第113回看護師国家試験 午後一般問題
令和6年2月11日(日)に実施された第113回看護師国家試験について、午後問題のうち一般問題の正答と解説を示します。
「国民衛生の動向2024/2025」で内容を解説している問題に関しては、その参照章・ページを示しているので、同書を併用しながらの利用をおすすめします。
▼第113回看護師国家試験
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厚生の指標増刊
国民衛生の動向 2024/2025
発売日:2024.8.27
定価:2,970円(税込)
412頁・B5判
雑誌コード:03854-08
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▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
午後 一般問題
▶午後2(必修除外)
日本人の食事摂取基準(2020年版)に示されている、18~49歳女性(月経あり)の鉄摂取推奨量はどれか。
- 5.5mg/日
- 10.5mg/日
- 15.5mg/日
- 20.5mg/日
② 10.5mg/日
月経のある18~49歳女性では、出血から鉄欠乏性貧血等を起こしやすいため、鉄摂取推奨量は18~49歳男性(7.5mg/日)よりも高い10.5mg/日に設定されている(月経なしの場合は6.5mg/日)。
▶午後11(必修除外)
上行大動脈から分枝するのはどれか。
- 冠状動脈
- 腕頭動脈
- 左総頸動脈
- 左鎖骨下動脈
① 冠状動脈
左心室から送り出された血液が通る大動脈は、上に向かう上行大動脈、下へとカーブする大動脈弓、下に向かう下行大動脈と続く。このうち上行大動脈から分枝する冠状動脈は、心臓に血液を供給している。その他は大動脈弓から分枝する。
▶午後26
交感神経の興奮によって起こる眼の反応はどれか。
- 散瞳
- 流涙
- 明順応
- 対光反射
① 散瞳
瞳孔の散大(散瞳)には交感神経が支配する瞳孔散大筋が、瞳孔の縮小(縮瞳)には副交感神経が支配する瞳孔括約筋が作用している。
▶午後27
Ramsay Hunt〈ラムゼイ・ハント〉症候群は顔面神経麻痺症状を主症状とする。
原因となるウイルスはどれか。
- アデノウイルス
- インフルエンザウイルス
- 水痘帯状疱疹ウイルス
- 単純ヘルペスウイルス
③ 水痘帯状疱疹ウイルス
顔面神経は顔の表情を作る表情筋を支配しており、水痘帯状疱疹ウイルスの感染による末梢性顔面神経麻痺であるラムゼイ・ハント症では、閉眼ができずに眼が乾燥するなどの症状が現れる。
▶午後28
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律〈男女雇用機会均等法〉に規定されている母性保護はどれか。
- 生理日の就業制限
- 産後6週間の就業禁止
- 妊産婦の時間外労働の禁止
- 妊婦健康診査の受診時間の確保
④ 妊婦健康診査の受診時間の確保
男女雇用機会均等法により、妊婦が事業主に妊婦健康診査(母子保健法)を受診する時間の確保を請求できることが規定されている。
×① 生理日の就業制限
労働基準法に基づき、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求した場合には、その者を生理日に就業させることはできない。
×② 産後6週間の就業禁止
労働基準法に基づき、産後6週間を経過しない女性の就業を禁止している。なお、産前6週間は休業を請求した女性を就業させてはならない。
×③ 妊産婦の時間外労働の禁止
労働基準法に基づき、妊産婦の請求による時間外労働・休日労働・深夜業を制限している。なお、請求がなくても就業禁止しているものは妊産婦の危険有害業務である。
*第5編2章 3.6〕妊産婦等の就業 p238~239
▶午後29
保健統計調査と調査項目の組合せで正しいのはどれか。
- 患者調査――受療の状況
- 人口動態調査――転出入
- 国民生活基礎調査――生活習慣
- 国民健康・栄養調査――健康診断の受診状況
① 患者調査――受療の状況
患者調査は3年に1度実施され、全国の医療施設を利用する患者の傷病など、受療状況を把握している。
×② 人口動態調査――転出入
転出・転入の状況は、国勢調査で把握される。
×③ 国民生活基礎調査――生活習慣
生活習慣(食生活、身体活動、休養(睡眠)、飲酒、喫煙等)は、国民健康・栄養調査で把握される。
×④ 国民健康・栄養調査――健康診断の受診状況
健康診断の受診状況は、国民生活基礎調査で把握される。
*第2編4章 2.受療状況 p76~79
▶午後30
医療機関の廃棄物とバイオハザードマークの色の組合せで正しいのはどれか。
- 固体状の放射性廃棄物――黒色
- 注射針などの鋭利な廃棄物――赤色
- 血液などの液状、泥状の廃棄物――黄色
- 血液の付着したガーゼの廃棄物――橙色
④ 血液の付着したガーゼの廃棄物――橙色
医療機関等から生じた感染性廃棄物を収納した容器にはバイオハザードマークを付けることが推奨され、性状に応じてマークの色を分けることが望ましい。血液等が付着したガーゼなど固形状のものは橙色である。
×① 固体状の放射性廃棄物――黒色
放射性廃棄物は感染性廃棄物と異なる処理方法を行い、バイオハザードマークは用いない。
×② 注射針などの鋭利な廃棄物――赤色
注射針など鋭利なものは黄色である。
×③ 血液などの液状、泥状の廃棄物――黄色
血液など液状または泥状のものは赤色である。
*第9編4章 4.2〕感染性廃棄物 p339
▶午後31
がん対策基本法で定められているのはどれか。
- 肝炎ウイルス検査の実施を推進する。
- 受動喫煙のない職場環境を整備する。
- 学校等でのがんに関する教育を推進する。
- がん診療連携拠点病院にがん相談支援センターを設置する。
③ 学校等でのがんに関する教育を推進する。
がん対策基本法の基本的施策として、「がんの予防及び早期発見の推進」「がん医療の均てん化の促進等」「研究の推進等」「がん患者の就労等」「がんに関する教育の推進」の5つが掲げられている。そのほかは、同法に基づき国が策定するがん対策推進基本計画の事項である。
*第3編4章 1.がん対策 p149~152
▶午後32
国際生活機能分類〈ICF〉で「生活機能」の構成要素に含まれるのはどれか。
- 活動
- 疾病
- 能力障害
- 社会的不利
① 活動
国際生活機能分類〈ICF〉は、世界保健機関〈WHO〉が作成した人間の生活機能と障害の分類で、「心身機能・身体構造」「活動」「参加」からなる生活機能と、それらに影響を及ぼす「環境因子」などの背景因子の項目で構成される。
▶午後33
Broca〈ブローカ〉失語のある患者とのコミュニケーションで適切なのはどれか。
- 閉じた質問〈closed question〉を活用する。
- 大きな声で質問する。
- 単語で話しかける。
- 文字盤を用いる。
① 閉じた質問〈closed question〉を活用する。
運動性失語(ブローカ失語)では、会話を理解することはできるが、言いたい言葉がなかなか出てこない喚語困難などが生じやすい。その特性を理解して、「はい」「いいえ」で答えられる質問(closed question〈閉じた質問〉)を活用することが適切である。
▶午後34
指鼻試験で評価するのはどれか。
- 視野
- 小脳機能
- 表在反射
- 複合知覚
② 小脳機能
小脳は姿勢や運動の制御など運動調節機能をつかさどっており、小脳失調では姿勢保持の困難や運動失調がみられる。指鼻試験(自身の鼻と検査者の指を交互に素早く触る試験)は小脳失調を判定する小脳機能検査の一つである。
▶午後35
マイコプラズマ肺炎の感染経路はどれか。
- 空気感染
- 血液感染
- 飛沫感染
- 媒介物感染
③ 飛沫感染
マイコプラズマ肺炎は感染症法上の5類感染症で、肺炎マイコプラズマによる細菌性肺炎であり、感染経路は感染患者からの飛沫感染および接触感染である。
▶午後36
痛風の患者が摂取量を減らすことが望ましい食品はどれか。
- 鶏卵
- チーズ
- 鶏レバー
- じゃがいも
③ 鶏レバー
痛風は血液中の尿酸値の上昇を原因として関節などに尿酸結晶がたまり、免疫機能が働くことで痛みを伴う痛風発作が生じるものである。痛風患者においては原因となるプリン体が多く含まれる鶏レバーなどの摂取を控えることが望ましい。
▶午後37
患者、看護師、ベッド、車椅子の位置を図に示す。
ベッド上にいる右片麻痺がある患者の端座位から車椅子への移乗を援助する看護師の足と車椅子の位置で適切なのはどれか。

①
右片麻痺のある患者に対する車椅子への移乗援助時は、麻痺のない左側に車椅子を約15~30度の角度で近づけ、患者の軸足となる左足の延長線上に看護師の右足を置き、それを軸に回転しながらゆっくり患者を座らせる。
▶午後38
健康な成人の皮膚で正しいのはどれか。
- 垢として剝がれ落ちるのは基底層である。
- 外陰部にはアポクリン汗腺が存在する。
- 皮膚表面は弱アルカリ性である。
- ケラチンは紫外線を吸収する。
② 外陰部にはアポクリン汗腺が存在する。
汗を分泌する汗腺には、全身に分布するエクリン腺と、乳房や腋窩、外陰部など限られた部位に分布するアポクリン腺がある。
×① 垢として剝がれ落ちるのは基底層である。
皮膚は「表皮」「真皮」「皮下組織」から成り、そのうち表皮は外側から「角質層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」で構成されている。垢は最も外側にある角質層から剥がれ落ちるものである。
×③ 皮膚表面は弱アルカリ性である。
皮膚表面は抗菌作用を保持するために、角質層の皮脂によって弱酸性に調整されている。
×④ ケラチンは紫外線を吸収する。
基底層内のメラニンが紫外線を吸収する。
▶午後39
創傷処置について適切なのはどれか。
- ドレッシング材は創部の辺縁に合わせて貼付する。
- 肉芽形成の時期は強い水圧をかけて洗浄する。
- 感染徴候のない創傷の消毒は不要である。
- テープは皮膚から垂直方向に剝がす。
③ 感染徴候のない創傷の消毒は不要である。
感染を伴わない創傷の治療において、現在は湿潤療法が基本で、消毒液ではなく水で洗浄する。
×① ドレッシング材は創部の辺縁に合わせて貼付する。
ドレッシング材(創傷被覆材)は、創部の辺縁(へり)の外側まで覆うように貼付する。
×② 肉芽形成の時期は強い水圧をかけて洗浄する。
創傷の炎症期には、細菌等を洗い流すために適度な水圧をかけて洗浄する。肉芽を形成する増殖期には行わない。
×④ テープは皮膚から垂直方向に剝がす。
皮膚から垂直方向に剝がすと皮膚に負担がかかるため、皮膚に沿って平行に剥がす。
▶午後40
午前8時から24時間蓄尿を開始することになった。
蓄尿の方法で正しいのはどれか。
- 滅菌容器に蓄尿する。
- 開始日の午前8時の尿は蓄尿する。
- 終了日の午前8時の尿は蓄尿する。
- 排尿のたびに中間尿を採取して蓄尿する。
③ 終了日の午前8時の尿は蓄尿する。
24時間尿の採取に当たっては、開始時間に排尿を済ませて膀胱を空にし、それ以後の尿を蓄尿する。各蓄尿時には、排尿時刻と尿量を記録した後、その一部を採取して保存していく。
▶午後41
介護老人保健施設について適切なのはどれか。
- 常勤医師の配置は義務ではない。
- 老人福祉法に基づき設置される。
- 要介護者に対して自宅での生活に向けた支援を行う。
- 従事者の配置基準は看護職員と介護職員が同数である。
③ 要介護者に対して自宅での生活に向けた支援を行う。
介護老人保健施設は、症状が安定期にある要介護者に対し、居宅での生活への復帰を支援するため、看護、医学的管理の下における必要な医療や日常生活上の世話を行う。
×① 常勤医師の配置は義務ではない。
×④ 従事者の配置基準は看護職員と介護職員が同数である。
介護老人保健施設の必要人員として、医師は常勤1人以上(100対1以上)、看護職員・介護職員は入所者3人に対して1人以上(うち看護職員は7分の2程度)としている。
×② 老人福祉法に基づき設置される。
介護老人保健施設は、介護保険法に基づく施設サービスの一つである。
*第5編1章 3.3〕施設サービス p224~225
▶午後42
術後の創傷治癒が遅延する因子となる検査値はどれか。
- アルブミン 2.2g/dL
- 推算糸球体濾過量〈eGFR〉 62mL/分/1.73m2
- 動脈血酸素分圧〈PaO2〉 88Torr(room air)
- ヘモグロビンA1c〈HbA1c〉 5.5%
① アルブミン 2.2g/dL
アルブミンは肝臓で作られる蛋白質で、肝機能の低下により血清アルブミンが低下(3.5g/dL未満)した場合、低栄養と判断される。創傷治癒には多くの栄養が必要であり、低栄養状態では遅延因子となる。
▶午後43
うっ血性心不全が疑われる患者が救急外来を受診した。
その際、12誘導心電図検査、胸部エックス線検査に加えて行われる優先度が高い検査はどれか。
- 冠動脈CT検査
- 心臓超音波検査
- 心筋シンチグラム
- 心臓カテーテル検査
② 心臓超音波検査
うっ血性心不全とは、心臓のポンプ機能の低下により血液循環が滞り、肺や全身に血液の滞留が生じる心不全である。うっ血性心不全が疑われる患者に対して、心臓の大きさやうっ血の状態を調べる侵襲度の低い検査である心臓超音波検査(心エコー)が適している。
▶午後44
慢性腎臓病においてリンの代謝障害によって生じる症状はどれか。
- 骨痛
- 貧血
- 浮腫
- 不整脈
① 骨痛
慢性腎臓病により毒性物質であるリンの排泄が低下することで高リン血症となり、副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されて骨から血中にカルシウムが多く溶け出し、線維性骨炎に伴う骨痛が発生する。
▶午後45
ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉に汚染された注射針による針刺し事故の感染率で正しいのはどれか。
- 40%
- 10%
- 2%
- 0.3%
④ 0.3%
血液曝露事故によるHIV感染率は、針刺し事故が0.3%、粘膜曝露が0.09%と低く、さらに多剤併用療法を用いた曝露後予防内服を行った場合の感染リスクは極めて低い。
*第3編3章 3.4〕HIV・エイズ〈AIDS〉 p135~137
▶午後46
急性髄膜炎患者への対応で正しいのはどれか。
- 鎮痛薬は禁忌である。
- 頭部に温罨法を行う。
- 部屋の照明を暗くする。
- 腰椎穿刺直後は頭部を高くする。
③ 部屋の照明を暗くする。
頭蓋内に細菌やウイルスが入り込む急性髄膜炎の症状の一つとして羞明(光過敏)があげられ、部屋の照明を暗くする対応は適切である。
×① 鎮痛薬は禁忌である。
症状の一つである頭痛に対して、鎮痛薬(アセトアミノフェン)を使用することはできる。
×② 頭部に温罨法を行う。
症状の一つである高熱に対して、冷罨法を行う。
×④ 腰椎穿刺直後は頭部を高くする。
髄膜炎の診断として腰椎穿刺が行われる。腰椎穿刺直後は頭蓋内圧が低下しており、頭部挙上を行うと頭痛や嘔気などの低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)を来すおそれがあるため、安静臥床する。
▶午後47
膀胱鏡による組織検査を受ける成人男性への説明で正しいのはどれか。
- 「検査前は膀胱に尿をためてください」
- 「尿道から内視鏡を挿入します」
- 「膀胱に二酸化炭素を注入します」
- 「検査後24時間はベッドで安静にします」
② 「尿道から内視鏡を挿入します」
膀胱鏡検査は尿道口から内視鏡を挿入し、膀胱内部を直接観察する検査である。
×① 「検査前は膀胱に尿をためてください」
検査前に排尿を済ませて、膀胱内を空にする。
×③ 「膀胱に二酸化炭素を注入します」
生理食塩水を膀胱に注入して膨らませ、観察する。
×④ 「検査後24時間はベッドで安静にします」
膀胱鏡検査は日帰りで行うことができる。
▶午後48
家族周期における発達段階で、高齢者が配偶者を失った後の段階はどれか。
- 完結期
- 教育期
- 充実期
- 分離期
① 完結期
家族周期とは、結婚による家族の誕生から始まる「新婚期」、子どもが出生して家庭内で成長するまでの「育児期」「教育期」、子どもが独立する「分離期」、子ども独立後の夫婦2人による「充実期」、配偶者を失った夫婦いずれか1人による「完結期」を経て、その死亡により家族が消滅するまでの一連の経路をいう。
▶午後49
老人性難聴の特徴はどれか。
- 両側性に生じる。
- 混合性難聴である。
- 低音域が障害される。
- 外耳の障害によって起こる。
① 両側性に生じる。
難聴には、外耳や中耳の機能障害により音が聞こえにくくなる伝音性難聴、内耳の蝸牛などの神経系の障害により特に高音域が聞こえづらくなる感音性難聴、両者が組み合わさった混合性難聴の3種類があり、加齢に伴う両側性の老人性難聴は感音性難聴である。
▶午後50
高齢という理由で高齢者を画一的に捉え、差別することを意味するのはどれか。
- エイジズム
- アディクション
- パターナリズム
- アンチエイジング
① エイジズム
エイジズムとは年齢による偏見や差別をいい、特に高齢者に対する差別が問題となる。
▶午後51
高齢者の不眠の要因はどれか。
- 午前中に日光浴をする。
- 昼食後に30分程度の午睡をする。
- 就寝直前に42℃以上の風呂に入る。
- 就寝前に100mL程度のホットミルクを飲む。
③ 就寝直前に42℃以上の風呂に入る。
就寝1~2時間前の入浴は、副交感神経が優位となりスムーズな入眠に導くが、高温の風呂では交感神経が活発となり不眠の原因となるため、38℃程度のぬるま湯に入浴することが望ましい。
▶午後52
高齢者のサルコペニアの予防に関する指導内容で適切なのはどれか。
- 読書をする。
- 飲酒をやめる。
- 塩分を制限する。
- 筋肉に負荷をかける運動をする。
④ 筋肉に負荷をかける運動をする。
サルコペニアとは加齢等に伴う筋力や身体機能の低下をいう。サルコペニアを防ぐためには、蛋白質など筋肉を作る栄養素の十分な摂取や、筋肉を強化するレジスタンス運動(いわゆる筋トレ)が有用である。
▶午後53
新生児マススクリーニング検査(先天性代謝異常等検査)で正しいのはどれか。
- 対象疾患数は5である。
- 唾液を用いた検査である。
- 早期新生児期に実施される。
- 治療法が確立していない疾患を対象とする。
③ 早期新生児期に実施される。
すべての新生児を対象として、都道府県・指定都市で新生児マススクリーニング(先天性代謝異常検査)が行われており、生後5日頃の早期新生児期に行う。
×① 対象疾患数は5である。
タンデムマス法の導入により対象疾患は増え、平成30年(2018年)の厚生労働省通知では20疾患を掲げている。
×② 唾液を用いた検査である。
足の裏から採血した、ごく少量の血液を用いる。
×④ 治療法が確立していない疾患を対象とする。
早期発見・早期治療によって知的障害など心身障害の発生を予防することが可能である先天性の疾患を対象とする。
*第3編2章 1.7〕(1)新生児マススクリーニング p101~102
▶午後54
遊具を図に示す。
標準的な成長発達をしている1歳4か月の子どもの発達段階に適した遊具はどれか。

④
子どもの発達目安として、9~10か月頃につかまり立ちができるようになる。下肢が発達していく1歳4か月の子どもでは、歩行練習用としても手押し車が適している。
▶午後55
ピアジェ,J.の認知発達理論における段階と病気の説明に使用するツールの組合せで適切なのはどれか。
- 感覚運動期――人体模型
- 前操作期――印刷文書
- 具体的操作期――動画
- 形式的操作期――指人形
③ 具体的操作期――動画
ピアジェは子どもの認知発達の段階を、感覚運動期(0~2歳)、前操作期(2~7歳)、具体的操作期(7歳~11歳)、形式的操作期(12歳以上)と分類している。具体的操作期には、自らの経験の範囲内で論理的思考ができるようになる時期で、具体的な言葉を理解できるため、動画の使用は適している。
▶午後56
下腿の開放骨折のため手術を受けたA君(8歳、男児)に、術後の疼痛管理のため患者自己調節鎮痛法〈Patient Controlled Analgesia:PCA〉を用いた持続的な静脈内注射を行うことになった。A君は「痛くなるのが怖い」と話している。看護師はA君に鎮痛薬の追加について説明することにした。
A君への説明で適切なのはどれか。
- 「時間を決めて操作ボタンを押そうね」
- 「痛くなり始めたら操作ボタンを押そうね」
- 「痛くなったら何回でも操作ボタンを押してお薬を追加できるよ」
- 「痛みがどうしても我慢できなくなったら操作ボタンを押そうね」
② 「痛くなり始めたら操作ボタンを押そうね」
患者自己調節鎮痛法〈PCA〉とは、患者自身が痛みを感じ始めたときに操作ボタンを押すことで、鎮痛剤の量をコントロールすることができる方法である。なお、③ボタンを押した後は一定時間投与ができなくなり、過剰投与を防ぐことができる(ロックアウト時間)。
▶午後57
正常に経過している妊娠26週の妊婦が、次に妊婦健康診査を受診する時期として推奨されるのはどれか。
- 4週後
- 3週後
- 2週後
- 1週後
③ 2週後
妊婦健康診査の時期としては、妊娠23週までは4週間に1回、妊娠24~35週までは2週間に1回、妊娠36週以後出産までは1週間に1回が推奨される。
*第5編2章 3.6〕妊産婦等の就業 p238~239
▶午後58
親性について適切なのはどれか。
- 子を育もうとする性質である。
- 誰でも子を持つ時点で備えている。
- 性別に基づく役割分業で育児を行うことをいう。
- 生物学的に結びつきがあることが親性をもつ条件となる。
① 子を育もうとする性質である。
親性とは、母性や父性など生物学的性差に限定せず、子を持ち、親として成長する中で発達していく、子どもを慈しみ、育もうとする性質をいう。
▶午後59
閉経に伴うエストロゲンの低下で生じるのはどれか。
- 骨量の増加
- 腟粘膜の萎縮
- 脳血流量の増加
- 血中LDLコレステロールの減少
② 腟粘膜の萎縮
閉経(約50歳)前後の更年期から、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が低下することで、膣粘膜の萎縮や乾燥による炎症(萎縮性膣炎)、骨密度の低下などが生じる。
▶午後60
順調に分娩が進行している妊娠40週0日の初産婦から「腟から水っぽいものが流れ、下着が濡れた」とナースコールがあった。看護師が流出したものを確認すると、量は少量で、羊水特有の臭いを認めた。
このときの産婦への対応で優先度が高いのはどれか。
- バイタルサインを測定する。
- 胎児心拍数を確認する。
- 食事摂取を勧める。
- 更衣を促す。
② 胎児心拍数を確認する。
分娩中に卵膜が破れて羊水が流出する破水が生じており、破水時に臍帯下垂・臍帯脱出が起きると周産期死亡や胎児機能不全のリスクが高まるため、胎児心拍数の確認を最優先する。
▶午後61
看護師のメンタルヘルスに関する対応で一次予防はどれか。
- 入職時のストレスマネジメントに関する研修
- 精神的不調が生じた看護師への公認心理師による相談
- 精神的不調で休職している看護師への復職支援プランの作成
- 精神的負荷がかかっている可能性のある看護師への産業保健師による面談
① 入職時のストレスマネジメントに関する研修
疾病の予防対策には、発症前に発症そのものを予防する一次予防、発症後の早期発見・早期治療により重症化を予防する二次予防、症状進行後の社会復帰を図る三次予防がある。②や④は二次予防、③は三次予防である。
▶午後62
人を援助する過程で自分の職務に対して継続して努力したが、満足感や達成感が得られず、うつ症状や社会機能の低下を生じるのはどれか。
- 悪性症候群
- 空の巣症候群
- 緊張病症候群
- 燃え尽き症候群
④ 燃え尽き症候群
燃え尽き症候群(バーンアウト症候群)とは、試験や職務などある目標に向かって努力してきた人が、努力に見合った結果が得られなかったり、目標を達成して次の目標を見失ったりするなどして、うつ症状など心身の不調や社会機能の低下を来す症状である。
×① 悪性症候群
悪性症候群とは、向精神薬の投与に伴う発熱、意識障害、錐体外路症状(筋緊張等)、自律神経症状(発汗)を主な特徴とする副作用〈有害事象〉である。
×② 空の巣症候群
空の巣症候群とは、子どもが成長して独り立ちをした後に、喪失感から生じる心身の不調をいう。
×③ 緊張病症候群
緊張病症候群〈カタトニア〉とは、様々な精神疾患や神経疾患に関連して、昏迷や硬直、拒絶症などの身体・精神症状が出現するものをいう。
▶午後63
精神障害者保健福祉手帳の交付によって精神障害者に適用されるのはどれか。
- 行動援護の介護給付
- 所得税の障害者控除
- 自立支援医療(精神通院医療)
- グループホームで必要な日常生活上の援助
② 所得税の障害者控除
精神障害者保健福祉手帳は、精神障害者が長期にわたり日常生活や社会生活に相当の制限を受けるなど、一定の精神障害の状態にあることを認定して交付されるもので、所得税・住民税の控除など各種税制の優遇措置等を受けることができる。
*第3編2章 4.6〕(2)精神障害者保健福祉手帳 p115
▶午後64
都道府県知事に対し、精神科病院に医療保護入院となっている患者の退院請求をすることができるのはどれか。
- 警察官
- 検察官
- 患者本人
- 精神保健福祉士
③ 患者本人
精神科病院の入院において行動制限がある場合でも、患者やその家族等は退院請求と処遇改善請求を行うことができ、精神医療審査会で審査が行われる。
*第3編2章 4.3〕精神科の入院制度 p112~114
▶午後65改題
令和4年(2022年)の国民生活基礎調査において、要介護者等のいる世帯に同居している主な介護者の特徴で正しいのはどれか。
- 性別は女性が多い。
- 続柄は子が最も多い。
- 年齢は50~59歳が最も多い。
- ストレスの原因は「自由にできる時間がない」が最も多い。
① 性別は女性が多い。
同居の主な介護者を性別にみると、女性が68.9%と男性よりも多い。
×② 続柄は子が最も多い。
同居の主な介護者のうち「配偶者」が22.9%で最も多く、次いで「子」が16.2%となっている。
×③ 年齢は50~59歳が最も多い。
同居の主な介護者を年齢階級別にみると、男性では60~69歳が、女性では70~79歳が最も多い。
×④ ストレスの原因は「自由にできる時間がない」が最も多い。
同居の主な介護者の悩みやストレスの原因をみると「家族の病気や介護」が最も多い。
*第5編1章 10.介護者・要介護者等の状況 p229~230
▶午後66
Aさん(73歳、女性、要介護1)は1人で暮らしている。室内の家具や手すりなどの、左右にあるものにうまくつかまりながら、バランスをとって移動している。Aさんは「腕の力も足の力も落ちてきた。両手を使って体を支えるものがないと屋外の移動は不安だが、足の筋力が落ちないように近所の散歩を始めたい」と訪問看護師に相談があった。Aさんの住居の廊下や玄関に段差はなく、住居周辺には坂や段差のない舗装された歩道がある。
福祉用具を図に示す。
訪問看護師がAさんに勧める福祉用具で適切なのはどれか。

④
両手で物につかまってバランスを取って移動できること、腕の力が弱まっていること、足の筋力が落ちないように散歩したいこと、周囲に段差等がないことから、押しながら歩ける車輪付きの歩行器が適している。
▶午後67
Aさん(78歳、女性、要支援1)は1人で暮らしており、認知機能や嚥下機能の低下はない。訪問看護師は、内科と整形外科から朝2種類、夕3種類の合計5種類の内服薬が処方されていることを確認し、夕方に飲む薬だけが減っていることに気付いた。
訪問看護師のAさんへの対応で最も適切なのはどれか。
- どの薬を何時に内服しているのかを聞く。
- 服薬用のゼリーを用いて内服することを勧める。
- 1日に5種類の薬を内服する必要があることを説明する。
- 介護予防訪問介護を利用して服薬の介助を依頼することを勧める。
① どの薬を何時に内服しているのかを聞く。
夕方に飲む薬だけが減っていることから、朝の服薬を行っていないか、夕方に飲む薬を朝に服薬しているか等が考えられる。認知機能や嚥下機能に低下はないことから、セルフケアによる服薬管理を維持するため、まずは服薬状況を聞き取ることが適切である。
▶午後68
介護保険の介護給付で利用できる居宅サービスはどれか。
- 訪問入浴介護
- 介護予防居宅療養管理指導
- 看護小規模多機能型居宅介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
① 訪問入浴介護
訪問入浴介護は要介護者に対する介護給付のうち居宅サービスで、自宅の浴槽での入浴が困難な要介護者に対して、浴槽を居宅に持ち込み、入浴の介護を行う。
×② 介護予防居宅療養管理指導
要支援者に対する予防給付のうち、介護予防サービスである。
×③ 看護小規模多機能型居宅介護
×④ 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
要介護者に対する介護給付のうち、地域密着型サービスである。
*第5編1章 3.1〕居宅サービス p222~223
▶午後69
Aさん(65歳、男性)はうっ血性心不全の急性増悪で入院し、治療を受けて自宅に退院した。退院後は月1回の外来通院、週1回の訪問看護で生活指導を受け、血圧、体重、労作時の自覚症状について日誌に記録することになった。初回訪問時、Aさんは訪問看護師に「庭で野菜を作るのが趣味です。野菜作りの作業をしていると夢中になって時間を忘れてしまいます」と話した。
訪問看護師のAさんへの助言で適切なのはどれか。
- 「室内で安静に過ごしましょう」
- 「野菜を作るのはやめて他の趣味を見つけましょう」
- 「作業の後は30分以内に2L以上の水分を補給しましょう」
- 「日誌の記録をもとに自分で作業量を調整できるようにしましょう」
④ 「日誌の記録をもとに自分で作業量を調整できるようにしましょう」
うっ血性心疾患の予防・再発防止のため、適度な労作などの生活習慣の改善は必要であるが、野菜作りの作業に熱中しすぎて時間を忘れてしまうなど、過労により増悪するおそれがある。日誌に自覚症状を記録していることから、作業量を自己管理できるように助言することが適切である。
▶午後70
Aさん(55歳、虚血性心疾患)は4人部屋に入院している。Aさんは緊急で心臓カテーテル検査を行うことになった。日勤の担当看護師がAさんの検査のために訪室すると、同室の右片麻痺のあるBさん(60歳、脳出血)からトイレに行きたいと声をかけられた。
このときの看護師の行動で適切なのはどれか。
- ナースステーションに戻り、リーダーに相談する。
- Aさんに待つよう説明し、Bさんのトイレ介助を行う。
- Bさんに待つよう説明し、Aさんを検査室に移送する。
- その場から離れずに別の看護師を呼び、Bさんのトイレ介助を依頼する。
④ その場から離れずに別の看護師を呼び、Bさんのトイレ介助を依頼する。
緊急の心臓カテーテル検査を受けるAさんは急変のリスクがあり、そばを離れずに対応しなければならない。一方、右片麻痺のあるBさんに対しては速やかなトイレ介助の必要があり、別の看護師を呼んで対応を依頼することが適切である。
▶午後71
診療情報について適切なのはどれか。
- 診療情報の開示請求は患者本人に限られる。
- 2類感染症の罹患情報は市区町村長に届け出る。
- 医療者は患者が「知りたくない」と拒否した場合でも病状を説明する。
- 他院へのセカンドオピニオンを希望する患者に診療情報提供書を作成する。
④ 他院へのセカンドオピニオンを希望する患者に診療情報提供書を作成する。
患者は医療機関等の選択の自由を権利として有し、これまでの診療状況を示す文書(診療情報提供書)を作成してもらい、他院の医師による助言(セカンドオピニオン)を受けることができる。
×① 診療情報の開示請求は患者本人に限られる。
開示請求は原則として患者本人が行うが、法定代理人や任意後見人なども患者に代わって開示を求め、診療記録を閲覧することができる。
×② 2類感染症の罹患情報は市区町村長に届け出る。
結核など2類感染症を診断した医師は、直ちに最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出なければならない。
×③ 医療者は患者が「知りたくない」と拒否した場合でも病状を説明する。
医療者は、患者が「知らないでいたい希望」を表明した場合、これを尊重しなければならない。
▶午後72
サイコロジカルファーストエイド〈Psychological First Aid:PFA〉について正しいのはどれか。
- 活動の原則は、見る、聞く、つなぐである。
- 災害発生から1週間経過してから活動する。
- 被災都道府県からの派遣要請に基づき活動する。
- 苦痛の原因となった出来事を詳細に話すことを促す。
① 活動の原則は、見る、聞く、つなぐである。
サイコロジカルファーストエイド(心理的応急処置)とは、災害等により強いストレスを受けたばかりの被災者等を主に心理的に支援する対応をいい、その活動の原則として「見る」「聞く」「つなぐ」を掲げている。
▶午後73
尿量の調節に深く関わるホルモンはどれか。
- ガストリン
- カルシトニン
- グルカゴン
- ソマトスタチン
- バソプレシン
⑤ バソプレシン
バソプレシンは抗利尿作用をもつホルモンであり、一次脱水時に分泌が促進され、水再吸収を促して尿量を減少させるなどの働きを持つ。
▶午後74
止血後の線維素溶解(線溶)に関係するのはどれか。
- カルシウムイオン
- フィブリノゲン
- プラスミノゲン
- プロトロンビン
- セロトニン
③ プラスミノゲン
血管の損傷による出血に対して、血小板血栓が形成される一次止血、フィブリン形成による血小板血栓が強化される二次止血を経て、止血が完了する。止血後は血栓を除去するため、血中のプラスミノゲンから生成されたプラスミンがフィブリンを溶解する(線維素溶解(線溶))。
▶午後75
体内で代謝された結果、胆汁酸として胆汁中に分泌されるのはどれか。
- DNA
- RNA
- グリコーゲン
- ヘモグロビン
- コレステロール
⑤ コレステロール
胆汁の主成分である胆汁酸は、肝臓でコレステロールから合成され、十二指腸で脂肪を乳化することで、膵臓内のリパーゼ(脂肪分解酵素)の働きを助ける。
▶午後76
直腸の構造で正しいのはどれか。
- 陰窩には杯細胞が存在する。
- 粘膜の表面には絨毛がある。
- 縦走筋は結腸ヒモを作る。
- 肛門管は血管が少ない。
- 肛門管は内腔が広い。
① 陰窩には杯細胞が存在する。
杯(さかずき)細胞は粘液を分泌し粘膜を構築する細胞である。陰窩とは直腸(粘膜)と肛門(皮膚)の境目(歯状線)にあるくぼみをいい、杯細胞が存在する。
×② 粘膜の表面には絨毛がある。
絨毛は小腸粘膜の表面にあり、小腸の表面積を広くすることで、効率的に栄養の吸収を行っている。直腸の説明ではない。
×③ 縦走筋は結腸ヒモを作る。
大腸は結腸と直腸で構成され、結腸に特有の結腸ヒモは3本の縦走筋が集束したものである。直腸の説明ではない。
×④ 肛門管は血管が少ない。
直腸と肛門を結ぶ管を肛門管といい、その粘膜下には多数の毛細血管が張り巡らされている。
×⑤ 肛門管は内腔が広い。
肛門管は肛門括約筋のコントロールにより内腔が狭い。内腔が広いのは、肛門管の上方にあり、便を貯蔵する働きを持つ直腸膨大部である。
▶午後77
外傷や風邪で発熱し、解熱するまでの体温のセットポイントと実際の体温(核心温度)の変化の例を図に示す。

全身のふるえが起こるのはどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
- ⑤
② ②
視床下部の指令により、通常の体温設定よりも高いセットポイントが設定された際は、それに向けて熱の上昇が行われ、ふるえや皮膚血管の収縮、立毛(鳥肌)により熱放散が抑制される。
▶午後78
胃癌の胃切除術後5年ほどで欠乏し貧血を起こさせるのはどれか。
- ビタミンA
- ビタミンB1
- ビタミンB12
- ビタミンC
- ビタミンK
③ ビタミンB12
胃はビタミンB12の吸収を促す内因子を分泌しており、胃切除術によりその吸収が阻害されるとビタミンB12が不足し、巨赤芽球性貧血(悪性貧血)が生じやすくなる。
▶午後79
もやもや病について正しいのはどれか。
- 脳動静脈の奇形である。
- 浅側頭動脈の狭窄が原因である。
- 代償性の側副血行路が形成される。
- ポリオウイルスの感染が関与する。
- Willis〈ウィリス〉動脈輪への血栓閉塞で生じる。
③ 代償性の側副血行路が形成される。
もやもや病は、くも膜下腔にあるウィリス動脈輪と呼ばれる動脈の吻合部が細くなる、原因不明の進行性の脳血管閉塞症で、脳血流不足による手足の麻痺や言語障害、脳出血が生じる。不足する脳血流を補うために、多数の細い血管(もやもや血管)による側副血行路が形成される。
▶午後80
感染症と代表的な原因ウイルスの組合せで正しいのはどれか。
- 手足口病――アデノウイルス
- 咽頭結膜熱――ヒトパピローマウイルス〈HPV〉
- 突発性発疹症――コクサッキーウイルス
- 伝染性単核球症――Epstein-Barr〈EB〉ウイルス
- ヘルパンギーナ――単純ヘルペスウイルス
④ 伝染性単核球症――Epstein-Barr〈EB〉ウイルス
EBウイルスの感染により伝染性単核球症が起こり、発熱等の風邪症状がみられる。
×① 手足口病――アデノウイルス
アデノウイルスは手を介した接触により流行性角結膜炎や咽頭結膜熱を引き起こす。
×② 咽頭結膜熱――ヒトパピローマウイルス〈HPV〉
ヒトパピローマウイルス〈HPV〉は性行為により感染し、子宮頸癌や尖圭コンジローマの発症に関わる。
×③ 突発性発疹症――コクサッキーウイルス
コクサッキーウイルスは、飛沫感染や接触感染により、水疱性発疹である手足口病やヘルパンギーナ(夏風邪)を引き起こす。
×⑤ ヘルパンギーナ――単純ヘルペスウイルス
単純ヘルペスウイルスは感染により水疱性の発疹を引き起こし、部位により口唇ヘルペスや性器ヘルペスなどの原因となる。
▶午後81
短期記憶と関係が深いのはどれか。
- 橋
- 海馬
- 脊髄
- 松果体
- 視床下部
② 海馬
記憶はその期間により、大きく短期記憶(数分、数時間内の出来事の記憶)と長期記憶(長期間保たれる記憶)に分類される。側頭葉内側にある海馬は、短期記憶を保存して大脳皮質に長期記憶として送る機能を持ち、その異常では短期記憶障害が引き起こされる。
▶午後82
市町村による大腸がん検診の項目はどれか。2つ選べ。
- 問診
- 直腸診
- 血液検査
- 便潜血検査
- 腹部エックス線検査
① 問診
④ 便潜血検査
市町村は健康増進法に基づき健康増進事業としてがん検診を実施する。大腸がん検診では、いずれのがん検診でも行う問診に加え、がんの進行に伴い発生する肛門からの下血や血便を調べる便潜血検査が行われる。
▶午後83
開心術後の心タンポナーデで正しいのはどれか。2つ選べ。
- 徐脈
- 心音減弱
- 心拍出量の増加
- 中心静脈圧の上昇
- 吸気時収縮期圧の10mmHg上昇
② 心音減弱
④ 中心静脈圧の上昇
心タンポナーデは、心臓と心外膜の間にある心嚢液が大量に貯留し、心臓の拡張が抑制された状態をいう。心拍出量が低下するため、血圧低下や頻脈、中心静脈圧の上昇が起きる。このほか、心音減弱、尿量減少、胸部エックス線写真での心拡大像などの徴候がみられる。
▶午後84
Sjögren〈シェーグレン〉症候群でリンパ球が浸潤して障害が起こるのはどれか。2つ選べ。
- 胸腺
- 涙腺
- 甲状腺
- 唾液腺
- 副甲状腺
② 涙腺
④ 唾液腺
シェーグレン症候群は、涙腺や唾液腺などを中心に炎症が起きる自己免疫疾患であり、眼の乾燥(ドライアイ)や口腔の乾燥(ドライマウス)といった乾燥症状を引き起こす。
▶午後85
成人の気管内吸引の方法で適切なのはどれか。2つ選べ。
- 実施前に咽頭部の分泌物を吸引する。
- 吸引圧は-40kPa(300mmHg)に調整する。
- 気管チューブと同じ内径のカテーテルを用いる。
- カテーテルは気管分岐部にあたらないように挿入する。
- カテーテルの挿入開始から終了まで30秒で行う。
① 実施前に咽頭部の分泌物を吸引する。
④ カテーテルは気管分岐部にあたらないように挿入する。
① 気管に貯留した痰などを吸引する気管内吸引では、実施前に咽頭部の分泌物を吸引することで、排痰が効率的に行える。
④ カテーテルは、左右の主気管支に分岐する気管分岐部にあたらない位置まで挿入する。
×② 吸引圧は-40kPa(300mmHg)に調整する。
気管の粘膜を傷つけないために吸引圧は-100〜-150mmHgに調整する。
×③ 気管チューブと同じ内径のカテーテルを用いる。
吸引カテーテルを太くすると吸引量が増加し、無気肺等が生じやすくなるため、気管チューブの半分以下の内径とする。
×⑤ カテーテルの挿入開始から終了まで30秒で行う。
1回の気管内吸引では、挿入開始から終了までの時間は15秒以内にすることが推奨され、30秒以上実施した場合、動脈血酸素飽和度〈SaO2〉が低下し、低酸素血症をきたすことがある。
▶午後86
Aさん(55歳、男性、会社員)は30年の喫煙歴がある。会社の健康診断で高血圧を指摘されて生活習慣の改善を勧められたが「週末にスポーツジムで運動するようになったけれど、仕事が忙しくてこれ以上生活を変える自信はありません」と述べた。
Aさんの自己効力感を高める支援はどれか。2つ選べ。
- Aさんの運動への取り組みを評価する。
- Aさんの職場の上司に配置転換を依頼する。
- Aさんが取り組めそうな目標を一緒に設定する。
- Aさんが生活習慣を改善する気持ちになるまで待つ。
- Aさんが脳血管疾患になる危険性が高いことを説明する。
① Aさんの運動への取り組みを評価する。
③ Aさんが取り組めそうな目標を一緒に設定する。
自己効力感を高めて自己管理の継続を図るため、これまでの取り組みを否定せずに評価すること、本人が達成可能な目標を立てて行動の定着・習慣化を図ることが適している。
▶午後87
成人の糖尿病患者に対するペン型インスリン自己注射の指導で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 「ブドウ糖を携帯してください」
- 「注射部位は毎回変えてください」
- 「注射をした後は注射部位をよくもんでください」
- 「針は皮膚に対して30度の角度で刺してください」
- 「未使用のインスリンは冷凍庫で保管してください」
① 「ブドウ糖を携帯してください」
② 「注射部位は毎回変えてください」
① インスリン投与中の食事の量や時間、運動などにより低血糖症状を起こす可能性があり、症状が出現した際に補食するブドウ糖を携帯しておくことが適している。
② 皮下の硬結を避けるため、注射部位は毎回2~3cmずらす。
×③ 「注射をした後は注射部位をよくもんでください」
注射部位を揉むことで薬効が過剰となり、低血糖をきたすおそれがあるため、揉むことはしない。
×④ 「針は皮膚に対して30度の角度で刺してください」
ペン型インスリン自己注射は、皮膚に対して垂直に刺す。
×⑤ 「未使用のインスリンは冷凍庫で保管してください」
未開封時には凍結を避けるため2℃~8℃の冷蔵庫で保管する。
▶午後88
高齢者の基本的日常生活動作〈BADL〉で評価する内容はどれか。2つ選べ。
- 整容
- 意思疎通
- 階段昇降
- 金銭管理
- 服薬管理
① 整容
③ 階段昇降
基本的日常生活動作〈BADL〉は食事、移動、排泄、入浴、更衣、整容などの基本的動作をいい、買い物、料理、洗濯、電話、服薬管理、金銭管理、乗り物の利用など複雑な動作・判断が求められる手段的日常生活動作〈IADL〉とは区別して評価する。
▶午後89
インシデントレポートについて適切なのはどれか。2つ選べ。
- 法令で書式が統一されている。
- 責任追及のためには使用されない。
- インシデントの発生から1か月後に提出する。
- 分析結果は他職種を含めて組織全体で共有する。
- 医療に誤りがあったが、患者に実施される前に発見された事例の報告は不要である。
② 責任追及のためには使用されない。
④ 分析結果は他職種を含めて組織全体で共有する。
医療事故につながりかねないインシデント(ヒヤリ・ハット)が発生した場合、再発防止を図ることを目的に、速やかにインシデントレポートにより、状況把握、要因分析、対策、職種間の情報共有を実施する。個人の責任追及や懲罰等を行うものではない。
*第4編1章 3.10〕医療安全に係る取り組み p179~180
▶午後90
20滴で1mLの輸液セットを用いて500mLの輸液を3時間30分かけて実施する場合の1分間の滴下数を求めよ。
ただし、小数点以下の数値が得られた場合には、小数点以下第1位を四捨五入すること。
解答:①②滴
① 4
② 8
1分あたりの滴下数は、(総輸液量×1mLあたりの滴下数)÷時間(分)で計算する。時間は3時間30分なので、180分+30分で210分。(500×20)÷210≒47.6で、小数点第一位を四捨五入し48となる。
資料 厚生労働省「第110回保健師国家試験、第107回助産師国家試験、第113回看護師国家試験の問題および正答について」
注 当ページに掲載する解説は、看護師国家試験を解く上での理解しやすさを重視しているため、本来はより専門的・学術的な説明や議論がある部分を一部省略しています。正確な情報を掲載するように努めていますが、特に医療・看護行為や疾病、薬剤等の説明において、その正確性を保証するものではありませんので、学習以外での使用はお控え下さい。
▼第113回看護師国家試験
▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
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