第104回看護師国家試験 午後一般問題
平成27年2月22日(日)に実施された第104回看護師国家試験について、午後問題のうち一般問題の正答と解説を示します。
「国民衛生の動向2024/2025」で内容を解説している問題に関しては、その参照章・ページを示しているので、同書を併用しながらの利用をおすすめします。
▼第104回看護師国家試験
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厚生の指標増刊
国民衛生の動向 2024/2025
発売日:2024.8.27
定価:2,970円(税込)
412頁・B5判
雑誌コード:03854-08
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▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
午後 一般問題
▶午後26
内臓痛が生じるのはどれか。
- 臓器の切開
- 管腔臓器の受動的な過伸展
- 細胞内カリウムイオン濃度の上昇
- 細胞外ナトリウムイオン濃度の上昇
② 管腔臓器の受動的な過伸展
内臓痛は胃や腸管など管腔臓器の急激な拡張・収縮・伸展等により起こる、局所が不明な鈍痛であり、虚血に伴う痙攣や平滑筋の過度の収縮が内臓痛を引き起こす原因となる。
▶午後27
蛋白質で正しいのはどれか。
- アミノ酸で構成される。
- 唾液により分解される。
- 摂取するとそのままの形で体内に吸収される。
- 生体を構成する成分で最も多くの重量を占める。
① アミノ酸で構成される。
蛋白質は20種類のアミノ酸で構成される三大栄養素の一つである。
×② 唾液により分解される。
唾液腺から分泌されるアミラーゼにより分解されるものは炭水化物である。
×③ 摂取するとそのままの形で体内に吸収される。
胃粘膜(胃底腺)の主細胞から分泌されるペプチンや、膵臓から分泌されるキモトリプシン、トリプシンなどのタンパク分解酵素により、蛋白質はアミノ酸に分解され、吸収される。
×④ 生体を構成する成分で最も多くの重量を占める。
蛋白質は人体の1~2割を占めており、最も多いものは約6割を占める水分である。
▶午後28
膀胱で正しいのはどれか。
- 漿膜で覆われている。
- 直腸の後方に存在する。
- 粘膜は移行上皮である。
- 筋層は2層構造である。
③ 粘膜は移行上皮である。
体表面や管腔、体腔の表面を覆っている上皮組織のうち、膀胱や尿管は移行上皮(尿路上皮)に当たる。
×① 漿膜で覆われている。
漿膜は膀胱の上方表面を覆っている。
×② 直腸の後方に存在する。
膀胱は直腸の前方に位置する。
×④ 筋層は2層構造である。
膀胱の壁を構成する平滑筋は3層構造である。
▶午後29
ホルモンとその産生部位の組合せで正しいのはどれか。
- エリスロポエチン――膵臓
- アドレナリン――副腎皮質
- 成長ホルモン――視床下部
- レニン――腎臓
④ レニン――腎臓
腎臓で生成されるタンパク分解酵素のレニンは、分解・活性化の過程で血圧上昇作用をもつアンジオテンシジンⅡを作る。アンジオテンシジンⅡによって副腎皮質からアルドステロンの分泌が促進され、腎臓の遠位尿細管に作用することでナトリウムの再吸収を促進し、血圧の調節が行われる。
×① エリスロポエチン――膵臓
エリスロポエチンは腎臓から分泌され、赤血球の産生を促す。
×② アドレナリン――副腎皮質
アドレナリンは副腎髄質から分泌され、心拍数や血圧を上昇させる。
×③ 成長ホルモン――視床下部
成長ホルモンは下垂体から分泌され、骨や筋肉の成長・発達に関わる。
▶午後30
糖尿病神経障害で正しいのはどれか。
- 運動神経は温存される。
- 感覚障害は中枢側から起こる。
- 三大合併症の中では晩期に発症する。
- 自律神経障害は無自覚性低血糖に関与する。
④ 自律神経障害は無自覚性低血糖に関与する。
糖尿病神経障害では感覚神経、自律神経、運動神経が障害される。自律神経障害により、冷や汗(発汗)や動悸、けいれんなどの低血糖症状が起きにくい無自覚性低血糖につながり、重症化のリスクが高まる。
×① 運動神経は温存される。
運動神経障害では歩行困難などが起こる。
×② 感覚障害は中枢側から起こる。
感覚神経障害は末梢側から起き、血流障害を伴って足の感覚が鈍くなることから足病変等が生じやすい。
×③ 三大合併症の中では晩期に発症する。
糖尿病の三大合併症として、糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症が挙げられ、このうちでは糖尿病神経障害が早期から発症する。
▶午後31
ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症で正しいのはどれか。
- 経皮感染する
- 無症候期がある。
- DNAウイルスによる。
- 血液中のB細胞に感染する。
② 無症候期がある。
ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染後、多くは無症候で経過し、平均10年程度経過した後に症状が現れ、ニューモシスティス肺炎(カリニ肺炎)などの23の指標疾患の1つ以上を発症するとエイズと診断される。
×① 経皮感染する
HIVの主な感染経路は、HIV感染者との性行為、血液または血液製剤の輸注、母子感染(垂直感染)の3つである。
×③ DNAウイルスによる。
HIVはRNAウイルスである。
×④ 血液中のB細胞に感染する。
HIVは、免疫システムである白血球中のヘルパー〈CD4陽性〉Tリンパ球に感染し、増殖、破壊することで、免疫不全状態を引き起こす。
*第3編3章 3.4〕HIV・エイズ〈AIDS〉 p135~137
▶午後32
気胸について正しいのはどれか。
- 外傷は原因の1つである。
- 自然気胸は若い女性に多い。
- 原因となるブラは肺底部に多い。
- 治療として人工呼吸器による陽圧換気が行われる。
① 外傷は原因の1つである。
気胸は、原因の一つとして交通事故などの外傷により胸膜が損傷し、胸腔内に空気が漏れ出て肺が縮むことをいう。また、中心静脈栄養法〈TPN〉時に誤って肺を穿刺することで起こる可能性もある。
×② 自然気胸は若い女性に多い。
外傷などの理由なく生じる自然気胸は、痩せ型の若年層男性に生じやすい。
×③ 原因となるブラは肺底部に多い。
気胸の多くは肺の頭側(肺尖部)にできたブラ(ブレブ)と呼ばれる袋状の膨らみが破れることにより生じる。
×④ 治療として人工呼吸器による陽圧換気が行われる。
治療として、胸腔ドレナージにより胸腔から空気を抜く処置が行われる。
▶午後33
心電図でT波の上昇の原因となるのはどれか。
- 高カリウム血症
- 低カリウム血症
- 高カルシウム血症
- 低カルシウム血症
① 高カリウム血症
心電図で高く先鋭化したT波(テント状T波)は高カリウム血症の特徴で、不整脈や心停止を起こす危険がある。
▶午後34
前立腺癌の治療薬はどれか。
- インターフェロン
- a交感神経遮断薬
- 抗アンドロゲン薬
- 抗エストロゲン薬
③ 抗アンドロゲン薬
前立腺癌の原因として男性ホルモンであるアンドロゲンが関与しており、薬物治療としてその作用を抑える抗アンドロゲン薬などが用いられる。
×① インターフェロン
インターフェロンはB型肝炎やC型肝炎の治療に用いられる。
×② a交感神経遮断薬
a交感神経遮断薬は前立腺肥大症などの治療に用いられる。
×④ 抗エストロゲン薬
抗エストロゲン薬は乳癌などの治療に用いられる。
▶午後35
日本国憲法第25条で定められているのはどれか。
- 国民の平等性
- 国民の生存権
- 国民の教育を受ける権利
- 国及び公共団体の賠償責任
② 国民の生存権
日本国憲法第25条は国民の生存権を定めている。
- 第1項 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
- 第2項 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
*第5編2章 2.生活保護 p235
▶午後36
社会福祉協議会の活動で正しいのはどれか。
- ボランティア活動を推進する。
- 就労の支援活動を推進する。
- 男女共同参画を推進する。
- がん対策を推進する。
① ボランティア活動を推進する。
社会福祉協議会は、社会福祉法に基づく地域福祉の推進を図ることを目的とする民間組織で、地域の実情に応じボランティア活動支援、見守りネットワークづくり、生活福祉資金の貸し付け、日常生活自立支援事業などを実施している。
*第5編2章 6.3〕社会福祉協議会・民生委員 p244~245
▶午後37
疾病の発生要因と疫学要因の組合せで正しいのはどれか。
- 食事――宿主要因
- 職業――宿主要因
- 細胞免疫――環境要因
- 媒介動物――環境要因
④ 媒介動物――環境要因
疾病の原因を病因といい、病因は大きくわけて、遺伝や免疫など身体それ自身が持つ病気にかかりやすい性状(③)が関与する内因〈宿主要因〉と、外部から身体に侵入して作用する栄養的(①)、物理的・化学的(②)・生物学的(④)な外因〈環境要因〉がある。
▶午後38
職場における疾病予防の対策のうち三次予防はどれか。
- 健康教育の実施
- 人間ドックの受診勧奨
- じん肺健康診断の実施
- 職場復帰後の適正配置
④ 職場復帰後の適正配置
疾病の予防対策には、生活習慣の改善や予防接種等により発症そのものを予防する一次予防、検診等により発症の早期発見・早期治療により重症化を予防する二次予防、リハビリテーション等により疾病の進行後の社会復帰を図る三次予防がある。①は一次予防、②と③は二次予防である。
*第3編1章 1.1〕生活習慣病の概念 p80
▶午後39
看護師の業務で正しいのはどれか。
- グリセリン浣腸液の処方
- 褥婦への療養上の世話
- 酸素吸入の流量の決定
- 血液検査の実施の決定
② 褥婦への療養上の世話
看護師は傷病者もしくは褥婦に対する療養上の世話または診療の補助を行うことを業とする(保健師助産師看護師法第5条)。
*第4編1章 4.4〕看護職員等 p193~197
▶午後40
サーカディアンリズムを整えるための援助で適切なのはどれか。
- 毎朝同じ時刻に起床するよう促す。
- 日中はカーテンを閉めておくよう促す。
- 昼寝の時間を2〜3時間程度とるよう促す。
- 就寝前に温かいコーヒーを摂取するよう促す。
① 毎朝同じ時刻に起床するよう促す。
生物は地球の自転による昼夜変化に同調して、約24時間周期のサーカディアンリズム(概日リズム)に則り、体内環境を変化させる。朝の決まった時間に起床し、夜の決まった時間に就寝することで、そのリズムを乱さないように促す。
×② 日中はカーテンを閉めておくよう促す。
サーカディアンリズムは光の明暗による刺激により調整されるため、日中に室内で過ごす場合はカーテンを開けることが望ましい。
×③ 昼寝の時間を2〜3時間程度とるよう促す。
午後の早い時刻に30分以内の短い昼寝を行うことは夜の睡眠の質を高める効果がある。ただし、30分以上の昼寝では目覚めの悪さ(睡眠惰性)が生じ、夜間の睡眠に影響して不眠を起こすおそれがあるため避ける。
×④ 就寝前に温かいコーヒーを摂取するよう促す。
カフェインの覚醒作用および利尿作用により、夜間の睡眠が妨げられるため避ける。
▶午後41
仰臥位の患者の良肢位について正しいのはどれか。
- 肩関節外転90度
- 肘関節屈曲0度
- 膝関節屈曲90度
- 足関節底屈0度
④ 足関節底屈0度
良肢位は関節の機能障害の影響を最小限にとどめるための肢位で、足関節は底屈・背屈0度が良肢位である。
×① 肩関節外転90度
外転10~30度が良肢位である。
×② 肘関節屈曲0度
屈曲90度が良肢位である。
×③ 膝関節屈曲90度
屈曲10~15度が良肢位である。
▶午後42
抗癌薬の点滴静脈内注射中の患者が刺入部の腫脹と軽い痛みを訴え、看護師が確認した。
直ちに行うのはどれか。
- 刺入部を温める。
- 注入を中止する。
- 注入速度を遅くする。
- 点滴チューブ内の血液の逆流を確認する。
② 注入を中止する。
点滴静脈内注射の際に、刺入部位の腫脹や疼痛、発赤などが生じた場合、血管外漏出の初期症状である。周辺組織の炎症や壊死につながり、重症化するおそれもあるため、直ちに注入を中止する必要がある。
▶午後43
死後の処置について最も適切なのはどれか。
- 体内に挿入したチューブ類の除去は家族同席で行う。
- 枕の高さを低くし開口を防ぐ。
- 死亡後2時間以内に行う。
- 口腔内は吸引しない。
③ 死亡後2時間以内に行う。
死後の処置(エンゼルケア)では、故人を生前の顔貌に近づけ、清潔にするためのケアを行うもので、死後硬直の始まる2時間以内に処置を行うことが適切である。
▶午後44
グリセリン浣腸の効果で正しいのはどれか。
- 腸管の蠕動を促進する。
- 腸管内の炎症を和らげる。
- 腸壁の水分吸収を促進する。
- 腸管内のガスの吸収を促進する。
① 腸管の蠕動を促進する。
グリセリン浣腸は腸管の蠕動を促進し、排泄を促進させる。このほかグリセリン浣腸について、直腸穿孔の危険性があるため立位ではなく左側臥位による5~6cm程度のチューブ挿入を実施すること、浣腸液は直腸温(深部体温)よりもやや高い約40℃とすることなどが、試験頻出テーマとして挙げられる。
▶午後45
皮膚の構造と機能について正しいのはどれか。
- 皮膚表面は弱酸性である。
- 粘膜は細菌が繁殖しにくい。
- 皮脂の分泌量は老年期に増加する。
- アポクリン汗腺は全身に分布している。
① 皮膚表面は弱酸性である。
皮膚表面は抗菌作用を保持するために、角質層の皮脂によって弱酸性に調整されている。
×② 粘膜は細菌が繁殖しにくい。
粘膜には角質層がなく、皮膚に比べて細菌が繁殖しやすい環境にある。
×③ 皮脂の分泌量は老年期に増加する。
皮脂の分泌量は加齢により減少するため、皮膚表面が弱酸性に保てず、皮膚のバリア機能が低下するほか乾燥が進む。
×④ アポクリン汗腺は全身に分布している。
汗を分泌する汗腺には、全身に分布するエクリン腺と、腋窩や外陰部など限られた部位に分布するアポクリン腺がある。
▶午後46
与薬方法で正しいのはどれか。
- 筋肉内注射は大殿筋に行う。
- 点眼薬は下眼瞼結膜の中央に滴下する。
- バッカル錠は、かんでから飲み込むよう促す。
- 口腔内に溜まった吸入薬は飲み込むよう促す。
② 点眼薬は下眼瞼結膜の中央に滴下する。
点眼時は下眼瞼を軽く下に引き、容器の先端を当てないように下眼瞼結膜の中央に滴下する。
×① 筋肉内注射は大殿筋に行う。
筋肉内注射は中殿筋や三角筋に行い、皮下組織の奥にある筋肉内に直接注射するため、確実に届くように45~90度の角度で刺入する。
×③ バッカル錠は、かんでから飲み込むよう促す。
バッカル錠は歯茎と頬の間に挟み、唾液で自然に溶かして吸収する。なお、噛んで飲み込む錠剤はチュアブル錠、舌の下から粘膜吸収する錠剤はニトログリセリンなどの舌下錠である。
×④ 口腔内に溜まった吸入薬は飲み込むよう促す。
吸入薬は口から霧状に吸入して、気管支や肺に作用するするもので、使用後は全身または口腔内の副作用〈有害事象〉を避けるために必ず含嗽(うがい)をする必要がある。
▶午後47
全血の検体を25℃の室内に放置すると低下するのはどれか。
- 血糖
- 乳酸
- 遊離脂肪酸
- アンモニア
① 血糖
全血を25℃の室内に放置すると、赤血球の解糖作用により血糖は低下する。
▶午後48
看護師の人員配置基準について定めた法律はどれか。
- 医療法
- 労働基準法
- 保健師助産師看護師法
- 看護師等の人材確保の促進に関する法律
① 医療法
医療法により病床種別ごとに人員配置基準(人員1人当たりの入院患者数)や構造設備基準が定められており、たとえば一般病床における看護師・准看護師の人員配置基準は3:1(入院患者3人に対して看護師・准看護師1人)となっている。
*第4編1章 5.医療施設 p199~204
▶午後49
放射線治療による放射線宿酔について正しいのはどれか。
- 晩期合併症である。
- 食欲不振が出現する。
- 皮膚の発赤が特徴的である。
- 症状は1か月程度持続する。
② 食欲不振が出現する。
放射線宿酔とは、放射線治療の早期に電離放射線に被ばく後、吐き気や食欲不振、下痢、倦怠感などの全身症状が出現するもので、多くは一週間程度で症状が消滅する。
▶午後50
呼吸困難を訴えて来院した患者の動脈血液ガス分析は、pH7.32、動脈血炭酸ガス分圧〈PaCO2〉72Torr、動脈血酸素分圧〈PaO2〉50Torr、HCO3-26.0mEq/Lであった。
このときのアセスメントで適切なのはどれか。
- 肺胞低換気
- 過換気症候群
- 代謝性アシドーシス
- 呼吸性アルカローシス
① 肺胞低換気
動脈血酸素分圧〈PaO2〉が60Torr以下と呼吸不全であり、加えて動脈血二酸化炭素分圧〈PaCO2〉が45Torrを超えるⅡ型呼吸不全に分類されるため、肺胞低換気による呼吸性アシドーシスが考えられる(CO2ナルコーシス)。
▶午後51
Aさん(50歳、男性)は、上腹部痛が突然出現したため、冷や汗をかき腹部を押さえながら家族と来院した。Aさんは十二指腸潰瘍の既往がある。
このときに観察する徴候として最も適切なのはどれか。
- Romberg〈ロンベルグ〉徴候
- Blumberg〈ブルンベルグ〉徴候
- Courvoisier〈クールボアジェ〉徴候
- Trendelenburg〈トレンデレンブルグ〉徴候
② Blumberg〈ブルンベルグ〉徴候
ブルンベルグ徴候とは、腹壁を垂直に押して素早く離した際に痛み(反跳痛)を感じるものをいい、反跳痛が感じられる場合は腹膜炎が考えられる。腹膜炎の多くは腹痛を伴うため、上腹部痛を訴える患者に対する診察として適切である。
×① Romberg〈ロンベルグ〉徴候
ロンベルグ徴候とは、足を閉じた立位で閉眼すると身体が動揺する現象をいい、平衡機能や運動失調が考えられる。
×③ Courvoisier〈クールボアジェ〉徴候
クールボアジェ徴候とは、身体の表面から観察できる痛みを伴わない胆嚢腫大をいい、胆管癌や乳頭部癌が考えられる。
×④ Trendelenburg〈トレンデレンブルグ〉徴候
トレンデレンブルグ徴候とは、患肢で片足立ちになると健肢側の骨盤が下がる現象で、股関節障害が考えられる。
▶午後52
Aさん(48歳、女性)は、卵巣癌の腹膜播種性転移で亜イレウス状態になった。栄養療法のために、右鎖骨下静脈から中心静脈カテーテルの挿入が行われたが、鎖骨下動脈を穿刺したため中止された。処置直後の胸部エックス線撮影で異常はなかったが、4時間後、Aさんは胸痛と軽い呼吸困難を訴えた。
最も考えられるのはどれか。
- 血胸
- 肺炎
- 肺転移
- 胸膜炎
① 血胸
中心静脈栄養法に用いられる中心静脈カテーテルでは、鎖骨下静脈穿刺による血胸が合併症として挙げられ、出血性ショックや呼吸困難、胸痛が生じる。このほか、誤って胸膜を損傷した場合は胸腔内に空気が漏れ出て肺が縮む気胸が起こる。
▶午後53
Aさん(42歳、男性、会社員)は、1人で暮らしている。毎日、たばこを20本吸い、缶ビールを3本飲んでいた。Aさんは週末にラグビーをした後、帰りに焼肉を食べるのを楽しみにしている。高尿酸血症で治療を受けることになり、尿酸排泄促進薬が処方された。缶ビールを1本に減らしたが、尿酸値が高い状態が続いている。身長172cm、体重67kg。その他の血液検査データに異常はない。
Aさんへの生活指導で最も適切なのはどれか。
- 禁煙
- 体重の減量
- 過度な運動の回避
- 蛋白質摂取の禁止
③ 過度な運動の回避
激しい運動(無酸素運動)により尿酸値が急上昇するため、高尿酸血症の患者には有酸素運動が適している。
×① 禁煙
生活習慣として禁煙は推奨されるが、高尿酸血症との直接の関係性は薄い。高尿酸血症患者に対してはアルコール摂取の制限が適切で、当患者の場合すでに減酒をしているが、場合によっては禁酒や休肝日を設けるなどの指導を行う。
×② 体重の減量
身長172cm、体重67kgであり、体格指数(BMI)は67÷(1.72×1.72)≒22.6で肥満(BMI≧25)とは判定されないため、直ちに減量は必要ない。
×④ 蛋白質摂取の禁止
週末に焼き肉を食べており、尿酸を生成するプリン体が多く含まれる動物性蛋白質の適度な制限が必要である。
▶午後54
Raynaud〈レイノー〉現象のある患者への指導で正しいのはどれか。
- 頻繁に含嗽をする。
- 日傘で紫外線を防止する。
- 洗顔のときは温水を使用する。
- 筋力を維持するトレーニングを行う。
③ 洗顔のときは温水を使用する。
レイノー現象は、四肢末端の血管攣縮(れんしゅく)により手指の皮膚の色調変化などの症状が現れるもので、寒冷刺激や強い精神的緊張により誘発されるため、温水での洗顔が指導として正しい。
▶午後55
脳血管造影を行う患者の看護について最も適切なのはどれか。
- 前日に側頭部の剃毛を行う。
- 検査30分前まで食事摂取が可能である。
- 検査中は患者に話しかけない。
- 穿刺部の末梢側の動脈の拍動を確認する。
④ 穿刺部の末梢側の動脈の拍動を確認する。
脳血管造影検査の合併症として、血管壁の損傷により生じた血栓による末梢血管閉塞や、検査後の穿刺部位圧迫による末梢動脈循環障害を起こすことがあるため、穿刺部末梢側動脈の拍動を確認する必要がある。
×① 前日に側頭部の剃毛を行う。
脳血管造影検査に用いるカテーテルは手首や肘、鼠径部の動脈から挿入するもので、頭部の剃毛は不要である。
×② 検査30分前まで食事摂取が可能である。
脳血管造影検査前の食事摂取はできない。
×③ 検査中は患者に話しかけない。
脳血管造影検査は比較的侵襲度の高い検査であり、検査中に患者に異常がないか注意深い観察、声かけが必要である。
▶午後56
Aさん(59歳、男性)は、経尿道的前立腺切除術後1日で、強い尿意を訴えているが腹部超音波検査で膀胱に尿は貯留していない。Aさんは、体温36.9℃、脈拍88/分、血圧128/86mmHgであった。尿は淡血性で混濁はなく蓄尿バッグ内に3時間で350mL貯留している。
この状態で考えられるのはどれか。
- 尿道狭窄
- 尿路感染症
- 膀胱刺激症状
- 膀胱タンポナーデ
③ 膀胱刺激症状
膀胱刺激(過敏)による強い尿意(尿意切迫感)の症状が考えられる。
×① 尿道狭窄
尿道狭窄では排尿症状がみられるが、膀胱に尿が貯留していないこと、蓄尿バッグに正常量の尿が貯留していることから当たらない。
×② 尿路感染症
尿路感染症は尿道口から侵入した細菌による尿路の感染であるが、症状として多い高熱は見られず、尿に混濁はないことから当たらない。
×④ 膀胱タンポナーデ
膀胱タンポナーデは、膀胱内に凝血塊が形成されて下部尿路が閉塞した状態であるが、膀胱に尿が貯留していないこと、蓄尿バッグに正常量の尿が貯留していることから当たらない。
▶午後57改題
日本の令和4年(2022年)の養護者による高齢者虐待の種類で最も多いのはどれか。
- 身体的虐待
- 心理的虐待
- 介護等放棄
- 性的虐待
① 身体的虐待
令和4年(2022年)の高齢者虐待の状況では、身体的虐待が、養介護施設従事者等によるものでは57.6%、養護者によるものでも65.3%と最も多く、半分以上を占めている。
*第5編2章 5.2〕高齢者虐待防止対策 p241~242
▶午後58
高齢者の総合機能評価〈CGA〉について正しいのはどれか。
- 介護者の介護負担は含まない。
- 多職種チームで結果を共有する。
- 疾患の改善を目指すことが目的である。
- 主な対象者は重度の要介護高齢者である。
② 多職種チームで結果を共有する。
高齢者の総合機能評価〈CGA〉は、高齢者への包括的な評価として、医学的、身体的、精神・心理的、社会的な指標に基づいて評価するもので、その評価結果は医療機関、在宅医療・介護、地域生活など多職種連携による活用が期待される。
▶午後59
Aさん(70歳、女性)は、夫のBさんと死別し、軽費老人ホームに入居している。Aさんは「今、再婚をしたいと思う好きな人ができたのに、70歳で再婚なんて恥ずかしいよと息子に叱られました。とても悲しいです」と話した。
Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。
- 「息子さんの気持ちは理解できます」
- 「他の職員の考えを聞いてみましょう」
- 「好きな人ができることは素敵なことですね」
- 「亡くなったBさんのことは忘れてしまったのですか」
③ 「好きな人ができることは素敵なことですね」
本人の意思や自己決定を尊重して、共感的、肯定的に対応することが適切である。
▶午後60
軽度の嚥下障害がある患者への誤嚥性肺炎の予防法で正しいのはどれか。
- 流動食にする。
- 軽く下顎を挙上して飲み込んでもらう。
- 食後は10分程度の座位を保持する。
- 口腔内を吸引しながらブラッシングする。
④ 口腔内を吸引しながらブラッシングする。
口腔ケア時に口腔内の唾液や痰、食物残渣を吸引しながらブラッシングすることで、気管に誤って入る誤嚥からの誤嚥性肺炎を予防することができる。
×① 流動食にする。
嚥下障害は軽度であり、咀嚼・嚥下機能を低下させないためにも、流動食ではなく咀嚼時に食塊を形成しやすい適度な粘り気がある食事にする。
×② 軽く下顎を挙上して飲み込んでもらう。
下顎を上げる頸部後屈では咽頭と気管が直線的になり、嚥下時に誤嚥が生じやすいため、顎を下げる頸部前屈が望ましい。
×③ 食後は10分程度の座位を保持する。
食後には胃食道逆流が起こりやすく誤嚥につながるため、食後30分程度は上半身を起こした座位や半座位(ファウラー位)を保持する。
▶午後61
Parkinson〈パーキンソン〉病の症状について正しいのはどれか。
- 満月様顔貌になる。
- 腕を振らずに歩く。
- 後ろに反り返って歩く。
- 頭を左右に大きく振る。
② 腕を振らずに歩く。
パーキンソン病は神経伝達物質であるドパミンの減少により、手足の振戦(ふるえ)や動作緩慢・無動、筋固縮、姿勢反射障害(バランスが取れなくなる)などの運動症状が現れる病気である。
▶午後62
A君(5歳、男児)は、先天性水頭症で脳室−腹腔〈V-P〉シャントが挿入されている。
定期受診の際、看護師が確認する項目で優先度が高いのはどれか。
- 頭囲
- 聴力
- 微細運動
- 便秘の有無
④ 便秘の有無
水頭症は頭蓋内に過剰な髄液が貯留した状態をいい、その治療として脳室から腹腔に髄液を排液する脳室−腹腔短絡(V−Pシャント)術が用いられる。便秘であると腹圧が高まり髄液の流れが悪くなるため、確認の優先度は高く、必要であれば浣腸を行う。
▶午後63
二分脊椎の子どもに特徴的な症状はどれか。
- 排泄障害
- 体重増加不良
- 言語発達の遅延
- 上半身の運動障害
① 排泄障害
二分脊椎とは、本来脊椎(背骨)に覆われる脊髄が神経管閉鎖不全を起こしている状態をいい、下半身の運動神経障害や、尿失禁、大便失禁などの排泄直腸障害が多くみられる。
▶午後64
セクシュアリティの意義と関連する事項の組合せで正しいのはどれか。
- 生殖性の性――ジェンダー
- 性別としての性――常染色体
- 連帯性としての性――種の保存
- 性役割としての性――社会的規範
④ 性役割としての性――社会的規範
生殖性の性(セックス)は種の保存、性役割としての性(ジェンダー)は心理・社会的属性と関連する。なお、②性別を決定するものは性染色体である。
▶午後65
正常な月経周期に伴う変化で正しいのはどれか。
- 排卵期には頸管粘液が増量する。
- 月経の直後は浮腫が生じやすい。
- 黄体から黄体形成ホルモン〈LH〉が分泌される。
- 基礎体温は月経終了後から徐々に上昇して高温相になる。
① 排卵期には頸管粘液が増量する。
排卵前後に当たる排卵期には、子宮の入口に当たる頸管の粘液が増加することで、精子の通過を容易にし、妊娠しやすくなる。
×② 月経の直後は浮腫が生じやすい。
浮腫は月経前症候群〈PMS〉の症状である。
×③ 黄体から黄体形成ホルモン〈LH〉が分泌される。
黄体形成ホルモン〈LH〉は、エストロゲンの分泌増加に伴い下垂体から分泌され、排卵を起こす。
×④ 基礎体温は月経終了後から徐々に上昇して高温相になる。
月経開始から終了までの月経期、月経終了後から排卵前までの卵胞期は、基礎体温が低下する低温期である。排卵後からの黄体期は基礎体温が上昇する高温期に当たる。
▶午後66
Aさん(38歳、女性、パート勤務)は、腹痛のため、姉に付き添われて救急外来を受診した。診察時、身体には殴られてできたとみられる複数の打撲痕が確認された。腹痛の原因は夫から蹴られたことであった。Aさんは「家に帰るのが怖い。姉には夫の暴力について話したくない」と泣いている。
外来での看護師の対応で適切なのはどれか。
- 打撲痕を姉に見てもらう。
- 配偶者暴力相談支援センターに通報する。
- 暴力を受けたときの状況を具体的に話すことを求める。
- Aさんが日頃から夫を怒らせるようなことがなかったか聞く。
② 配偶者暴力相談支援センターに通報する。
配偶者暴力防止法〈DV防止法〉に基づき、配偶者からの暴力を受けている者を発見した者は、配偶者暴力相談支援センターまたは警察官に通報するよう努めなければならない(法6条1)。医療関係者においても、業務を行うに当たって、暴力による負傷または疾病にかかったと認められる者を発見した場合、その者の意思を尊重するよう努めた上で通報することができる(法6条2)。
*第5編2章 3.5〕配偶者からの暴力の防止対策 p238
▶午後67
プロセスレコードについて正しいのはどれか。
- 看護過程の1つの段階である。
- 患者と家族間の言動を記述する。
- 看護師の対人関係技術の向上に活用する。
- 患者の精神症状をアセスメントする方法である。
③ 看護師の対人関係技術の向上に活用する。
プロセスレコードとは、看護師等が患者の言動、その際の自身の感情や言動を振り返り、その相互関係を記述した記録であり、対人関係技術やアセスメント能力の向上が図られる。
▶午後68
集団精神療法の効果が最も期待できるのはどれか。
- 過眠症
- 躁状態
- 薬物依存症
- 小児自閉症
③ 薬物依存症
集団精神療法は、治療者と患者グループにおいて対人関係の相互作用を用いた精神療法であり、うつ病やアルコール依存症、薬物依存症などの患者において効果が高い。
▶午後69
Aさん(80歳、女性)は、1人で暮らしている。内科と整形外科とを受診しているが、2週前から内服薬の飲み間違いがあり、主治医から訪問看護師に服薬管理の依頼があった。
Aさんがセルフケアを維持して内服するための訪問看護師の服薬管理の支援で最も適切なのはどれか。
- 内服薬は薬局から訪問看護師が受け取る。
- 自宅での内服薬の保管場所を分散する。
- 内服指導を診療科ごとに依頼する。
- 内服薬を1回分ごとにまとめる。
④ 内服薬を1回分ごとにまとめる。
内服薬を朝・昼・夜など1回分ごとにまとめることで、飲み忘れ、飲み間違いの防止につながる。なお、①セルフケアを維持した内服のため、内服薬は患者本人が薬剤師等の説明を受けて理解し、直接受け取ることが望ましい。
▶午後70
Aさん(70歳、男性)は、1人で暮らしている。慢性閉塞性肺疾患のため1週前から在宅酸素療法(0.5L/分、24時間持続)が開始された。Aさんは階段の昇降時に息切れがみられる。
自宅での入浴の方法に関する訪問看護師の説明で最も適切なのはどれか。
- 脱衣は看護師が全介助する。
- 浴槽に入ることは禁止する。
- 身体を洗うときはシャワーチェアを使う。
- 入浴中は携帯用酸素ボンベを利用できない。
③ 身体を洗うときはシャワーチェアを使う。
在宅酸素療法では酸素を吸入しながら入浴することができるが、身体を洗う際などの動作時に息切れ(呼吸困難)を生じるおそれがあるため、シャワーチェアを用いて動作の負担を減らすことが望ましい。
▶午後71
Aさん(60歳、男性)は、1年前に膵癌と診断されて自宅で療養中である。疼痛管理はレスキューとして追加注入ができるシリンジポンプを使用し、オピオイドを持続的に皮下注射している。
訪問看護師のAさんへの疼痛管理の指導で適切なのはどれか。
- シリンジの交換はAさんが実施する。
- 疼痛がないときには持続的な注入をやめてもよい。
- レスキューとしてのオピオイドの追加注入はAさんが行う。
- レスキューとして用いるオピオイドの1回量に制限はない。
③ レスキューとしてのオピオイドの追加注入はAさんが行う。
レスキュー薬は一過性の癌疼痛が増強した際に用いられる速放性の鎮痛薬で、在宅等での自己管理としても用いられる。なお、④レスキュー薬(内服)の1回量は内服量換算で1日量の1/6が目安とされる。
▶午後72
医療における安全管理のシステム設計の原則で正しいのはどれか。
- 個人の反省を促す。
- 人の記憶力を重視する。
- 作業のプロセスを標準化する。
- いくつかの業務を同時に実施する。
③ 作業のプロセスを標準化する。
医療安全管理において、人間が引き起こすヒューマンエラーを完全に防ぐことはできない。人間はミスを起こすという前提に立って、操作機器や手順などの作業環境・方法を人間に合うように標準化することがシステム設計として適している。
▶午後73
Aさん(79歳、女性)は、癌の化学療法を受けていたが、脳出血を起こし意識不明の状態になった。Aさんの家族は回復する見込みはないと医師から説明を受けた。家族はAさんの延命を望んでおり、医師と今後の治療方針を決定する前に看護師に相談した。
Aさんの家族への対応で最も適切なのはどれか。
- 医師に方針を決めてもらうよう伝える。
- 病院の倫理委員会に判断を依頼するよう伝える。
- Aさんのアドバンスディレクティブ〈事前指示〉を確認するよう伝える。
- 経管栄養法を開始することでAさんの身体の状態は維持できると伝える。
③ Aさんのアドバンスディレクティブ〈事前指示〉を確認するよう伝える。
アドバンスディレクティブ〈事前指示〉とは、患者が将来、自らの判断能力を喪失した際に備えて、あらかじめ医療行為に対する意思表示を行うことで、意識不明となったAさんの事前指示を確認することが適切である。なお、近い概念として終末期における医療・ケアの方法や方針をあらかじめ書面で意思表示するリビングウィルがある。
▶午後74
災害急性期における精神障害者への看護師の対応で最も適切なのはどれか。
- 名札の着用を指示する。
- 災害の状況については説明しない。
- 不眠が続いても一時的な変化と判断する。
- 服薬している薬剤を中断しないように支援する。
④ 服薬している薬剤を中断しないように支援する。
災害急性期においては、精神障害者が強いストレスやショックを受け、さらに通院が困難になることによる服薬中断により、症状が悪化・再発するおそれがあり、それを防止するために服薬の継続支援がとりわけ重要である。
▶午後75
災害発生後、避難先の体育館で生活を始めた高齢者への対応で最も適切なのはどれか。
- トイレに近い場所を確保する。
- 持参薬を回収して被災者に分ける。
- 区画された範囲内で過ごすよう促す。
- 私語を控えて館内の静穏が保てるように指導する。
① トイレに近い場所を確保する。
高齢者では排尿回数の増加(頻尿)や夜間多尿によりトイレを利用する回数が多く、慣れない避難所の環境下で転倒や失禁のおそれがあり、トイレに近い部屋を割り当てることでそのリスクを減らすことが適切である。
▶午後76
自己管理を行う上で自己効力感を高める支援として最も適切なのはどれか。
- 自己管理の目標はできるだけ高くする。
- 必要な知識をできるだけ多く提供する。
- 自己管理の方法で不適切な点はそのたびに指摘する。
- 自己管理で改善できた点が少しでもあればそれを評価する。
- 対象者が自己管理できない理由を話したときは話題を変える。
④ 自己管理で改善できた点が少しでもあればそれを評価する。
患者の自己管理では、患者本人が達成可能な目標を立て、行動の定着・習慣化を図り、目標評価を行う。自己効力感(目標実現能力を持っているとの認識)を高めて自己管理の継続を図るため、結果よりも過程を重視し、小さくともうまくいった行動に目を向けるよう評価することが望ましい。
▶午後77
1歳0か月の幼児の標準的な身長と体重の組合せで正しいのはどれか。
身長――体重
- 55cm――6kg
- 75cm――6kg
- 75cm――9kg
- 100cm――9kg
- 100cm――12kg
③ 75cm――9kg
出生時の平均身長は約50cmで、1年ごろには約1.5倍(75cm)、4年ごろには約2倍(100cm)となる。また、出生時の平均体重は約3kgで、3か月ごろには約2倍(6kg)、1年ごろには約3倍(9kg)となる。
▶午後78
Aさん(28歳、初産婦)は、妊娠11週である。身長160cm、体重52kg(非妊時体重50kg)である。現在は身体活動レベルⅠ(非妊時は身体活動レベルⅡ)で妊娠経過は順調である。
現時点で非妊時と比べて食事に付加することが望ましいのはどれか。
- 糖質
- 葉酸
- 蛋白質
- カリウム
- カルシウム
② 葉酸
妊娠初期には通常よりも多い葉酸の摂取が重要であり、葉酸の摂取が不足すると胎児の二分脊椎など神経管閉鎖不全のリスクが高まる。
▶午後79
Aさん(60歳、男性)は、統合失調症で20年前から抗精神病薬を服用している。常に口を動かしているため、何か食べていないか看護師が口の中を確認するが、何も口には入っていない。Aさんは「勝手に口と舌が動いてしまう」と言う。
Aさんに現れている症状はどれか。
- 被害妄想
- 作為体験
- カタレプシー
- 遅発性ジスキネジア
- 静座不能〈アカシジア〉
④ 遅発性ジスキネジア
遅発性ジスキネジアは抗精神病薬の服用で生じるもので、自分で止めることのできない口をもぐもぐさせるなどの症状を特徴とする。なお、⑤静座不能〈アカシジア〉は同様に抗精神病薬などの服用により起こり、座り続けることができずにそわそわと動き回ることを特徴とする。
▶午後80
小児医療に関する課題とその対応の組合せで正しいのはどれか。
- 低出生体重児の増加――人工乳による哺育の推進
- 育児不安が強い親の増加――子どもの自立支援
- 障害児の在宅医療のニーズの増加――レスパイトケアの充実
- 小児救急医療を受診する子どもの増加――ドクターカーの充実
- 成人になった小児慢性疾患患者の増加――親の意思決定の支援
③ 障害児の在宅医療のニーズの増加――レスパイトケアの充実
レスパイトケアは、介護者等の一時的な休息支援を図るものである。障害児の在宅医療のニーズが増加することで、介護者等の介護負担が増加することが想定され、重症度に応じた居宅での支援等の充実がその負担軽減対策として適切である。
▶午後81
小脳の機能はどれか。2つ選べ。
- 関節角度の知覚
- 振動感覚の中継
- 姿勢反射の調節
- 随意運動の制御
- 下行性の疼痛抑制
③ 姿勢反射の調節
④ 随意運動の制御
小脳は姿勢や運動の制御など、運動調節機能をつかさどっている。そのため、小脳の機能障害である小脳失調では、姿勢保持の困難(体幹バランスの崩れ)や運動失調がみられる。
▶午後82
白血球減少症で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 好塩基球数は増加する。
- EBウイルス感染によって起こる。
- 白血球数が3,000/μL以下をいう。
- 好中球減少症では細菌に感染しやすくなる。
- 無顆粒球症は単球がなくなった病態をいう。
③ 白血球数が3,000/μL以下をいう。
④ 好中球減少症では細菌に感染しやすくなる。
白血球減少症は、白血球数が3,000/μL以下に減少したものをいい、そのうち主要な生体防御機構(免疫)である好中球が1,500/μL以下に減少する好中球減少症では易感染の状態となる。
×① 好塩基球数は増加する。
白血球減少症に伴い、白血球の一種である好塩基球も減少する。
×② EBウイルス感染によって起こる。
EBウイルスの感染により伝染性単核症が起こり、発熱等の風邪症状がみられる。
×⑤ 無顆粒球症は単球がなくなった病態をいう。
無顆粒球症は好中球が重度の減少を起こしている病態をいい、高熱や扁桃炎を初期症状として、肺炎や敗血症などの重症化を引き起こすリスクが高い。
▶午後83
下垂体ホルモンの分泌低下により生じるのはどれか。2つ選べ。
- 性早熟症
- 低身長症
- 先端巨大症
- Sheehan〈シーハン〉症候群
- Cushing〈クッシング〉症候群
② 低身長症
④ Sheehan〈シーハン〉症候群
② 下垂体から分泌される成長ホルモンの低下により、低身長症が生じる。
④ 分娩時大出血に伴う下垂体壊死により、下垂体機能低下を特徴とするシーハン症候群が生じる。
×① 性早熟症
性早熟症(思春期早発症)は、下垂体からの性腺刺激ホルモンであるゴナドトロピン(黄体形成ホルモン・卵胞刺激ホルモン)の分泌過剰によって生じる。
×③ 先端巨大症
下垂体から分泌される成長ホルモンが長期的に過剰分泌されることで、先端巨大症(特徴的な顔貌)が生じる。
×⑤ Cushing〈クッシング〉症候群
クッシング症候群は、副腎皮質から分泌されるホルモン(コルチゾール)の過剰により、満月様顔貌〈ムーンフェイス〉や高血糖、高血圧、易感染性、骨粗鬆症、体重増加、月経不順などが症状として表れる。
▶午後84
抗コリン薬の投与が禁忌の疾患はどれか。2つ選べ。
- 疥癬
- 緑内障
- 大腿骨骨折
- 前立腺肥大症
- 前頭側頭型認知症
② 緑内障
④ 前立腺肥大症
抗コリン薬は、副交感神経や運動神経に働く神経伝達物質であるアセチルコリンの作用を阻害するもので、胃内視鏡検査の際に腸管の収縮を抑えるためなどに用いられるが、副作用〈有害事象〉である尿閉により前立腺肥大症を、眼圧上昇により緑内障を悪化させるおそれがあり、これらの疾患の患者に対しては禁忌である。
▶午後85
新生児の養育に関する親への指導で適切なのはどれか。2つ選べ。
- 「体温37.0℃で受診させましょう」
- 「沐浴は児が満腹のときに行いましょう」
- 「授乳後は顔を横に向けて寝かせましょう」
- 「衣類は大人よりも1枚少なくしましょう」
- 「オムツはおなかを締めつけないように当てましょう」
③ 「授乳後は顔を横に向けて寝かせましょう」
⑤ 「オムツはおなかを締めつけないように当てましょう」
③ 新生児は噴門部(胃の入り口)の括約筋が発達しておらず、授乳後に溢乳や吐乳が生じやすく、誤嚥や窒息を防ぐために顔を横に向けて寝かせる。
⑤ 新生児期や乳児期では、横隔膜を上下に動かす腹式呼吸が中心であるため、お腹を締め付けないようにする。
×① 「体温37.0℃で受診させましょう」
新生児の体温の基準は36.5~37.5℃であり、正常範囲である。
×② 「沐浴は児が満腹のときに行いましょう」
消化不良や吐乳を起こしやすいため、沐浴直前直後の授乳等は避ける。
×④ 「衣類は大人よりも1枚少なくしましょう」
新生児は体温調節機能が未発達であり、また、体表面積が体の体積に比べて大きく熱放散が生じやすいため、体温を逃がさないよう衣類を多めにする。
▶午後86
一般的な思春期の発育の特徴について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 骨端線が閉鎖する。
- 性的成熟は男子の方が女子より早く始まる。
- 成長ホルモンが性腺に作用して第二次性徴が起こる。
- 男子では身長増加のピークの前に精巣の発育が始まる。
- 女子では身長増加のピークの前に乳房の発育が終わる。
① 骨端線が閉鎖する。
④ 男子では身長増加のピークの前に精巣の発育が始まる。
① 骨端線とは細胞の活発化により成長する軟骨で、身長の伸びに関わっており、これが閉鎖することで身長の伸びが止まる。
④ 男子の第二次性徴(精巣・陰茎発育、陰毛発生、精通)において、身長等の発育の加速(第二次発育急進)は、精巣発育後の13歳ころに最大成長速度に達する。
×② 性的成熟は男子の方が女子より早く始まる。
女子のほうが第二次性徴の発現が早く、女子では9歳、男子では11歳ころから始まる。
×③ 成長ホルモンが性腺に作用して第二次性徴が起こる。
思春期に下垂体から性腺刺激ホルモン(黄体形成ホルモン・卵胞刺激ホルモン)が分泌されることをきっかけに、第二次性徴が発現・成熟する。
×⑤ 女子では身長増加のピークの前に乳房の発育が終わる。
女子の第二次性徴(乳房発育、陰毛発生、初経)において、身長等の発育の加速(第二次発育急進)は、乳房発育前の11歳ころに最大成長速度に達する。
▶午後87
前頭葉の障害に伴う症状で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 人格の変化
- 感覚性失語
- 自発性の欠乏
- 平衡機能障害
- 左右識別障害
① 人格の変化
③ 自発性の欠乏
前頭葉は注意力や思考力、意欲、感情などを制御しており、前頭葉の障害では遂行能力の欠如や脱抑制、人格変化、意欲(自発性)低下などが症状としてあらわれる。
×② 感覚性失語
感覚性失語は、感覚性言語を司る側頭葉のウェルニッケ野の障害に伴う。
×④ 平衡機能障害
平衡機能障害は、姿勢制御を司る小脳の障害に伴う。
×⑤ 左右識別障害
左右識別障害は、高次脳機能を司る頭頂葉の障害に伴う(ゲルストマン症候群)。
▶午後88
精神科病棟における身体拘束時の看護で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 1時間ごとに訪室する。
- 拘束の理由を説明する。
- 水分摂取は最小限にする。
- 患者の手紙の受け取りを制限する。
- 早期の解除を目指すための看護計画を立てる。
② 拘束の理由を説明する。
⑤ 早期の解除を目指すための看護計画を立てる。
② 身体的拘束等の行動制限を行う際には患者に理由を知らせ、その理由、開始・解除日時を診療録に記載する。
⑤ 身体的拘束は制限の程度が強く、代替方法が見出されるまでの間のやむを得ない処置として行われる行動の制限であり、できる限り早期に他の方法に切り替えるよう努めなければならない。
×① 1時間ごとに訪室する。
身体的拘束の間は原則として常時の臨床的観察を行い、適切な医療及び保護を確保しなければならず、通常15分以内ごとの巡視を行う。
×③ 水分摂取は最小限にする。
身体的拘束は、患者の生命の保護、重大な身体損傷の防止に重点を置いた行動の制限であり、適切な水分摂取を行う。
×④ 患者の手紙の受け取りを制限する。
身体的拘束の制限がある場合でも、信書の発受や、行政機関の職員、代理人である弁護士との電話・面会については制限できない。
*第3編2章 4.3〕精神科の入院制度 p112~114
▶午後89
Aさん(72歳、女性)は、1人で暮らしており、要介護1で訪問看護を利用している。昨日の訪問時、看護師は高級な羽毛布団を見かけ、Aさんに尋ねると購入の覚えがないと話した。別居している長男は、週1回電話でAさんの様子を確認している。
看護師の対応として適切なのはどれか。2つ選べ。
- 長男への連絡
- 羽毛布団の返品
- 成年後見人の選任
- 近隣住民への聞き取り
- Aさんの判断能力の評価
① 長男への連絡
⑤ Aさんの判断能力の評価
Aさんの様子を確認する長男に連絡することで布団の購入に関する事実確認を行い、必要があればAさんの理解力、判断力、記憶力等をアセスメントすることが現段階として適切である。
▶午後90
5%のクロルヘキシジングルコン酸塩を用いて0.2%希釈液2,000mLをつくるのに必要な薬液量を求めよ。
ただし、小数点以下の数値が得られた場合には、小数点以下第1位を四捨五入すること。
解答:①②mL
① 8
② 0
必要な原液量(mL)は、希釈液濃度(%)÷原液濃度(%)×作成する希釈液量(mL)で求められる。希釈液は0.2%希釈液、原液は5%のクロルヘキシジングルコン酸塩なので、0.2÷5×2000=80となる。
資料 厚生労働省「第101回保健師国家試験、第98回助産師国家試験、第104回看護師国家試験の問題および正答について」
注 当ページに掲載する解説は、看護師国家試験を解く上での理解しやすさを重視しているため、本来はより専門的・学術的な説明や議論がある部分を一部省略しています。正確な情報を掲載するように努めていますが、特に医療・看護行為や疾病、薬剤等の説明において、その正確性を保証するものではありませんので、学習以外での使用はお控え下さい。
▼第104回看護師国家試験
▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
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