は、食事、移動、排泄、入浴、更衣、整容などの基本的日常生活動作〈BADL〉よりも複雑な動作・判断が求められる応用的な動作をいい、買い物、料理、洗濯、電話、服薬管理、金銭管理、乗り物の利用等を評価項目としている。
▶午前70
Aさん(90歳、男性)は要介護3となり、長男(60歳)と同居することになった。長男は「親を介護することがこんなに大変だとは思わなかった。親が衰えてつらいと感じるのは自分だけだろうか」と訪問看護師に話した。
訪問看護師の対応で最も適切なのはどれか。
- 高齢者の介護方法について説明する。
- 訪問看護の時間中に長男に外出を促す。
- Aさんの短期入所サービスの利用を勧める。
- 親の介護をしている介護者の了解を得て長男に紹介する。
④ 親の介護をしている介護者の了解を得て長男に紹介する。
親の衰えた姿がつらいと感じるのは自分だけかと孤立感を覚えている長男に対して、同様に親の介護をする介護者を紹介し、当事者同士話すことがその解消に適切である。
▶午前71
看護師等の人材確保の促進に関する法律で規定されているのはどれか。
- 人員配置基準に基づき看護師を配置する。
- 看護師等の資質の向上のための研修等を行う。
- 新入職員を雇い入れるときに健康診断を行う。
- 年5回の年次有給休暇を取得させることが義務付けられている。
② 看護師等の資質の向上のための研修等を行う。
看護師等の人材確保の促進に関する法律により、国・地方公共団体には財政・金融上の措置、病院等の開設者等には処遇改善・研修等の実施、看護師等には能力の開発・向上、国民には関心・理解などの責務を定めている。
×① 人員配置基準に基づき看護師を配置する。
医療法に基づき、病床種別ごとに看護師等の人員配置基準を定めている。
×③ 新入職員を雇い入れるときに健康診断を行う。
労働安全衛生法に基づき、雇い入れ時等の一般健康診断を定めている。
×④ 年5回の年次有給休暇を取得させることが義務付けられている。
労働基準法に基づき、年5日の年次有給休暇を労働者に取得させることが使用者の義務と定めている。
*第4編1章 4.4〕看護職員等 p193~197
▶午前72
A君(4歳、男児)は地震による災害のため体育館に両親と避難し、2週後に仮設住宅に移動した。その後1か月経過したころから、A君はわざと机や椅子をガタガタ揺らしながら「地震だ、逃げろ」などと騒いで遊んでいた。母親は仮設住宅に巡回に来ていた看護師に「Aの遊びにどのように対応したらよいでしょうか」と相談した。
看護師の母親への説明で適切なのはどれか。
- 「すぐに児童精神科の医師の診察を受けましょう」
- 「危険な遊びにエスカレートしないよう、やめさせましょう」
- 「避難できたから安心だね、と声をかけながら見守りましょう」
- 「A君に家の手伝いをしてもらい何か役割を担ってもらいましょう」
③ 「避難できたから安心だね、と声をかけながら見守りましょう」
中長期にわたる仮設住宅での生活において、子どもは心理的不安から影響を受けやすく、日常とは異なる発言・行動を自然と示すことが多い。それらを否定せずスキンシップの時間を増やして、安心感を与えながら子どもに寄り添うことが適切である。
▶午前73
発災直後、自家用車に泊まり生活を始めた避難者に発生しやすいのはどれか。
- 生活不活発病
- 静脈血栓塞栓症
- 圧挫症候群〈クラッシュ症候群〉
- 心的外傷後ストレス障害〈PTSD〉
② 静脈血栓塞栓症
静脈血栓塞栓症は、主に下肢の静脈に血栓ができ(深部静脈血栓症)、肺に到達して肺動脈が詰まる(肺塞栓症)ものをいう。長時間の同一姿勢が原因となるため、災害時に車中泊等の避難生活で発生しやすくなる。
×① 生活不活発病
生活不活発病(廃用症候群)は、活動性の低下により二次的に身体機能が低下した状態をいう。発災後中長期にわたる避難所等の生活で生じやすい。
×③ 圧挫症候群〈クラッシュ症候群〉
圧挫症候群〈クラッシュ症候群〉は、災害時等に長時間重量物に挟まれた後に生じる、高カリウム血症や高ミオグロビン血症をいう。
×④ 心的外傷後ストレス障害〈PTSD〉
PTSDは発災後1か月以降の中長期以降に生じやすい。発災直後に生じやすい精神疾患として急性ストレス障害がある。
▶午前74
Aちゃん(3歳)は、両親(外国籍)と3人で暮らしている。来日して1か月が経った。2日前に急性胃腸炎で個室に入院した。症状が改善し、経口での食事を再開することになった。看護師が訪室すると、香辛料の香りが部屋に充満しており、唐辛子の入った肉などのたくさんの料理が並べられていた。母親は看護師に気付くと「Aは日本食には慣れておらず、食べられないので家で作ってきました」と話した。
このときの母親への看護師の対応で適切なのはどれか。
- 普段のAちゃんの食事の内容を尋ねる。
- 栄養指導を受けるまで食事の持ち込みはできないと説明する。
- たくさん食べさせてAちゃんの体力を回復させるよう伝える。
- 病院食を完食するまで、持ち込み食は食べさせないよう伝える。
① 普段のAちゃんの食事の内容を尋ねる。
外国籍である両親との文化の違いに配慮しつつ、香辛料等の刺激物は急性胃腸炎の再発因子となりうるため、Aちゃんが日本食を食べられないとの母親の話をより詳しく聞き取り、栄養管理部等と相談して適切な食事療法を図ることが適切である。
▶午前75
声帯の運動や緊張度を調節する神経を分枝するのはどれか。
- 三叉神経
- 顔面神経
- 舌咽神経
- 迷走神経
- 舌下神経
④ 迷走神経
迷走神経から枝分かれする反回神経は声帯の運動など司り、例えば甲状腺手術等に伴う反回神経麻痺では嗄声(かすれ声)などの症状が現れる。
▶午前76
乳房について正しいのはどれか。
- 月経前に乳房が張りやすいのはエストロゲンの影響である。
- 乳腺周囲の平滑筋はオキシトシンによって弛緩する。
- 乳腺はアポクリン汗腺が変化したものである。
- 乳房は褐色脂肪組織である。
- 乳管は乳汁を産生する。
③ 乳腺はアポクリン汗腺が変化したものである。
汗腺には全身に分布するエクリン腺と、乳房や腋窩、外陰部など限られた部位に分布するアポクリン腺があり、乳汁を産生する乳腺は後者から派生したものとされる。
×① 月経前に乳房が張りやすいのはエストロゲンの影響である。
乳房緊満感は、排卵後から月経前の分泌期(黄体期)に、プロゲステロンの増加により生じやすい。
×② 乳腺周囲の平滑筋はオキシトシンによって弛緩する。
オキシトシンは授乳時に児の吸啜刺激で分泌が促進され、乳腺周囲の平滑筋を収縮させることによって母乳の放出を促す。
×④ 乳房は褐色脂肪組織である。
褐色脂肪組織は脂肪を燃焼して熱を産生する脂肪組織で、鎖骨付近など限られた場所に分布する。乳房は中性脂肪を蓄積する白色脂肪組織である。
×⑤ 乳管は乳汁を産生する。
乳管は、乳腺で産生された乳汁の通り道である。
▶午前77
小脳の機能はどれか。
- 睡眠と覚醒
- 姿勢反射の中枢
- 振動感覚の中継
- 随意運動の制御
- 下行性の疼痛抑制
④ 随意運動の制御
小脳は姿勢や運動の制御など運動調節機能をつかさどっており、小脳失調では姿勢保持の困難や運動失調がみられる。なお、②姿勢反射の中枢は中脳にある。
▶午前78
出生後の成長で、最も早く成人の大きさに達するのはどれか。
- 脳
- 肺
- 肝臓
- 心臓
- 脊柱
① 脳
脳重量などの神経系は乳幼児期に急速に発達し、幼児後期の5〜6歳ころには成人の90%に達する(スカモンの成長曲線)。そのほか臓器の重量は身長の発達に伴い、成人の大きさに近づいていく。
▶午前79
大動脈解離で真腔と偽腔(解離腔)が形成される。
偽腔が形成される大動脈壁の部位はどれか。
- 外膜
- 外膜と中膜の間
- 中膜
- 中膜と内膜の間
- 内膜
③ 中膜
大動脈は内膜、中膜、外膜の3層に分かれており、大動脈解離は本来血液が流れている内膜(真腔)の裂け目から血液が中膜に流れ込み、解離して偽腔が形成される。
▶午前80
甲状腺クリーゼについて正しいのはどれか。
- 低体温となる。
- 致死率は2%以下である。
- 誘因として感染症が多い。
- 初期症状として徐脈を認める。
- 甲状腺ホルモンの欠乏症である。
③ 誘因として感染症が多い。
甲状腺クリーゼとは、代謝を促進する甲状腺ホルモンの過剰により引き起こされる多臓器不全など危機的な状態をいい、甲状腺ホルモンのコントロール不良の患者が主に感染症などの強いストレスを受けることで生じる。
×① 低体温となる。
38℃以上の高体温がみられる。
×② 致死率は2%以下である。
致死率は10%以上と報告されている。
×④ 初期症状として徐脈を認める。
甲状腺ホルモンの分泌亢進により頻脈などの不整脈が生じる。
×⑤ 甲状腺ホルモンの欠乏症である。
甲状腺ホルモンの低下は甲状腺機能低下症であり、低体温症状などを引き起こす。
▶午前81
転移性脳腫瘍の原発巣で最も多いのはどれか。
- 胃癌
- 乳癌
- 肺癌
- 大腸癌
- 子宮頸癌
③ 肺癌
脳以外の部位にできた癌が脳に転移したものを転移性脳腫瘍といい、最も頻度の高い原発巣は肺癌で半分以上を占めている。
▶午前82
労働者災害補償保険法に規定されている保険者はどれか。
- 国
- 事業主
- 市町村
- 都道府県
- 健康保険組合
① 国
労働者災害補償保険法に基づき、業務上の事由や通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡などに対して必要な保険給付を行っている。保険者は政府(国)であり、事業に要する費用は原則として事業主が負担する保険料で賄われる。
*第8編 8.労働災害補償と業務上疾病 p306~308
▶午前83
肺結核について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 結核の10%程度である。
- 感染経路は接触感染である。
- 肺アスペルギルス症と同じ原因菌である。
- 二次性の発症は過去の感染の再活性化による。
- DOTS〈Directly Observed Treatment, Short-course〉が推奨される。
④ 二次性の発症は過去の感染の再活性化による。
⑤ DOTS〈Directly Observed Treatment, Short-course〉が推奨される。
④ 結核菌に感染後、すぐに発病する一次結核と、長期にわたり体内に潜伏したのち再び活動を開始して発症する二次結核がある。
⑤ 結核患者の服薬管理を徹底するため、全結核患者(潜在性結核感染症含む)に対する地域DOTS(直接服薬確認)が推奨されている。
×① 結核の10%程度である。
×② 感染経路は接触感染である。
結核は、結核菌による空気感染が感染経路であるため、その多くは肺の内部で結核菌が増殖する肺結核である。
×③ 肺アスペルギルス症と同じ原因菌である。
肺アスペルギルス症の原因菌は真菌(カビ)であり、細菌である結核菌とは異なる。
*第3編3章 3.2〕結核 p129~132
▶午前84
敗血症性ショックについて正しいのはどれか。2つ選べ。
- 血圧は上昇する。
- 血中の乳酸濃度は低下する。
- エンドトキシンが原因である。
- 最重症の臨床像は多臓器不全である。
- コールドショックからウォームショックに移行する。
③ エンドトキシンが原因である。
④ 最重症の臨床像は多臓器不全である。
敗血症は、細菌が産生するエンドトキシン等に起因して重度の全身性の炎症反応や臓器障害を起こしている病態をいい、敗血症性ショックでは急性多臓器不全などにより死亡リスクが非常に高い。
×① 血圧は上昇する。
敗血症ショックでは、蘇生処置にも関わらず低血圧が持続する。
×② 血中の乳酸濃度は低下する。
呼吸不全に伴う低酸素から、血中の乳酸濃度は上昇する。
×⑤ コールドショックからウォームショックに移行する。
敗血症ショック初期には四肢が温かいウォームショックを呈し、低血圧の持続に伴い四肢が冷たくなるコールドショックに移行する。
▶午前85
てんかんについて正しいのはどれか。2つ選べ。
- けいれんと同義である。
- 症候性てんかんは脳内病変を伴う。
- 単純部分発作では意識障害を認める。
- 特発性の全般てんかんは高齢者に多い。
- 脳の神経細胞の発作性電気的興奮によって起こる。
② 症候性てんかんは脳内病変を伴う。
⑤ 脳の神経細胞の発作性電気的興奮によって起こる。
てんかんとは、脳神経細胞の異常な電気活動により、運動障害や感覚障害、自律神経障害、意識障害などの症状をもたらす発作(てんかん発作)を繰り返す状態をいう。発作の原因として、脳の障害や外傷により起こるてんかんを症候性てんかんという。
×① けいれんと同義である。
けいれんは自分の意思とは無関係に筋肉が収縮する運動症状をいい、てんかん発作症状の一つであるが、高熱や低血糖などでも起こりうる。
×③ 単純部分発作では意識障害を認める。
異常な電気活動が脳の一部分に限定されて起こる発作を部分発作といい、意識障害のない単純部分発作と、意識障害のある複雑部分発作に分けられる。
×④ 特発性の全般てんかんは高齢者に多い。
異常な電気活動が大脳内の広範囲に起こるてんかんを全般てんかんといい、発作の原因として明らかな病変が認められない突発性の全般てんかんでは、小児期から青年期に発病することが多い。
▶午前86
エックス線を用いて行う検査はどれか。2つ選べ。
- 脳波検査
- 筋電図検査
- 頭部CT検査
- サーモグラフィ
- 上部消化管造影検査
③ 頭部CT検査
⑤ 上部消化管造影検査
③ 頭部CT検査は、エックス線を用いて頭蓋内部の断層撮影を行う検査である。
⑤ 上部消化管造影検査は、造影剤を服用し、連続してエックス線画像を撮影し、食道や胃の病変を確認する検査である。
×① 脳波検査
脳波検査は、頭皮上に電極を装着し、脳内の電気信号を調べる検査である。
×② 筋電図検査
筋電図検査は、筋肉に電極針を差し、筋肉の収縮等で生じる電気的活動を調べる検査である。
×④ サーモグラフィ
サーモグラフィは、物体から出ている赤外線を検出し、熱の分布を可視化する測定器である。
▶午前87
全身麻酔下で胃全摘出術を受ける患者に対する無気肺の予防法はどれか。2つ選べ。
- 腹帯の装着
- 抗菌薬の使用
- ハフィング法
- 弾性ストッキングの装着
- インセンティブ・スパイロメトリーの使用
③ ハフィング法
⑤ インセンティブ・スパイロメトリーの使用
無気肺は肺胞に空気が行き渡らない状態をいい、胃全摘出術など術後合併症として起こりやすい。速く・強く息を吐いて去痰を促すハフィング法や、呼吸練習器(インセンティブ・スパイロメトリー)を用いた呼吸訓練が、無気肺の予防法として適切である。
▶午前88
肝硬変による肝性脳症で生じるのはどれか。2つ選べ。
- 浮腫
- 異常行動
- くも状血管腫
- 羽ばたき振戦
- メドゥーサの頭
② 異常行動
④ 羽ばたき振戦
肝性脳症は、重度の肝疾患により肝臓の有害物質(アンモニア等)の解毒・分解機能が低下し、血液中に蓄積された有害物質が脳に達して起こる脳機能の低下をいい、異常行動や羽ばたき振戦、意識障害などがその症状である。
▶午前89
高齢者の健康障害の特徴はどれか。2つ選べ。
- 原因を特定しやすい。
- 症候が定型的である。
- 若年者と比較して個人差は少ない。
- 薬物による有害事象が出現しやすい。
- 原疾患とは関連のない老年症候群が発生しやすい。
④ 薬物による有害事象が出現しやすい。
⑤ 原疾患とは関連のない老年症候群が発生しやすい。
④ 高齢者においては、肝臓の代謝機能や腎臓の排泄機能が低下することにより、薬物が体内に多く残り、副作用〈有害事象〉が発生しやすくなる。
⑤ 老年症候群とは加齢に伴う症状・徴候の総称であり、原疾患とは関係のない生理的老化(難聴、夜間頻尿、老視等)が発生しやすい。
▶午前90
薬剤投与に関する重大な医療事故が発生した。
このときの看護師の対応で適切なのはどれか。2つ選べ。
- 患者の状況を確認して安全を確保する。
- 事故発生状況の詳細を看護記録に残す。
- 薬剤投与に使用した物品は直ちに処分する。
- 患者の容態が落ち着いてから上司に報告する。
- 患者および家族に事故状況を説明するのは、原因が判明した後にする。
① 患者の状況を確認して安全を確保する。
② 事故発生状況の詳細を看護記録に残す。
薬物投与に関する重大な医療事故が発生した際の初期対応として、患者の状況を最優先で確認し、必要な安全確保策を行った上で、速やかに患者や家族に説明するとともに、再発防止のために事故発生状況の詳細を記録する。
資料 厚生労働省「第110回保健師国家試験、第107回助産師国家試験、第113回看護師国家試験の問題および正答について」
注 当ページに掲載する解説は、看護師国家試験を解く上での理解しやすさを重視しているため、本来はより専門的・学術的な説明や議論がある部分を一部省略しています。正確な情報を掲載するように努めていますが、特に医療・看護行為や疾病、薬剤等の説明において、その正確性を保証するものではありませんので、学習以外での使用はお控え下さい。
▼第113回看護師国家試験
▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 保健師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 助産師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 医師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 薬剤師国家試験に出る国民衛生の動向